ぢんぢ部長のつぶやき −ぢんぢ部長−
 1999/11/17(水)特別版発行分
 諸兄は業績が良い会社ほど収入が良いと思っていないか?それがホントなら、通信・ソフト関連で百万長者が続出するはず。シリコンバレーなどでは、ベンチャーの社員が億万長者になるような話も聞く。もちろん、儲けの全てが従業員に跳ね返ってくるわけではなく、内部留保、投資、株主配当や組合との関係など、様々な要素が複雑に絡み合っているのはご承知の通り。

  とは言いながら、「会社は儲かっているのに社員への適正還元がない」と会社帰りの居酒屋で愚痴るコトも多々あるのではないだろうか。


 鍵は会社の給与制度が握っている。言い換えれば、給与制度に会社からのメッセージが込められているといえよう。愚痴る前に物は試し、自社の給与がどうなっているか計算してみてはいかがかな。

今回は月次給与と賞与の関係。
 1)通勤手当や残業手当は除いて年収を計算。
 2)上下賞与や決算賞与などを合計した額
 3)1)に対する2)の比率を算出。

 3)の比率が、20%を切るような場合は、総人件費に占める固定分の割合が高く、構造的に業績還元がしにくいといえる。何しろ毎月必ず出ていく給料が大きく、業績が不安定な場合には賞与を調整弁にせざるを得ない。また経営陣も、予算段階の人件費には慎重にならざるを得ない(万が一売上予算を下回ったら人件費が払えなくなる)ので、業績見通しが多少明るくとも大幅な増額は心理的に出来ないであろう。増して業績不安なら言わずもがなである。一概には言えないが、賞与カットや減額のニュースで出てくるような企業は、構造的にこのような仕組みを持っているところが多いと推測される。要するに、ローリスクローリターンあるいはローリスクノーリターンである。もっともこの構造のために会社がつぶれれば不況下における潜在的ハイリスクと言えなくもないが。

 家計に例えると、おやつは出なかったり出ても高級品は出ないし、外食などはもってのほかだが、3食はキッチリとした物が満腹になるほど毎食提供される自営業の家庭だ。そして例え松阪牛が毎食食べられるような収入の見通しがあっても、一度松阪牛を出してしまうと家族の文句により、よっぽどのことがない限り質は下げられないので、安い輸入牛にしてしまうという感じだろう。輸入牛も食べられないような状況になっても質は下げられないので食い扶持を減らす行動に出る。子供を奉公に出すのか、あるいは捨ててしまう。いわゆるリストラである(厳密に言えば選択肢はあるが)。


 逆に3)の比率が50%を越えるような場合は、業績連動が強く、好景気の時は年収は跳ね上がるが、不景気の時は年収はぐんと下がるようなドラスティックな変化を容認する会社といえよう。経営陣から見れば業績のブレに対する調整幅が大きく取れ、万が一の時も安心。また、このような企業の多くが個人の業績貢献を重視しており、「働かざる者喰うべからず」「戦意なき者は去れ」という形で個人賞与額が決定される傾向がある。


 家庭に例えると、普段の3食は最低限の物を工夫して安く済ませているが、収入の多いときは豪華なおやつと、100g1万円の前沢牛をたらふく食べに何回か外食する。収入が減ると輸入牛でさえ外食もままならないので、前沢牛の舌の感覚を思い出しながら粗食の3食で我慢するが、中でも働きが悪い家族は1日2食とか1食にしてしまう。それがイヤなら出ていってもらうと言ったところか。

 さて、読者はどちらの方がいいだろうか?景気の悪いときは前者で、景気のいいときは後者が良いと思うだろうが、そうは問屋が卸さない。人情的には出したくても構造的に出しにくい会社と、業績が良いときはたっぷり出るが悪くなると最低限しか出ない会社。まさに究極の選択だろう。

 貴方の会社はどちらに近かったですか?


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