新・旧切磋琢磨の時代 −炎のファンドマネージャー−
 1999/11/18(木)発行分
 インターネット総合研究所とリキッドオーディオ・ジャパンが東証マザーズ市場に上場することが決まった。ナスダック・ジャパン構想を契機に取引所、店頭市場と既存の市場を巻き込んだ市場間競争が激化しようとする中で、東証が新興企業を対象とした市場(通称:マザーズ)を11月11日から創設する運びとなり、その先陣を切って両社が上場する訳だ。


 マザーズ市場の特色の一つは設立基準や利益基準が無く、過去の実績を問わないこと。売上高さえ多少でも上がっていれば上場が認められることだ。また、審査期間が上場申請から上場承認、対外発表まで1ヶ月と、東証2部上場の場合の3―4ヶ月よりも大幅に短縮化している点も特徴だ。

 マザーズ設立の目的は「新興企業の資金調達を円滑なものとし、もって新規産業の育成を支援するため、成長可能性のある新興企業を対象とする市場の創設」にあるとされ、成長分野に属しより高い成長の可能性があると認められる企業や新技術や斬新な着想に基づいた事業を主たる事業とすることで高い成長の可能性を持つと認められる企業の2つに的が絞られている。

 具体的な業種としては通信、インターネット、環境、バイオ、老人介護などが上げられ、現在、上記2社の他、インターネット関連のオン・ザ・エッジ、サイバーエージェント、スカイマークエアラインズ、日本デジタル放送サービスなどの社名が候補として上がっている。

 マザーズには多くの上場予備軍は存在しているだろうが、多くがソフトバンクや光通信など先陣を切って店頭公開し、日本を代表する企業へと変身を遂げている成功事例の後に続けと言わんばかりに猫も杓子もとなりそうな状況ではある。しかも、そこには流動性の確保やディスクロージャーの確保といった面倒な壁もあり、後に続く企業が投資家へのリターンを示せるという保証はない。ただ、マザーズという若い企業が早く上場できるインフラができたということは企業にとっても投資家にとってもチャンスに繋がることであり、歓迎すべきことであろう。

 ここからは新興企業群と旧来型の組織形態を守ってきた保守的な企業群とがお互いに切磋琢磨する時代が訪れることになろう。投資家に成長の方向性を確り示せた企業のみが高い時価総額を得て市場に受入れられることは容易に想像できる。一方で旧来型の企業においても組織の内部に新しい形態を取り込むことができれば大きな変化を期待することも可能であろう。若い企業のアイデアや行動力を学び、自ら再生の道を歩むことが日本経済の発展にもつながるのではないだろうか。


 そうした意味からもこれからは新・旧対立の時代ではなく新・旧切磋琢磨の時代となってほしいものだ。

(日本証券アナリスト協会検定会員)


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