総合化学各社の収益動向
 
−駄洒落商会会長−
 2000/12/15(金)発行分

 今回は、石油化学事業中心に総合化学各社の収益動向にふれてみます。

 総合化学各社の2000.9期(中間)連結業績ですが、各社とも主力の石油化学部門において原油価格上昇にともなう原料ナフサの高騰から利益幅が縮小したものの、これを国内外の需要好調による販売数量の拡大と合理化効果により吸収。非石化部門の情報通信関連や医薬品事業などスペシャリティ・ケミカルが伸長し、大手5社はいずれも連結ベースで増収増益となりました。

 なお、今中間期のナフサ価格は平均で1キロリットル=22,000円と前年同期比約5,900円、約36%の上昇となりました。ちなみにナフサとは石油化学の原料となる粗製ガソリンのことです。石油化学プラントでナフサを分解するとエチレン、プロピレン、ブタン、ブチレンなどの成分に分かれます。
 さらに、エチレンからはポリエチレン、ポリスチレンが、プロピレンからはポリプロピレンが、ブタン、ブチレンからは合成ゴムなどの石化製品が生産されることになります。

 なお、ナフサは都市ガス向けの燃料としても使用されています。一般的に、石化製品においては生産コストに占める原油コスト(原料ナフサコスト)の占める比率が高いため、原油価格の急上昇は石化製品市況の先高感につながり、ユーザーからの駆け込み需要から製品価格の上昇をもたらします。
 特に、今回のように製品価格への転嫁が遅れるケースは化学会社の収益にマイナスとなります。各社とも今下期の石化事業の収益はさらなる悪化が予想されています。

 一方で、原油価格の急落は逆に石化製品市況の先安感をもたらすことになります。なお、過去10年間で原油価格が大きく下落したのは湾岸戦争終了後の91〜93年と、アジア経済危機の97〜99年の局面です。双方ともわが国総合化学各社は原料コスト低下メリットを享受しましたが、石化製品の価格下落が生じた結果、利益も減少する結果となりました。

 化学各社の収益にとって望ましいのは原油価格の安定局面といえましょう。来期にかけ米国経済の減速にともなう世界景気の停滞などから原油価格の急落が生じた場合の、石化製品市況の軟化には注意を払う必要があるものと思います。

 こうしたなか、各社は石化事業のコスト削減、リストラを継続するほか、足元エチレンなどの減産傾向を鮮明にしていますが、とりわけ注目されるのは住友化学と三井化学の経営統合です。
 両社はまず、ポリエチレン、ポリプロピレンの分野を先行して統合する意向ですが、それら石化汎用品は原材料コストや製造コスト、販売コストのスケールメリットが大きいため、統合による合理化効果が十分に期待出来ます。
 また、昭和電工は2002年を最終年度とする中期経営計画「チータ・プロジェクト」を推進中ですが、その一環として、今8月末に大分工場のエチレンプラント1号機(生産能力23.1万トン)を停止し、2号機(同60万トン)への生産集約を実施、競争力強化に余念がありません。有利子負債の削減などバランスシートの改善も順調です。
 なお、同社については、大原部長が「イチオシ銘柄」で卓越した分析を披露されていますのでご参照ください。
 また、わが国化学各社は石油化学など汎用化学品分野の収益力では欧米企業に劣るものの、スペシャリティ・ケミカルでは高い技術力を要しています。
 とりわけ非石化部門の伸長が目立つのは住友化学です。今中間期の連結売上高構成比は基礎化学・石油化学が55%、スペシャリティ・ケミカルが42%となりましたが、同営業利益ではスペシャリティ・ケミカルが74%を占めました。同売上高営業利益率でも基礎石化3.7%に対し、スペシャリティ・ケミカルは16.7%に達しています。
 特に、子会社・住友製薬は高血圧・狭心症治療薬「アムロジン」、骨代謝改善剤「ダイドロネル」などが好調に伸びているほか、このほど、米バイオベンチャーのインサイト・ゲノミクス社から遺伝子情報の提供を受け、循環器や免疫分野で新薬開発を目指すことを発表しました。精度の高い情報を入手することで、遺伝子情報を基に医薬品を開発する「ゲノム創薬」推進を加速する計画です。また、同社は医薬、農薬事業において大型M&Aの意向もあり、注目されます。(駄洒落)

 


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