提言:ITから環境へ
 
−炎のファンドマネージャー−
 2000/12/23(土)発行分

 先日、「環境がテーマになる日」というタイトルで紹介させて頂いた記事の続きとして、私なりの考えをまとめてみましたので皆様にも披露したい。
 題して「ITから環境へ」。

 世紀末の日本は、米国市場になぞらえてITが一大テーマとなり、ベンチャー企業も含めて様々なIT関連企業が注目を集めたが、勿論、IT化の流れは今後も加速してくることは明白だろうが、どういう訳か遅ればせにどこかの偉い方がIT、ITと馬鹿の一つ覚えのように叫ぶに至って、逆に全く株価が反応しなくなったのは皮肉な現象としか言いようがない。単純細胞のトップに率いられた日本が良くなる訳はないとでも言いたいのか、株式市場はここに来て急落し、例年になく暗いムードが漂った。

 これではいけない。もう少し違った視点から投資のポイントを見出して、何とか市場を明るいムードに持っていかないと、との思いが筆者にはあり、ここで思い切った考えを示してみることにした。

 話を本題に移したい。人類は先進国と発展途上国と格差こそあれ、テクノロジーの進歩によって数多くの便利さを享受し、物質的な豊かさを感じることができるようになった一方、大きな負の遺産を後世に残しながら、その日暮らしを続けているように感じられるのは筆者だけではあるまい。
 世界的な地球温暖化現象に対応したCO2削減に向けての取組みや、環境破壊を修復しようという様々な取組みが各方面でなされようとしており、それが投資にとっても良いヒントになると考えている。

 「環境重視経営」。様々な企業がこのスローガンを掲げて取組み始めたことを、投資家はどう評価したら良いのか?単に利益が伸びた、利益が減った、株価が上がったり下がったり、儲けたり損したりという次元とは全く異なった次元で考えていかなければならない、極めて深い意義のあることと捉えるべきだろう。

 「一体何のために人は生きているのか?」些か宗教的な問いかけは、企業にも当てはまる。
 「一体何のために企業は存在しているのか?」こうした問いかけに答えられる方は、自ずと環境問題の重要さがおわかりになるだろうし、投資を行う際の重要なポイントにもなりうると気づかれる筈だ。
 「十人十色」「百人百様」という表現ができるように、人も様々な生き方、考え方があろうが、企業もまたしかり。今、様々なベンチャー企業が株式市場に公開し、投資家との対話を迫られているが、ここでも又、企業の取組み姿勢が問われている。単に儲ければ良い、利益を上げれば良いというのでは駄目な時代となっているのだ。

 ただ、環境問題に取組むと収益が減るなどと言う、馬鹿げた議論をしている企業経営者は即刻その考えを改めるべきだ。環境問題に取組むことは、将来必ずリターンとなって跳ね返る。そう考えて行動に移せる企業と、そうした行動を取れない企業とは全く投資家の評価が違ってくる。投資家としても、こうした考え方を知って投資することがこれから重要なのだ。

 海外においては、ドイツの環境問題への取組みが一歩も二歩も進んでいるとされるが、日本はこの分野では遅れを取っていると反省すべきだ。特に市民レベルの意識が低いことは、驚きしかない。教育の現場などでの更なる啓蒙が必要であることは言うまでもない。

 同様に投資家やアナリスト、企業経営者など、株式市場を取り巻く関係者の意識もまだまだ希薄であることが痛感される。例えば、運用を専門的に任されているファンドマネジャーの意識の中に、環境問題への取組みを積極的に行っている企業への評価ということが、どれだけなされているだろうか。環境をテーマにしているファンドでも、しっかりとした考えを持って投資に当たっていないと筆者は理解している。「いやそうではない」と反論される投資信託関係者もお見えかも知れないが、印象に残るファンドはまだない。

 大手証券が設定する**戦略株ファンドなど、どこに戦略があるのか疑いたくなる。今の時代をしっかり見据えて商品設計し、きちんと企業の環境への取組みなど評価してくれるファンドが登場してくれることを望むのは筆者だけか。

 今、お手元に会社四季報があるなら開いてほしいが、そこには投信の持ち株比率が出ている。環境問題と真正面から取組んでいるエア・ウォーター(4088)や、月島機械(6332)など、筆者が考えている環境関連の代表的銘柄への持ち株比率は極めて低いか、皆無であることが判る。
 それでも、日本ガイシ(5333)など、環境をビジネスとして捉えて、積極的な取組みを図る企業に対して、比較的高い割合で投資していることは救いではある。

 トヨタは、環境問題への取組みに最も熱心な企業とされる。私の手元に以前同社の発行した環境白書が届かれられた記憶があるが、本当に熱心である。自動車から出される排気ガスが地球の空気を汚染している元凶と考えられていることから、この問題への取組みがないと長期的には存亡の危機に関わるとの、深い読みがあってのものだろう。

 このように、自動車会社という環境問題とは一見して無縁、いやむしろ環境を破壊する道具を生み出しているような企業、しかもトヨタのような世界的な企業が率先して取組む姿を、早く他の企業や投資家も理解すべきだろう。

 環境問題を解決しうる企業は、省エネ技術の開発に取組む企業、IT産業も仕事や生活を効率的にしてくれるという点では、大いに環境問題の改善に貢献していると言えよう。また、四季報をご覧頂きたいが、実に多くの企業が環境という言葉を使って自分達のビジネスフィールドの中に取り込もうとする姿がおわかりになるだろう。

 そう、また2001年という新世紀の初めの年は、環境が大きなテーマとなる年となることは疑いようのない大事なポイントなのだ。(続く)(炎)

 


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