リサーチのスタンス(つづき)
 
−両津勘吉−
 2000/12/26(火)発行分

 ディスプレイを調査し続けて、沢山のことがわかってきました。

 私たちがELの可能性を信じ、銘柄やコメントを出している裏側で、液晶技術者と思われる方からの否定的な意見も存在していたようです。「有機ELが出てくるのはまだ先」「有機ELにはまだ問題が山済み」など。ただ有機ELが離陸寸前の現在、液晶技術者も液晶の延命に必死のようです。アモルファスからポリシリコン(p‐si)に。証券界では、東芝が低p‐siではかなりの歩留まりを出し、トップを独走していると信じ込んでおりました。ソニーなどは昨年の歩留まりが一桁で、今年の1Qに二桁に。東芝以外は軒並み低いレベルと株式市場では言われていましたが、実際は全く予想外の結果が出ております。三洋電機が相当高いレベルにあるようで、アモルファスと同じ歩留まりを実現しているのです(これには驚き)。

 但し各社、低p‐siパネルの用途が違うため、歩留まりのみで各社を比較するのには少々無理があります。現在の低p‐siでは大型といっても10インチまでで、大型パネルの場合は多少のエラーがあってもOKですが、小型高精彩なパネルにはそれが許されません。ですから単純に考えれば小型パネルで高い歩留まりを実現するのは非常に難しいわけで、三洋電機のアモルファス並みの歩留まりには驚きました。

 その三洋電機は有機ELへのチャレンジを宣言しており、パッシブはアクティブに移行するための予行練習に過ぎず、アクティブに果敢に挑戦するそうです。その際に必要なのが低p‐siのTFTパネルです。有機ELに用いるためにはアモルファスTFTでは電子移動度が足りず、必要な電子移動度を得るためにはどうしても低p‐siTFTが必要になります。その基準をクリアーしている三洋電機は、次の大きな壁である有機ELパネルの量産が可能なのか?

 現状、量産ラインはありませんので、現在生じている問題をクリアーにしている状況でしょう。量産しだした場合には予想外の問題が発生してきますので、それをクリアーするに更に時間がかかります。
 有機ELフルカラーパネルに対する需要は相当多く、販売するに当たってはさほど苦労しないで済みそうですが、その前に量産がうまくいくかわからない状況のスタートになりそうですから、いきなり外部顧客に売るわけにはいきませんでしょう。

 そう考えると、東北パイオニアがモトローラに納めているということは、量産していること自体がサプライズな上、外部顧客に販売している現状を考えると、世界唯一のメーカーで、しかも圧倒的な地位にいると言えそうです。そのパイオニアがアクティブにシフトするために、TFTパネルで頭を悩ませている。どうやって入手するか、それとも別の方法で…。
 低p−siメーカーである東芝、エプソンは高分子EL、シャープはなぜかELの話題にならない、NECは予想外の三星と、ソニー&トヨタなど。東北パイオニアを追いかけるELメーカーで2番手に位置しているであろうと思われる三洋以下は、大きく離されている模様。蒸着が非常に難しいのは皆さんもご承知だろうと思いますが、この装置でのメジャーはアルバック、トッキ。三洋の技術研究所にはこの双方の装置が入っておりますが、来年設置する量産ラインにはトッキ製が使われない可能性がある。なぜか??
 けれど私は三洋電機さんを応援します。
 液晶エンジニアーも相当がんばっております。小中型で有機ELが先行き立ち上がり、大型ではPDPが拡大。液晶が喰われていきそうですが新技術で対抗する。

 その新技術とは、もっと明るく、消費電力を更に低く。そのためフィールドシーケンシャル液晶が大きく拡大する可能性があります。但し、フィールドシーケンシャル液晶は消費電力が大きく、高速動作のためにドライバーコストがかなり嵩みそうです。ですから小型用途には不向きで、携帯端末用には反射型LCDと先行きは有機ELが活躍しましょう。

 ではフィールドシーケンシャルはどこに使われるのか? ずばり液晶プロジェクター、つまり大型用途で多少の電力消費もOKという対象物がターゲットとなります。また、このときのバックライトにはいろいろなものが出てきそうです。蛍光管を大幅に改造したドギモを抜くような輝度を実現したタイプがでてくることでしょう。

 フィールドシーケンシャル液晶を供給すると宣言しているのは、店頭市場に公開している企業のみですが、今後は大手メーカーが次々に名乗りを挙げ、プロジェクターのマーケットに入り込んでくると予想します。LEDの輝度がロウソクに感じられるような輝度のバックライトを搭載して。

 いろいろな技術者の方とお会いし、たくさんの真実をお話していただきました。技術者の方から証券界を眺めれば、「全くの技術音痴集団が勝手に判断してマネーゲームをしている」と目に映っていることでしょう。しかもその市場からマネーを調達して企業成長に活かすのに、肝心要の証券市場がテクノロジーを全く知らないわけです。素晴らしい技術を持ちながら、証券市場から全く評価されず資金調達がスムーズに出来ない企業や、反対に昨年のITという名の元、狂った相場を悪用して「羊頭を懸けて狗肉を売る」ような企業もあった。

 後者のような企業は絶対に許せない。機関投資家はプロとして騙されないように留意しなくてはならないものの、個人投資家が自己判断するのは非常に難しいのが現状。

 かつては証券会社の引受マン(引受という部署に所属)が、そういう企業に知恵を貸していたが、最近ではIRを悪用した例が増えている。表向きは「前向きなIR」だが、思うようにうまく回らなくなると「酷いディスクローズ」に変化し、最後にはIR活動すらやらなくなる。こうした企業には気をつけるとともに、本当に成長のためにお金を必要としている企業には、是非とも投資してみたいものです。

 以前に紹介しましたが、大原部長と私は証券会社に勤務していたときに、この引受を担当し、投資家側でなく調達したい企業側に立っていました。その後、機関投資家営業を何年かやり、少ない利益と莫大な損失を投資家に与えました(冗談です)。
 大原部長はこう言います。「利食いを完全無視し、勧めた銘柄で投資家が損した金額のみを総計すれば50億円くらいかな?」しかしこれは嘘です。私が50億円位で、趣味の悪かった大原部長は間違いなく100億円以上の損失をした筈です。多分2人合わせて200億円は損しているのでは…(内訳、両津50億円、大原150億円)。
 ですから、大原部長と私は過去を清算するために、このメルマガで投資家に情報という形で還元しなくてはならない運命なのか???

 20世紀ももうすぐ終わり、21世紀へ。昨年末か年初に、今年はハイテクシフトを宣言しましたが、完全にシフトしてしまいました。残念ながら私は現状の任務がテクノロジーで、小売サービスに時間を割けないのが実情です。かつてのフォローができず申し訳ありません。

 来年も更にパワーアップし、どこの投信、投資顧問にも負けない技術武装し、世界ナンバーワンを目指します。 もしかすると、読者の中でエンジニアーをされている方に、バッタリお会いするかもしれませんね。その時は宜しくお願いいたします。(両津)

 


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