シリコンバレー報告#2
 
−炎のファンドマネージャー−
 2000/06/22(木)発行分

  さて、本年5月15日から19日にかけて米国サンノゼにて、次世代ネットワークを研究する最先端の研究所を視察。まず最初に訪れたのは、ソニーUSリサーチラボラトリーズ(世界に12拠点あるソニー研究所の一つ)。
 現在ソニーは、中期経営計画「Real&Cyber企業e-SONYをめざして」を掲げ、事業戦略の中心にeHQ(eヘッドクオーター)を置き、5つに分けた事業部『エレクトロニクス』『ゲーム』『ネットワークプラットフォーム』『ファイナンス』『エンターテインメント』同志が相互に連携し、各事業部を通してeビジネスに全面的に参画してゆく構想を立てている。
 米国での売上高が31%を占めるソニーでは、米国市場を重要視しており、しっかりとした研究体制を構築するために、米国法人を独立して作り、付属する研究所を設立。現在200人体制(内67%がソフトウェア開発、30%がハードウェア開発に従事)で研究活動を続けている。

 現状行なわれている研究テーマは、
1)アプリケーション…音声認識(speech recognition)…カーナビ、アイボ向けノイズの多い環境で必要ある音声命令を聞き分ける(選び出す)技術、
2)メディア…ソフトMPEG2エンコーダー、DVDエンコーダー、
3)OS(ミドルウェア)…DSL、
4)IEEE1394…VAIO用を中心とした家庭用AVネットワーク(HAVI)、
5)スカイパーフェクTV、MP3用のシステムLSIとなっている。

 次世代の家庭内ネットワーク(HAVI)は、以下の3つのカテゴリーに分類されるものと見られている。それは、オートマチック(ローバンド、2M/s以下)、エンターテイメント(ハイバンド、100〜800MB/s)そして、インフォメーション(中間帯域、10M/s程度)である。現状では、電話などがオートマチックにあたり、技術的な完成度は高い。また、インフォメーションと呼ばれるインターネットなどのネットワークは、ハード面ではまだまだ弱いがソフト面では落ち着いてきている。AV機器の統合(融合)を第一の命題と考えるソニーは、高速帯域のエンターテイメントを主たる研究ポイント考えており、中心技術をIEEE1394に置いている。

 家庭内ネットワークは、デジタルカムコーダーなどで録画した動画を高速処理し、テレビや、PCに繋ぎ、セットトップボックスなどを経由して外部に発信することや、衛星から入ってくるサテライト通信や、インターネットを経由して入手したアプリケーションや動画を再生するなど、大規模なデータを統一したネットワークを介在させて、相互に行き来させるネットワークを指している。このネットワークソリューションのポイントは、スピードと接続の容易さである。スピードは動画再生には400Mb/S程度の能力が必要であり、接続の容易さとしては、単一のケーブル1本を差し込むだけと言うものが望ましい。ソニーはこの技術をIEEE1394に求めた。IEEE1394というのはもともとアップルが開発していたものを、ソニーがI-rinkと言う名で採用したという経緯がある。

 日本では外部とのデータ伝送が弱い(ISDNで64KB/sレベルでMBレベルには程遠い)と言う欠点を持っており、HAVIは夢物語に近いが、米国ではケーブルTVの普及率が60%となるなどインフラは整っており、実際にIEEE1394の端子を持つデジタル機器は増加しているようである。IEEE1394が普及したあとの世界では電話、テレビ、ネット、衛星通信、AV全てがブロードバンド(高速)のネットワークでつながることになる。
 テレビでデジタル放送を標準装備しているHDDに保存(蓄積)し、求めに応じて再生する時代が実際に始まっているのを見ると、家庭内でのブロードバンドのネットワークの重要性を認識せざるを得ない。日本でも「ラストワンマイル」と言う言葉が聞かれるようになってきたが、ケーブルTVが良いか、ワイヤレスが良いかは別として、早急に対応策を取らねばならないことを認識した。

 ソニーがこのIEEE1394規格の一般化(民生化)の主導権を持つのに対して、UBS陣営はUBS2.0と言う規格で対抗するなど規格争いは起こっている。しかし、 ソニーでは早期に普及させることと、もし規格が割れた時でも規格同士で情報伝達を可能とするブリッジ構造を作って行けるので、βのようなことにはならないとしている。

<つづく>


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