経営のチェック方法(日本ユニシスの場合)
 
−大原部長−
 2000/07/11(火)発行分

 年金の運用は、長期運用に耐えられる銘柄選択です。私は、業績のチェックとともに、経営のチェックをせっせとやっています。インタビューなどで社長や常務にお会いできる企業は直接出向きますし、すこし、多忙だとおっしゃる経営陣には、秘書にメールで質問を送って返事をもらうようにしています。このごろは、メールの比率が高くなっています。

 メインフレームでは、限界的なポジションにある日本ユニシス(8056)という会社があります。私の読みでは、今年後半は富士通などのコンピュータ関連が見直されるはずです(富士通のところで書いたと思いますが)。

 ところで、ユニシスはどうなのか。エンジニアが資産である企業は、経営力がなければなりません。常務の長岡さんにメールで問い合わせを出したところ、以下のような返事がきました。

<大原の質問> 質問は、以下の通りです。--------------

(A)エンジニアの生産性を向上させるための具体的な政策:
 富士通などと比べますと、御社は従業員の平均年齢で3歳高く(富士通37歳6ヶ月、御社40歳6ヶ月)、平均給料も市場シェアが高い富士通より、御社の方が6万円以上高くなっています(富士通45万、御社51万)。高い給料、高い年齢を考えますと、御社のエンジニアの生産性に関しては、富士通のエンジニアと比べて、同等以上の技術力が備わっている必要があると思います。そうでなければ、万年低い利益率に甘んじることになります(注:すこし意地悪な質問です。ごめんなさいユニシス)。
1.御社のエンジニアが富士通や日立よりも優れている点があれば、どういう点なのか教えてください。
2.逆に、御社から見て、技術面でご自身の弱い点をどのように認識されていますか。
3.以上の点を踏まえたうえで、今後御社の生産性をどのように向上させていく予定でしょうか。できるだけ、具体的な例をお願いします。

(B)経営方針
4.エンジニアの生産性をどう人事評価に反映させているのでしょうか。
5.経営陣へのインセンティブプランはどのように実行されるのでしょうか(ストックオプションなど)。
6.従業員へのインセンティブはどのように与えられているのでしょうか。その結果、現状では、同期間でボーナスあるいは給与にどれだけの差がついているのでしょうか

(C)その他
7.御社の大株主、三井物産と米国ユニシスとの持ち株比率は今後安定的に推移するのでしょうか。

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ユニシス長岡常務さんの回答:
 大原様 ご質問に対する回答
 富士通や日立のエンジニアの特質について当社が意見を申し上げる立場にありませんので比較はできませんが、以前にお配りしたFACTBOOKにも記載している「日経コンピュータ誌の顧客満足度調査」にありますように、サー ビスの各分野で両社より高い評価を頂戴しており、このことからも、当社エン ジニアが提供しているサービスのレベルや質の高さがご理解いただけると思います。
 当社のこれまでのミッションクリティカルなシステム構築の実績から、メイ ンフレームに強い反面、オープンシステムの技術力に劣るとのイメージを持たれることがありますが、決してそのようなことはありません。技術力の高さを示す公的資格やマイクロソフト、オラクルなどのベンダー認定資格の取得にも積極的に取り組んでおり、また、子会社のユニアデックスもシスコシステムズのゴールドパートナーに選定されるなど、ネットワーク構築技術力にも定評があります。PR不足の面については反省すべき点として捉え、今後先端システムの構築事例のPRやコーポレートブランディング強化を通じて当社の先進性をお伝えしていきたいと考えています。(注:下線は大原)
 特にシステムサービスの分野においては、収益性および生産性の向上やサー ビス品質を高める目的で導入したTEAMmethodの浸透によって、システムサービスの売上総利益率は1999年3月期の13.9%から2000年3月期には19.5%へ改善するなど、その成果が出始めています。特にTEAMmethodに基づくサービス業務プロセスの策定、実施や見積精度向上などレビューやチェック機能を強化することで、不採算案件の発生防止や効率性向上を図りました。(注:下線部は大原)
 また、ベースラインプロダクトセットとして推奨開発環境を設定するととも に、開発方法論やツール、技法などを標準化しており、今後現場部門へのこれらの適用を推進していくことで更なる生産性向上を図ってまいります。
 平均年齢や給与面についてご指摘がありましたが、当社としても年齢構成の是正を図る狙いで昨年早期退職を実施しています。また、今後の採用についてもグループ子会社中心に増強を図ることで、グループ全体での人件費を抑制する考えでおります。(注:下線部は大原)
 エンジニアの担当したプロジェクト毎に、1)規模、2)技術的先進性、3)開発期間、4)要員体制などの観点で生産性の実績評価を行い、また、完了時の顧客満足度調査も含めた形で完了レビューを実施しています。この実績に各人の獲得スキルや各種資格の取得状況を合わせ技術認定を行っています。従ってこれら生産性や品質、技術レベル等の向上の実績が人事評価に反映されるこ とになります。(下線部は大原)
 経営陣に対するストックオプションについては、制度面の整備状況なども勘案しながら今後慎重に検討していきたいと考えております。ストックオプション等の従業員へのインセンティブプランは実施していませんが、昨年1月に人事制度をより実績重視型の制度へと刷新しました。年俸制の導入や年功的要素をほとんどなくし、各人の成果・実績をベースとした評価を行うことで従業員の士気向上を図っています。今後は新人事制度の定着を見ながら、より働きがいのある制度へと見直しを行っていく考えです。
 なお、新制度による同年代の収入格差は以前より大きく開くようになりましたが、具体的水準についてはご容赦願います。
 
大株主の三井物産とユニシスコーポレーションは、当社株式の流動性や分布状況の改善のため一部株式の放出を行ったことがありますが、現時点において基本的な経営の枠組みについて変化はありません。なお、今後の両社の持株比率に関する方針については、当社がお答えする立場にございません。

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 以上が回答です。
 好感が持てるコメントですね。以上のコメントを頂く際に、IRの高橋様に大変お世話になっております。長岡常務のコメントも、水準の高いものですので、そのまま掲載させていただきます。常務、ご了承ください。この数年のユ ニシスの変化は見事でした。しかし、まだ道半ば。益々のご発展を期待しています。 株の買い場は、秋口以降になるでしょうか。


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