携帯電話関連は終わったか
 
−大原部長−
 2000/07/31(月)発行分

 市場のコンセンサスというものは、絶えず変化しています。同じものを違った方向から眺めると違ったものに見えてしまう。真実は多数。しかし、本質はひとつ。ひとつの本質をよりどころにできるかどうかが、勝負の分かれ目でし ょう。

 これまで、そして今も、好調な受注を謳歌している電子部品各社の株価が冴えません。28日ザラ場現在、例えば、電子部品の中核銘柄、村田は3月高値25000円から半値水準の13000円近辺まで下落しています。

 まず、真実をチェックしましょう。
1)今後3年間を見た場合、携帯電話は数量が増えていくのか減っていくのか?
2)携帯電話はさらに多機能化(インターネット、ブルーツースなど)していくのか?

 仮に、上記の質問への答えがYESであるなら、携帯電話へ搭載される部品数は1)(数量)×2)(価格)分だけ増えていくはずです。インターネット、カラーの画面ということになると半導体はベースバンド(DSP+MPU、CBIC,EEPROM ,FLASH,SRAM,ディスクリート、LCDドライバー、CMOSセンサー)とRFICで一台当 たり6000円程度のものが、デジタル化、カラー化で10000円を超えてくるはずです。もちろん、RF部分は現在の1000円程度のものが、1700円程度になるはずですし、それに加えてBluetooth(RF)関連で1000円前後の追加搭載となります。
  液晶は一台当たり1000円のモノクロがカラーで2000〜3000円のものに置き換わります。電池はますます大容量になり、1000円程度から1500円程度のものが主流になるはずです。個別に見ると、MPU,DSP、Flashが大幅に増加する。LCD、 電池、ドライバーICは大幅にハイスペック品になる。一方で、コネクター(200円)、コンデンサー(280円)、水晶(200円)、LED(50円)、アンテナ(300円)などは、求められる性能向上が劇的でないこともあり、搭載金額は一定のままです。

真実1:
 いままで、部品不足で出荷できなかったセットの出荷が需給緩和を受けて出荷が可能になる。

真実2:
セットあたりの部品搭載金額は大幅に上昇する。

本質1:
 部品市場は今後は大幅拡大します。一方、松下通などのセットメーカーの利益率は改善できないままでしょう。供給過剰懸念というものは、確かにひとつの真実です。しかし、各市場におけるプレイヤーの数は限られています。市場がめちゃめちゃになるときというのは、多すぎる参加者がいる場合です。部品の場合は、設備資産効率が高いため、過度の投資が収益を圧迫する度合いが小さいのです。鉄や化学のような需給一般論は通じない。部品会社は、高い水準の生産性(リードタイムは素材の数分の1)と効率(設備回転率は素材の数倍)を兼ね備えている。結果として、半導体に劣らない限界利益率(60%以上)があり、事業としての魅力度は高い。

本質2:
 データを無線で送るという機能に注目した場合、それは携帯だけに留まらない機能です。将来は道路や信号機から家庭電力計まで無線データを送受信するようになるでしょう。

 村田を安く買うことは私の念願です。昨年、あまりにも早く買いすぎて、あまりにも早く売りすぎた痛恨の銘柄でした。実体のある、競争力のある企業が 安い水準にあれば、外人は買ってきます。私たち年金は、短期の需給などを気にするような、せこい投資ではないからです。相場が下がるときも上がるとき もインデックスにアウトパフォームするためには、市場のコンセンサスにいち いち振り回されてはなりません。

 コンセンサスは客観的な本質であるべきです。部品需要が緩和したからセッ トメーカーが今後は有利というような、上っ面の判断ではないのです。

 それにしても、ひどいマーケットだなあ。けっこうやられた。個人的にも。


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