村田の1万2000円台は買いか
 
−大原部長−
 2000/08/17(木)発行分

 大原です。村田製作所(6981)についてお問い合わせがありました。

 上方修正でEPS400円程度でしょうから、PERで30倍そこそこです。ようやく普通の株になりました。
 懸念は、(1)ノキアの決算がよくないなど、携帯セットメーカーの採算が悪化していること、(2)現在の高い受注の伸び率が今後必ず鈍化すること、 そして、(3)各社の能力増強によるコンデンサーの供給過多です。

 また、有力アナリストの評価も高く、誰もが「村田はよい会社」であると認 めている点も、株としての面白みに欠けますね。
 しかし、長期的に見れば、村田の優位性は揺らぎません。彼らの開発の方向性が時代の要求と「どんぴしゃり」だからです。

 わたしがよくやるのは、これから消滅していく恐れがある機能に関わっている会社を避けて、これから求められる機能に関わっていく会社を取り上げるこ とです。
 具体的にこれから消滅する危険性がある機能とは、携帯電話部材では、IF 部品で、具体的にはSAWフィルタやVCOなどです。これらは、ダイレクト コンバージョンが導入されると不要になります(受信された電波は2度ほど周波数を落としてからベースバンドに入ります。IF処理といいます。ダイレク トコンバージョンはIF処理をしない)。そして、これから求められる機能とは、アンテナ、スイッチ、帯域フィルタの小型混載回路モジュール、つまり、 RF部の小型化、低背化、低コスト化です。
 そして、このRF小型化に大きく貢献できる技術で村田は他社をリードして います。

 RF部はアンテナ、アンテナスイッチ、デュプレクサ、ローノイズアンプ、 パワーアンプ、VCO、PGA、AD変換器などで構成されますが、村田はこのうち、デュプレクサでは圧倒的な地位です。
 また、村田はセラミック系多層基板を提供し、その基板上にこれらの部品を実装しようとしています。TDKは有機系の基板で同様のことを考えています。多層基板には受動部品を作りこんでしまう予定です。ですから、インダクタと かコンデンサは基本的に実装されないで、層間に電極形成されてしまう。
 誘電体基板と磁性体基板を用意して、低誘電膜や電極、磁石などを配置しながら積層すると、LやCが出来て、結果的にフィルタなんかも作りこめるわけです。

 村田にとっては、基板を提供することで、半ばセットメーカーになるわけです。PAやミキサーなどの半導体を購入して、基板に実装して出荷すれば、それがRFチップセットになるからです。もちろん、VCOなども実装できます。

 すこし気になるのは、村田が配線材料として銅を選んだことです。もちろん銅の特性は申し分ないのですが、特殊陶業やTDKは銀を選んでいます。銀は大気雰囲気で扱えるため、プロセスが安くなります。特性の悪さを回路技術で逃げられるようなことをいう方もいますので、コスト上の対応が必要になるか もしれません。

 村田のフィルタはIF部でも使われているため、IF処理が不要になった場合のリスクは残ります。また、SAWフィルタがその量産性を武器に誘電体フ ィルタを脅かすことも考えられます。

 それでも、村田のデュプレクサは多くの特許に守られており、価格支配力があります。それは誘電体(セラミック)は、その形状加工が鍵であるためです。 形状、仕組みは簡単ですが、特許で押さえてあれば、シンプルな形状であるほ ど優位です。

 村田の特許は、エッチング工程をやトリミング工程を省いたりできる、形状のアイデアが非常にユニークです。有機系ではとても制御できない押し出しなどの成形技術の賜物です。特に、設計は非常に自由度のある特許を押さえてい ます。

 有機を選んだTDKは、村田の特許の壁に泣いたと、私は見ています(TDKファンの方へ:TDKはTMRがあるじゃないか!)

 しかし、セットメーカーの不振、供給過多不安、予期される受注の鈍化など、 積極的な環境ではありません。私は、4Qに仮にマイナスの数字が出れば、1万円を切るリスクもあると思っています。1年間辛抱できるのであれば、来期 EPS500円を前提に買いだと思います。


あくまで投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり内容を保証したわけではありません。
投資に当たっては投資家自らの判断でお願いします。
億の近道 on the Web
質問・要望事項はこちらまでメールを。

当ページの無断転載・引用を禁じます

戻る