オプションと相場
 
−生涯遊人−
 2000/08/24(木)発行分

 相場の動きを考えると、三つの動きがあると思う。それは、上昇相場、下降相場、動かない相場である。
 個人投資家の場合、上昇相場をとりにいく人が大半であろう。というのも個人投資家の場合、株ならば現物株の買い、為替ならば、外貨預金ぐらいしかメ ジャーな投資手段がないからだ。

 最近は、オプション取引も認知されてきたので、プットオプションを購入することにより、下げ相場で利益を出すことも可能になってきたが、タイミング良く大相場にのれないと難しい(本マガジンのオプション戦略はとても参考に なります)。
 統計的には、短期的な場合、動かない相場というのが一番頻度が高い。最近の為替相場を見ても、107−110.00円でほとんど動いてない。1年間通しても102−111.00のレンジの中にいる。

 外貨預金の場合は、たとえ相場が動かなくても、年率6%程の金利を受け取れるので、キャピタルゲインをおまけと考えれば、まあ悪い投資ではないのかもしれないが、株式の場合は、僅かばかりの配当を貰ってもあまり嬉しくない。

 最近は、相場があまり動かないことを前提にした商品が増えてきた。
 外貨預金では、ノックアウト条件付きの外貨預金、株式ではEB(他社株転換条項付円建債権)である。この商品は、Derivativeの一種であり、 プロユースのものを個人投資家向けにアレンジしたものである。
 筆者が、相場が動かないことを前提にした商品と述べたのは、この商品はその場合一番大きなメリットを受けることができ、相場が上下に大きく動いた場 合には、あまりメリットがなく、へたをすれば大きな損失を被るためである。
 
それは、この二つの商品が、プットオプションを売ったオプション料を金利 の上乗せ分に使っているためである。

 そもそもオプションを売るという行為は、相場が権利行使価格まで動かないということに賭けるわけで、オプションの売り手は、オプション料の見返りと して無限大のリスクを引き受けるという、かなりリスクが高い取引きである。
 そのため通常、オプションの売り手は、さまざまなHedge手段を用いて損失の回避に努めるが、個人投資家にはその手段がない。
 そのために、もし相場が大きく下落した場合、購入者は、現状の相場より高い価格で、外貨や現物株を引き取らされる羽目におちいる(これは権利行使価格より下に相場が下落した場合)。

 だいたい権利行使価格は、外貨預金の場合0円から7−8円(権利行使価格が近いほどオプション料も高いため、当然高い金利を受け取れる)、EBの場合7・8%から20%下の価格が多いようだ。

 さて外貨預金の満期日及びEBの償還日になり損益はどうなるだろうか。

権利行使価格より相場が上昇
権利行使価格より相場が下落
外貨預金
円で金利と元本を受け取る
外貨で金利と元本を受け取る
EB
元本+年率7−10%の金利受け取り
株券+金利分受け取り

 当然、権利行使価格より相場が下落していれば、損失を被る。

 相場でリスクをとる場合には、それに見合うリターンを考えなければならない。年率7−10%の金利(実際これらの商品の満期は1−3月が多い為、受け取る金利は1−2%)をとりにいくために、20−30%下落リスクをとるのは、見合わないものだ。
 相場はどちらに動くかは分からないものだが、現物株を買っている限りにおいては、50%下落するかもしれないが2倍3倍になることもあるわけだから、 リスクとリターンはマッチしているわけだ。

 相場が上昇した場合はどうであろうか。たしかに通常より高い金利は受け取れるかもしれないが、もしその株式が2倍3倍になっている場合でも、数%の金利しか受け取れない。同じ金額を現物株に投資した時に比べ、機会利益を放棄するわけだ。

 ここまで読んだ読者は、オプションの売り及びそれを組み入れた商品というのは、労多くして益が少ないものであることが理解いただけたであろう。
 もちろん、Hedge手段のあるプロの場合、オプションの売りにより利益を上げることは可能であるが、Hedge手段を持たない個人の場合は、運次第ということになりかねない。

 オプションの売り及び類似商品に投資して良い場合は、次の二つのCaseのみである。
1.相場が膠着して、暫く動かない可能性が高い場合
2.権利行使価格で何が起ころうと絶対に株なり外貨なり購入してもよいという覚悟がある場合 (これはターゲットBuyingという手法で、オプション料をせしめたうえに現物を購入する手法)


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