ニッカトーについて
 
−大原部長−
 2000/09/12(火)発行分

 なぜ、受動部品の粉原料でそんなにシェアが高いのかという点があいまいになっていると、ある読者からお叱りのメールを頂きました。
 読者からのご指摘は以下の通りです。「一番知りたい点は,なぜニッカトーが70%のシェアを持っているのかという点です。1.技術力が高く他社が参入できない。(参入障壁が高い)2.絶対的な製造特許を有している。3.付加価値があまり高くない設備投下型産業であるから他社が参入しない。4.ニッチ産業であったため既存の企業が少ない。(これから参入が見られる)5.村田や京セラの寡占企業が一極取引をしているから結果的にそうなった。6.その他業界の特殊事情がある。その点をはっきりさせてください。」

 こういう読者からのご指摘が、一番、有難いのです。シェアの高い理由として、これら6つの可能性を挙げられるのは、相当なレベルの方です。億近は、株式投資情報マガジンとして、仲間と協力しながら、良質な情報を維持するように努めています。良質の情報提供は、質の高い読者層があってこそ成り立ちます。読者なら、質の高い質問をしなければならないということではありません。どんな質問でもよいのです。質問をするということに意味があります。議論を重ねていく中で、新しいアイデアが生まれます。私には、新しいアイデアが必要です。投資家は、絶えず新しいアイデアを求めます。最良の方法は、読者とのディスカッションです。最近、読者からの質問の中には、難しすぎて答えられないものもあります。それはそれで喜ばしいことです。あるテーマに関して、物事を着実に掘り下げていくプロセスが共有できるというのは、ネット時代ならではですね。

 話がそれてしまいました。さて、質問ですが、順に考えてみましょう。

 まず、積層コンデンサ材料として有名な、チタン酸バリウムですが、この有力メーカは皆さんがお聞きになっていらっしゃると思いますが、堺化学と日本化学工業です。
 このニッカトーは、ジルコニア系のセラミック材ということで、高容量向けのセラコン材料ではありません。チタン酸バリウムは10μF以上のコンデンサに使用されます。粒径でいうとジルコニアが0.2−0.7μであるのに、チタン酸バリウムは、0.006−0.135ミクロンと、大きさが全然違います。細かいほど、層状では表面積が大きくなるため、小さな粒子にできるチタン酸バリウムが脚光を浴びているのです。ですから、チタン酸バリウムの堺化学は時価総額が小さいにも関わらず、機関投資家に人気がある銘柄です。

 一方、ニッカトーのジルコニアは、地味です。ジルコニア系の材料で高いシェアということでしょうが、堺化学などが、コンデンサの誘電原料を供給しているのに、ニッカトーは、高純度ジルコニア粉末を供給している。これは、セラミックに混ぜるためのものであり、混合材です。セラミックは、いろいろな特性の材料を調合してから、焼き固めますが、ニッカトーが強いのは、その調合材のひとつです。誘電特性というよりは、高温特性が非常に優れたもので、高温になってしまう電池の電解質に使われたりします。白い包丁を見たことがあるでしょうか。あれが酸化ジルコニウムです。

 用途が非常に広く、その割に売上が小さいので、特定分野のシェアを調べるのは、非常な手間がかかり、その成果は限られるため、ご勘弁ください。

 ニッカトーについて、次に、絶対的な特許があるのかですが、よい特許はあるようです。磨耗性に優れたジルコニア粒などの製造方法は、それなりの説得力のある特許かと思います。

 新規参入について。新規にあえて参入する意味がありません。私は、単品で売上200億円以下の市場をニッチ市場と定義しております。大企業が参入する意味がある金額が、多分、200億円程度ではないか、と思うからです。

 顧客の内製化の脅威について。これもないでしょう。ニッカトー従業員250名。平均賃金30万円。村田平均給料40万円。内製化の意味は、大きくコストダウンができる場合やノウハウ面での理由がある場合に限ります。ジルコニアなどの混合材料のノウハウは高純度化・小径化であり、村田のノウハウは、調合以降のプロセスです。特に、LTCCのところで述べたような回路のノウハウです。電子部品会社がこれを自前でやれば、かえってコストアップでしょう。

 読者からの質問のうち、これでいくつかは答えられたでしょうか。(大原) 


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