イチオシです。
先週、JFの営業のK氏にアポをお願いし、太陽インキの吉野専務とお会いしました。その日は、大雨。両津アナリストとランチをした直後でした。
ロシアのプーチンが東京に来ていたため、全国から右翼が押し寄せ、太陽訪問のため、有楽町線までタクシーで行く予定が、右翼に邪魔され、機動隊が道路封鎖。「北方領土返せ」はいいけど、先に進めなくなりました。雨の中、路上でタクシーを降り、右翼車の前を横切り、歩道まで走ったところ、携帯電話を路上に落としてしまった(らしい。)結局、路上で私の携帯電話は、右翼の車に踏み潰されたようです。もともと右翼嫌いでしたが、今回は許せない。プーチン発言も右翼も。その後、携帯資金を捻出するために、ブリジストンをやむなく1096円で購入してしまいました。BSは、バリュー株なので、わが成長株投資家は個人ベースで買えるのです。私が、村田を買ったら、倫理上、問題ですけどね。自慢してどうするの!
JFのK氏も最近、省エネ関連特許に凝っております。私の周りは、問題意識の高い方々が多く、私は運用者として、非常に恵まれております。
太陽インキに行くのは、1年ぶりでしょうか。吉野専務とは、3年程度の付き合いですが、本当に、私のバカな質問に丁寧に付き合って頂いております。
今回のコラムで読者に伝えたいこと:
(1) プリント基板材の理解。ビルドアップ基板の材料の理解。
(2) なぜ、インピーダンス整合が問題となっているのか。
(3) なぜ、基板の配線距離を短くする必要があるのか。
高度な読者のための質問:
(1) 低Z対応のため基板の絶縁特性を改善するため、どのように架橋密度を上げるのか? アクリル酸が有効な理由。フェノール性水産基が有害な理由。
(2) 基板の軟化温度を上げるために有効な手段とはなにか。
こうした「高度な」質問に答えられえる方は、億近コンサルタントとして、採用したいと思います(定員2名)。また、将来のアナリスト希望者、ファンドマネジャー希望者の方は、大原まで、答えを記入のうえ、どしどしご応募ください。(編集者注:既に締め切り)
さて、ビクターのビルドアップ基板が拡大しております。ビクターの事業部長が変わったため、戦略も変わったためです。今までの自力営業主義から、技術指導方式に転換。メイコーなどの大手基板メーカーがビクター方式を採用し始めたからです。また、台湾企業などへも積極的に技術指導しております。その甲斐あって、モトローラについで、エリクソンへの採用が決まりました。太陽インキは、ビクターを支える熱硬化型アルカリ現像型層間絶縁膜とソルダーレジストを供給しています。層間絶縁膜は、塗布型です。ソルダーレジストの2倍の膜厚(それゆえ高いアスペクト比が求められ、調合材が多くなり、工程がより多くなり、価格がまだ高い)が必要です。そして、ソルダーレジストが表裏と2回の塗布なのに対して、層間絶縁膜は、4回の塗布が必要です。太陽インキといえば、ソルダーレジストが有名ですが、層間絶縁膜への展開力が今後注目されています。売上は、前期2億、今期4億円。モトローラに加え、三星、エリクソンが加わったことで、来期は、10億円に伸びるでしょう。見通しは明るい。
まず、現在、配線板では、RCC(Cu付きレジン)が主流です。しかし、RCCは、小径のビアが出来ない。なぜなら、レーザーで穴あけする際、RCCは、銅箔を突き破って、絶縁膜を熱硬化しなければならない。銅箔をレーザーでぶち抜く以上、精度は上がりません。銅箔をぶち抜くために、エッチングで表面をかなり削っているため、もっとも高価な銅を無駄に使っており、銅メッキをつかうビクター方式(以下VIL)のほうが、材料コストが何割も安い。材料コストは、投資の基本です。低い材料コストが高い限界利益率の源です。
VILは、RCCに対して有利であるばかりか、ALIVHにも有利です。それは、より小径化のためには、ALIVHで用いているアラミド不繊布がレーザービア工程で邪魔になるからです。アラミドはインピーダンス特性にも悪影響を及ぼすことから、層間膜としては、再検討の余地が大きい。
太陽インキの層間絶縁材とソルダーレジストは、CSPなどへの展開力があり、基板だけではなく、パッケージ材として、今後も期待できます。
そもそも、なぜ、CSPなのか。ビルドアップなのか。それは、ICの微細化に伴う信号の高速化、微弱化、低耐圧化に伴う問題があるからです。ICが5Vのときは、±5Vを信号が行き来するわけです。それが、2.5V以上はだめ、それ以上はICが壊れるということですと、信号はわずか±2.5Vを行き来する。当然、速さは2倍になりますね。CPUが早すぎると、必要な情報が来る前に、先に進もうとして、間違えたりするわけです(スキュー)。
配線が長くなると、スキューの問題を始め、オーバーシュート、アンダーシュートなどの誤作動原因となる問題が出てきます。クロストーク、ノイズ、反射、問題だらけです。
そもそも、ICはインピーダンスが基板より低いため、両者間で整合を取る必要があります。そのため、ICからの出力信号のすぐそばにダンピング抵抗などを配置し、両者のインピーダンスを整合しています。すこしでもICから抵抗を遠ざけると、不整合となり誤作動が生じます。コンデンサも同様です。IC電源入力端子とできるだけ近くに配置する必要がります。
CSPとビルドアップの組み合わせで配線長は、どうでしょうか、1/3程度に短縮できると思います。 例えば、ビルドアップ表基板にCSPタイプのIC, 裏基板に抵抗を配置すれば、配線は最短距離となります。これが、リード付きのICで抵抗はICの横に置くと、リードの距離の分と横に配線を回す分とダブルで配線が長くなってしまう。距離を稼ぐことが高速化への対応策です。このように、高速化と高密度化は必然の関係です。
それに加えて、PDPの事業が面白いのです。PDPは感光性ガラスペーストを隔壁材などに使用します。PDP後面パネルにおける隔壁材、そして、前面パネルにおけるブラックマトリックス、誘電体層など、これらの材料が供給できそうです。
太陽インキの経営者が偉いなあ、と思うのは、ディスプレイ材への展開が早かったことです。PDPは、基板が小さくなることがない。小型化が宿命の携帯機器向けプリント基板は面積が縮小していきます。ELやPDPは大きくなることはあっても小さくなることがありません。PDPの面積は携帯の100倍。そして、厚みが違う。プリント基板の層間絶縁層は2μm程度です。PDPの隔壁は200μm。厚さは100倍。使用される材料の量としては、100倍の100倍で1万倍です。たとえ、PDPが数量ベースで携帯電話の1%の市場しかなくても、100倍大きな市場なんです。すごいぞ!太陽インキ!
しかも、PDPは、本気で材料メーカーが参入していません。だって、ものになるかわからない市場だったから。ディスプレへの取り組みに強いなんて、証券会社は誰一人言わないけれど。それに、私は、吉野さんは、とても、よい経営者だと思います。
最後に、読者の皆さん、化学系の会社を探すコツは、特許です。なぜでしょうか。材料は、分析すれば、なにがいくら入っているかわかってしまうからです。化学会社に企業秘密や製造秘密の部分で守りきれる保証はありません。だから、公開覚悟で特許をとりに行くのです。
この会社を支えるのは、エポキシ樹脂をアルカリ現像できることを世に示した功績です(特開平1-141904)。従来、アルカリ水溶液に溶けないエポキシを感光性プレポリマーで包み込み、それを可能にした発見です。
さて、一口に層間絶縁膜といいますが、種類は多く、ひとつひとつ紹介することはできませんが、その複雑な製造工程を紹介して、このコラムを終わりにしたいと思います。太陽インキのノウハウは、きわめて知的なもので、それは調合のノウハウです。あと少しです。最後まで、完走してください。
層間絶縁層の製造工程。「温度計、撹拌器、滴下ロート、及び還流冷却器を備えたフラスコに、メチルイソブチルケトン362.7部とアゾビスイソブチロニトリル11.5部を入れ、75℃に加熱した。そこに、アクリル酸72.0部、メタクリル酸メチル215.7部の混合溶液を3時間かけて滴下した。その後、さらに4時間撹拌し、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液を常温まで冷却後、ビニルイソブチルエーテル150部を加え、50℃で50時間反応させることにより、上記樹脂のカルボキシル基の95%にビニルイソブチルエーテルが付加したことを酸価の測定により確認した。この反応溶液中に、アセチルオキシエチルメタクリレート255.1部を加え、残存している未反応のイソブチルビニルエーテル及び溶剤のメチルイソブチルケトンを分留装置により除去し、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液をA−1ワニスと称す。 温度計、撹拌器、滴下ロート、及び還流冷却器を備えたフラスコにモノ(2−アクリロイルオキシエチル)ヘキサヒドロフタル酸270部と重合禁止剤0.05部を入れ、ビニルイソブチルエーテル200部を加え、50℃で50時間反応させることにより、上記化合物のカルボキシル基の99.7%にビニルイソブチルエーテルが付加したことを酸価の測定により確認した。この溶液を常温まで冷却後、反応物中に残存している未反応のビニルイソブチルエーテルを分留装置により除去し、目的の化合物を得た。この化合物をB−1化合物と称す。 A−1ワニス及びB−1化合物を用いた以下の配合成分を、3本ロールミルにて練肉し、ポジ型の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を得た。」
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