PDP関連の材料メーカー(パート2)
 
−大原部長−
 2000/09/25(月)発行分

  先日、PDP向け材料シリーズとして、隔壁から始めました。「億の近道」が他のメルマガと違う点は、読者との対話だと思います。億近を毎日購読して頂いている1万人の読者(個人投資家)の中には、それぞれの分野で最先端を担うエンジニアの方々もいらっしゃるし、一流の経営コンサルタントもいらっしゃることが、読者からの質問に受け答えしていくなかで、だんだんわかってきたからです。
 それならば、私の方からいろいろ問題を提起していってみてはどうだろうか、と考えました。あらかじめ答えが自分でわかっている問題を書くよりは、同時進行的に興味がある問題をそのまま読者と一緒に考えていく手法がよいと思っております。
 インターネットのキーワードは「オープン」でしょう。ネットでお金を儲けようとすると、どうしてもクローズのシステムになってしまう。課金をした時点で、オープンさが損なわれるからです。参加型、自律型のプラットフォームにしなければ、オープンさを保てない。各分野識者の方々を交えて、個人が個人の資格で、自由な発想で参加できるプラットフォームをつくりたいと考えています。なにより、時代の恩恵を受けるには、大義名分がなければならない。個人投資家の自律を助けるという大義がなければ、億近はプラットフォームにはなれません。
 投資プロセスは、最初のステップである投資のアイデアがすべてです。アイデアを吟味して、関連企業への取材、そして、当該事業の業績予想までを行なうのですが、よいアイデアを選ばないと、取材以降のプロセスがただの時間の無駄になってしまいます。よいアイデアとは、新しい需要を満たす製品や技術の中から、日本が世界をリードできる分野のみに着目することです。
 ですから、日本企業の強さが現れない分野は、最初から切り捨てなければならない。有能なファンドマネージャーは、見ているポイントはたったひとつです。日本が一番強い分野の最新の動向を見ていればよい、それだけです。同様に、経営者を評価する視点もひとつです。若い優秀な社員を、一番強い分野に投入できているか、それだけです。自社の強みだけでなく、日本の強みを理解できているか、極端な話、大学の名前で社員を採用しているのか、卒業論文の内容や本人の問題意識で社員を採用するかの違いです。

 PDPについては、そろそろ関連銘柄を調べないといけないのかな、というタイミングです。PDPは、94年ぐらいから株式市場では騒がれていました。しかし、はっきり言って、全然興味がありませんでした。今でも気持ちの中では、普及しないと思っています。

 理由は、製造コストが高すぎるから。大手製造装置メーカーが、本気を出して開発してないこともあり、プロセスは、定まらず、無駄が多く、歩留まりは上がらない。販売価格より製造コストのほうが高い製品なんて、調べる時間がもったいない。ライバルのプロジェクタ陣営に比して、コストでは太刀打ちできない。

 でも、日本が強みを発揮できる分野であること、隔壁や封し工程の工夫、一定の低消費電力化への目処が立ち、ようやく量産品が出てくる環境が整ってきました。富士通・日立、パイオニアなどは本気です。松下、韓国勢も力を入れるでしょう。関連部材や装置メーカーを調べる意味が少しは出てきました。

 まず、ドライバーメーカーへの取材。富士電機などは「コストダウン要求がきついため、PDPドライバーで売上は増えるが利益は出せない」といっています。ドライバーICをフレク基板に実装する東北フジクラなどは、「ドライバーモジュールは数年で1/3の値段にしなければならない」といっている。PDPのドライバーIC関連はやっぱりだめでしょう、儲からないから。

 そこで、材料関連ですが、前回の隔壁に続き、今回は、電磁波シールドについて。電磁波はとくに低周波の人体への影響が懸念されています。電磁波をシールドするだけならともかく、光線までシールドしてしまうと、画面が映らない。そこで、光の波長より薄い金属膜を全面パネルに貼り付けることになります。
 CRTの場合は、シャドウマスクがある程度電磁波防止の役割を担ってくれます。しかし、PDPでは、しっかりとしたシールドが必要になる。
 メッキで金属膜を形成し、その後、CMPで削る方法や、最初からスパッタリングする方法、導電性のメッシュをコーティングする方法などがあるでしょうか。
 メッシュだと、導電性を付与して繊維部分をなるべく細くしないと透過率が落ちてしまう。スパッタはコストが問題。メッキは均一膜ができないし薄膜は難しい。でも、コスト的には、メッキがよいので、ここでは、メッキを紹介します。

 携帯やノートバソコンなど、透過率が問題にならない分野では、電磁波防止膜として、筐体に銀メッキをして、シールドしています。薄い均一膜さえできれば、メッキが一番。触媒を含んだプライマーを塗布し、その上に無電解メッキをするシングルサイドテクノロジー法が有望なのでしょうか。
 光の波長は、400−700nmなので、メッキで1−2μm程度の膜厚を形成し、CMPで波長以下の400nmまで削るのが好ましい。おっと、ここでも荏原のコラムで紹介したCMPが登場。すこし、わざとらしかったでしょうか。

 話は変わりますが、CMPのコラムを読んだ読者の中に、半導体の露光プロセスに携わる方がいらっしゃいました。その方からは、日頃、CMPの出来の悪さに非常に苦労しているというメールを頂きました。まだまだ技術としては未熟なCMPだけでは平坦にはならない。補完するため、エッチバックなどを合わせて使っているとのこと。CMPのよいところばかりを取り上げてしまった私の姿勢には問題があるとお叱りのメールを頂き、反省した次第です。そういえば、CMPの銅プロセスについては、各社、銅と絶縁層を同時に削るスラリーを開発中とか。できたらすごいですね。

 さて、先日のコラムで、JSRの前面板背面版両方につかわれるドライフィルムとは何か?と質問をさらりと書いておきましたが、読者の一人から、その件に関してメールを頂きました。
 「9/21内でのコラムの問題ですが、情報が非常に少ないので想像の域を脱していないですが、隔壁形成は背面ガラスに形成するので、両面に使われるJSRのドライフィルムは隔壁用ではないのでは。前面・背面両面にありドライフィルムを用いてパターニングする必要のあるもの、一番考えられるのはストライプ電極でしょうね。あと、前面だけでいいような気がしますが、電磁波防止用の金属メッシュをガラス上に形成するために使うとか(荒技やなあ(笑))。」
 本日の電磁波シールドと関連しておりますので、掲載させていただきました。

 そういえば、電磁波については、先日、読者から問い合わせがあったばかりでした。防止策として、ITOフィルムを貼り付けるというのもあると思います。JSRが強いのは、液晶材。液晶材におけるカラーフィルタ着色用レジスト、保護膜(全面板内側)、ITO膜、配光膜、スペーサー(感光性)などに強い。強みを持つところに共通の特徴を見出せたでしょうか。ここからPDPへの展開がどの程度読めるでしょうか。

 なんだか、最近、問いかけばかりで、「切れ」がありませんね。やっぱり、ある程度、断定調子のほうが、読み物としては読後感がよい。投資は最終的には「えいっ、やー」と決断しなければなりません。アイデアの段階ですので、メリハリのないPDPシリーズになっています。やっぱ、だめかな、PDPは。

 調べた時間が無駄になるほど、意味のないことはありません。調査をやめる決断も大切です。JSRもなあ、ナフサ市況の高騰、液晶材もこれからは、液晶そのものの市場が崩れているし…。調べる気が失せてくる。

 さて、今週は、日本無線のR/Dの責任者にお会いします。そのための準備をしなければ。WB−CDMAの基地局がまだごたごたしているそうですね。超伝導かセラミックか。日本無線は基地局PAです。テレコムもWBを6ヶ月前倒ししたので、状況はこれから改善するはず。「ワイドバンド」なので、フィルタの負担は数の上では減るかもしれません。PAユニットへの影響はないのでしょうか。取材の準備をしなくちゃ。それでは。


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