ナノテク
 
−両津勘吉−
 2000/10/02(月)発行分

 最近ナノテクノロジーに関する紙面が目に付く。本日(10月2日)の日経新聞27面に東京大学の月尾教授の説明が掲載されているが、ナノテクを御存知でない方はこれを読まれれば概略が理解できるであろう。

 さて、その紙面一番に出てくる物質材料研究機構とは、現在の科学技術庁金属材料技術研究所のことであり、平成13年度より改名されるようだ。この機構の研究内容を見ていると非常にワクワクしてくる。

【ジョセフソン素子】
 超伝導現象の一つであるジョセフソン効果を用いた素子。電子機器などの応用すると高速処理や低消費電力などに優れた性能を発揮するらしく、世界中の科学者が研究を行なっている。しかし高度の薄膜化技術と微細化技術が必要であったが、従来のプロセスと全く違うアプローチで製作することが出来た。

 高温超伝導ジョセフソン素子と呼ばれる素子の製作方法は、素子に用いられる高温超伝導物質にビスマス系のヒゲ状結晶を利用し、主なサイズは長さ10mm、幅が10−40ミクロン、厚み1−4ミクロン。特徴は帯状の細長い形で、一度にたくさんの及び良質な結晶が得られること。驚くことに電気炉一つで製作出来ること。
 つまりジョセフソン効果のもつ優れた特性を理解しながらも、その製造方法に問題があったのだが、今回科学技術庁では電気炉1つで製作することに成功したのだ。

 波及効果としてコンピュータに応用すれば現在の100倍程度の動作能力、また固有ジョセフソン素子として利用すればテラヘルツ帯という超高周波素子が出来るというから驚きだ。こうした研究が私たちの生活をより便利なものにしていくのであろう(便利になるものの人間は怠慢な面をもっており、逆に大きなデメリットも発生するであろう)。

 そして応用論文も掲載されており、以下一部抜粋します。

【角砂糖サイズに1テラビットの記憶可能なストレージ】
 ニオブ酸リチウム単結晶で紫外線照射によって任意に初期化が可能であり、従来の熱処理が不要。二色ホログラム法での記録により、再生劣化のない不発揮記録が可能になった。
 ホログラヒックメモリとはレーザ光を使ってホログラム記録材料に三次元的に情報を記録する多重記録する光学メモリで、データは光学干渉パターンとして記録。2次元の画像を単位として情報の記録再生を行なうことで、転送速度の高速化が期待できるストレージである。
 原理的には1センチ角の結晶に1テラ(10の12乗)ビットの情報記録、1秒間に1ギガ(10の9乗)ビット以上の高速転送が可能。大容量・高速が同時に可能なメモリー。しかしまだ研究段階であり、市販できるレベルに到達していない。全ての条件を満足する材料が発見できないという。
 この研究は科学技術庁とパイオニアの共同です。

 話は変わりますが、成田空港で麻薬を発見する際、ワンちゃん(犬)が活躍していることは広く知られておりますが、理論的に動物以外のもので応用出来るのです。
 億近の読者にはいろいろな産業で活躍するエンジニアの方がいらっしゃいますが、過去50年以上にわたって産業界に貢献してきた工学の技術があります。その応用というより基礎研究が上述の麻薬発見に利用できます。コンピュータの発達、半導体、食品、医薬、バイオなど様々な所に用いられている技術、それは原子力です。

 かつて原子核は分裂しないという考えが支配的な頃、ドイツの科学者が原子核が分裂することを偶然発見してしまいました。また、膨大なエネルギーを発生させることもです。化石燃料が主体なときですから、それは正に大変なことです。この現象がヒトラーの耳に伝わったら、今ごろ世界はドイツに支配されていたかもしれません。

 その科学者は米国に亡命?(私は教授からそう教わりました)し、原子核分裂の研究を続けたのです。しかしそれまでの工学の世界で、0の桁数が非常に多いのは光学で、10の10乗もしくは20乗位でしょう。しかし原子力の世界ではそんなもんでは足りません。40乗やら50乗の世界ですから、それまでの計算尺(当時は計算機として、手で回転させる機械を用いていた)で何十人、何百人動員しても追いつきません。そこでコンピュータが登場してきました。
 また半導体製造工場では、放射性同位元素を大気に拡散させないために使われてきたHEPAフィルターがクリーンルームに応用、医薬の世界ではγ(ガンマ)線照射による殺菌が当たり前になりました。
 つくばのアイソトープ(放射性同位元素)漏れなど、今まで原子力の問題は数多く出てきましたが、私たちの生活を豊かにしたのも原子力のお陰です。

 これからナノオーダーの技術が続々と出てくると思われますが、数学は当然として化学・物理の基礎勉強をしっかりやらないと米国に水をあけられしまうかも?
 上述の原子力の歴史は有名な朝永先生の下で勉学に励み、米国イリノイ大学に進み日本人で初めて原子炉主任者の資格を取得された方の話です。

 話を元に戻しますが、麻薬に放射線を照射すると独特の光を発生するのです。このように放射線の可能性はまだこれからであり、ナノオーダーの時代でもきっと必要とされる技術でしょう。私たち証券界にいる者にとっても、益々企業のもつ技術を評価していかなければならない。しかもナノオーダーの技術を!
 ニュートン力学しか勉学されていない方、難しいけど量子力学にチャレンジされてみては如何かな?


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