EL製造における問題点 その1
 
−大原部長−
 2000/10/25(水)発行分

−−−−封止工程問題点−−−−
 金属缶による封止は非常に煩雑で、EL素子作成後、窒素雰囲気下で乾燥剤付き金属缶をUV硬化性樹脂で接着、光照射にて接着する。つまり、素子を真空蒸着した後、大気圧にまで戻す必要がある。また、接着剤からの水の進入と言う問題がつきまとう。

−−−−解決の方向性−−−−
 出来れば金属缶を張り付けるのではなく、LSIの封止などのようにパッシベーション膜をオバーコートするだけにしたい。コスト的に考えて無機膜はきつい(特に大画面の場合)ので樹脂でやりたい。ただし、溶媒を用いて製膜するのは避けたい(溶媒がEL層に悪さする)、またEL素子作成後連続的に真空中で封止したい。
 ドライプロセスで樹脂を製膜したい。しかし、今のところ以下の2つしかない。
1)パリレン:完全な常温ドライプロセス。研究レベルでELの封止が検討されている(名大・水谷教授)。ELの寿命が延びたとの報告有り。
2)F化ポリイミド、ポリ尿素:日本真空技術とNTTが共同開発、当初はLSI層間絶縁膜向け。モノマーを蒸着させた後加熱して重合。基板を加熱する必要があるのがディメリット。
 このような封止技術はEL素子のコストダウンを考える上で、さらにプラスチック化したときには必要な技術。また、簡便な封止を行いたいというニーズはCCD製造でも同様にある。

−−−−封止工程における今後の有力製造装置メーカ−−−−
 日本真空技術。
  10/18の化学工業日報記事より要約「有機EL製造装置事業を大幅強化」
『日本真空技術は有機EL製造装置事業を大幅強化する。今夏には技術、研究の選任組織を充実させているが、新量産用装置「ニューゼルダ」や新蒸発源・封止装置の技術開発を推進する。2000年には売上高300億円ー500億円規模が見込めるため、来期中にこの規模に対応する生産体制を構築すると共に、技術者を倍増する計画。ゼルダは多室チャンバーと数台の搬送ロボットで構成される。しかし、プロセスが変わると自由自在に対応できない。そこで、これをモディファイしてブロックごとにまとめ、真空チャンバーや窒素パージチャンバーで結合したニューゼルダを開発中で、来夏出荷の予定。装置技術では、蒸発源・封止装置の2点に力を入れている。有機物を蒸着で付けるが有機物特有の難しさがあり、温度の上限と下限の管理や、共重合のように2種類の材料を共蒸着させ、しかも量産に向いた装置を目指している。』

−−−−億近による化学工業日報記事の解説−−−−
 多分、ポリイミドやポリ尿素のモノマーを真空蒸着し基板を加熱することで重合させている。この技術は以下の大きなメリット。
1.従来のEL封止である金属缶に比べて軽量。また、プラスチック基板のフレキシブル性(曲げられる)に大きなメリット。
2.EL素子を真空中で作成後、大気中に暴露することなく連続的に真空封止が出来る。大敵である水分の混入を極限までにカットできる

−−−−しかし、劇的な逆転劇がまっているかもしれない!−−−−
 水に弱いEL。だから塗布ではなく、蒸着でいくしかない。一方で、その常識に挑む集団がいた。エプソン&日本ガイシである。
 有機である以上、塗布でできるはず。その意味するところは、ELの工程革命だ。(つづく)

 (written by 億近コンサルタントチーム&大原&両津)

【お願い】
 ヤフーの株式掲示板を見て反省。なぜかわたしたちの東北パイオニア(6827)の記事がヒューネット(8836)の掲示板に無断転用されていました。重ねてお願いしたいのですが、無断転用はくれぐれもご遠慮ください。
 株式投資では、二者択一という極端な選択は危険です。ヒューネットも本格採用前の株価の踊り場ですが、採用が本格化すれば、売上規模が少ないだけに、インパクトは大きいことは、ご想像の通りです。ただ、中期的、長期的な視点に立てば、装置メーカのELへの本腰の入れようからも、ELが本命の確率が非常に高い、と指摘しているのです。
 みなさまにおいても、くれぐれもご自分の投資スタンスに照らし合わせた選択をお願いいたします。

【お知らせ】
 また、今回から私たちのチームに両津さんが中期的に参加していただけることになりました。
 本日も、横浜でのELセミナーに両津さんに参加して頂いております。彼からの報告を待っている最中です。(大原)


あくまで投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり内容を保証したわけではありません。
投資に当たっては投資家自らの判断でお願いします。
億の近道 on the Web
質問・要望事項はこちらまでメールを。

当ページの無断転載・引用を禁じます

戻る