大原さんが本日の原稿で東北パイオニアについて掲載していると思われますが、私も有機ELについて書かせていただきます。
先日のパシフィコ横浜で、東北パイオニア及び三洋の有機ELディスプレイが展示されておりましたが、あれを見た限りでは実用化にはほぼ問題がないという印象でした。株式市場では、有機ELはまだ当分出てこないという認識が多数を占めているのですが、実際あの横浜でのディスプレイを見ていたライバル技術者たちは、違う感想を持っていると思われます。
東北パイオニアのディスプレイをよーく見ると、1つの素子もエラーがない。さすが世界唯一の量産メーカーであると…感じたに違いありません。
私たちに見せるくらいですから、実験室レベルでの試作機はもっと高精細なものが実現できているでしょう。1年前の有機ELは、フルカラー化は無理と思われていましたが、この数ヶ月で劇的に技術レベルがアップし、部材メーカーを含め、色々な企業が本腰を入れてきたのです。
その中で東北パイオニアは、有機ELに資源投入を行い量産化に成功し、間違いなく有機ELにおける世界トップ企業です。東北パイオニアに有機ELで勝てる企業は、現在世界に存在しません。 ではなぜ東北パイオニアが有機ELに成功したのか?
実は、有機EL進出の際、ある製品がヒントになっているのです。 それはスピーカーなのです。
ここで少し寄り道をさせていただきます。有機EL量産の難しいポイントは大まかに2つに絞られます。一つは素子の蒸着、もう一つは封止です。
真空状態で素子を蒸着させたあとパネルを封止しますが、このとき素子に水分が触れると劣化が進んでしまいます。この封止技術が難しいのですが、この部分にスピーカーで培った技術が活かされているのです。驚きものですね!
では蒸着はどうか? ここのところの詳細は知りませんが、東北パイオニアにはFA部があって、かなりの技術を持っている様なのです。頼むと何でも作ってしまうと言われており、日本でもトップレベルかもしれません。
先月のニュースで、有機EL用真空蒸着装置で量産マシンについて日本真空技術の件が掲載されていましたので少し触れておきましょう。
同社は有機EL用に、実験機としてソルシテ(基板は100,110ミリ角)、サテラ(同200ミリ角)を出してきたしたが、量産機としてゼルダを出している。このマシンは既に数台納入しており、今後より高効率のマシンを投入していくという。
有機材料は蒸気圧の高い高温化(150−450度)で分解・変性し結晶化しやすい上、粉体で熱伝導が悪く、昇華蒸発する材料とメルトを起こすという。
非常にややこしいですね。そんでもってフルカラーでは、3色の高精細蒸着パターンを得るためにマスクの位置決め、付着膜の除去、熱膨張、加工精度などが非常に重要らしい。 同社のゼルダでのアライメント制御におけるピクセルの位置合わせは、基板とマスクをCCDカメラで見て制御。蒸着を3回に分けて、位置ずらしは2回。ポイントは高速成膜、成長速度の安定性。そして斜め蒸着。なんでも水晶振動子膜計を使っているそうだ。
フルカラーでの問題は、1)アライメントマークの視認性、解像度、2)基板、マスクの加工度、3)マニュピレータの動作制度、4)マスク、基板のたわみ、だそうです。
蒸着はm基板を静止した状態で、3)は±5μ以下、4)マスク形状の検討が課題だそうです。
他に基板・マスクの蒸着源からの熱、付着有機膜の問題、シャドウ効果など。
【有機材の特長】
粉の状態で熱伝導が悪い
【有機効率】
長いE/S
蒸着レート(タクトタイム)
材料の低利用率
斜め蒸着によるマスクシャドウ効果
ここでタクトタイムは2分、内訳は蒸着時間60秒、搬送60秒、基板と蒸発源を500 n=1.27蒸発源は基板により6種類用意されている。…という。
将来はペンディングガラス、プラスチック、フレキシブルフィルムなども利用可能な様に研究している模様。
話は前後しますが、同社では高分子ポリマーがOKだという。工程は長くなるがレーザーを使うらしい。
最後にダストの問題ですが、取れることは取れるが、それをチャンバー内に置くかどうかを検討中。
これを使ってフルカラーの量産が可能かどうかは、私が技術者でないのでわかりませんが、早くフルカラーの製品を手にしたいものです。
さて有機ELの用途ですが、量産は5ないし5.5インチまでで、現在はパイオニアのカーナビとモトローラの携帯電話だけです。
先達て、モトローラ向けの今期の売上を減額しましたが、東北パイオニア側に原因は全くなく、他の部材をモトローラが入手不可能なためでした。加えてモトローラ自体の役員交代などが原因で、今後は間違いなく有機ELが大きく拡大していきましょう。
モトローラは、この有機EL端末をもうすぐ米国において派手に宣伝開始いたします。有機ELは世界的に名が知れ渡ることになりそうです。
携帯端末といえば、J−PHONEがTFT液晶を12月から搭載すると言われておりますが、これが一つのポイントになりましょう。ここでうまく浸透すれば、TFTが大きく出てくることになりましょう。そして2002年度には「TFT液晶」対「フルカラー有機EL」の戦いが開始されると思われます。
まずパッシブのフルカラーで参戦し、TFT基板の入手が可能なら、その後アクティブフルカラーの登場となりましょう。
2002年以降は間違いなく「反射型TFT液晶」対「有機EL」の戦い。他のディスプレイは蚊帳の外です。株式マーケットで騒がれている??液晶はどうなるのやら?(両津)
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