シチズン電子(6892) ☆☆☆
時価総額 590億円 PER 15倍(会社予想値)
【ポイント】
PDA・携帯向けキーボード用スイッチが面白い。従来のシートスイッチは両面基盤を使用しなければならなかった。面実装個別スイッチなら、片面版で大丈夫で全体のコストは20〜30%下げられる。数社採用内定。ハイテク業界が不振の中、1Q売上は前年比6.3%増とプラス成長。会社予想値でPER15倍。
【アイデアマン】
アイデアで勝負の会社である。強みはディスクリートのパッケージング。特にLEDのパッケージングで最強。携帯電話の拡大の恩恵を過去数年受けてきた。
LEDは数字のボタン部分(が光りますよね、これがLED)、そして、ディスプレイ部分のバックライト(液晶バックライト)にチップLEDが搭載されている(平均LED×3個/バックライト)。
LEDの素子はLEDメーカーから供給を受けている。いわゆる後工程プロセス。
LEDだけではなく、小型マイクや電子ブザー、そして時計のムーブメントを手がけている。元来ムーブメントで実装要素技術を身に付けた会社。
アイデアが豊富だ。2つ、3つの機能をワンパッケージにまとめるセンスと設計力を持つ。
IrDAという赤外線通信では発信機能だけではなく、受信機能を同一の基盤に実装したり、ブザーとマイクをいっしょにしてしまうとか、とにかく部材の省スペース化や低コスト化へ貢献している。
【最近の新製品】
携帯向け着信音スピーカとレシーバをひとつにしたCSR18シリーズ。
携帯スピーカとバイブモータをひとつにまとめたもの、従来の偏芯モータにかえて、回転モータを使っているもの。感心。
そして、スイッチが面白い。従来の松下なんかがやっているシートスイッチは置き換えられるだろう。携帯電話ボタンやPDAのキーボード用途にベリウム銅製の小型ディスクリートスイッチを発表した。これは、一個づつの防水タイプ。ユーザが自己のマウンターで面実装できる。従来のシートスイッチは、ばねを貼り付ける関係上、表面に十分な回路スペースがとれず、基盤は高価な両面版を使用しなければならない。工程の一部はクリーンルームでの作業になっていた。新製品の面実装個別スイッチなら、基盤は安価な片面版で大丈夫なうえに、クリーンルームが不要。当然、歩留まりも向上する。キーボード全体、基盤全体のコストは従来より20〜30%下げられる。すでに数社採用の内定を得ている。今後、PDAもキーボードタイプが増えるため、非常に楽しみな展開となっている。
ただ、限界利益は比較的低く20%前後とわたしは見ている。主材料であるベリウム銅は加工なども一部手がけている。
【液晶LEDバックライトユニット】
国内向けに月産100万個を作る大手メーカとなった。導光板も一部内作している。
高輝度は、白が中心となりつつある。ただし、白は日亜化学が大きく先行しているうえ、特許もほとんど抑えている。日亜からの調達が大きく増えているようだ。
一方、豊田合成の割合は低下している模様。限界利益率は推定で15−20%程度と判断している。
LEDパッケージング、フィルムなどを含めた製造のマージンにくわえて、光学的なシミュレーション力が強さの背景にある。
【健闘】
全体としてハイテク業界が不振の中、売上は前年比6.3%増とプラス成長をキープしている。
利益率の低いユニット製品が中心に伸びているので、利益は計画並のようだ。技術力自体は目に見張るものはない。ただし、市場をアイデアによって創出しようとする意欲がある。
経営は堅実だ。
会社予想値ではPER15倍。
長期的には注目している。ただし、時価総額は600億円しかなく、機関投資家や証券会社からの評価は低い。
それに会社計画はやや強気すぎるだろう。EPS270円台の達成は可能とは見るが、10−20%の減額はありえよう。
株価は妥当な水準。中期的には面白い存在。(大原)
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