西松屋チェーン(大7545) 2002/06/08更新

2002/06/07(金) 

西松屋チェーン(大7545) ☆☆☆☆

 駄洒落商会会長です。
サッカー・ワールド杯がたけなわですね。日本VSベルギー戦、惜しくもドローでしたが、日本のサッカーの水準が着実に向上していることを十二分に認識させてくれました。勿論、国内サポーターの大声援、日本固有の蒸し暑さも大いにあずかってのことでしょうが。
 チケットの売れ残り問題が物議を醸していますが、大会の運営は大過なく進行しているようです。こうした点の手堅さは、日本人が最も得意とするところです。各キャンプ地での交流も、従来の大会にない温かみがあるようです。日本チームの躍進とともに、日韓共催の大会が最後まで盛り上がることを期待したいと思います。

 さて、西松屋チェーンです。星4つの理由は以下の通りです。

1)「少子高齢化」が進行していますが、統計的には、「子供市場拡大」の萌芽がうかがえること。ちなみに、子供服市場は約2兆円のマーケットです。

2)経営陣が、業界におけるポジショニングを十分に把握しながら、経営革新を地道に積重ねていること。実用衣料専門店の「しまむら」に似た経営形態といえます。

 まず、「子供服市場」の問題です。
 東京都の調査によれば、02年1月1日時点の年少人口(零〜14歳)は、前年比で26年ぶりに増加に転じました。東京都の人口が6年連続で過去最高を更新するなど、「都心回帰」が進行するなか、都内に若い夫婦が戻りつつあります。

 東京地区の百貨店の子供服・用品の売上高は、2001年に前年比1.9%減と、5年ぶりにマイナス2%未満の水準まで回復しています。
 また、厚生労働省の2001年人口動態統計によれば、結婚件数は2年連続で増加しており、01年は80万3000組と、前年比5000組、0.6%増加し、24年ぶりに80万組台に回復しました。今後、数年間は出産数が増加傾向をたどることが予想されます。

 子供一人にかける家計の支出も増加傾向にあります。総務省の全国消費実態調査(5年に一度実施)によれば、夫婦と子供がふたりいる世帯では、子供の洋服類への支出は99年で5年前に比べ3.6%増、10年前に比べ8.8%増加しています。

 こうした点を勘案しますと、「子供関連市場」は今後数年を想定すれば、むしろ有望なマーケットということが出来ます。ただ、当然のことながら、小売業各社は子供服関連商品の販売促進に注力しており、各社の競争戦略が注目されることになります。

 ちなみに、「無印良品」を展開する良品計画も子供服を強化しており、02年2月期は、前期比69.3%増(売上高構成比は2.3%)と高い伸びを示しました。

 金曜日のコーナーで、貴重な質問、アドバイスをいただいております「ひよこさん」も、無印の子供服を高く評価しておられます。

 さて、再び西松屋チェーンです。同社は、関西地盤の子供用品の専門店で、ベビー・子供向け衣料と生活雑貨販売を手掛けています。02年2月期業績は、売上高で494億円、前期比25.0%増、経常利益で69億円、同45.3%増と、7期連続増収増益を達成しました。過去最高の51店の新規出店(期末店舗数は226店舗)が増収に寄与。また、採算の良いPB(プライベートブランド)商品比率が、25.7%と前期比9.9ポイント上昇。値入率が34.8%と同0.5ポイント上昇し、売価変更率が6.8%と1.0ポイント低下したことにより、粗利益率が30.2%と同1.1ポイント上昇したことなどが寄与し、大幅増益につながりました。

 同社の強みは、経営陣が「業界におけるポジショニング」を十分把握しながら、出店政策、商品政策を推進していることです。
 出店政策では、商圏人口を10万人と規定し、売場面積200坪、駐車場台数20〜30台の標準化された店舗をドミナント展開しています。競合する「赤ちゃん本舗」「キッズワールド」「日本トイザらス」などが、30〜50万人の「大商圏」に1000坪クラスの大型店舗を展開するのに比し、同社は近隣型購買、いわば「子供服のコンビニ」を指向しています。このため、品揃えの面から競合が回避されることに加え、店舗のコスト競争力でも優位に立つことになります。このあたりの戦略は「しまむら」に非常によく似ています。

 商品政策では、低価格をアピールすることによる客数確保のほか、粗利益率アップを狙い、PB商品の売上構成比を03年2月期35.0%に、中期的には40%程度まで引き上げる計画です。半面、大手商社、問屋など有力ベンダーとのパートナーシップを深め、ベンダーの持つ企画力を商品の魅力アップに活かす意向です。

 このPB商品開発は、小売業にとっては、価格訴求が可能なうえ、好採算であることから、非常に魅力がある半面、在庫リスクを負う、品揃えの幅が狭くなるなどの特徴があります。店頭情報を製造段階まで迅速にフィードバックし、機敏な生産調整を行なうなど、いわば、高度に進化した「仕組み」を持つ小売業でなければ、「両刃の剣」となる可能性を秘めています。事実、ライトオンは、02年2月中間期に60%にまで高めたPB比率を、今秋には30%にまで引き下げ、NB(ナショナルブランド)中心の仕入れに戻します。2月中間期の既存店売上高は、前年同期比15.2%減(客数は同23.4%減)と、マーチャンダイジングの失敗が露呈されたからです。

 商品のファッション性の違いはあるにせよ、西松屋チェーンはまず、標準化された店舗、情報・物流システムなど、地道な「仕組み作り」を推進したうえで、商品政策を高度化しようとしている点を評価したいと思います。

 同社は06年2月売上高1000億円、経常利益100億円、期末店舗数450店を目指す中期経営計画を標榜しています。過去10年間も少子化は進行したものの、同社は順調に収益を伸ばしており、中期経営計画の実現性は高いものと判断しています。(駄洒落)

 

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