電気化学工業(東4061) 2002/02/16更新

2002/02/12(火)

電気化学工業(東4061) ☆☆☆☆

 石油化学業界は今後も厳しい展開が予想される。国内市場は過剰生産設備になっており、2004年に実行される関税低下により海外製品の輸入増加が見込まれ、内外価格差の是正が起りそうなため。

 余剰分は各社とも稼働率維持のために輸出に回していたようだが、価格競争が激しく、上期は苦しい状況に陥っている。連続方のプラントでは効率も良くユーティリテーも低い。しかしこれは数量が出る前提の話であり、ある一定の稼働率を下回ると運転が極端に難しくなる。

 この稼働率が一般に80%といわれ、この稼働率を下回ることのないよう、たとえ市況が弱いとしても80%以下の減産はしないわけである。つまり各社間で激しい価格競争に陥るわけであり、それが現在の状況だ。

 同社はPETボトルのシュリンク材の基となる製品など成長商品を抱えるものの、余剰は外販しており、これが業績の足を引っ張る格好。誘導品は全て自社消費に回すのが理想で、外販しなければ収益的にも安定が図れよう。しかし同社の経営陣は究極の策としてプラント廃棄も視野に入れている。石油化学に関しては前向きな経営判断を待つことにしよう。

 一方、機能製品は特色がある。
 新潟の工場裏に黒姫山があるが、ここは石灰の山であり、ただ同然の原材料が豊富に存在する。昔はカーバイトをやっていたが、窒素を入れて肥料を作るようになった。次に水をかけるとアセチレンガスを発生するため、合成ゴムを手掛けるようになり、煤をアセチレンブラックに使った。もっと大きいカスはセメントのキルンに使える。同社は年間250−270万トン生産するセメントメーカーだが、これは全国シェア3%でしかない。

 しかしながら黒姫山付近の富山、新潟、長野などでは25−30%のシェアを有する。セメントの単価の内、約4割は運賃といわれており、黒姫山付近にしか販売しない戦略が成功し、セメントの単価が下がりコンペティターが収益的にも厳しい状況のなかにおいても、同社は収益を計上している。

 このセメントだが、乾く時に膨張し、ひび割れを起こす。そこで考え出されたのが特殊混和材。JRのトンネル補強に採用された他、第二東名なども視野に入っている。
 この混和材ではデンカがトップシェアを握っており、セメントの単価と比較し、10−20倍の単価かつ利益率も高いのが特徴。

 耐火物はケイ石を燃焼させ微粒子にし半導体封止材料とする。封止材メーカーA、B社などに供給。顧客側の受注は明らかにボトムを形成した格好になっているが、当社の受注、出荷はまだ底場っている状況のようだ。また同社は粉状封止材を手掛けており、BGAなどの使用する液状は手掛けず、先行きはネガティブと想定する。

 医薬事業だが、効率良くヒラルロン酸を作る菌を偶然発見した。生化学のアルツなどは鶏の鶏冠(赤色がヒラルロン酸の塊)から抽出するが分子量は90程度。しかしバイオなら180−190程度と人間の200チョイに近いものが可能である。
 このヒラルロン酸は保湿性が良いとされ化粧品に入っているが、膝関節炎に使われる。それが昨年8月に中外から発売されだしたスベニールである。発売当初から順調な売れ行きを見せ能増を図ったが、それでも足りなく能増を行っている。

 子会社デンカ生研も順調。千葉県にある血清研究所がどうやらなくなるようで、その分のインフルエンザワクチンを同社が作るかもしれない。但し、なぜか証券会社を持っている。同社のビジネスとは全く関係の無いビジネスかつ収益も生んでおらず、なんらかの経営判断が早急に出ると予想する。

 今期業績は会社側の想定である180億円(営業利益)を下回ろうものの、コンセンサスになっている。バリュエーションは割高感あるが、3年程度のタームでOKな個人投資家には絶対的な株価の低さもあり、手掛けやすい。(両津)

 

2000/12/06(水)

電気化学工業(東4061) ☆☆☆

  我が国の化学各社は、石油化学など汎用化学事業では、収益性に関して欧米企業に大きな格差をつけられています。かろうじて国際競争力を確立しているのは信越化学工業の塩ビ樹脂事業だけと言ってもいいでしょう。
 このため、わが国総合化学各社はアライアンス、M&Aなどを含めた汎用化学事業の再構築に余念がありません。三井化学、住友化学の経営統合もこの延長線上にあります。

 当社のような「準大手」クラスにとっては、汎用化学事業の縮小は必至といえましょうが、当社は他社に先んじて石油化学事業を縮小する一方、半導体封止材原料、コンクリート補強用特殊混和剤など独自技術を生かした分野に経営資源を集中、事業ポートフォリオの再構築に成功しています。同時に全社的なコスト削減を実施、損益分岐点比率は94.3期の109.9%から2000.3期には81.8%まで低下。売上高固定費比率も34.8%から25.7%に低下しています。

 なお、今中間期の連結業績は、売上高で1,342億円、前年同期比9%増、経常利益で100億円、同35%増となりました。事業別で収益改善が際立ったのは、構造改革を推進してきた石油化学事業です。原料ナフサ価格の高騰に対し、スチレンモノマーやポリスチレンなどスチレン系樹脂の値上げが比較的スムーズに浸透。スケルトン製品向けの透明樹脂、PETボトル向け特殊樹脂など機能性樹脂の拡大も寄与し、同事業の売上高営業利益率は前年同期の0.8%から4.8%に上昇しています。

 また、機能製品事業も半導体封止材原料シリカフィラー(世界シェア約70%)のフル生産が続いたほか、半導体搬送用トレー、キャリアテープなど電子包材が好調推移しています。つれて、会社側では2001.3期(通期)連結業績を売上高で2,650億円、前期比3%増、経常利益で195億円、同17%増を見込んでいます。

 一方、中期的に収益貢献が期待されるのは医薬品関連事業です。子会社・デンカ生研が手掛けるインフルエンザワクチン(国内シェア約90%)に加え、8月に発売されたリウマチ治療薬「スベニール」(仏アベンティスファーマより原薬製造を受託。中外製薬が販売を担当)の大型化が予想されます。同薬は当社が発酵法で量産化に成功したヒアルロン酸ナトリウムを原体とする、リウマチ患者向け関節機能改善剤です。生化学工業が既に販売しているヒアルロン酸製剤と異なり、慢性関節リウマチにも効能が認められています。

 現在、各種関節症患者は約550万人にのぼり、99年のヒアルロン酸製剤の市場規模は約350億円に達しています。会社側では今下期の売上高を20億円と見込んでいますが、受注は2倍以上のペースで推移しており、来年には生産能力を増強する意向です。

 なお、削減されたとはいえ、依然有利子負債が高水準であるなど財務体質(2000.3期連結ベースの株主資本比率は24%)が当社のウィークポイントといえます。
 しかし、化学セクターの低位好業績銘柄として中期的に注目いただきたいと思います。
☆☆☆)(駄洒落商会会長)

 

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