久光製薬(東4530) 2001/01/11更新

2001/01/11(木) 

久光製薬(東4530) ☆☆☆

 医家向け(整形外科医が処方する)外用消炎鎮痛剤のトップ企業です。

 1934年に発売後、大ヒットした鎮痛消炎貼付剤「サロンパス」は当社の代名詞となっています。戦後は80年代から研究開発に注力し、医家向け医薬品を強化。95年に発売された外用消炎鎮痛剤「モーラステープ」(経皮吸収パッチ剤:比較的薄手で水分含有量が少ない)は、同種の薬剤として初めて腰痛症の適応を取得したことから急拡大が続いており、「モーラス」(経皮吸収パップ剤:比較的厚手で水分含有量の多い貼付剤)と合わせた市場シェアは約34%(前2000.2期実績)に達しています。
 ちなみに、「モーラステープ」の今2001.2期売上高は240億円、前期比26%増、「モーラス」は150億円、同10%増の見通しです。さらに、2003年には慢性関節リウマチへの適応拡大取得も予想されることから、中期的にも当社収益を牽引する見通しです。

 会社側では、2003.2期の経常利益を2000.2期比46%増の163億円とする中期計画をスタートさせましたが、その柱は「モーラステープ」「モーラス」の一層の販売拡大で、早期に市場シェアを45%に引き上げる意向です。その一環として現在、シェアの低い東北、北海道地方での販売を強化、医薬情報担当者(MR)を集中投入する計画です。

 現在、医療用鎮痛消炎剤市場には武田薬品工業、第一製薬も参入していますが、主力である第二世代の薬剤(インドメタシンやケトプロフェンを主成分とする)、かつパッチ剤に限れば当社シェアは約85%に達するなど圧倒的で、新規参入をはかる企業はほぼ皆無の状況です。計画達成はかなり可能性が高いものといえましょう。

 また、80年代初頭より研究開発に注力してきたことにより、経皮投与技術(皮膚を通して薬剤を体内に送り込む技術)は他社の追随を許さぬ領域にまで達しています。分子量の大きいペプチド系薬物などの吸収を可能にするなど、従来の薬剤に比べて即効性のある新しい経皮吸収システム「イオントフォレスシステム」の実用化が間近に迫っています。

 一方で、経皮投与技術を応用し、薬剤を標的組織に有効に送り込むドラッグ・デリバリー・システム(DDS)の研究にも注力しています。その一環が、遺伝子を体内に運ぶ「ベクター」の開発です。当社は、三共、協和発酵、塩野義製薬、山之内製薬、住友製薬、田辺製薬と「ベクター」の開発を目的とする「ディナベック研究所」を95年に設立しており、当社が幹事企業を務めています。また、肝臓へのデリバリー遺伝子治療用注射製剤も前臨床試験を控えています。このあたりは、将来の研究の結実に期待したいと思います。

 なお、今2001.2期業績は、売上高で620億円、前期比14%増、経常利益130億円、同17%増と実に10期連続経常最高益更新見通しです。
 医薬品セクターは、2001年度には薬価引き下げがないこともあり、おしなべて業績面では堅調推移が見込まれます。景気見通しに不透明感が払拭されないうちは、「デフェンシブ」セクターとして注目される局面も予想されますが、前年度に比べ「大型新薬」は期待できません。武田薬品工業が次世代の新薬を欠く「端境期」に入るのが典型例です。必然的に既存薬での競争は激化します。

 2002年度には薬価引き下げが予定されていることも含め、今年に限れば薬品株で思うようなパフォーマンスをあげるのは難しいと予想します。そうしたなか、ロート製薬や今回の久光製薬などニッチ分野で圧倒的強みを持つ企業は比較的堅調な値動きが期待できるのではないでしょうか。

 マーケット全体が厳しい状況ですから、あくまでも押し目買いという意味で(☆☆☆)とします。(駄洒落)

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