ブリヂストン(東5108) 2001/06/08更新

2001/06/08(金)

ブリヂストン(東5108)

  ファイヤーストンとフォードの間が泥沼状態に陥っているようだ。

 自動車メーカーと採用されたタイヤメーカーは、もしもの時、守り合うため一枚岩のように結束するのが常である。しかし今回は違った。正確にいうと、途中までは結束していた筈だが、途中から相手が悪いと攻撃し出してしまったようだ。
 ブリジストンファイヤーストンはエクスプローラーの走行データを引っ張ってきた。なんでもエクスプローラーは、オーバーステアのセッティングをしているとかで、タイヤに万が一が起こった場合、素人にはコントロールが難しいとか。

 自動車のステア特性にベストはありません。好みの問題です。オーバースピードでコーナーに進入し、ステアリングを大きく切っても遠心力に負け対向車線側にはみ出して行くのがアンダーステア。対してステアリングを切り込んでいった場合に、フロントがイン側に切り込んで行くのがオーバーステア。
 オーバーステアでも強オーバーステアだとリアのテールスライドが起こり、俗に言うカウンターを当ててコーナーを回る必要がある。つまりサスペンションのセッティング次第だが、アクセル開度でリアがいとも簡単に流せる訳だ。

 FR(後輪駆動車)で峠を攻める走り屋はこのセッティングを好む。しかし技量がなければリアが流れるという点では危険が大きいのも事実。
 反対にアンダーステアではリアが流れにくいセッティングであり、その点で安全というのは一理ある。

 しかしながらこれはあくまで一般的な話。自動車の性能を極限まで引き出すコントロールは、教習所で教わる基本動作と異なる。コーナーを曲がるために皆さんはどうするか?
 コーナーの手前でブレーキを踏み、クリッピングポイント(コーナーを曲がる場合、路肩に最も近いところを通過する地点)に向けてステアリングを切っていく。つまりブレーキは踏むものの強く踏まないため、車重の前後移動があまり起こっていない。しかしアンダーステアの車でコーナーを早く立ち上がるには、コーナー前のブレーキングを非常に強く踏み、前輪に荷重を充分載せた上でステアリングを切り、アンダーを殺すのです。
 中途半端なオーバースピードで前輪に荷重を載せずにステアリングを切ると、タイヤが鳴くだけでコーナーをうまく回ることが出来ません。
 腕の悪いドライバーが足回りを固めるとアンダー傾向が強まるのはこのためです。足回りを固める=前後荷重の移動が起きずらくなる=ハイスピードでアンダーに悩む。
 FF(前輪駆動)車はアンダーセッティングです。FF車は前輪が駆動するため、万が一コーナーでリアが流れてもアクセルを開ければリアが戻ります。だから適度にアクセルを開けて走ればリアが流れることはないので安全と言われているのです。しかし一昔前のFF車はアンダーが非常に強く、コーナーでは苦労したものです。
 このFF車で速くコーナーを回るためには、セオリーを全く無視した行動が必要でした。コーナーの手前でブレーキングを終わらせるのが一般的ですが、ブレーキングポイントを更に遅らせ、ステアリングを切り始めてもブレーキングを残します。フルブレーキングをしながらステアリングを切り込んで行く。つまり車体バランスを崩すことによりアンダーを殺しコーナーを回っていく訳です。
 FRを好む方はFFを嫌う方向にあります。方や私のようにFF一本で走ってきた者にとっては、強アンダーの車でも直ぐに馴染めます。つまり速く走るためには、車体のバランスコントロールをしているわけです。

 このようなことを普通のドライバーにやれと言うのも無理な話。

 今回のエクスプローラーは一般的な車と比較し、オーバー傾向が強いなどど言われておりますが、実際ドライビングをしていない私にとってはその程度がわかりません。通常の走行状態に近い領域にそのようなステア特性を示す領域が存在するセッティングなのでしょう。

 ですからタイヤに万が一のことが起きた場合、このようなセッティングでは危険が大きいとBSFS側が言っている。オーバーステアは危ないと。
 ではアンダーセッティングの車でタイヤに万が一のことがあったらどうなるのか?結論から言えば、どんな車であろうとタイヤにもしものことがあれば事故に直結します。

 どんな強アンダー車でもコーナーで外側タイヤ表面が剥離したらテールスライドもしくは反対側のガードレールに張り付くことになりましょう。

 タイヤは乗る人の生命を守っているとタイヤメーカーはかつて宣伝していた記憶がございますが、タイヤにもしものことがあってはならない筈です。

 ではエクスプローラ側は?…なぜか同じエクスプローラーでも日本では問題になっておりません。
 日本仕様は米国仕様と違う箇所があるかもしれませんが、トレッド、ホイールベースは同じでしょうから、タイヤサイズとホイールのオフセットが本国と違っているかどうか?
 特にオフセットが1ミリでも変わると、走行性能が激変する車種も存在します。

 昔、トヨタスターレットのKP―61(約20年前)が流行しましたが、その後の型式のモデル(スターレット初のターボ搭載モデル)がFFであり、この車にかなりオフセットの異なるアルミホイールを履かせたテストを某雑誌がやったことがあります。その雑誌によると、別物の車に乗っているようとのコメントがありました。

 また現在では有名なレーシングドライバーである土屋圭一氏も、このFFスターレットのアンダーに悩まされ、わざわざ使い古したリアタイヤをグルービングし、テールスライドを誘発できるセッティングを施した時期もありました。

 エクスプローラーのようなRV車の特徴は、1)乾燥重量が重い 2)低速側にトルクがモリモリのエンジン。
 RV車はオンロードに適しません。各社オンロードを意識して設計しておりますが、やはりジャングルがお似合いです。私もジャングルを走るためにRVを買いましたが、よくよく考えたら私の住んでいる街にジャングルはなく失敗?しました。

 この手の車はフロントに荷重をかけないでステアリングを切り込めば、アンダーが強く出てしまい、片や雨の日にアクセルをドバッと開けると、パワースライドします(足回りを固めた場合)。
 搭載されているディーゼル(ターボ)エンジンは2000回転付近で最大トルクを発生するものが多く、雨のコーナーではアクセルオン=テールスライドに繋がりやすい。
 2トンオーバーの巨漢ですから、ある程度のスピードが出ている場合のテールスライドはカウンター量が乗用車より多く、コーナーを速く立ち上がるのは所詮無理な話。この手の車は荒れた道がお似合いです。

 タイヤが何であろうと、車重がヘビーでブレーキングが弱く、コーナーでどこに吹っ飛ぶかわからないようなRV車で、それなりのスピードを出すということは、乗用車より間違いなく危険な車と言えます。またグリップを求めるばかりに太いタイヤを装着し、コーナー中に恐怖感からブレーキを踏んでしまったら、重心位置が高く転倒の可能性は乗用車の比ではないでしょう。

 この手の車の唯一のメリットは、ほとんどトラックのようなものですから、後方からぶつけられても安全と言う程度でしょう。

 フォード側がBSFSの要求した空気圧2.6キロを2.2キロにしたのが原因と初めは言われておりましたが、責任は両方にあるように思われます。
 現時点では車やタイヤが原因と双方が相手を非難しているわけですから、事故に繋がることの可能性を認めていると考えられましょう。
 むしろいつの時点で車やタイヤに要因があると両社は気付いたのでしょうか。この時期とその後の行動がポイントになると考えます。

 このポイントを全く考慮せず、BS株の押し目買いを薦めるセルサイドが存在します。しかし自動車のプロは、はっきりと投資すべきではないと言う。
 事故に遭われたご遺族からの賠償金額は純資産を考慮すれば余裕がある、などと書かれているレポートもあるようですが・・・。

 もしかしたらもっと根の深い問題に発展する可能性を捨てきれないところに、BS株の恐怖を感じるのです。

 私の周りにいる自動車プロフェッショナルからのコメントを聞く限りでは、とても投資する気になれませんでした。なぜか?
 自動車メーカーとタイヤメーカーが世界で初めて仲間割れしたケースだからです。フォード、BSFSだけの問題で済まされない可能性もあります。
 米国のタイヤ規格と日本では大きな違いがあるのかな?

【投資判断】問題が解決するまで投資対象にすべきではないと考える。(両)(☆なし

 

あくまで投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり内容を保証したわけではありません。
投資に当たっては投資家自らの判断でお願いします。
億の近道on the Web 質問・要望事項はこちらまでメールを。


戻る