日本製鋼所(東5631) 2001/04/09更新

2001/04/09(月)

日本製鋼所(東5631) ☆☆☆

【おっとり社風】

 連結従業員4600名。国内雇用である。室蘭に1400名。従業員平均年齢は43才。もちろん、業績連動給与などの競争原理の導入もない。経営は顔がなく、社長のインタビューなどは数年来ない。よって、証券会社数数社あるなかで、レポートを出したところはなく、まったく認知されていない。それでも売上は1000億以上の大企業である。

【傾く既存事業】

 鋼の鋳鍛品主力。大型炉など、数は出ないが品質が要求される分野の特注で食いつないできた。
 量産は苦手だ。5000人近い人員を抱えている。ほとんど全員が日本人だ。人件費だけで売上のほぼ1/3を占めてしまう。しかし、幸いなことに、多角化に走らなかった。
 技術力は、防衛庁関連の仕事などをやっていることからわかるが、定評があった。そう、300人をR/Dにつぎ込み、要素技術を活かせる分野をセンスよく選んできた。

【低温ポリシリコン液晶向けレーザアニール装置】

 高質な炉の技術、温度管理ノウハウなどを結集して、新規分野に取り組んだ。低温ポリシリコン液晶基盤を製造する際、アモルファス状態になっている基盤を多結晶化する作業が必要となる。多結晶化は電子の移動スピードの向上に不可欠だ。炉のなかで、レーザーを照射、ガラス基盤上を走査していくのだが、温度管理が難しく、低温ポリシリコン液晶の生産性が改善しない要因となっていた。
 レーザはラムダフィジック社から供給を得ている。日本製鋼所の仕事は、レーザを安定されること。炉の設計、400度の基盤余熱、窒素雰囲気つくり、ガラスの出し入れの仕組み。レーザアニール装置のトータルな性能を保証しなければならない。ディスプレイメーカを共に試行錯誤の連続だった。
 このアニール装置は、今後、急速に普及しよう。現状では、低ポリメーカ(三洋、東芝、ST)すべてに実績がある。今後は住友重機や石川島播磨などの参入が予想されるが、現状では一歩リードしている。シェア90%だ。
 この低温ポリシリコン基盤は、各社とも設備を今後大幅に増強しようとしている。現状の売上35億円だが、液晶のみならず有機EL基盤にも必須となる装置である。
 現状35億が、来期は最低で45億。将来は数百億円になると期待されている。そして、この製品の利益率は高い。
 この会社ががんばらなければ、高精細ディスプレイが作れない。そのぐらい意味のある事業である。

【マグネシウム射出成形機】

 PCや携帯の筐体として普及が進むマグネシウム合金。売上65億円。既存の樹脂成形機の製造ラインをそのまま転用できるため利益率は高い。
 チクソマット社(米国)の基本特許であるチクソモールディング法による。ダイキャスト法にくらべて簡単、安全、スピーディである反面、イニシャルコスト、チップなどの材料費で割高となる。
 しかし、自動車のインパネやエンジン周りに、マグネシウム合金が徐々に普及が始まっている。市場は伸びる。これも数百億円の事業となる可能性を秘めている。
 この2つの事業だけで現状の時価総額程度の価値はあろう。
 要素技術を活かし、新規事業へ展開させるセンスはなかなかよいものをもっている。特許もいろいろ見てみたが、結構、フォーカスがあり、成長分野をうまく捉えている。

【人員の自然減と財務内容の改善】

 2年後に年間150−200名程度の退職者が毎年続くことになる。毎年、10億円程度のコストカットができるということだ。有利子負債は9月860億円だったが、遊休資産の売却で期末は720億円にまで圧縮した。これで、ようやくEV/EBITDAが9倍。普通の評価だ。

【評価】

 液晶製造装置メーカとして評価されはじめるのは、3年後だろう。売上でアニール装置が200億円を超えてくる可能性がある。2年で2〜3倍になる可能性は秘めている。下値は限られるだろう。ただし、今期は既存事業の見通しは振るわない。経営や社員の意識改革は期待できない。低位株物色で足元堅調だが、一本調子の上昇は難しいかもしれない。
 ただ、バイオ関連でポリ乳酸製造の技術があり、分解性プラスティックの研究で期待されている。事業化となれば、バイオ関連という評価もなされるだろう。

 楽しみな株である。証券会社が一社もカバーしていない。とんでもないことである。この株価だったら買ってもよいのではないか。(大原)

 

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