住友金属鉱山(東5713) | 2001/11/27更新 |
2001/11/20(火) | |||
住友金属鉱山(東5713)
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ターゲットプライスは5年以内に1000円 わたしが奇妙に思うポイントは、通常の鉱脈の場合、たとえば、南アの場合だが、数千メートルという深さまで掘る。しかし、菱刈はわずか200メートルしか掘っていない。1000メートル程度までは掘れるのではないか? そうなれば時価換算で菱刈周辺の金の価値だけで、1兆円を大きく超えてくる。住友金属鉱山の時価総額は2000億円。金以外にも、銅、ニッケルなど、住友のすべての鉱業権を総合的に評価すると、時価換算でこのデフレ化の金属価格の低迷期においてさえ、1兆円以上ある。 金の価格は低迷しているが、インフレヘッジとして、金が2倍程度に値上がりし、産出量が3倍程度になれば、住友のもつ鉱石の時価評価は3兆円を超えてくる。そうなれば、株価は10倍(時価総額2兆円、株価4000円)でも安いという議論をする積極果敢なアナリストがいつも通り出てくる。 株価は、シクリカルな動きを繰り返しながらも、今後数年内に爆発急騰する局面が訪れるだろう。今後5年以内に1000円をタッチする機会が一度以上訪れると判断した。住友金属 鉱山の保有資源と経済価値 (公式見解) (クレイフィンレイ試算 菱刈再評価後 金属価格低迷環境下) (クレイフィンレイ試算 菱刈再評価後 金属価格高騰環境下)
【はじめに 黄金の国 ジパング復活の夢をのせて】 銅は3大産出国(北米、チリ・ペルー、コンゴ・ザンビア)に偏在。銀はアメリカ大陸に一極集中している。金は、南アフリカが主要産出国となっている。ガリウム、パラジウムなどの電子材料の多くが地球上に偏在している。戦後の米ソの冷戦は、基本的に資源の奪い合いでもあった。日本は資源がない国として、加工技術や生産の工夫で現在の経済的地位を築いてきた。しかし、近年、日本は金の産出が急増し、平成のゴールドラッシュを迎えている。その背景を明らかにし、黄金の国、ジパングがよみがえる可能性について考えてみたい。 表1 各国の金の保有量 (百万オンス) 1オンス35ドルの時代、日本は金の保有量を米国の1/10に制限されていた。屈辱的な取り決めである。 現在はどうか。冷戦が終了。経済では米国の強さが再び際だっている。新ドル構想による兌換紙幣の復活発行も米国の戦略のひとつとして検討されているようだ。 そのとき、日本はどう対応するのか。大丈夫である。日本には膨大な金が地下に眠っている。取り尽くされようとしている南アフリカに変わって、日本が金の主要産出国のひとつになる日も遠くないだろう。技術だけではなく、資源においてもスーパーパワーとなる時代が近づいているのかもしれない。 英国のロスチャイルド家は、南アフリカからの金・ダイヤで世界一の資産家になった。ロンドン金市場。ロスチャイルド&サンス社の2階には黄金の間があり、毎朝10時30分と午後3時の2回、5社が集まり、金の価格が黄金の間で決定される。1919年より、伝統にのっとり、このようにして、日々、金の価格は決められてきた。 日本の金市場で、毎朝、金の価格を宣誓する会社がある。住友金属鉱山。16世紀からの歴史をもつ住友家の鉱山事業。住友が将来のロスチャイルドになる可能性が出てきた。 日本で採掘される金のほとんどは住友の金である。菱刈鉱山は、これまで株式市場で何度も取り上げられてきた。アナリストたちは、金の生成のプロセスを明らかにしてきたといえない。最新の学説でさえ、金生成のプロセスに関する見解は分かれている。 協力を頂いた九州大学の資源工学科の井澤教授をはじめとするみなさまに厚く御礼を申し上げます。また、慶応大学の鹿園先生の精力的な研究成果を参考にさせていただきました。この場を借りてお礼申し上げます。 第一章 【1−1 金の発見プロセス】(金鉱床と変質帯) 日本の金鉱床の多くは鉱脈鉱床と呼ばれる型の鉱床に属している。これは地下深くにおいてマグマなどで熱せられた金などの金属を含んだ熱い水が、褶曲や断層などによって生じた岩盤の割れ目や断裂に沿って上昇し、冷える過程で金などの金属を脈状に沈殿させたもので、これがいわゆる金鉱脈と呼ばれる。このような鉱床は熱水の作用によって形成されるため熱水性鉱床とも呼ばれる。 岩石が変質するとどうなるかというと、多くは白っぽいボソボソした粘土のようなものに変化する。このようなところは変質帯と呼ばれ、金鉱床を探す上で非常に重要な鍵になる。ところで金鉱脈の幅は一般的には大きくても数メーターとかというオーダーである。これを山の中を歩き回って探すのは宝くじに当たるのに近い確率といえます。それに比べ変質帯は鉱脈を取り巻くようにかなり広範囲に分布することが多く鉱脈に比べはるかに見つけやすいと同時に、鉱脈が近い可能性を示している。このために変質帯の調査が先行する。宇宙から鉱床を探すときも同様で、資源衛星からも広範囲に分布する変質帯を探すことが重要になるわけです。太陽光が地表に当たって反射するとき、その反射スペクトルは地表の物性の違いにより、それぞれ異なったスペクトル分布を示す。この違いを資源観測衛星で捉え、コンピューターで処理することにより地表面の変質帯や岩石の分布の様子を知ることができる)。このような手法をスペクトル解析といい、うまくすれば何カ月もかかって山の中を歩き回って調べた変質帯や岩石の分布が一枚の衛星画像で分かってしまう。(リニアメントの解析) 変質帯を宇宙から捉えることができれば、新しい鉱床を見つける可能性は高くなりますが、いつもうまくいくとは限らない。実際の地球の表面はどこでも砂漠のように岩石や変質帯が直接地表に露出しているわけではなく、特に熱帯から温帯地域では大地のほとんどが植物で覆われていて地表の情報を得ることができない。このようなときはスペクトル解析が使えない。 そのため、地形の特徴の違いを利用しなければならない。地形は一般的に岩石の種類や地質構造などの違いを反映していることが多く、たとえば石灰岩台地が独特のカルスト地形を示したり、断層が直線的な渓谷として現れたり、堆積岩の地域などに見られる褶曲構造が谷や尾根となって地表に現れたりする。特に地質学的な意味を反映していると思われる連続的な地形のラインをリニアメント(線構造)と呼ぶ。画像解析ではこのリニアメントや地表面の特徴を手がかりに地質の違いを推定していく。 九州南部における金鉱床の分布と資源観測衛星の画像から抽出した環状の構造は、浅熱水性の金鉱床であり、火山の活動に伴って形成されることが多い。カルデラのような陥没地形はその外縁に沿って環状の割れ目が走っていることが多く、そういったところが新しい火山活動の場になり金属を含んだ熱水の通り道となって鉱床が形成される可能性が高い。 最近の研究によると金の鉱床がこのような陥没構造の周辺部や複数の陥没構造の間などに多く存在することが分かってきた。陥没構造や火山に関係するような環状の構造を見つけてやることで地中に割れ目が多くありそうなところ、すなわち金鉱床が形成されやすい場所を推定することができる。 リモートセンシングによってたくさんの鉱床が見つけることができるように思えますが、実際はなかなかそうはいかない。現在、特に乾燥地域においては地表に露出している鉱床はそのほとんどが発見しつくされており、探査の対象は地表面に現れないより深部の鉱床に移っている。実際、リモートセンシングは鉱床探査の初期段階、つまり詳しい地表探査をするまえに超広域的な視点からどの地域をターゲットとして選定するかといったとき大きな効果をあげている。直接、鉱床を見つけないとしても衛星画像によってこのようなあたりをつけることは探査にかかるコストと時間を大きく節約してくれることになる。 ●金は有限である。そして、リモートセンシングによって鉱床発見までの調査費用は安くすむようになった。しかし、金がでる場所は限られている。それが環太平洋地域(日本を含む)であり、日本が世界的に注目されている理由である。黄金の国 ジパングは復活するかもしれない。 億近産業調査部のたけぽん(地球物理学専攻)によれば、 「反射スペクトルを比較演算した地質調査法は日本のような起伏の大きい地形では精度を期待するのは難しい。 【1−2 菱刈金山の埋蔵量はこんなもんなのか?】 マルコポーロが東方見聞録の中で日本をジパングとよんだ。日本では佐渡の金山が有名だったが、1980年代に発見された住友金属鉱山の菱刈金山はわずか10年強で佐渡金山が300年かかって掘った金の量を凌駕してしまった。菱刈は埋蔵量で世界一の金山であるだけでなく、トンあたりの金が60g程度とれる世界最高品位の金山であるということをみなさんはご存知でしょう。 日本にどうして世界一の高品位金鉱脈が出現したのか。 日本における鉱床の成り立ちは、日本特有の要素が数多くあり、その代表的な研究対象が菱刈金山です。公的には金の埋蔵量は163トン。 奇妙なことに、1981年の開山時、金の推定埋蔵量は120トン(時価換算約1200億円)でした。その後、100トン以上を算出しているのに、現在は163トンの埋蔵量となっている。 わたしが奇妙に思うポイントは、通常の鉱脈の場合、たとえば、南アの場合ですが、数千メートルという深さまで掘る。しかし、菱刈はわずか200メートルしか掘っていない。 ●熱水が噴出して、地表の割れ目にたまり、金が沈殿する期間はどの程度なのか? そうなれば時価換算で1兆円を大きく超えてきます。住友金属鉱山の時価総額は2000億円。これは異常な過小評価ではないのか??というのが、この株をみる場合のポイントのひとつだろう。また、金を沈殿させるプロセスがどの程度かかるのか、仮に数十年なら、菱刈の金は掘っても掘っても沈殿を繰り返して無尽蔵ということになる。 【1−2 金の沈殿スピード】 熱水系の活動期間については詳しい研究がなされている。熱水がふいて沈殿に要する期間は数十年である。ひとつの鉱床をつくるのに要する期間は短くて数十年にすぎない。 【1−3 金の生成プロセス 1)金に富む熱水生成プロセスと2)金沈殿プロセス】 菱刈は、熱水系の鉱床だ。地底の熱水(温泉)中に金がイオンとして溶け込んでいる。熱水が金をどうして含んでいるのかという点がまず問題になる。そして、溶け込んでいるままでは、採鉱できない。金イオンに富む熱水が冷えて金となり沈殿していくプロセスがその後起こらなければならない。 1)金に富む熱水の生成プロセス 金を含む熱水の分布状況がどうなのか。横の広がり、菱刈に隣接する地域まで金が溶解している熱水が地下に分布しているのかどうかがわかってくるだろう。 2)金の沈殿プロセス ●決め手は塩素イオン濃度。塩素の起源はマグマと海水。話題になっている黒鉱鉱床には塩素が多く、そういうところでは金はでにくい。たまたま水と岩石との相互作用がどんぴしゃりと決まったときに金イオンが溶解する。 【いままでのまとめと可能性】 ●熱源は5kmの深さ、金は1000mの深さまでは存在できる (菱刈は200mしか掘っていないため、まだまだ十分に掘れるだろう) 金が沈殿する原因は、 【九州大学井澤先生の見解】 大原:「菱刈では1000mの深さまで金は存在しますか?」 大原:「現在も熱源が「生きている」とすれば、菱刈では、現在も恒常的に金の沈殿が進んでいる可能性もあるのでしょうか?菱刈以外の新しく発見されている鉱脈においても、金の沈殿プロセスが現在進行形のものがあるのでしょうか?」 大原:「菱刈の金埋蔵量は163トンとされています。現在は地下200m程度までの採掘になっているようなので、もっと深く、あるいはもっと広範囲に採掘が可能であるとすれば、菱刈にはもっと沢山の金があるのではないかと期待を抱いています。それは間違った期待なのでしょうか?」 【大原の結論】 ●菱刈の金鉱脈は公表された数字よりかなり大きい可能性は残っている 金の急騰が今後5年以内に一度でも起これば、資産株として、金のみでも1兆円の価値と評価される余地がある。可能性が否定できない以上、長期保有前提に買い。 【黄金の国ジパングは復活するか】 1990年 大分県、引治(九重火山)に金鉱脈発見(現在も熱源は存在している) 【通貨の歴史と金本位性の可能性】 新ドルを金兌換にし、金本位制を復活される構想が米国を中心に出てきている。増殖するヘッジファンドなどの対応に苦慮した各国政府が、冷戦終了後、その地位を高めつつある米ドルを再び基軸通貨にすえようとする思惑である。アジアや南米の通貨危機も、年々のGDPなどのフローだけで通貨価値が大幅に変動することに起因する。投機資金が実需の何十倍に膨れ上がり、制御不能なまでに膨張していることを考えると、為替の大幅な変動に一定の枠を定期的に与えるという新ドル構想は、各国から一定の理解を得られるだろう。もちろん、旧ドルは兌換されないので、そのあたりの調整は課題として残る。 【ポゴ プロジェクト】 金の埋蔵量174トンのアラスカ、ポゴ地区のプロジェクトへ出資51%。毎年12トンの採掘が2004年夏スタートする。品位17g/t。【金の用途】 国が陸続きな欧州では金はベルトなどにつけ、いざというとき、いつでも逃げられるように準備している。電子材料としての用途が15%、装飾と入れ歯用途が50%、私的な保有が20%程度である。延性にすぐれ、1オンス34gの金を伸ばしていくと35マイルの線状にできるほどだ。 耐食性にすぐれ、記念コインなどに使われている。金ペーストやLSI用金ワイヤボンド、LEDの電極などにも使われている。信頼性で他の導電材に勝る面がある。有史以来、これまで採掘された金をひとところに集めると1辺が20mの立方体に入ってしまう程度。
第2章 ニッケルと銅 【住友保有のニッケルの資源価値】 住友のニッケル保有資源量は90万トンに上り、現在の2.6セント/lbという安値で換算しても6000億円以上の時価となる。 【ニッケル産出と鉱石】 ニッケルはカナダが産出の40%を占めるなど、地域的に偏在している。カナダは良質の硫化鉱床が1959年に発見された。マグマが地殻割れ目に入り冷却される過程でニッケルの濃縮が起こったとされている。Pentlandite(FeNi)9 S8 O10 (OH)8は土塊状でマグネシウムや珪素の成分が多い。 【2004年スタートするラテライト鉱石の処理事業】 住友は、鉱山の横に山積みになっている捨てられたRio Tubaのラテライトから低コストでニッケルとコバルトを取り出す目処がついている。 【ニッケル用途】 耐酸性、耐アルカリ性すぐれ、さびない。一番の用途は18−8SUS(ステンレススチール Cr18−Ni8−Fe残り)。磁性材料やメッキ(コイン)などにも使われている。(日本は全量輸入しているため、コインにして有事のために備蓄している)。 【住友保有の銅資源価値】 Cuは150万トンの資源を有す。70セント/lbで換算して、2800億円程度の価値となる。 【銅の鉱物】 1)黄銅鉱 (CuFeSi)34%程度の銅を含む。 【特徴】 1)抵抗が低い。1.72μΩm 【Cu製造工程】 溶解→金属銅に還元(酸素いれてSOを飛ばす)→99%の粗銅→含有物(Au、Ag、Sb)をとりだす→電気分解→銅地金(wire bar) 【Cu産出】 US、カナダ、チリ、ペルー、コンゴ、ザンビア 【Cu用途】 合金としては亜鉛と銅で真ちゅうが用途広い。日本は100万トンを消費。その70%は電線である。30%弱が伸銅。伸銅はリードフレームや金型やエンジンなどへ使用される。100円などのコインへの使用量は3%程度。ベリリウム銅など、導電性とスプリング機能を併せ持つ特殊な合金も応用が広い。 【ベースメタル価格の動向】 ニッケルはステンレスの実需動向が重要であり、景気敏感で景気の初期回復局面に上昇するものと思われる。銅などもケーブルなどのインフラ関連の読みが重要で結局、これらベースメタルの動向は鉱工業生産動向と相関が高い。世界経済減速のあおりで現状、ベースメタルの価格は底を這う状態が続いている。株式投資のタイミングとしては、金属価格が底打ちする局面で投資し、ピークを打つときに売却するというシクリカルプレーが有効だ。
第3章 住友金属鉱山の電子材料 【リードフレーム 事業規模200億円程度】 赤字。市場シェア6%。リストラが必要。その用意あり。 【Auワイヤ 市場規模 150億円程度】 シェア20% 競争力高い。 【TABテープ 20億円規模】 メッキへの新展開で他社を先行。TABからCOGなどへの移行により恩恵を受ける。 【ニッケルペースト 10億円規模】 積層セラミックキャパシター用ニッケル電極材料。40%シェア。 【電子材料評価】 アナリストの視点が電子材料に偏るのは、電子材料が高成長ビジネスで付加価値が高く、金属精錬や材料特性評価などの要素技術が生かせると思っているからだ。この会社の場合、携帯電話への比重がかなり大きいため、中期的には楽しみなポジションにはいる。しかし、経営判断で積極的な人材の投入はなされていない。開発体制も貧弱だ。 光通信部品にも高シェアのアイソレータなど楽しみなものは多いが、どれも未知数だ。仮にリストラ効果で、リードフレームが黒字になれば、会社への評価を変えてくるアナリストが続出するであろう。 今期は数十億の赤字となろう。来期も赤字が続く可能性が高い。株価が冴えない理由のひとつが電子材料部門の収益力の低さとやる気のなさにある。(大原) 【参考文献】 「よみがえる黄金の国ジパング」伊澤英二著 岩波科学ライブラリー1993
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