住友金属鉱山(東5713) 2001/11/27更新

2001/11/20(火) 

住友金属鉱山(東5713) ☆☆☆

 【要約&インベストメント・コンクルージョン】

 ターゲットプライスは5年以内に1000円
 住友金属鉱山の菱刈金山。1981年の開山時、金の推定埋蔵量は120トン(時価換算約1200億円)だった。その後、100トン以上を算出、現在は163トンの埋蔵量となっている。年8トン程度掘っているのに、どんどん埋蔵量が大きくなっていっている。昨年も新しい鉱脈を発見。新鉱脈の埋蔵量はこの163トンに入っていない。菱刈の金埋蔵量はまたも増加するのは間違いない。

 わたしが奇妙に思うポイントは、通常の鉱脈の場合、たとえば、南アの場合だが、数千メートルという深さまで掘る。しかし、菱刈はわずか200メートルしか掘っていない。1000メートル程度までは掘れるのではないか?
 また、菱刈のエリアは狭い。もっとエリアを広げられないのか?最終的には、鉱床のできる年月、そして鉱床のエリアと深さの問題に帰着する。どのぐらいすばやく金は沈殿するのか?
 より深く、より広範囲に掘れるのか?金が沈殿する期間はどの程度なのか?仮に数十年なら、菱刈の金は掘っても掘っても沈殿を繰り返して無尽蔵ということになる。仮に深さ1000m、エリア2倍ということになれば、埋蔵量は10倍となる。また、周辺に新しい金鉱脈があるのではないか。仮に菱刈級の鉱脈が新たに見つかれば、株価にはポジティブなニュースとなろう。

 そうなれば時価換算で菱刈周辺の金の価値だけで、1兆円を大きく超えてくる。住友金属鉱山の時価総額は2000億円。金以外にも、銅、ニッケルなど、住友のすべての鉱業権を総合的に評価すると、時価換算でこのデフレ化の金属価格の低迷期においてさえ、1兆円以上ある。

 金の価格は低迷しているが、インフレヘッジとして、金が2倍程度に値上がりし、産出量が3倍程度になれば、住友のもつ鉱石の時価評価は3兆円を超えてくる。そうなれば、株価は10倍(時価総額2兆円、株価4000円)でも安いという議論をする積極果敢なアナリストがいつも通り出てくる。

 株価は、シクリカルな動きを繰り返しながらも、今後数年内に爆発急騰する局面が訪れるだろう。今後5年以内に1000円をタッチする機会が一度以上訪れると判断した。住友金属

鉱山の保有資源と経済価値

(公式見解)
Cu 150トン 2800億円(70c/lb)
Au 284トン 3000億円($270/OZ)
Ni 90万トン 6000億円(2.6c/lb)

(クレイフィンレイ試算 菱刈再評価後 金属価格低迷環境下)
Cu 150万トン 2800億円
Au 400トン  4000億円
Ni 90万トン  6000億円

(クレイフィンレイ試算 菱刈再評価後 金属価格高騰環境下)
Cu 3500億円
Au 1兆円
Ni 9000億円
合計経済価値 →2兆2500億円
 (vs 住友金属鉱山時価総額2000億円

 


【はじめに 黄金の国 ジパング復活の夢をのせて】

 銅は3大産出国(北米、チリ・ペルー、コンゴ・ザンビア)に偏在。銀はアメリカ大陸に一極集中している。金は、南アフリカが主要産出国となっている。ガリウム、パラジウムなどの電子材料の多くが地球上に偏在している。戦後の米ソの冷戦は、基本的に資源の奪い合いでもあった。日本は資源がない国として、加工技術や生産の工夫で現在の経済的地位を築いてきた。しかし、近年、日本は金の産出が急増し、平成のゴールドラッシュを迎えている。その背景を明らかにし、黄金の国、ジパングがよみがえる可能性について考えてみたい。


表1 各国の金の保有量 (百万オンス)
 米国   265
 フランス 102
 ドイツ   94
 スイス   83
 日本    24

 1オンス35ドルの時代、日本は金の保有量を米国の1/10に制限されていた。屈辱的な取り決めである。
 金は長らく通貨価値安定の根拠として、米ドルを支えてきた。表1はそのときの国際的な決め事である。米国が圧倒的な勢いを保っていた1970年代までの話である。

 現在はどうか。冷戦が終了。経済では米国の強さが再び際だっている。新ドル構想による兌換紙幣の復活発行も米国の戦略のひとつとして検討されているようだ。
 ヘッジファンドが国際経済の一番弱いチェーンを狙い撃ちにしている。何らかの形で各国通貨を大変動させない仕組みが検討されている。

 そのとき、日本はどう対応するのか。大丈夫である。日本には膨大な金が地下に眠っている。取り尽くされようとしている南アフリカに変わって、日本が金の主要産出国のひとつになる日も遠くないだろう。技術だけではなく、資源においてもスーパーパワーとなる時代が近づいているのかもしれない。

 英国のロスチャイルド家は、南アフリカからの金・ダイヤで世界一の資産家になった。ロンドン金市場。ロスチャイルド&サンス社の2階には黄金の間があり、毎朝10時30分と午後3時の2回、5社が集まり、金の価格が黄金の間で決定される。1919年より、伝統にのっとり、このようにして、日々、金の価格は決められてきた。

 日本の金市場で、毎朝、金の価格を宣誓する会社がある。住友金属鉱山。16世紀からの歴史をもつ住友家の鉱山事業。住友が将来のロスチャイルドになる可能性が出てきた。

 日本で採掘される金のほとんどは住友の金である。菱刈鉱山は、これまで株式市場で何度も取り上げられてきた。アナリストたちは、金の生成のプロセスを明らかにしてきたといえない。最新の学説でさえ、金生成のプロセスに関する見解は分かれている。

 協力を頂いた九州大学の資源工学科の井澤教授をはじめとするみなさまに厚く御礼を申し上げます。また、慶応大学の鹿園先生の精力的な研究成果を参考にさせていただきました。この場を借りてお礼申し上げます。


第一章
 鉱床学の急展開。そして、菱刈金山の公式発表されている埋蔵量への疑問、疑問払拭への着眼点、方法論

【1−1 金の発見プロセス】(金鉱床と変質帯)

 日本の金鉱床の多くは鉱脈鉱床と呼ばれる型の鉱床に属している。これは地下深くにおいてマグマなどで熱せられた金などの金属を含んだ熱い水が、褶曲や断層などによって生じた岩盤の割れ目や断裂に沿って上昇し、冷える過程で金などの金属を脈状に沈殿させたもので、これがいわゆる金鉱脈と呼ばれる。このような鉱床は熱水の作用によって形成されるため熱水性鉱床とも呼ばれる。

 岩石が変質するとどうなるかというと、多くは白っぽいボソボソした粘土のようなものに変化する。このようなところは変質帯と呼ばれ、金鉱床を探す上で非常に重要な鍵になる。ところで金鉱脈の幅は一般的には大きくても数メーターとかというオーダーである。これを山の中を歩き回って探すのは宝くじに当たるのに近い確率といえます。それに比べ変質帯は鉱脈を取り巻くようにかなり広範囲に分布することが多く鉱脈に比べはるかに見つけやすいと同時に、鉱脈が近い可能性を示している。このために変質帯の調査が先行する。宇宙から鉱床を探すときも同様で、資源衛星からも広範囲に分布する変質帯を探すことが重要になるわけです。太陽光が地表に当たって反射するとき、その反射スペクトルは地表の物性の違いにより、それぞれ異なったスペクトル分布を示す。この違いを資源観測衛星で捉え、コンピューターで処理することにより地表面の変質帯や岩石の分布の様子を知ることができる)。このような手法をスペクトル解析といい、うまくすれば何カ月もかかって山の中を歩き回って調べた変質帯や岩石の分布が一枚の衛星画像で分かってしまう。(リニアメントの解析)

 変質帯を宇宙から捉えることができれば、新しい鉱床を見つける可能性は高くなりますが、いつもうまくいくとは限らない。実際の地球の表面はどこでも砂漠のように岩石や変質帯が直接地表に露出しているわけではなく、特に熱帯から温帯地域では大地のほとんどが植物で覆われていて地表の情報を得ることができない。このようなときはスペクトル解析が使えない。

 そのため、地形の特徴の違いを利用しなければならない。地形は一般的に岩石の種類や地質構造などの違いを反映していることが多く、たとえば石灰岩台地が独特のカルスト地形を示したり、断層が直線的な渓谷として現れたり、堆積岩の地域などに見られる褶曲構造が谷や尾根となって地表に現れたりする。特に地質学的な意味を反映していると思われる連続的な地形のラインをリニアメント(線構造)と呼ぶ。画像解析ではこのリニアメントや地表面の特徴を手がかりに地質の違いを推定していく。

 九州南部における金鉱床の分布と資源観測衛星の画像から抽出した環状の構造は、浅熱水性の金鉱床であり、火山の活動に伴って形成されることが多い。カルデラのような陥没地形はその外縁に沿って環状の割れ目が走っていることが多く、そういったところが新しい火山活動の場になり金属を含んだ熱水の通り道となって鉱床が形成される可能性が高い。

 最近の研究によると金の鉱床がこのような陥没構造の周辺部や複数の陥没構造の間などに多く存在することが分かってきた。陥没構造や火山に関係するような環状の構造を見つけてやることで地中に割れ目が多くありそうなところ、すなわち金鉱床が形成されやすい場所を推定することができる。

 リモートセンシングによってたくさんの鉱床が見つけることができるように思えますが、実際はなかなかそうはいかない。現在、特に乾燥地域においては地表に露出している鉱床はそのほとんどが発見しつくされており、探査の対象は地表面に現れないより深部の鉱床に移っている。実際、リモートセンシングは鉱床探査の初期段階、つまり詳しい地表探査をするまえに超広域的な視点からどの地域をターゲットとして選定するかといったとき大きな効果をあげている。直接、鉱床を見つけないとしても衛星画像によってこのようなあたりをつけることは探査にかかるコストと時間を大きく節約してくれることになる。

●金は有限である。そして、リモートセンシングによって鉱床発見までの調査費用は安くすむようになった。しかし、金がでる場所は限られている。それが環太平洋地域(日本を含む)であり、日本が世界的に注目されている理由である。黄金の国 ジパングは復活するかもしれない。
●温泉、地震、島国、という3つの要素が重なったところから新しい高品位の金がでるようである。資源大国日本は実現しそうだ。
●リモートセンシングは調査スポットを絞り込むことができるが、結局は、現状は、ありきたりのことしかわからない。

 億近産業調査部のたけぽん(地球物理学専攻)によれば、

「反射スペクトルを比較演算した地質調査法は日本のような起伏の大きい地形では精度を期待するのは難しい。
 理由は補正処理の計算が複雑になるからだ。実際に月面のクレータや溶岩チューブ(洞穴状の物)や月面付近の地殻に含まれる鉱物組成(Fe、Mgなど)を衛星からのリモートセンシングデータ対し比演算処理を施すことで調査を試みていた人がいるが、精度を上げる為に人工衛星のちょっとした角度のずれや、月面クレータの角度等の補正計算するのに苦労していた(計算量も結構多い)。プログラムはNASDAからお借りしたものだった。しかし、画像処理の分野は今後も大幅に進歩することが予想される分野。将来的には日本のような土地でもGPSからの求められる正確な位置と強力な計算機の組み合わせで、いつか鉱脈発見の為の強力な武器になる可能性は否定できない」。

【1−2 菱刈金山の埋蔵量はこんなもんなのか?】

 マルコポーロが東方見聞録の中で日本をジパングとよんだ。日本では佐渡の金山が有名だったが、1980年代に発見された住友金属鉱山の菱刈金山はわずか10年強で佐渡金山が300年かかって掘った金の量を凌駕してしまった。菱刈は埋蔵量で世界一の金山であるだけでなく、トンあたりの金が60g程度とれる世界最高品位の金山であるということをみなさんはご存知でしょう。

 日本にどうして世界一の高品位金鉱脈が出現したのか。
 鉱床学という学問がある。この学問は400年以上の歴史を有する古い学問だが、近年、溶液化学と同位体化学の鉱床学への導入によって、この20年、急速な発展を見せている。学問的な発展は、この数年、さらに加速しています。衝撃的な学説が次々と発表されていることは、株式市場ではあまり知られていないのかもしれない。

 日本における鉱床の成り立ちは、日本特有の要素が数多くあり、その代表的な研究対象が菱刈金山です。公的には金の埋蔵量は163トン。
 それでも、時価換算で1500億円相当の価値。もちろん、採掘や精錬コストは除いての話だが。
 通常、1000分の3の確率であるといわれているボーリング調査。菱刈は18本のボーリング、すべてが金鉱脈にぶち当たったという稀有な鉱脈だ。品位は、主要産出国の南アフリカの金山の数g/トンの水準を大きく上回っている驚異的な含有量。

 奇妙なことに、1981年の開山時、金の推定埋蔵量は120トン(時価換算約1200億円)でした。その後、100トン以上を算出しているのに、現在は163トンの埋蔵量となっている。
 毎年8トン程度掘っているのに、どんどん埋蔵量が大きくなっていっている。昨年も新しい鉱脈を発見。新鉱脈の埋蔵量はこの163トンに入っていません。ですから、菱刈の金埋蔵量はまたも増加するのは間違いない。

 わたしが奇妙に思うポイントは、通常の鉱脈の場合、たとえば、南アの場合ですが、数千メートルという深さまで掘る。しかし、菱刈はわずか200メートルしか掘っていない。
 1000メートル程度までは掘れるのではないか?
 また、菱刈のエリアは狭い。もっとエリアを広げられないのか?
 最終的には、鉱床のできる年月、そして鉱床のエリアと深さの問題に帰着する。どのぐらいすばやく金は沈殿するのか?
 菱刈はより深く掘れるのか?
 より広範囲に掘れるのか?

●熱水が噴出して、地表の割れ目にたまり、金が沈殿する期間はどの程度なのか?
●仮に深さ1000m、エリア2倍ということになれば、埋蔵量は10倍となる。

 そうなれば時価換算で1兆円を大きく超えてきます。住友金属鉱山の時価総額は2000億円。これは異常な過小評価ではないのか??というのが、この株をみる場合のポイントのひとつだろう。また、金を沈殿させるプロセスがどの程度かかるのか、仮に数十年なら、菱刈の金は掘っても掘っても沈殿を繰り返して無尽蔵ということになる。

【1−2 金の沈殿スピード】

 熱水系の活動期間については詳しい研究がなされている。熱水がふいて沈殿に要する期間は数十年である。ひとつの鉱床をつくるのに要する期間は短くて数十年にすぎない。
 金に富む熱水が恒常的に地下500mにある菱刈では、鉱山部分だけ、その熱水が地下100mあたりまでせり出している。現在も鉱山の中は高温で、温泉が吹き出ている。現在も活動中なのかもしれない。金沈殿の自動システム化されている可能性さえないのだろうか。現在の熱水も数十年たてば金鉱脈化していく可能性が高いのではないのか。未発見の鉱脈は、地表近くで割れ目ができているところのどこにでもある可能性がないだろうか。また、将来的には一回の地震により複数の割れ目が出来、それがまた金鉱脈化していくとは考えられないだろうか。

【1−3 金の生成プロセス  1)金に富む熱水生成プロセスと2)金沈殿プロセス】

 菱刈は、熱水系の鉱床だ。地底の熱水(温泉)中に金がイオンとして溶け込んでいる。熱水が金をどうして含んでいるのかという点がまず問題になる。そして、溶け込んでいるままでは、採鉱できない。金イオンに富む熱水が冷えて金となり沈殿していくプロセスがその後起こらなければならない。
 そして、先ほどの疑問に仮に答えることができるなら、それが住友金属鉱山に投資できるかどうかのポイントのひとつになる。

1)金に富む熱水の生成プロセス
 金は大きくわけて、2つの時代に濃縮している。ひとつは約30億年前、もうひとつは現代である。いま、南アで採掘されている大陸型の鉱床は30億年前のものであり、全地球的に起こった初期近くの生成に伴うものであった。ところが、現代の金鉱床は、火山の一生の末期にになってその背弧側に金鉱が生成することがわかっている。地下数kmのマグマ溜りが存在して熱源となる。雨水が浸透し、熱水となる。マグマから亜硫酸などのガスが熱水に混入する。その熱水が温泉など、割れ目が多い岩盤へ上昇していくとき、圧力減少から沸騰が起こり、金が沈殿する。このマグマや岩石と熱との化学反応から金が水にイオンとして溶ける。基盤としての金の含有量が2ppm程度であっても、熱水中に硫化水素が含まれれば、しだいに岩盤から金を抽出していき、結果として高濃度の金が溶けていることになる。熱水が還元状態を保ち、金を濃縮していき、最終段階で沈殿させるという金の工場が九州には数多く存在する。

 金を含む熱水の分布状況がどうなのか。横の広がり、菱刈に隣接する地域まで金が溶解している熱水が地下に分布しているのかどうかがわかってくるだろう。
 そして、どうして菱刈地方に異常ともいえる高濃度の金イオンが濃縮しているのか。
 鉱液の発生。これは岩石と熱水が300−400度の高温で化学反応を起こす。そして、雨水と熱水が交わると鉱物が結晶化して沈殿し鉱床となる。
 熱水が出るためには、地中近くにマグマがないといけない。つまり、火山がなければならない。金が溶けるためには、気圧(酸素分圧)で36気圧、pHで7−8程度が最適といわれている。
 また、金は還元硫黄種の多い岩石があるところで溶解する。

2)金の沈殿プロセス
 最近の研究によれば、地下5kmあたりに、マグマなど地熱源があることが重要な決め手になるとのこと。1kmの深さで、割れ目に入った熱水は水の自重による圧力で沸点がおよそ300度まで上昇する。これに岩盤圧などが加われば、もっと高温の熱水が存在できる。
 熱水と金との関係についての研究は、熱水中に80ppmという高濃度の金が1969年にブロードランス地熱地帯で発見されてから、そのシステムが解明されつつある。菱刈では毎秒150キログラムの熱水がポンプでくみ出されている。金の濃度がブロードランスと同様に1.5ppmならば、500年程度で10トンの金鉱床が出来つづけるということになる。
 熱水が還元的な状態にあれば、金はAu(HS)2−というイオンとして存在している。現在も存在している酸化的なマグマでは、硫黄が亜硫酸ガスの状態で水に溶け込み、マグマが冷える課程でマグマ周辺に放散される。この硫黄が金の運び手となっている。金を運んだ熱水が酸化的な雨水などで冷やされるとき、金は沈殿する。あるいは、熱水が地表へと上昇していく課程で圧力が減少し、沸騰が起こり、硫黄分を飛ばすとき、金は沈殿する。

●決め手は塩素イオン濃度。塩素の起源はマグマと海水。話題になっている黒鉱鉱床には塩素が多く、そういうところでは金はでにくい。たまたま水と岩石との相互作用がどんぴしゃりと決まったときに金イオンが溶解する。
●もうひとつの決め手はpH。pHが高くなると金はイオンになりやすくなる。pH変化は熱水からガスが逃げることで起こる。このガスの「逃げ」は地表近くで起こりやすい。だから金は地表近くで濃縮する。(水と岩石の相互作用について、トータルな系として研究が精力的になされるようになったのはごく最近のことである)。
●銅などの重金属は温度が重要。温度が高いと岩石から熱水へ溶解していく。金は温度特性はあまりない。

【いままでのまとめと可能性】

●熱源は5kmの深さ、金は1000mの深さまでは存在できる (菱刈は200mしか掘っていないため、まだまだ十分に掘れるだろう)
●沸騰する前の硫化水素と炭酸ガスの濃度比が問題。炭酸ガスが多いと金は沈殿しない。
●金の沈殿の反応式Au(HS)2− + H+ + 1/2H2 → Au + 2H2S

金が沈殿する原因は、
●地表での硫化水素濃度の減少 
●pH高かったが低下する
●地表での温度低下
●金は数十年、数百年で鉱床を生成する。(いまなお金の沈殿が進行中である可能性)
●休火山があり、温泉がでるところは金も出る可能性がある

【九州大学井澤先生の見解】

大原:「菱刈では1000mの深さまで金は存在しますか?」
教授:「鉱脈そのものは存在するでしょう。しかし、金の含有率が深度と共に急減して経済性は無くなるでしょう。」

大原:「現在も熱源が「生きている」とすれば、菱刈では、現在も恒常的に金の沈殿が進んでいる可能性もあるのでしょうか?菱刈以外の新しく発見されている鉱脈においても、金の沈殿プロセスが現在進行形のものがあるのでしょうか?」
教授:「熱源は死につつある状態です。元気のよいときだけ金の沈殿がおきます。今元気な地熱地域、地熱発電を行っているような地域は、高温度のため採掘は困難です。」

大原:「菱刈の金埋蔵量は163トンとされています。現在は地下200m程度までの採掘になっているようなので、もっと深く、あるいはもっと広範囲に採掘が可能であるとすれば、菱刈にはもっと沢山の金があるのではないかと期待を抱いています。それは間違った期待なのでしょうか?」 
教授:「’もう少し’深いところ 、周辺部が探査の対象となります。」

【大原の結論】

●菱刈の金鉱脈は公表された数字よりかなり大きい可能性は残っている
●1000mは無理でも300m程度までなら大いに期待できる。周辺面積では1.5倍程度は経済性を伴った鉱脈が出るだろう
●ということは、深さ1.5倍×面積1.5倍で2.3倍。およそ500トンの金が高い品位で採掘可能であろう。現状の採掘コスト150ドル程度でいけるだろう。

 金の急騰が今後5年以内に一度でも起これば、資産株として、金のみでも1兆円の価値と評価される余地がある。可能性が否定できない以上、長期保有前提に買い。

【黄金の国ジパングは復活するか】

1990年 大分県、引治(九重火山)に金鉱脈発見(現在も熱源は存在している)
1991年 住友金属鉱山のボーリング調査で山形県、大峠で金銀鉱脈が発見される
1992年 再び九重北部と北海道東部で鉱脈発見 その後も、九州と北海道を中心に金鉱脈の発見が相次いでいる。「平成のゴールドラッシュ」と呼ばれている。

【通貨の歴史と金本位性の可能性】

 新ドルを金兌換にし、金本位制を復活される構想が米国を中心に出てきている。増殖するヘッジファンドなどの対応に苦慮した各国政府が、冷戦終了後、その地位を高めつつある米ドルを再び基軸通貨にすえようとする思惑である。アジアや南米の通貨危機も、年々のGDPなどのフローだけで通貨価値が大幅に変動することに起因する。投機資金が実需の何十倍に膨れ上がり、制御不能なまでに膨張していることを考えると、為替の大幅な変動に一定の枠を定期的に与えるという新ドル構想は、各国から一定の理解を得られるだろう。もちろん、旧ドルは兌換されないので、そのあたりの調整は課題として残る。

【ポゴ プロジェクト】

 金の埋蔵量174トンのアラスカ、ポゴ地区のプロジェクトへ出資51%。毎年12トンの採掘が2004年夏スタートする。品位17g/t。【金の用途】 国が陸続きな欧州では金はベルトなどにつけ、いざというとき、いつでも逃げられるように準備している。電子材料としての用途が15%、装飾と入れ歯用途が50%、私的な保有が20%程度である。延性にすぐれ、1オンス34gの金を伸ばしていくと35マイルの線状にできるほどだ。

 耐食性にすぐれ、記念コインなどに使われている。金ペーストやLSI用金ワイヤボンド、LEDの電極などにも使われている。信頼性で他の導電材に勝る面がある。有史以来、これまで採掘された金をひとところに集めると1辺が20mの立方体に入ってしまう程度。

 


第2章 ニッケルと銅

【住友保有のニッケルの資源価値】

 住友のニッケル保有資源量は90万トンに上り、現在の2.6セント/lbという安値で換算しても6000億円以上の時価となる。

【ニッケル産出と鉱石】

 ニッケルはカナダが産出の40%を占めるなど、地域的に偏在している。カナダは良質の硫化鉱床が1959年に発見された。マグマが地殻割れ目に入り冷却される過程でニッケルの濃縮が起こったとされている。Pentlandite(FeNi)9 S8 O10 (OH)8は土塊状でマグネシウムや珪素の成分が多い。
 酸化鉱としては珪ニッケル鉱(Garnierite[(MgNi)6Si4O10(OH)8])の大鉱床がニューカレドニアに存在している。
 Ni成分が少ないラテライトは、大量に存在するものの、品位が低いため、これまでNiを十分に取り出すにはコストが合わなかった。

【2004年スタートするラテライト鉱石の処理事業】

 住友は、鉱山の横に山積みになっている捨てられたRio Tubaのラテライトから低コストでニッケルとコバルトを取り出す目処がついている。
 ニッケル価格が3ドル程度まで戻れば、このラテライト処理で年間収益が30億円程度かさ上げされるだろう。ラテライトから磁性材料や電極材料として有望なコバルトを抽出できるのも大きなメリットとなる。

【ニッケル用途】

 耐酸性、耐アルカリ性すぐれ、さびない。一番の用途は18−8SUS(ステンレススチール Cr18−Ni8−Fe残り)。磁性材料やメッキ(コイン)などにも使われている。(日本は全量輸入しているため、コインにして有事のために備蓄している)。

【住友保有の銅資源価値】

 Cuは150万トンの資源を有す。70セント/lbで換算して、2800億円程度の価値となる。

【銅の鉱物】

1)黄銅鉱 (CuFeSi)34%程度の銅を含む。
2)黒鉱(PbS,ZnS)

【特徴】

1)抵抗が低い。1.72μΩm
2)融点が1086度
3)熱伝導率 k=0.923
4)耐食性は水に対して安定

【Cu製造工程】

 溶解→金属銅に還元(酸素いれてSOを飛ばす)→99%の粗銅→含有物(Au、Ag、Sb)をとりだす→電気分解→銅地金(wire bar)

【Cu産出】

US、カナダ、チリ、ペルー、コンゴ、ザンビア

【Cu用途】

 合金としては亜鉛と銅で真ちゅうが用途広い。日本は100万トンを消費。その70%は電線である。30%弱が伸銅。伸銅はリードフレームや金型やエンジンなどへ使用される。100円などのコインへの使用量は3%程度。ベリリウム銅など、導電性とスプリング機能を併せ持つ特殊な合金も応用が広い。

【ベースメタル価格の動向】

 ニッケルはステンレスの実需動向が重要であり、景気敏感で景気の初期回復局面に上昇するものと思われる。銅などもケーブルなどのインフラ関連の読みが重要で結局、これらベースメタルの動向は鉱工業生産動向と相関が高い。世界経済減速のあおりで現状、ベースメタルの価格は底を這う状態が続いている。株式投資のタイミングとしては、金属価格が底打ちする局面で投資し、ピークを打つときに売却するというシクリカルプレーが有効だ。

 


第3章 住友金属鉱山の電子材料

【リードフレーム 事業規模200億円程度】

 赤字。市場シェア6%。リストラが必要。その用意あり。

【Auワイヤ 市場規模 150億円程度】

 シェア20% 競争力高い。

【TABテープ 20億円規模】

 メッキへの新展開で他社を先行。TABからCOGなどへの移行により恩恵を受ける。

【ニッケルペースト 10億円規模】

 積層セラミックキャパシター用ニッケル電極材料。40%シェア。

【電子材料評価】

 アナリストの視点が電子材料に偏るのは、電子材料が高成長ビジネスで付加価値が高く、金属精錬や材料特性評価などの要素技術が生かせると思っているからだ。この会社の場合、携帯電話への比重がかなり大きいため、中期的には楽しみなポジションにはいる。しかし、経営判断で積極的な人材の投入はなされていない。開発体制も貧弱だ。

 光通信部品にも高シェアのアイソレータなど楽しみなものは多いが、どれも未知数だ。仮にリストラ効果で、リードフレームが黒字になれば、会社への評価を変えてくるアナリストが続出するであろう。
 半導体市況のピークで電子材料は100億円の利益が稼げる可能性もあるが、平準的な利益水準は30億円程度であろう。事業価値は500億円程度にすぎないだろう。

 今期は数十億の赤字となろう。来期も赤字が続く可能性が高い。株価が冴えない理由のひとつが電子材料部門の収益力の低さとやる気のなさにある。(大原)

【参考文献】

「よみがえる黄金の国ジパング」伊澤英二著 岩波科学ライブラリー1993
「地の底のめぐみ」鹿園直建著 裳華房 1988

 

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