荏原(東6361) 2001/01/23更新

2001/01/23(火)

荏原(東6361) ☆☆☆

 フォローです。

1)今期業績は、1月までの状況から判断すると、計画通り。
2)来期は、今期あったエンジニアリング事業の特殊要因(70億円損失)がなくなるため増益となる。
3)半導体製造装置は、CMP厳しいが、メッキ装置などで、精密事業の利益は横ばいを確保できるだろう。
4)注目は、機械事業のフォーカス。製品ラインアップを劇的に絞り込む。3年前1万以上のあった製品種類を1500種程度に減らした上で、海外生産比率を引き上げる。
5)従業員へのインセンティブ、業績給与の導入を図る。

 全体の印象としては、悪くはないと思う。(大原)

 

2000/11/08(水)

荏原(東6361) ☆☆☆

  残念ながら、荏原は連結の業績の下方修正を11月6日の午後2時に発表しました。今期経常利益を50億円下方に修正、従来250億円が200億円となりました。この発表を受けて、株価は直前の1700円台から2日で1400円台まで下落。

 期中、ダイオキシン騒動の業績への影響が限定的とされたこと、半導体製造装置の受注が計画を上回るペースで拡大していたことの2点から、下方修正はまずないと考えていただけに、ネガティブサプライズとなりました。

 これは、三菱重工などのプラント各社にいえることですが、プラントなどの足の長い案件は、外部者が利益を予想することは極端に難しい。個人的な見解ですが、荏原の成長性はそのほとんどを精密電子事業に負っています(むろん、環境ビジネスを高く評価する一部のアナリストもいますが…)。

 ですから、私の場合、機械事業は、甘めにみても、売上の0.2倍程度の価値しかないと評価しております。精密電子事業だけ単独に取り出した場合、3000億円以上の事業価値の試算をしております。仮に荏原が精密電子事業だけの会社なら、株価は今後3年で2500円程度まで上昇する可能性があります。

 おいしいケーキ(精密電子事業)の上に、醤油(プラント事業)がかかっている状態ですから、荏原というケーキもこれでは売り物になりません。それでも、わたしは、お客に「ご面倒ですが、その醤油をふき取って食べてください。中のケーキは食べる価値がありますよ」と年金基金に説明しています。

 受注から売上までのリードタイムが長い事業、極端に資産の回転率が低い事業というのは、基本的に株式投資の対象にしてはならない、というのが私の考えです。今回の修正騒動でも、寝耳に水状態だった方が多かったに違いない。

 しかし、今回、会社を責めるわけにはいきません。事業の性格上、下方修正リスクがつきまとうのがプラント関連の宿命です。工期中の外注状況によって大きく変化する、やり直しなどの手間隙がかかれば赤字になり、すんなり行けばそこそこの利益が取れる。売上の計上の方法ひとつで利益が大きく変動します。それゆえ、売上の0.2倍のゴミのような価値しか見出せないのです。もしかしたら、ケーキにかかった醤油というのは、マイナスの価値しかないのかもしれません。

 今回は、一過性という会社の説明ですが、これも一理ありです。精密事業のR/D投資の積み増しも相当ありました。基本的に株価は上昇基調にもどるはずです。
 今回は、醤油が服やネクタイについてしまったため、多くの顧客が怒った。
 プラント事業の事業の性格そのものに嫌気がさした、という感じでしょうね。投資家と事業会社との「性格の不一致」で別れの売り注文が大量に出たようです。

 わたしは逆に、「これで荏原さんも純粋な半導体製造会社になりましたね!」とジョークを飛ばしております。全社の利益と半導体製造関連の利益が並びかけているからです(これは嫌味ですが)。

 実際、CMP、メッキ、洗浄などのプロセスではトップクラス。今後は、配線や塗布系までできるでしょう。東京エレクと同様、技術戦略上、死角なしの展開が見込まれます。
 わたしの予想はきわめて楽観的ですが、精密電子はこの数年で倍以上の売上規模になるはずです。

 セルサイド風に言うならば、目標株価2000円据え置き。(大原)

2000/04/05(水)

荏原(東6361) ☆☆☆
 荏原のCMP事業について(高リスク・高リターン)

 半導体のプロセス技術が今年ほど話題になる年も珍しいでしょう。話題といえば、微細化一辺倒だった昨年までとは明らかに違います。特に銅配線については多くの半導体大手メーカーで前倒しになるなど、量産への適応は秒読み段階です。

 CMPはケミカル・メカニカル・ポリッシングといって、ウエハーの表面にスラリー(歯磨きでいえば歯磨き粉)をたらし、パッド(歯磨きでいえば歯ブラシ)で磨いて平坦化するものです。従来も酸化膜などはCMPプロセスでしたので、CMP自体が新しいものではないのですが、銅配線はIBMしか量産実績がなかったため、今年が実質CMP銅配線元年なわけです。
 従来のアルミ配線はCMPでなく、エッチバックで処理していたため(わざわざCMPを使う意味がなかった)、銅配線はプロセス上も多くの課題を残していました。それが、ASIC事業での昨年のIBMの一人勝ち。ユーザーが銅配線に強い関心を持ったことが引き金となって、銅配線の量産プロセスは多くの半導体メーカーで前倒しになりました。NECなども、任天堂向けチップは銅の8層を試みるそうで、なんという無謀?!
 荏原は、もともと水処理が得意で、汚染物洗浄のノウハウがありました。CMPプロセスには「汚染」したウエハーを洗浄することもセットになっています。洗浄と研磨のスイッチングが滑らかで、処理能力が高いことが荏原CMP装置の特徴のひとつです。また、洗浄機能を統合することで、CMP装置の設置面積も大幅に小さくすることができました。
 多くの製造装置に使われる真空ポンプ分野のシェアも高く(40%)、オイル不要のポンプを開発してきたため、「ドライ」のプロセスの要素技術もあります。CMPへの荏原の取り組みは5年前からで新参者ではあります。歴史的には東芝に認められて成り立っていた事業でした。
 銅配線のテーマで、アナリストが見落とす可能性があるのが、銅メッキ溶液の貢献です。銅配線はスパッタリングの成膜でなく、メッキをウエハーに流し込みます。この銅の電解メッキ溶液が提供できるかが、銅配線CMPを評価する際のカギです。荏原はなんとかそのメッキ溶液を自社開発できました。CMP装置の売上やメンテだけでなく、メッキ溶剤の売上まで含めて収益予想をしている人はまだいないようです。
 CMP装置の処理を上げるため、マルチ・ヘッド(一回に2個以上のウエハーを処理できる)を採用しますが、この基本特許(三菱マテリアルから)を押さえました。
 CMP装置の価格は2億円。機能を落としたもので1億円以下のものもあります(例えば6インチウエハーへのCMP導入とか)。
 顧客は、東芝、IBMに加えて、インテルが新規顧客に加わりそうです。今年の初め、インテルのメンバーが数週間荏原にとどまって評価をした結果、1台納入が決まったという明るいニュースがありました。この時期の1台は、3年後の数十台になる可能性を秘めているからです。
 2001/3のCMP関連売上は会社計画350億円ですが、結果として500億円に届くと見ています。好調な真空ポンプ事業とあわせて、売上は800億円を超えるでしょう。両事業の利益貢献は100億円程度でしょう。この電子精密事業の人員はプロパーで700人、メンテ会社に200人、外注協力会社で300人。R/Dは売上の15%を占めます。
 メッキ溶液でのライバルはノベラス、装置ではAMAT。CMP関連としては、パッドとスラリーでロデールニッタ(50%持分)を擁するニッタ(東5186)なんかも狙い目です。
 NEC、インテル、サムソンとそうそうたるメンバーが銅配線を試みます。今年の秋にはCMP装置メーカーの勢力図がはっきりするでしょう。
 荏原は環境汚染の事件の成り行き次第ではリスクが高いという覚悟が必要です。汚染問題が決着し、それほどの禍根を残さない場合、半導体の製造装置メーカーとしての評価が定まれば、中期的には2000円を超える可能性があると考えます。CMPだけの会社だったら明らかに買いです、なんて、そういう会社って多いですよね。

皆さんからのご質問、ご指摘、ご指導をお待ちしております。(大原部長)

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