松下電産(東6752) | 2002/05/21更新 |
2002/05/14(火) | |||
松下電産(東6752) ☆☆☆ 松下電器産業が発表した2002/3期連結営業損失は▲2118億円と、大幅赤字転落。 まず、たかが1−2万人を早期退職させただけで、BPSが200円以上もぶっ飛ぶ会社には投資しにくいし、心情的に、投資対象から外したい衝動にかられる。 年収に直して、3−4年分に相当する割増退職金を早期退職者に支払うからだ。もちろん、支払うのは株主である。 水道哲学が泣いている。リストラをして、いままで守り通した信念を曲げた。競争力がなくなっている。 しかし、その損失は、株主負担。これじゃー 経営責任問題ですよ。普通の国なら。 なんだか、一方的に、負けつづける日本企業の象徴のような存在、それが松下。 §中国に追い上げられる日本とその趨勢を織り込んだ株式市場 テレビの株式番組や経済報道を見ていると、「中国すごいぞ、日本どうする?」的なものがこのところ目立っている。 一方、日本企業のだらしなさは、外人投資家共通の認識になってしまった。 先日、テンプルトンの大御所、大原さんとディナーをしたときのこと、もちろん、大原さんはファンドマネージャ歴日本一の25年以上のキャリアをお持ちの著名人である。 わたしも、このコンテンツが流れているときには、すでに、モントレイで半導体カンファランスに出席していると思うが、100社のユニークな半導体設計会社を招いた盛大な会議には、日本企業はひとつもない。 中国、台湾、米国の影に隠れてしまった日本企業。 松下はどうなのか?すでに多くの外人投資家は、松下を投資対象外にしている。 いま、米国で投資家向けのカンファランスをやれば、多分、松下のネームでは、10人程度しか出席しないだろう。 ちやほやされる日本にいては、そのギャップに気がつかない。 証券会社は、M/Aなどの投資銀行業務がらみで、会社の機嫌を損ねるようなことはしない。松下への投資判断も甘い。 ここまで読んで、読者はどう感じますか? ああ、やはり、だめなんだ… 実は、この現状、この状況を見ると、経験のあるアナリストやファンドマネージャは、逆に考える。 株式投資は、経験がものをいう。 これだけ、中国中国とマスコミが騒ぎ立て、これだけ日本がだめだ政府がだめだ、松下はだめだと叩かれている。 投資家向けコンファランスに人は誰もいない。 そういうことをひとつ、ひとつ、確認していくと、経験のあるものならば、誰も、こう思う。 「いけるじゃん!」 これは今、買えるという意味ではない。 松下を注意深く見ていれば、変化の兆しを捉えることが出来、近い将来に投資ができる環境が整う可能性(あくまでも可能性にすぎない)があるということである。 §松下はどうするべきか 投資家が憤慨しないためには、松下はどうしたよいのか? まず、人員削減を避けることだ。 これだけの売上、これだけの従業員を活かしきれないのならば、BSPは数年ごとに数百円ずつ低下するだろう。いまでさえ、PBRでしか買えない株なのに、機軸となるBPSが年々低下するならば、投資家はどうすればよいのか? そのBPSを守るには、人員削減を絶対にさせないことだ。 逆に、逆に、投資家はパズルを解かなければならない。 逆に逆にさかのぼる。 人員削減を避けるためには、経営者は今何を感じているか? 逆向きに考えよう。 そう。だからハイエンド、韓国や台湾が出来ない難しい技術に走る。 そして、高付加価値品のわなにはまってしまった… パラドックスだ。 逆向きに考える。 答えはひとつしかない。 松下はローエンドで世界を制覇しなければならない! 勝てる可能性はある! 付加価値中心路線を堅持するなら、連結従業員の過剰感はまだまだ大きい。 ローエンドから逃げて7兆円の売上が維持できるか! 「ばかもの!」と幸之助さんなら、怒鳴るだろう… 逆向きにパズルを解こう。戦艦松下が生き残るためには、みみっちい合弁工場を中国でごちゃごちゃ建設するのではなくて、まず、しっかりとした統一的な意思を示すことだ。 奥の手がある。船井電機に頭を下げて、モノの作り方を一から教えてもらいなさい。 グループ会社を統合する方向性はまったくナンセンス。逆にスピンアウトさせて、船井なみの適正の会社を20−30作ったほうがましだろう。 安い基盤で貧相な設計を繰り返すのはやめようよ それが復活の序曲になる。 一度リセットし、最高レベルの基盤を標準採用し、世界に羽ばたいているファブレス企業と共同で、複合機能を統合し、ワンチップ化にまい進しよう。 半導体ワンチップとは、複雑きわまるデジタルデータ処理と質を保証しなければならないアナログ処理を別々の半導体で設計するのではなく、当初からワンチップ化してしまうことである。なにがなんでもやるしかない。自分で出来なければ、世界中のファブレスをバカにしないで、訪問して、協力を仰ぐことだ。 ワンチップになる。4つのチップをひとつにまとめれば、5000円の原価が2000円以下になるだろう。実装面積も小さくなる。アセンブル工程の歩留まりや検査の手間隙がいらない。 なによりも、シェアだ。「特別損失の研究」で指摘したが、市場占有率を取らずして、差別化はできない。高いシェア、それ自身が差別化なのだ。 そのためには、ローエンドの統一的な設計思想が欠かせない − 逆向きのパズルは解けた 投資パズルは終わった。あとは、松下がやるだけである。 逆向きに時代が回りはじめる。 松下はいつのまにか 偉くなったのか? 謙虚に学び、頭を下げよ! 逆向きに 行動する ローエンド品へ挑む松下 その雄雄しい姿を見たとき、世界は逆向きに回り始め、世界の技術者が松下詣でをすることになるだろう。 そのとき、はじめて、松下は「雇用を守った」という栄誉を与えられるだろう。 とにかく勝て! ローエンドこそ、松下魂。 勝つんだ 松下! (大原)
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