アンリツ(東6754) 2001/05/10更新

2001/05/10(木)

アンリツ(東6754)

 アンリツが前期決算及び今期の見通しを発表した。

(単位:億円)

(連結)
売上高
営業利益
経常利益
NET
EPS
01/3
1591
238
214
96
75.7円
02/3(会社計画)
1760
250
220
130
101.6円

                            

【前期業績】

・計測機器部門の売上が1000億円、営業利益245億円と好調な結果に終わった。米国ブローバンド及びW−CDMA開発・製造用テスターが牽引したことが背景。

・情報機器部門は前々期の22億円の赤字から前期にリストラをしたにも関わらず前期は42億円と赤字幅が拡大してしまっている。新製品であるマルチレイヤーが目標に遠く及ばず赤字な上、リストラを実施したはずの既存事業の赤字も消えず。

・デバイス事業は光デバイス・ハイスピードデバイスが大幅伸長し、前期比86.5%増の110億円の売上、営業利益は17億円と前期比約3倍に膨らんでいる。1480nmのポンピングレーザーではシェアを倍増させた。

【ポイント】

・前期はレーザーダイオードを含むデバイス部門収益は売上高118億円、営業利益17億円と拡大し、今期は売上高200億円、営業利益30億円と更に拡大する計画だ。
 会社側では高出力タイプのレーザーダイオードを出荷し更なる躍進を図るとしており、前期の月産数量1万モジュールを今期は1.5万モジュールまで拡大する。更に買収した厚木の工場を梃子に先行き月産3万個モジュールまで拡大する方針。

・前期、同社の業績を大幅に牽引した計測機器部門は前期売上1000億円、営業利益245億円を、今期売上高1130億円、営業利益213億円と増収減益になるとの予算を組んでいる。これは前期に大幅なシェアを獲得した光デジタル測定器MP1570Aが前期の2500台出荷で245億円売上が、今期は一転して1700台出荷の売上160億円となり、その分の売上減少分をMP1570Aの廉価版や次世代40Gbps製品、次世代W−CDMA用測定器、BERTSが補い、売上は前期比13%の増加を計画。
 営業利益に関しては次の成長を見込んだ設備投資やR&Dを行うに際しての償却負担増から減益になるとしている。前期の全体設備投資54.6億円が今期は75億円へ、前期のR&D110億円が今期は150億円へ、減価償却は前期の28億円が今期は45億円の計画である。
 受注は2月からダウンし出し、好調であった11−1月に較べ60%程度に、3月は70%程度、4月は昨年12月のペースに戻っていると言う。現在の受注残を考えれば上期の売上は達成可能と見る。しかしながら下期及び来期については米国次第との歯切れが悪い。
 またこの分の減少を他の製品で補うことに関してもかなり不透明感が強く、計測機器事業部が計画する今期利益は絶対達成すると言いながらも努力目標のようなことを事業部長がポロリ。後で経理部長が自然体での目標と訂正。
 前期のMP1570Aも非常に好調ではあったが、実際は2700台の計画が200台ほど未達であった。

・計測器事業中におけるW−CDMA用シグナリングテスターではほぼ100%近いシェアを保持している。前期は300台で約60億円の売上高を計上し、今期は台数ベース600台を計画している。販売価格の下げがどの程度になるのか?

・会社側では中期計画の中で2004年3月期に売上高2400億円、営業利益510億円、ROE20%、ROA11%を数値目標としており、この目標に合わせ会社側では年率15%の売上成長を計画している。

 アンリツさん、この目標に向け、がんばってください。(両津)

☆☆☆ → ☆

 

2001/01/18(木)

アンリツ(東6754) ☆☆☆

 火曜日の続きです。

 他社製とMP1570Aの違いがいくつかあり、これが全てとは言いませんがシェアを6割も取得出来た要因でしょう。一つ目は自前のASIC、2つ目にスピードが早い。
 処理スピードが速い理由は、他社のバスがケーブルに対し、同社製はチップ内での処理のため。アジレンドの製品は正に本棚のような大きさだそうですが、MP1570Aは通常のオシロスコープ程度の大きさです。このコンパクトな設計が成功したのか?
 3つ目はJITTER(ジッター)機能をつけたこと。これは10Gレベルになると信号に揺らぎが発生するため、品質の問題となり強い交換機が必要となる。MP1570Aにはジッター機能を搭載しており、10Gレベルの高速計測器でジッター機能を搭載しているのは同社のみである。
 しかしこの光デジタル計測器でも他社のキャッチアップは素早く、他メーカーが10Gでの同社のシェアを喰ってくることは当然のこと。いつまでもMP1570Aが高いシェアを取り続けていくことはないであろうし、その対策も現在練っている最中である。

 10Gの計測器が拡大を続けるなかで、フルスペックを持ち合わせた高い計測器も必要だが、機能をある程度まで絞り込んだ廉価版という戦略も必要ではなかろうか。

 今期に大幅な成長を示した光デジタル計測器だが、来期も大幅な伸長率とはいかないであろう。着実な成長と言える程度の伸び率を予想する。つまり成長性は鈍化しそう。
 但し、来年にはフランスの企業であるアルカテルとの共同開発である40Gタイプを投入する予定であり、これが今後の成長路線のポイントになろう。

 なおMP1570Aの営業利益率は30%と非常に高い。

【移動体用計測器】
 単体で50億、連結で130億円の売上。現在W−CDMA用の開発向けに売れており、3種類の計測器が1セットとして機能する。この内、シグナリングテスターはW用で世界シェア100%を誇る。W用だけで60億円ほどの売上規模だが、かつてPDCの時は日本のみで124億円の売上げを記録したが、2003年3月期には爆発的に売れると同社では見ている。

 最後にデバイスについて少し触れよう。 励起レーザーモジュールを製作しているが、これは古河電工がコンペティターである。とはいっても古河電工の規模は同社の非ではなく、月産10万個。同社は5千個体制でこれをこの3月に1万個そして1.5万個体制に移行しようと計画している。いくら作っても足りない状況であるが、まだ売上的に多くないため、同社の利益率は古河電工に比べかなり低い。古河並のオイシイ利益率を出すためには、現状の生産規模では無理があろう。

 しかし月産が2万個以上ないし3万個以上の生産を目指すのであれば、同社の利益を牽引することとなりましょう。

【投資判断】
 ☆☆☆は3つにとどめておきます。株価が6倍近い値上がりを見せ、かなり先の業績まで織り込んだフシがあります。EPS100円予想は完全に織り込んだと言って良いでしょう。
 同社の業績は事業再構築による赤字減少と計測器、それもMP1570Aの売れ行きが業績を牽引しております。上述したように他の製品も今後の成長が期待されますが、牽引したものがあまりにも単品すぎる。
 万が一、他社から強力な製品が出てMP1570Aがコケたらどうなるのか?
 まだ出ていない40G製品がMP1570A並みのシェアをとれるのかな?

 同社の位置づけが全く変化ない中で、株式市場がここから大幅な調整に見舞われた結果、同社株も大幅に下落したときは絶好の押し目となりましょう。しかしながらあくまで超短期でのトレーディングと割り切るべきでしょう。中長期での同社株投資には慎重さが必要です。

 励起レーザーモジュールを増産すれば業績インパクトにはなりましょうが、1個10万円もするものです。しかもオイシイ商売となれば、NECや富士通が指を咥えて見ているとは、(大原部長曰く)思えません。また今後の単価の下げも気になります。
 W投資も研究用途売上からプロダクトに変化すれば、売上は出るのかもしれませんが…。この銘柄には臆病になります。

 大株主を見ると、三菱、住友、野村、東洋などのトラストバンク、つまり機関投資家のカストディアン(保管銀行)の名がずらりと並んでおり、これだけ見てもかなり材料的には織り込んでいる感があります。

 しかし本当のところは、名前だけ有名で運用がヘタクソな、あの運用機関の後を買いにいくことに、非常に腹が立つと言うのが本音かな?(大原、両津とも大嫌いな機関投資家)(両津)

 

2001/01/16(火)

アンリツ(東6754) ☆☆☆

 同社株は昨年年初に600円台の推移であったが、光関連への資源投入の成功を評価し、約5倍へ株価上昇した。その高値から、米国の景気及び株式マーケットの調整と連動する形で株価が押し目をいれているものの、果たしてこの押し目局面は買いなのであろうか?

 同社の事業は大まかに2つ。

1.情報通信機器

 同部門は減収になっているが、海上無線などの事業売却が表面上の減収になっている理由だ。無線部門を残しており、海上を撤退した同社は陸への展開を計画している。この情報機器事業は約20億円ほどの赤字であるが、これが黒転し成長軌道に入るか否かはLAN事業がポイントとなろう(このLAN事業の開発立ち上げコストがこの赤字の理由であり、それ以外の情報事業は収益トントン)。

 LAN事業の中身はマルチレイヤースイッチで、昨年度から始めた新規事業。北米でのブランド確立如何が、他の地域での成功のカギを握る。このマルチレイヤーだが、簡単にいえばルーターの1種で、しかもハイエンドタイプ。しかしメジャーな米国企業であるシスコ社とは競合せず、イクストリーム社との競合となる。

 同社では2003年3月期に黒字転換を目論み、今期売上15億を、来期倍増以上、中期的に100億円以上の売上にすることを目標としている。このマルチレイヤーはタダの交換機とは全く違う代物らしく、画像処理の世界に使われるものであり(建設省関連のネットワーク、放送、メディアや携帯などに使われる)、信頼性を得ることが至上だ。そこで同社では、米国における有力なベンダー(VAR社及びそれ以外20社)とのパートナーシップで販売チャンネルを確保している。

 但し、足元の状況を見る限りでは成長路線にはまだ程遠いのが現状であり、今期の15億円の売上計画はショートするかもしれない。1台の単価は、スペックにもよるが200万円から1500万円の間であり、同社の受注状況からの平均単価は約500万円。2003年3月期には100億円の売上を達成すると見ていたようだが、スタート台が低い位置から始まったことは少し誤算だった模様だ。このマルチレイヤースイッチの営業利益は、10%が精一杯のようだ。

 他の情報通信機器で開発投資を養えない部門は、2003年3月期の段階でリストラなりを考えるとしており、行方が気になる。LAN以外の新製品では、アクセスシステムや集合型DSUに関連した製品を出していく予定であるが、後述する計測機器事業のような大幅な成長を、情報通信機器事業が果たす可能性は乏しい。当面はLAN(マルチレイヤースイッチ)の米国での成功から信頼を勝ち取り、その後の欧州や日本での成功を現状見守るしかないであろう(情報通信機器は付加価値ビジネスとして計測器より下。コンペティターとの価格競争も激しい)。

2.計測機器
【光デジタル】
 光通信をベースにした基幹系などキャリア向けの世界であり、キャリアの設備投資動向にリンクしやすい
【移動体用開発テスター】
 W−CDMAなど伝送方式と加入者の増加。端末メーカーの設備投資にリンクしやすい
【汎用部門】
 通信用デバイスのテスター。電子部品業界にリンク

 さて情報通信機器のところでも述べましたが、現在、計測機器事業は大幅な伸長率を見せております。この主力製品が以下に記すMP−1570Aです。

MP−1570A (光デジタル計測器)昨年2月から出荷

売上
台数
今上期
80億円
800台
今下期計画
160億円
1900台

 

単価
今上期
下期計画
10Gbps
2000万円
250台
500台
2.5Gbps
800万円
250台
1000台
622Mbps
300万円
300台
400台

 現在のWDMマーケットの主流は10Gだが、計測機器市場はまだ2.5Gマーケットの方が大きい。2.5Gの方が安価にしかも安定している背景が、本格的に10Gにシフトしない理由である。
 上記出荷台数及び金額を見ると、下期の1台当たり平均単価が低いことが理解されるだろう。これは2.5Gの製品を重点に置くこと及び、競争による戦略的意図が背景にあろう。 同社は、300億円と言われる10Gマーケットで6割のシェアを取ってしまい、同社幹部も驚いたに違いない。10Gでのシェアは同社6割、2番手アクターナが2割、3番手テクトノニクスが1割、4番手はHPから分社化したアジレントだ。
 2.5Gではトップがアジレンドで35%、2番手アクターナが3割、3番手当社が25%。なお、2.5Gは600億円ほどのマーケットで、全体で約1000億円マーケットである。

 明日の出張のための準備がございますので、続きは木曜日にでも…。(両津)

 

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