オリンパス(東7733) | 2001/07/03更新 |
2001/07/03(火) | |||
オリンパス(東7733) ☆☆☆☆ 満月(億近ゼミ参加者)&大原コンビのデビュー作。オリンパスです。 【財政危機と規制緩和】 「これからは負担は軽く、福祉は厚くというわけにはいかない。改革は痛みを伴うこともある」(小泉首相)。 道を知らないタクシー。道を知っているタクシーは早く着く。そうすると料金は安くなる。道を知っていることが付加価値として収入に直結しない。仕事の内容ではなく、仕事量で料金が決まる。夜間は一律で30%料金が上がる。一律というのは不可解。 手先が不器用な外科医や歯科医。下手な医者もうまい医者も料金は同じ。 弁護士。書類の種類で料金が決まるし、時間給も一定のレンジ。なぜか仕事の内容ではなく、仕事量で料金が決まる。 株式型投資信託。なぜか、手数料は一律。運用がうまい人も下手な人も同じ手数料。 痛みを伴うべきは、こういう努力と無縁の業界である。それによって、リストラが起こるというのは、どういう議論なのだろうか?よく理解できない。 建設業や下請けの方々が多くがリストラに遭うというが、そういう一般の方々は、すでに厳しい現実と向き合っている。 努力の足りない業界の既得権益を壊し、新規参入を促し、競争を促進させる。それによって、新しい需要が生まれる。財政は規制緩和によって建て直しが可能だ。改革なくして景気回復なしとは本当のことだ。 とくに医療分野の建て直しは、日本だけでなく、世界的な課題である。高齢化社会に向けて、人間の尊厳を守りつつ、医療費の増加に歯止めをかけなければならない。 【2010年 解決に向かった世界の医療費高騰問題】 2010年の医療現場、内臓や脳の疾患に対する外科手術は大きく様変わりしている。現在でも消化器系の外科手術は内視鏡によるものが多くなってきているが、2010年になり、マイクロマシンによるセンサーとアクチエーターを組み込んだ能動型マイクロカテーテルが実用化されたのである。開発メーカーはオリンパスである。 能動型マイクロカテーテルには触覚センサーや圧力センサーなどが組み込まれており、マイクロアクチエータによってカテーテル先端が自在に駆動可能である。もちろん、先端には高精細のマイクロ視覚センサーと画像プロセッサーが組み込まれており、光ファイバー通信の技術を応用した光ファイバー信号伝送により、リアルタイムで鮮明な患部の画像を見ることができる。これは、オリンパスが培ってきた高度な光学技術とデジタル機器制御技術に、さらに21世紀に向けて技術の蓄積を行ってきたマイクロマシン技術とが融合することで実現したのである。この技術は、顕微鏡で養った光学技術、液体ハンドリング、精密技術、材料工学などの結晶である。 また、遺伝子診断の分野でもオリンパスの高精度ゲノム解析装置が活躍している。ここでも基幹センサーデバイスはオリンパスが得意とするマイクロマシン技術の応用によるものである。シリコンチップ上のDNAキャピラリーは多機能の化学分析を行うことができるマイクロ反応容器となっており、解析には同社の高度な光学技術が応用されている。 これらの能動型マイクロカテーテルやゲノム解析技術によって、あらゆる手術における患者への負担が軽減され、かつ患者に応じた適切な治療が可能となった。マイクロ能動カテーテルによる微細な患部の発見や、患部への医薬品マイクロカプセルの直接投与が可能となったのである。1960年頃の映画「ミクロの決死圏」が現実のものになろうとしている。 これにより、先進諸国で問題になっていた高すぎた医療費は2010年、初めて前年とくらべて減少に転じた。オリンパスの提唱したホールサージャリー(hole surgery)は、外科手術の場合、従来のオープンサージェリーなら入院日数が平均20−30日かかっていた。それがホールサージェリーなら1日の日帰り入院で済むからだ。入院にかかわる看護体制やベット代などが不要となり、医療費高騰問題はついに決着に向かって大きく前進した。薬漬けや長期入院を劇的に減らす一方で、患者のクオリティー・オブ・ライフを第一に考えなくてはならない。 表: 20日間入院の一般的ケース 【1950年 日本発世界初の胃カメラ】 オリンパス光学は、世界で初めて胃カメラを開発した。それまで、内科医療では、患者の症状を見て対処的に病状を診断するしかなかった。がんの場合、早期発見が患者の命を左右する。より直接的な解決方法を求めて、体内を撮影できる小型のカメラができないか、一人の情熱あふれる医師、宇治が開発に執念を燃やしていた。その執念に押されるような形でオリンパスの開発者2人が、定時5時を過ぎてから真夜中まで、なんとか1年程度の歳月をかけて完成させたのが胃カメラであった。胃の中でフラッシュを焚く、真っ暗な中でピントを合わせる、胃の中を360度写すことができる操縦性。金型技術、材料、光学技術、精密加工、コントロール技術などが、世界発の発明を支えた。 この発明によって、内科医療でレボルーションが起こった。 対処療法に陥っていた医療を救った。胃潰瘍の状況がはっきりと胃カメラに映し出された。開発者であるオリンパスの杉浦氏は退職し、その生涯を他の医療機器の開発に費やした。 また、医師宇治氏は、将来を嘱望されながら、大病院をやめ、大宮の町医者として再出発することを決意した。 そのときから、オリンパスという会社のDNAには、人間と人間とのつながりを信じ、医療現場の黒子に徹するという信念が組み込まれた。 【2002年現在 人と人のつながりが財産になった会社】 医療の現場は戦場だ。一分一秒を競う戦場だ。「あのときこうしていれば、こう処置しておけば」。そうやって多くの医者が、患者の命を救えなかったことに苛んできた。医者1人1人のそうした自責の念。医療現場の改善、手術のプロセスの改善は、個々の最前線でがんばる医者たちに寄っていた。こうはできないものか、この道具はここがなんとかならないのか。そうした医者とのカスタムニーズに1950年来こたえてきたのがオリンパスだった。 カテーテルひとつとっても、医者は同じ手術に数本を用意する。ある患者には合っても、ある患者には合わない仕様がある。患者一人一人が違うように一つ一つが違ってなければならない。医者にとっても医療器具は、野球選手がバットやグローブにこだわる以上に「道具」にこだわるものだ。手にとった感触、器具の数グラムの重さの違いで、手術の出来が変わることは許されない。そういうカスタム的な要求を受けると、オリンパスはすぐに試作した。 そうやって50年間が経った。 【オリンパスの要素技術・強み・事業分野】 同社は、1994年に策定した「経営ビジョンFOCUS21」に従った活動を着実にこなしてきている。「SOSIAL IN」という理念に基づいた活動方針として、(1)グローバル優良企業(2)オプトデジタルテクノロジー(3)イノベーションマネージメントを掲げ、これらをブレークダウンして着実に実績を上げてきているからである。これらの考え方は、社長からのメッセージとして投資家へ発信されてきた。 また、同社の事業の原点は国産第1号の光学顕微鏡に始まる「光学技術」であり、これを核(強み)にするとともに、デジタル技術を融合させた「オプトデジタルテクノロジー」を強力に展開することで、カメラやデジタルカメラなどの映像機器、MOなどの情報機器、半導体検査装置などの工業機器、ゲノム分析装置などの分析機器、そして冒頭に述べた内視鏡などの医療機器などの各分野でのビジネスを展開している。 さらに、同社ではカメラ用などの半導体集積回路を製造しているが、同社と半導体の出会いは20年前のMEMSセンサー開発への取り組みに遡ることができる。高性能のマイクロマシンには半導体との一体化が不可欠である。すでに、オリンパスではMEMSデバイスをDNA電気泳動チップなどとして実用化している。このようにオリンパスにとって、光学と半導体とマイクロマシン、そしてこれらのデジタル制御技術は切り離すことのできないコアテクノロジーだ。 【内視鏡 オリンパスの存在理由】 4000億円あまりの売上の内、2000億円程度は内視鏡によるものである。カメラ分野は1700億円程度である。また、内視鏡関連では実に70〜80%もの世界シェアを獲得しており、販売ネットワークやメンテナンス事業も強力である。さらに営業利益率も20%程度と高採算である。これは、50年間の人と人とのつながりのうえに成り立つものであって、参入企業は今後も出てこない。 現在の内視鏡市場は緩やかな成長を続けているが、消化系では、今後はディスポーザブル化の進展によってさらなる成長が期待できる。内科で起こったことが、外科でも起こっている。 4月に発表されたテルモとの提携もこれを狙ったものと思われる。さらに、内視鏡はよりよいものが開発されればその分既存品の置き換えが進む。現在、脳外科では冒頭で紹介したマイクロマシン技術が普及し始めた。能動型マイクロカテーテルが開発されれば、急速な置き換えのみでなく、未来の治療方法として広く社会に受け入れられるであろう。このときの同社の利益成長は年率50%以上が予想される。手術をしても入院不要になるということで医療費が大幅に削減できることになり、社会的なニーズ、時代が要請するニーズを満たすからだ。 医療セグメントだけで、現在のオリンパスの価値は説明できる。 【付属する分野に対するコメント:デジタルカメラ】 現在は、内視鏡が利益の80%以上を稼いでいる。最近爆発的に成長しているデジタルカメラの分野では、同社はオリンパス・富士・ソニーの3強の中で世界トップシェアを誇る。同社のデジカメ民生市場導入はトップではなかったが、従来のカメラルートだけでなく、パソコンを扱う電気店ルートを迅速に新規開拓したことが今日のトップシェアに繋がっている。 従って、直近での売上と利益成長分野としてはデジカメが期待できる。現在の普及率は10%程度である。2000年度の世界市場は2500万台で1兆円程度、このうちオリンパスのシェアは25%程度と思われる。この分野は今後も急速な成長が見込まれる。同社では生産を中国で行うなどのコスト低減に努めており、販売力も世界規模で強力である。利益率が5%までいけば、営業利益が50〜100億円のオーダーで上積み可能である。 設備投資ゼロ、究極のブランド事業である。利益率は低いものの、投入に対するリターンはそこそこであり、事業価値はプラスを維持できるだろう。 テルモがPER,PSR,EV/EBITDAでも大きく買われているが、テルモ独自の高度医療機器の強みによるものであろうか。この点ではオリンパスの医療機器も同様の強みがあり、内視鏡分野にディスポーザブルタイプのものが普及し、テルモとの提携によるシナジー効果が顕在化してくれば、利益を押し上げる要因になると見る。5年後では医療機器による利益上昇は年率15%程度と予想される。この場合はデジカメと合わせて40%にもなる。ちなみに医療機器分野はデジカメほど景気の影響を受けにくく、シェアが極めて高い分、激烈な競争に巻き込まれることもない安定収益源である。 【そして2020年 全盛期】 2020年、オリンパスのマイクロマシン技術が医療機器分野でブレークして全盛を極めると予想される。この段階で現在のソニーレベルの規模には充分到達可能である。時代はナノテクノロジーとバイオ全盛となる。オリンパスはこれに関するキーテクノロジーを保有している。異物などの摘出作業を除いて、体を切開するという手術はほとんどが消え去った。オリンパスの内視鏡売上は外科市場を捉えたことにより、5000億円を突破した。 ゲノム分析器で、早期の発見、ひとりひとりの個体差による治療が可能となった。 ************リスク要因************** 【為替】 消化器系内視鏡の生産拠点は長野。売上の60%は海外。よって、為替は収益変動要因になる。ただし、シェア70%を背景に価格交渉力は高い。1円で7億円程度の利益変動要因になる。10円なら70億円。決して低い数字ではない。 【デジカメの価格低下】 OEM供給なので、製造リスクはない。在庫リスクはある。このセグメントは設計のコミットとなっている。あまり期待はできない。 【新規事業】 MO(光磁気ディスク)は海外展開厳しい。プロジェクターを並列に使って、大型映像を再現するソフトウエアは独自技術だが、未知数。また、光スイッチは将来期待できるが、数年は貢献なし。DNA分析器は、期待製品だが、これも未知数だ。 すなわち、医療事業以外にオリンパスを買う理由はない。補助金精度や医療制度は、入院や薬代には厳しくなるが、手術は逆に補助が上乗せになろう。 【経営】 8年の岸本体制が終わり、今期から菊川前常務が社長となる。海外営業、宣伝部長を歴任。歯切れのよさが目立つ。さらなる株主重視策を打ち出すと期待される。(満月&大原)
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