稲畑産業(東8098)
☆☆
メルマガ・HP読者から、「稲畑産業を保有しているから調べてほしい」との依頼。どこかのブローカーが、900円目標でリコメンドしていると聞き流していたので、記憶を辿り遂に到着。まずは四季報を捲り特色をチェック。
住友化学系の専門商社で、住友製薬の大株主でもあり、電子材料も扱っている。事業構成は、情報電子25%・住環境15%・化学品22%・合成樹脂31%・食品他7%と、思った以上にバランスが取れている。貿易比率は20%と、為替はあまり気にしなくてもよさそうだ。
次に本文。合成樹脂市況安、化学品も輸入品に敗退。LCD(液晶)向け電子材料好伸、果実等農産物輸入増で高粗利部門が健闘と書いてある。つまりおいしい部門の一部は市況でブレル可能性アリだ。東南アジアも収益復調、人件費他営業諸経費削減か・・・。
左上の資本移動。最近は公募増資をやっておらず96年4月に転換社債95億円発行と、詳細を見るために四季報後ろの方にある転換社債のページを捲ってみる。残存91.2億円とほとんど転換されておらず、転換請求最終日も2003年とまだ先。株価上昇時の上値抵抗となる株転も、転換価格が807円なので気にしなくても良い。株価は3−4年前の半値だ(安値は98年の275円)。
資本金は約58億、発行済は約5600万株、時価総額は約240億とビッグファンドは当分出そうにないな。有利子負債が多いのは商社特有、しかし自己資本比率17.8%は低い(公募をやっていないし)。
ただ1株当り純資産396円は時価と近く、安心感に繋がる(必ずしもとは言えないが)、金融収支は黒。
大株主を見ると、住化・DKB・のあとLBSS6250ケルムズ一体なんだ。その後が問題。住生・住銀・住信と今後の持合い解消が気になる。その下の横文字は海外口座のものだ。更に下に記してある外国は外人持ち株比率が7367千株で13%ということだ。右下の銀行欄はDKB・住友・東三と合併による影響はなさそう。
以上が四季報をざっと見た印象。
では本題に入ろう。
売上の約半分がケミカル品(従来型とでも呼ばせて頂こう)で、残りの分野特に情報電子や医薬中間体などに経営資源を集中させ、中期経営計画を掲げ事業改革を断行するというもの(断行とはいいすぎかな?)。
情報電子部門はマスクブランクス・シリコンウエハーの表面保護に用いられる材料が好調(シェア5割)、TFT(LCD)向けに偏向板など国内外とも好調。子会社で生産しているハンドラーが上期より輸出回復、プリンター向けインク原料の好調など、今・来期とも堅調な伸びが期待できる。
住環境関連は、木材の輸入販売を行っており、企画などトータル力があるため町の工務店には有益な存在のようで、決して好調とは言えない住宅マーケットにおいて、足許そして今後堅調な推移が期待できそう。
食品分野では、シンガポールでエビの養殖を行っており、かつてはおいしい分野であったが最近は単価が下がり、その分中国のアロエなど果汁の輸入販売で利益を確保しており、売上こそ全体のなかでは小さいが粗利率は高い。
現状、売上の半分を占めるケミカルが足を引っ張るものの、好採算な分野が牽引しており、関連の住友製薬の連結効果もあり、今後の業績は期待できよう。
同社は最近、中期経営5ヶ年計画を打ち上げた。2004.3期に単独売上3000億、経常利益50億、連結売上3600億、経常90億と医薬中間体・特殊化学・情報電子で売上の5割、経常利益の6割を稼ごうというものである。
- 情報電子:今期比売上67%増の956億、経常利益3倍増の21億
- 化学品:26%増の630億、経常利益は3倍の10億
- 住環境:30%増の459億、経常利益は6倍の6億
- 合成樹脂:7%増の763億、経常利益は80%増の9億
- 食品分野:19%増の192億、経常利益は倍増の4億
という計画だ。
為替は輸出部門が1$=110円、輸入部門が1$=120円で見ている。
投資判断は☆☆にしておこう。
同社を信じるかどうかは読者の皆様が判断してください。
12月21日引値431円