近畿日本ツーリスト(東9726)
「21世紀の成長企業」といえば、一般的には生命科学や情報通信、ナノテクノロジーなどの超ハイテク先端産業が挙げられます。しかし、こうした先端分野は勿論、21世紀はゆとりある生活を求める国民意識の高まりや、経済的、時間的に余裕ある「富裕高齢者」の増加から、「観光」が成長産業になるとの見方が出ています。
その一例として、経団連は昨年10月17日、「21世紀のわが国観光のあり方に関する提言」を公表、観光の意義と重要性を説いています。
実際、観光は旅行総消費額で見ると約20兆円と名目GNPの約4.8%を占めるほか、波及効果として、48兆円の生産高と410万人の雇用を創出しています。これは、旅行業やホテル、旅館業のみならず、航空、鉄道、船舶等の運行、農業、外食産業等のサービス業、物産や旅行グッズ生産など極めて広範な業種にまたがるためです。
また、わが国からは年間で1,636万人が海外旅行に出かけ、4兆6,695億円を消費するのに対し、外国人の訪日旅行者数は日本人海外旅行者数の4分の1にあたる444万人、消費額は7分の1の6,497億円にとどまっています。当然、国際旅行収支は4兆198億円の大幅出超となっています。
今後、観光産業が成長するには、観光客増大、とりわけ外国人旅行者をいかに増やすかがポイントとなります。この点においては、わが国政府は昨2000年9月より、中国の訪日団体観光客について、若干の制限付きながら観光ビザの発給を解禁しています。また、今年春には、「ユニバーサルスタジオ」が大阪にオープン、ディズニーランド同様、東南アジアからの観光客の増大が期待されます。さらに、2002年5月からの日韓共催ワールドカップ(サッカー)も大きなプラス材料。このほか、2005年に愛知県で開催される「日本国際博覧会」(愛知万博)も、半年間の会期で内外から延べ1,500万人の入場者が見込まれています。
関連企業は多岐にわたりますが、今回は、近畿日本ツーリスト(9726)を取り上げてみます。当社は、1947年5月に設立された近鉄系の旅行業者です。1970年の大阪万博では180万人の旅行客を取り扱った実績を持つほか、75年には総合旅行業者として業界初の株式上場を果しています。また、90年には全世界オンラインシステム「テラノス」を稼動させる一方、95年にはインターネットのホームページ「Tourist Village」を開設、99年からは店頭でのデビットカード決済を開始するなど、常に業界では先駆者的存在となっています。
取扱高では、JRグループ中心で設立したJTB(日本交通公社:2000.3期連結営業収益2,893億円)に次いで業界第2位。国内282ヵ所、海外26ヵ所で事業を展開、年間総販売高は7,255億円に達しています。ブランド別では一般国内ツアー、宿泊情報の「メイト」、海外ツアーの「ホリディ」が双璧ですが、豊かなシニアを対象とした国内・海外ツアーの「クラブツーリズム」やネットを利用した「近ツーのe(イー)旅」も著名です。
また、訪日外国人旅行者向けのインターネットサービスにも注力しており、2000年1月より、即日予約可能な宿泊プラン「Japan Quick Easy Hotel Plan」(ホテル数173軒)に外国人の間で高人気の和風旅館(35軒)を新たに設定し、年間5,000人の宿泊を取り扱う計画です。
なお、前2000.12期連結業績は、人員削減を中心としたリストラ効果に加え、海外旅行の好調、近鉄エクスプレスの株式売却益約23億円の計上により、売上高で1,200億円、前期比13%増、経常利益で30億円、同12%増、当期利益で14億円、同220%増と2期連続で黒字を確保したもようです。株価は予想PERで約13倍ですが、前2000.6期(中間)において単独繰越損失146億円を残している点が要注意です。
とりあえず今回は、情報提供のみということにしますが、上記観点より、「観光」産業にも目を向けられてはいかがでしょうか。(駄洒落)
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