No.
日付
タイトル
執筆者
20
2001/08/31
雇用関連銘柄
駄洒落商会会長
19
2001/08/31
円高と構造改革
生涯遊人
18
2001/08/30
イチオシ銘柄(台湾編)
大原部長
17
2001/08/30
日本の半導体産業はなぜ敗北してしまったのか
大原部長
16
2001/08/27
当面の投資作戦
=都市再生関連銘柄の押し目買いとハイテク株のリバウンド狙い対処で=
炎のファンドマネージャー
15
2001/08/27
炎がお盆のシーズンに読んだお奨めブック
炎のファンドマネージャー
14
2001/08/24
超臨界水&チタン
駄洒落商会会長
13
2001/08/24
為替相場動向
生涯遊人
12
2001/08/23
自動車株(ホンダ)
両津勘吉
11
2001/08/20
電機ハイテク株の買いタイミングと戻り幅を探る
炎のファンドマネージャー
10
2001/08/20
炎の注目株フォロー:オークネット(9669)
炎のファンドマネージャー
9
2001/08/10
孝行息子の家出
生涯遊人
8
2001/08/09
テクノロジー研究:セラミックハニカム2
両津勘吉
7
2001/08/08
投資のヒント 簡単に上がる株、時間をかけて上がる株
炎のファンドマネージャー
6
2001/08/07
分布定数回路
大原部長
5
2001/08/06
炎の通勤風景
炎のファンドマネージャー
4
2001/08/06
炎のニューフェース紹介
炎のファンドマネージャー
3
2001/08/03
円安政策という切り札
生涯遊人
2
2001/08/03
頑張れ!日本企業!日本の投資家!
駄洒落商会会長
1
2001/08/02
テクノロジー研究:セラミックハニカム
両津勘吉

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20
2001/08/31 雇用関連銘柄
駄洒落商会会長

 

 わが国に空前の「雇用流動化の時代」が到来しようとしている。

 国内景気の減速から7月の完全失業率が1953年の調査開始以来、過去最悪の5.0%となるなど雇用情勢の悪化が進行。完全失業者数は330万人(原数値)で前年同月より23万人増加、季節調整値は338万人と過去最悪となった。自発的離職も増加していており、15〜24歳の失業率が9.4%と高水準に達することも特徴だ。

 さらに、グローバル化による産業空洞化、「暴風」とも形容される未曾有のIT(情報技術)不況などの影響から、「ハイテク立国」を主導してきた総合電機各社も大規模なリストラを待ったなしで迫られている。NEC、富士通に続き、東芝が18万8000人の従業員を2003年度末までに10%削減、うち国内で1万7000人を減らすことを発表。日立製作所もグループの従業員34万人のうち、2万人前後を削減する方向で検討を開始した。

 こうしたシクリカルな要因による雇用の悪化に加え、小泉内閣が標榜する「構造改革」(不良債権の最終処理など)が推進されれば、短期的には失業者数がさらに増大する可能性は極めて高い。 構造改革に伴う失業者増加予測は、竹中経済財政相が10〜20万人程度としているのに対し、日本総研は150万人、ニッセイ基礎研究所は130万人としている。いずれにしても、景気の循環的要因、構造改革進展により、単純計算によれば完全失業率で7%近い情勢が見込まれることとなる。

 これを受け、政府は2001年度補正予算の編成を視野に入れる一方、雇用の受け皿作り、転職支援、職業訓練など政策を総動員することにより事態に対処する構え。求人と求職のミスマッチや職業訓練の不足にともなう「構造的失業」に対応するため、能力開発の強化、職業紹介・人材派遣分野の規制緩和を急ぐ一方で、IT、医療・福祉など成長分野の雇用増加を目指す意向。新しい基金を創設することにより「緊急交付金」を地方自治体に配分し、自治体が公立校の臨時教員を採用したり、企業やNPO(非営利組織)に介護・福祉や違法駐車の取り締まりなど公的サービスを業務委託することにより、数十万人規模の雇用の受け皿を作る案も補正予算に盛り込む方向で検討中だ。

 また、民間の人材紹介会社を通じて離職者を雇用した企業に、一人当り70万円の助成金を支給するなどの雇用対策プログラムも作成している。 従来、わが国より恒常的に失業率の高かった米国では、規制がないため労働派遣・職業紹介事業の市場が発展しており、失業しても次の職が見つかりやすく、平均的な失業期間は短いとされてきた。わが国でも、政府による雇用促進、職業紹介・人材派遣分野の規制緩和は、関連企業に大きなメリットをもたらすことが予想される。

 今後、実施が予想される規制緩和策としては、営業職の派遣期間の1年から3年への延長、ケアハウスへの株式会社参入の解禁、痴呆高齢者を家庭的な環境で介護する「グループホーム」設置に関する規制緩和、製造業務への労働者派遣、有料職業紹介事業に関する規制緩和などが挙げられる。

 一方、過去の規制緩和の実績を見ると、95年の労働省令改正(民間人材紹介の大幅規制緩和)、96年の改正労働者派遣法施行(派遣業種に研究開発、セールスエンジニアなど10職種追加)、99年の新改正労働者派遣法施行(医療、建設、港湾運送、警備などを除き、派遣職種を原則自由化)などにともない、市場は大幅に拡大してきた。

 既に株式市場では、関連銘柄が人気化しているが、ここでもう一度整理してみたい。

 人材派遣関連では、メイテック(9744)、アルプス技研(4641)、クリエイティブ(4715)、キャリアバンク(4834・札幌)、インテリジェンス(4757・店頭)、プロフェシオ(4721・店頭、旧名パソナソフトバンク)などがあげられる。

 このうち、メイテックは足元業績の好調が目立つ。第1四半期(4〜6月)の売上高は163億円、前年同期比8%増、営業利益は25億円、同2%減となった。営業減益となったのは、昨年に比べ採用を拡大したことが要因で、新卒技術者の稼働率が高まる下期には利益率の回復が見込まれよう。むしろ、稼働率が新卒技術者を除いて98.6%、前年同期比0.3ポイントアップと高水準で推移していていることを評価すべきだろう。
 稼働率堅調の要因としては、国内企業が景気悪化のなかでも研究開発コストを維持しようとしていること、国内製造業のなかで戦略的にアウトソーシングを有効活用する動きが広がっていること、6月末時点での派遣要請受注残は700人程度と高水準であること、などがあげられる。これは、構造的に継続するものと予想され、規制緩和と相まって同社の業績を後押しすることとなろう。

 また、クリエイティブは日立造船(出資比率50.8%)グループの人材派遣企業。前2001.3期の日立造船向けは売上構成比55%であったが、金融・IT関連企業向けの拡大にともない、今後は減少の見込み。

 職業紹介関連銘柄としては、ディジットブレーン(9653)、日本ドレーク・ビーム・モリン(4688・店頭)、ヒューマネジメント(4778・店頭)、エン・ジャパン(4849・ナスダックジャパン)、ピーエイ(4766・東マザーズ)などが挙げられる。

 ディジットブレーンは今8月、ディジットとブレーンドットコムが合併して誕生。「アイキャリア」という転職情報雑誌が好評を博しており、今後大株主であるソフトバンクファイナンスの情報コンテンツの戦略的拠点として注目が集まることが予想される。

 また、日本ドレーク・ビーム・モリンは、アウトプレースメント(再就職支援)では国内シェア30%を誇る大手企業。リストラ企業の離職者に対するカウンセリング、面接訓練、再就職情報の提供、個室スペースの提供などが主な業務。料金の支払いは元の雇用企業が支払う形態で、1従業員あたりは100〜150万円。事業環境は小泉内閣の「構造改革」推進で追い風が吹く公算が大きく、10月より施行される再就職支援法で、一度に30名以上リストラする企業に再就職支援が義務付けられることも恩恵は大きい。受注残も大きく、今2002.3期業績は、174%経常増益が見込まれる。

 また、請負関連銘柄としては、ベネッセコーポレーション(9783)、フルキャスト(4848・店頭)、グッドウィル・グループ(4723・店頭)などが挙げられる。

 ベネッセは、「進研ゼミ」の苦戦が続くものの、介護・育児分野の伸長に期待がかかる。

 フルキャストはブルーカラー職種の短期業務請負が中心の企業。2001.9期連結業績は、経常利益で24億円、前期比57%増と好調見込みで、今後も高い収益成長が見込まれる。

 グッドウィルは、グループ企業のコムスン(訪問介護専業)が4‐6月に初めて営業黒字となるなど、介護ビジネスが軌道に乗る兆しが出てきたことが注目される。

 このほか、政府は需要不足による失業への対策としてサービス業の育成を打ち出している。上記銘柄群のほか、セコム(9735)、ニチイ学館(9792)、ジャパンケアサービス(7566)なども目が離せないといえよう。(駄洒落)

 

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19
2001/08/31 円高と構造改革
生涯遊人

 

  円高が止まらない。

 前回、述べたように、リパトリエーション絡みの売りが断続的にでている。
 また日本の輸出企業の売りも、レベルを切り下げてきている。以前は、121−120円台で売りたがっていたものが、120円割れでも売ってくる状況になっている。
 リパトリ玉に関しては、9月中旬位までは継続する模様なので、暫くは円高下の株安という最悪の状態が継続するかもしれない。116−117円をサポートしている限りは問題ないが、115円を切るようなことになると日本経済には大きな負担となるだろう。そのためにそのレベルでは、政府、日銀はなんらかのアクションをとるのではないか。介入警戒感はこのレベルから下では出てきている。 財政再建で、財政出動がこれ以上できず、また更なる金融緩和ができない中で短期的な景気回復策として残された手段は、円安誘導しかない。

 金融緩和の手段を工夫するとか、国債の買い上げとかの議論はあるが、まだ日銀はそこまで覚悟を決めていないようだ。 経済がこのままだと、いずれはそこまで追い詰められるかもしれないが、責任をとりたくない日銀としては、現状ではそこまでは踏み込めないだろう。

 円安は周辺窮乏策、あるいは、円安に頼って構造改革が遅れるというのが、日銀の反対理由だろうが、いまや世界の工場、中国は7.5%成長でWTOにも加盟、オリンピックも開催と、先進国の仲間入り目前という勢いだろう。

 そのうち格付けでも日本は、追い越されてしまうのではないか。

 しかし日本は不思議な国である。格付けが落ちても世界に1兆円もODAをばらまき、周辺の国の心配をして為替政策もままならない。 ほかの国の心配をするより、自分の国の心配をして欲しいものだ。

 政治家は自分の選挙区と利益団体、官僚は、自分の役所のことしか考えないことは、今回の各省庁の一般公共事業予算の要求を見ればわかるだろう。
 治山治水、道路、港湾空港鉄道、住宅都市環境整備、下水道、農水省の配分がまったく変ってない。これからこの配分がどれだけ変化するかが、小泉内閣の腕の見せ所だろうが、役所サイドとしては、とにかくいままでの権益と予算は、確保したいということだろう。

 国敗れて、役所ありだ。

 そもそも小泉改革は、なんのために行われているのだろうか。政府サイドの無駄を省き、民間の活力を引き上げるのがねらいだろう。
 究極の構造改革は、減税して小さな政府を作ってあとは民間にまかせることだろう。小泉内閣は、構造改革という手段を連呼するのではなく、それによってどんな社会を作りたいのか示すべきだろう。ビジョンを示すのが政治家の仕事なのだから。

 いずれにしろこの改革を本当に遂行する気ならば5−10年かかるのだから。(生涯)

 

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18
2001/08/28 イチオシ銘柄(台湾編)
大原部長

 

 体操選手のウルトラC、一流ピアニストの指さばきなど、能力のあるものが絶えず努力してはじめて達成できるものがある。毎日一定以上の努力をしてはじめて達成できるものがある。製品開発もプロセスの改善にも、分野が違えども、そこにはウルトラCが必ずある。絶対に真似の出来ない技がある。真似のできない運営がある。そういうものがあるということを信じる企業だけが成長する権利を手に入れる。


●MEDIATEK ☆☆☆☆☆

(全文紹介はhttp://club.lycos.co.jp/bbs/list.asp?cid=l0600001 億近ライコス掲示板「居酒屋億近」#114を参照ください)

【ポイント】

 DVD・CD−RWなどのチップセットシェアトップ。CMOSにおけるアナログフィルタ処理に特徴のあるファブレス企業。無線分野におけるワンチップソルーションを目指す。台湾におけるファブレスの中心的存在。社員270人。PER20倍。勃興するファブレス企業群−台湾ファブレスの代表選手。

「今期のDVDの低迷は誤算だった。シェアを落としている」(ソニーIR)

 米国の年金運用機関に勤める私は、ソニーのDVDにおける「取りこぼし」を深刻に受け止めている。MSCIで3%のウエイトを持つソニーを「アンダーウエイト」としているのはそのためだ。米国の年金顧客からは絶えず説明を求められる。Mr.大原はどうして世界の勝ち組みソニーをアンダーしているのかと。

 誤算はUMCの設計部隊がスピンオフしMEDIATEKが昨年開発したICにある。0.3ミクロンのCMOSプロセスというありきたりのICが、世界を震撼させた。MEDIATEKのDVDプレイヤー向けチップのシェアは、1999年にゼロ。2000年に20%をこえ、現在は30%を突破しているだろう。

 DVDのダイヤグラムは、レーザ読み取り、RFアンプ、サーボ、CPU、デコーダー、D/Aコンバータ、DSPなどで構成されている。このRF機能は、従来バイ・ポーラが支配していた。これを台湾の30人のチームがCMOSで雑音を取り除くことに成功、それにより、RF部分を取り込んだDVDワンチップが誕生した。RFは日本企業の独壇場だった。このDVDに限らない。たとえば携帯のRF部においては、高機能、高性能は化合物半導体のオペアンプを使用、また、将来はSiCの開発に目処をつけている。ハイエンドは日本がまだまだ覇権を握っている。しかし、ローエンドはCMOSにやられた。

 CMOSのRFは、IBMやルーセントなど米国勢が先行している。日本ではわたしが注目しているのは新潟精密というファブレスがある。台湾ではロジック=デジタルを意味するぐらいアナログはまだまだ弱い。しかし、このように局地戦では、台湾がアイデアで日本から市場を奪い取る例が出てきている。

 ワンチップ化の恩恵は、プリント基板がそれによって片面で処理できることに集約される。トータルなコストは30%程度下がる。材料費の塊であるセットアセンブリーにおいて、片面の優位は圧倒的だ。

 ファブレスの視点は、いかにビルドアップを避けるチップセットを開発するかという点に尽きる。 アイデアは無数に出てくる。だから起業する。EMSやセットメーカが絶対に乗ってくるのは、それが決定打と知っているからだ。

●ファンドリー企業の存在が、自国のファブレスメーカーを急速に育んている。
●設計やソフトと題目のように何年も唱えている日本企業は、実際は、メモリー一辺倒でコモディティと心中志向の経営。製造設備を自分で破棄することさえ出来ない
●ファブレスのアイデアは無尽。両面を片面に、ビルドアップを両面にするICさえ開発すれば、それがEMSから採用される。CMOSソルーションは アイデア勝負だ。


●NANYA ☆☆

 【チキンレースで最後まで残ると豪語 NANYAの挑戦】

 チキンレース:猛スピードで崖へ向かって突っ込み、寸前でブレーキをかけ、だれが一番、崖っぷちまで近づけるのかを競うレース。

「Mr.大原、NANYAは逃げない。NANYAはDRAM以外に出来るものがない。日本勢はメモリー以外に逃げる道がある。NANYAは逃げる道がない。だから、DRAMにフォーカスする。DRAM以外にフォーカスするつもりはまったくない。そう日本メーカに伝えてくれ」(NANYAの経営者)

 限界利益を大きく下回る価格でDRAMが取引されている。
 需要が冴えない中、供給は毎月、毎月増えている。

「これからもどんどんつくる。今月も先月より20%も多く製造した。来月は今月よりも20%多く製造する。設備はこれからも常時100%稼動だ。つくってつくってつくりまくる。それがNANYAだ」(NANAY経営者)

 DRAMのコストは、三星が3.5ドル、NANYAは3ドル。日本勢はここに書けないぐらい恥ずかしく高いコスト。
 つくってもつくっても赤字になる。価格は2ドルを下回る。DDRだけをどんどんつくるのがNANYA戦法。一見、無謀に見えるが、経営者の決心は固い。

「日本勢を完全に撤退に追い込む」(NANYA)

「10日以内にこの業界はビックニュースが発表される。いいニュースだ」(NANYA)。

 そして、先日、東芝のリストラのニュースが飛び込んできた。日立や松下も続くだろう。しかし、手のうちようがない。日本勢はプロセスに強みをもっていると思い込んでいるから。

●日本は半導体のプロセスが付加価値を生み出すことは難しいということがわからない
●日本はコモディティはコモディティということがわかっていない
●台湾はコモディティをコモディティとして扱い経営している

NANYAについて詳しい全文紹介はhttp://club.lycos.co.jp/bbs/list.asp?cid=l0600001 億近ライコス掲示板「居酒屋億近」#115(無料)を参照ください


●YAGEO ☆☆☆☆☆

(この企業について詳しい全文紹介は http://club.lycos.co.jp/bbs/list.asp?cid=l0600001 億近ライコス掲示板「居酒屋億近」#115(無料)を参照ください)

【村田を負かす決意−トータルなソルーションを目指す受動部品メーカ】

【ポイント】

 受動部品総合メーカ。日本でいえばTDKと村田とロームを足して3で割ったような会社。PER15倍。
 LTCCはペンシルベニア州立大とあるドイツメーカとの共同開発で2003年商品化を目指している。
 受動部品の会社には珍しく、設計志向強い。EMSと共同で設計も手がける。日本の強敵となろう。
 高付加価値のコンデンサーにも注力。積層セラミックコンデンサは、1年前250層、今350層、年末に450層。現状で22マイクロファラッドをすでに量産している。セラミック粒子は3ミクロン。

 もともと抵抗器メーカだったYAGEOをここまで成長させたのはなんのなのか。フィリップスのコンデンサ部門を買収するなと積極的な買収戦略をとっている。
 設計に力点をおいていると豪語するだけあって、500人が設計に携わっている。そして、東芝などのセット部門とすでに共同で設計に入っている。将来はLTCCを絡めて高周波ボードやチップセットを設計していくだろう。

 そう、受動部品からスタートして、設計へ展望をもつ。これはロームと同様だ。違うのはロームが弱い積層セラミック技術がすでにある。そして、シリコンには興味がないが、アクティブではファウンドリーとファブレスとの共同設計を目指すという水平分業だ。YAGEOのLTCCと有力ファブレスのICとの組み合わせで、セットメーカのニーズにこたえていく。

●ロームはソニーや松下などの民生メーカーとのつながりがある
●Yageoは台湾のセットメーカーや最大手のEMS群が顧客ベースだ。
 顧客は増えつづけている。まず、EMSからの新規受注が大きい。そのため来期も設備投資は続行。ここで大きくシェアを伸ばす考えだ。稼働率は60%をキープしている。たいしたものだ。
 すでに抵抗器の台湾におけるシェアは50%となった。将来はコンデンサでも世界シェア40%を目指す。
 フェライトでTDKを、セラコンで村田を追いかける。
 チップ抵抗でロームに追いついた。そしてデザインを強化。怖い。


●UMC☆☆☆☆

【洗練された経営−UMC☆☆☆☆ よい競争で利益率を確保】

 台湾マスクはマスク製造の専門だが、TSMCはマスク部門も有している。まずそこにTSMCの底力を感じている。
 UMCは通信に強い分、今年は冴えないが、将来性は勝る。
 TSMCはPCに強く、現状は健闘。実はこの2社、価格競争をしかけない。マイケルポーター式に呼べばお互いに「よい競争相手」なのだ。

 両社はIPが違う、顧客が違う。そしてお互いを意識しているが、敵視していない。

 さて、UMCは8インチ設備の1/3をこの3週間で売却完了し、売却益さえ計上できる経営スピード。本当に驚愕した。そして、だめな社員からカットするリストラ。株主は大いに納得している。突き進む技術革新。製造のグローバルスタンダードを獲得した両者に死角はほとんどない。(足元。9月の状況は20%程度UMCでは改善しそうだ。ハイテクは10月は落ち着いた動きになるだろう)

●UMC設備投資は来期1Hはゼロ 2H状況静観。つまり、多くの半導体装置メーカの来期は限りなく厳しい。まだ、ファウンドリーの生産シェアは13%。これが近い将来40%を越えるとTSMCでは見ている。
 UMCは日立のトレセンティの持分40%を持つ。同時に損しない価格でプットオプションの権利を持っている。日立が300mmを軌道にのせられなければ、UMCは売却するだろう。どうするのだ日立は?
 UMCは1000人のランクの低い従業員のリストラを行った。設備も破棄した。しかし、バランスシートには何千億円相当のキャッシュが保持されている。稼働率が20%台とはいえ、赤字の額はしれている。なんという強さだ。日本で20%台の稼働率でやっていける会社があるのか。
●NanyaなどのDRAMラインは稼働率100%で赤字。UMCなどファンドリーは稼働率が30%台で黒字になる。 秘密は価格だ。競合条件がよい。そのため、
●価格は10%以下の下落にすぎない。

 0.13ミクロンの出荷も始まっている。中国へ0.18ミクロンの施設を渡しても、台湾は0.10以下への自信を深めている。支えるのは、ニコンでも東京エレクでもない。AMATとASMLだ。マスクはTMCと内作で対応する。

 デジタル回路は日本の出番がなくなっている。世界は次のステージにむかって突き進んでゆく。UMCは間違いなく、よい経営の見本だ。よい競合関係をよくつくったものだ。

 憎しみを持つと、人間関係は最悪になる。敵意を持つと、競合関係は最悪になる。よい市場、よい競合の条件は、経営者。そして、参入障壁。デルのようにわざわざ低価格路線を仕掛けることがあれば、ファウンドリー産業もだめになるだろう。消費者はただのものを歓迎するだけ。安くてよければ支持するが、それは当然のこと。安易に安売りを仕掛けると業界がだめになる。業界がだめになると、社会の進歩や技術革新さえできなくなる。TSMCとUMCの関係は競合状態を研究する対象としては最良ではないか。2社の関係は非常に興味深い。(大原)

 

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17
2001/08/28 日本の半導体産業はなぜ敗北してしまったのか
大原部長

 

 【所得税も法人税もない国 台湾】

 1976年4月26日、台湾の工研院管轄下の電子中心(1979年4月から電子工業研究所に改名)は、一団の開発スタッフをアメリカに派遣して、RCAの集積回路技術提供の訓練を受けさせた。1964年に当時の行政院長であった蒋経国氏が国家発展における科学技術の必要性を感じ、「電子産業」をポイントとした発展を決定したときにまで遡る。

 アメリカRCAから直接に集積回路技術を取得する方法をとり工研院が計画を担当。同年工研院は19人の研究スタッフを派遣し、楊丁元氏、史欽泰氏、章青駒氏、許健各氏をリーダーとする4チームに分けて、アメリカでICデザイン、プロセスルール、テスティング、設備等の技術に関する訓練をそれぞれ受けさせた。同時期にアメリカで訓練を受けたスタッフの中にはさらに、MediaTek(聯発科技)董事長の蔡明介氏、TSMC総経理の曾繁城氏、UMC董事長の曹興誠氏、Taiwan Mask(台湾光罩)総経理の陳碧湾氏、Wintek(勝華科技)董事長の黄顯雄氏などがいる。

 その後、工研院を民営化。TSMCやUMCなどがスピンオフし、多くの国策民営企業が誕生した。
 300億台湾ドル(1200億円程度)以上の設備投資を行うと税金は繰り延べられる。 装置産業である半導体前工程企業の多くはこの基準を毎年のように上回ることから、実質的に無税となっている。設備投資の規模で税金をまけるというシステムになっているため、企業買収が活発で規模を追求する経営姿勢の土台となっている。

 優秀な人材を台湾へ引き戻すために、政府は必死に努力した。USの大学院へ渡った人材がリターンするようになった。ボーナスに対して課税をやめた。ベースサラリーこそ、日本の1/2−1/3にすぎないが、ボーナスは日本の数倍ある。たとえば、今年のTSMCのボーナスは300万台湾ドル(1200万円程度)。税金がかからないので、日本の感覚だと7000万円程度のイメージだ。物価が1/3、税金なし。台湾の税引き後の1200万円は、日本の税前ボーナスの7000万に相当する。
毎年は無理にしても、シリコンサイクルの絶頂期にこれだけのボーナスが入ることがわかっている。米国に残るより、故郷で報われる方を多くの留学生が選ぶようになってきている。

●ボーナスには所得税がかからない。無税だ。ベースサラリーを低くして、成功報酬が高い。一流の教育を受けた後に台湾へリターンする人材が増えている。
●多額の設備投資をすれば企業は実質無税となる。M/A志向を高め、国際戦略が明確になっている。
●多額のボーナスや設備投資が、台湾の国内サービス産業を潤している。国家財政は税金が低い台湾が健全で税金が高い日本が破綻寸前。

【台湾の国民性 柔軟でタフ】

 2200万人の人口のうち、98%は中小企業・家族経営企業へ従事している。GDP規模2900億USドル。GDPの20%をハイテク企業が稼いでいる。外貨1090億USドルを保有。負債はGDPの25%にすぎない。

 人々は柔軟で街は活気に満ちている。だめならどんどん業況を変えていく。ちなみに、いま、らーめん屋が流行っている。
 教育熱心。多くは米国の大学、大学院へ進学を希望している。そして、高額のインセンティブに惹かれて多くの学生が台湾にリターンするようになった。
 街を歩くと町工場のような修理屋さんも多い。機械やボルトといった日本の強さも徐々に失われていく可能性が高い。中小企業の底力という点からは、韓国を凌駕している。

●自立志向がたかく、GDPのほとんどを家族企業が占める
●日本とドイツに次ぐ、金型大国

 ここで、台湾について詳しい億ゼミ参加者のしんたくさんに登場していただきます。

「台湾を勉強してみると、日本植民地時代からの伝統であった理科系を子弟を選ばせる(日本時代は社会科学を勉強すると睨まれた)ことにつながり、アメリカで台湾出身の優秀な技術者を生んだこと。家族主義にプラスして、非常に金銭欲強いということも発展のエネルギーで。もともと民族的には、南伝仏教のタイ、イスラム教国と異なり、宗教的に物欲を抑制するものがない上に、大陸からの攻撃に備えて、できるだけ早く儲けて、お金をアメリカに移し、子弟をアメリカに留学させて一旦緩急の場合に備えてアメリカに拠点を作っておくという切羽詰まった環境がなせる技ということもできようかと思います」(しんたくさん)。

しんたくさん、ありがとうございます。

【台湾企業の経営】

 企業経営は明快だ。
 不況になる。設備は売却し、人員もカットする。
 人員のカットは、能力の最下位グループから行われる。
 能力は、作業員なら仕事のスピード、仕事の種類、歩留まり、効率で多くの企業で4段階でランキングがつく。リストラされるのは最下位のランクを受けているものである。

 日本は年齢でリストラする。日系企業の希望退職は50歳以上などの年齢制限があり、若手のやる気を著しく阻害してきた。希望退職という割増金が株主から補填されるため、株主はリストラのコストを毎回支払っている。コストを株主が負担し、企業はよくなるかといえば、悪くなる。やめてほしくない実力ある若手が愛想をつかしてやめてしまうからだ。株主はコストを払って企業は弱体化する。最悪。

 台湾では株主にコストをかけるなど考えられない。リストラはコストをかけないでやるものだと経営者が考えている。コストをかけて人を切るなら誰でも出来る。誰でも出来る経営なら経営はいらない。経営がいらないなら、その企業もいらない。日本の事業を台湾の経営者に話すと、年齢でリストラを一律にやるなど非常に「不公平だ」といっていたのが印象に残っている。

 ファンドリー2強の一角、UMCは8インチウエハーの製造設備能力の1/3を売却することを3週間前に発表した。この3週間で売却価格も決定され、年内に売却益が計上される。この大不況化で設備の1/3を破棄する。だが、短期間で簿価以上で売却が完了した。

 買い手は急成長する中国のファンドリーだ。ラインごとの売却になっているが、中には0.18ミクロンのプロセスが含まれている。中国本土の企業が来年は0.18ミクロンを立ち上げてくる。その立ち上げのノウハウ、運用のノウハウ、システムつくり、顧客の紹介などのサービスをUMCが提供する。設備は破棄するものの、体力は温存でき、中国との友好関係を築く戦略だ。

 日本。リストラや事業撤退でいつもいつも多額の費用を計上。工場閉鎖で多額の特別損失を計上。それはいつも株主のコストだ。多額の費用をかけて、だめな事業から撤退する。それはそれで当然のことだが、どうして毎回そんな多額のコストがかかってしまうのか?

 多額の負担が正当化されるなら、経営者はだれがやっても同じということになる。費用をかけて撤退していよいなら、誰でも撤退できる。日本の経営者は劣っている。株主は寛容すぎるから、経営者が甘えてしまう。膨大な費用を毎回かけて平気な顔だ。台湾では考えられない。役人も国も地方自治体も、企業の撤退に対してごね、法外な要求をつきつける。自治体との話合いは長い時間がかかり、ただでさえ鈍足な日本企業の経営をますます遅くしている。そのリスクはいつも株主が負う。

UMCのリストラ
●リストラは、もっとも能力や出来の悪い従業員から行い、特別な退職金は必要ない
●工場資産の売却はスピーディで工夫に満ちている。特損を伴わないで製造ラインを売却できる

【日本の無策その1−為替】

 だいたい海外旅行のほうが国内旅行より安いという国がどこにあるのだろうか。海外へ行く目的の多くが単なる買い物のためにあるような国がどこにあるのか。
 みんなが海外旅行に殺到するというのは、ハイテクアナリストのわたしから見ると異常な光景であり、マクロ的な見地からは、製造業から一般消費者へ所得の移転が行われているのと同義だ。政府の為替政策は無策。円安誘導せずして、アジアへ対抗できないのは明白なのにどうして何もしないのか。

【日本の無策その2−教育】

 どんどん簡単になる義務教育。方向が逆ではないか?客観的な判断能力を判定する権威ある機関が存在しない。USにはETSという民間のテスト業者があり、非常に客観的なテストを行っている。TOEFL、GMAT、GREなどは、日本でいう広辞苑、アメリカンヘリテッジの辞書に基づいて問題が作成されている。権威ある辞書と民間教育機関が行う極めて客観的な試験。客観的だから世界中から学生が集まる。明確な基準に基づいて運営されているから公平な評価となり、公平だから人が集まっていく。権威と公平。そこから離れていくらトップ30の大学に資金を集めても優秀な学生は集まらないだろう。

 どのくらい客観的な問題かというと、たとえば、GREのあるパートは、論理的な思考を問う。

「ある甘味料を開発した。副作用を調べるため、ねずみ1000匹にその甘味料を与えたら1匹しか癌にならなかった。副作用はないと思われる」
というセンテンスが与えられる。受験者はこのセンテンスのロジックの前提を選ぶ作業をする。回答はこんな感じだ。「健康なねずみが癌になる率は1/1000である」という選択肢を選ぶ。こういう作業を次から次へ1分間という短時間で選んでいく試験である。ETSは、単なる1民間業者に過ぎない。日本でいえば、河合塾やベネッセのようなものだ。しかし、彼らはひっかけ問題を作成するプロであり、受験者はひっかからないために勉強するようなものだ。しかし、その仮定で膨大なボキャブラリーと論理性をつけることが出来る。

 日本でこのような特定の議論を強めたり弱めたりするような試験はないだろう。研究や開発をするうえで思い込みや間違った主観に陥らないで成果をあげるためには、こうした客観的な試験を全国的に普及される必要がある。世界から見れば、日本の大学院への入学の基準がわからない。明確な基準がないので、世界中の人々は日本がデファクトをとるのは危険すぎると思っている。明確なルールがない国になにかを任せるのは危険が大きすぎる。

 台湾や中国の人々の世界観は、日本よりグローバルだ。日本には英検やTOEICという試験がある。これらは日常会話や単語力を測るのには有効かもしれない。しかし、国際的には意味の薄いものにすぎない。TOEFLのほうが、よほど国際的に通用する試験だろう。日本の大学や高校が英検にこだわる姿はこっけいだ。各大学へ入試を任せてきた日本政府の怠慢は取り返しのつかない事態を引き起こしている。

●日本は大学院教育機関の入試の客観性が欠けているので、世界の学生を集める魅力も力もない
●台湾は、米国への留学生を優遇、Ph.Dなども高級で受け入れる
●日本企業は、入社年度で人間を評価するので、日本企業でPh.Dが評価されることはない。たんなる浪人や留年と同じ扱いとなる。博士が冷遇される

【日本の無策その3−年金】

 これほどのデフレを放置しておきながら、企業の年金は毎年3−4%の成長を前提として組まれている。毎年、過去勤務債務が発生。バランスシートは負債の山だ。

 マブチモーター。ほとんどが中国雇用。そしてほとんどが3ヶ月の雇用契約。3ヶ月で企業が負担すべき年金債務は微々たるものだ。バランスシートは現金の山だ。日本で雇用すれば、数十年後に数千万円を払わなければならない。万一、払えなくなれば、差額は株主が負担する。従業員への退職金さえ株主の負担だ。

●中国人を大量に雇っていることは、負債と無関係ということ
●日本人を大量に雇っているということは、大量の隠れ債務を保有しているということ
●日本人を大量に雇っているということは、将来の膨大な特損に備えなければならなくなり、企業は設備投資どころではない。

【日本への投資】

 いったいこんな国に投資をするのは正しいのだろうか。国民は郵貯に預ける。株主は、従業員への退職金を払い、消費者へ海外旅行をプレゼントし、経営者を甘やかし、事業を再編成するたびにお金をドブに捨てる。このように大きなリスクだけを負担し、リターンいつも小さく、その小さなリターンから多くを税金として政府に貢ぐ。そして、毎度のごとく自民党や政府は無策を繰り返す。企業は税金が高いので、税金をごまかそうとする。経営者は税金を払うぐらいなら節税とばかり不要な投資を繰り返す。特損、特損、特損。損の嵐でバランスシートは将来の退職金の支払い義務で隠れ債務と負債の山。

日本人が日本を捨てて海外へ活路を求めるのは当然
●日本企業は東証をすてて米国やアジア市場へ再上場すべきだ。本社は日本以外ならどこでも日本よりはまし

【執念の欠如】

 韓国や中国など、アジアのエンジニアは会社で一日5食をとるという。
 日本の半導体を支えた50歳、60歳の方々は多くは会社に泊まりこんで開発をしていた。いまでさえ、日本の半導体のトップは60歳台だ。若手が育っていない。

 余暇を楽しみたい、仕事は休みたい、でも評価は人並みにほしい。そんなことがあってよいのか?
 余暇を楽しんだ人と余暇を犠牲にしている人と仕事上の評価が同一ならおかしいだろう。日本では評価は同一だ。
 執念がないのに要求だけは一人前。そういう若手が多く、企業は困っている。

 株主なら、雇用はアジアを優先にすべきだろう。客観的な試験を受け米国で教育を受けた優秀な人材を有効に使って経営できるプロだけが求められている。世界から閉ざされた日本の大学で遊んで特別の技能もない学生をどうして雇えようか。技術がなく、語学もできない人間に給料を払う経営者を許すほど株主は甘くない。

●日本は負けに慣れすぎた。負けられないという執念がアジアと違う

【日本沈没とノアの箱舟】

 日本に半導体産業は必要なのか?
 政府や自民党の税調、財務省の役人を見ていると、日本で工場を運営することのリスクを実感してしまう。日本半導体企業のトップは、日本人を連れてノアの箱舟に乗って日本を脱出すべきだろう。このままでは全員が水没してしまうだろう。日本企業は日本を捨てて海外へ移民・移住しなければ復活できないだろう。多くの日本人はすでに日本を捨てた。優秀な人材はどんどん外資系へ移っている。歯止めをかける意思は日本政府にはまったくないように見える。企業ごと、街ごと、空港ごと、港ごと海外へ持っていくしかない。いかなる責任も株主が負い、いかなるリターンも政府が頂くという基本構図がある限り、証券税制など見直しても無駄。基本的な構図は、リスクは株主、リターンは政府。こういう国は長く続かないだろう。投資するのは馬鹿らしくなる。リスクをとったものが損ばかりする国が日本だ(日本では法人税の引き下げの議論が行われているがその引き下げは1%にとどまる。こういう議論を聞くだけで、どっと疲れる)。

●企業努力で勝ち抜けるハイテク企業群:
 ローム、日本ファウンドリー(UMCジャパン)、ソニー、村田、古川、浜松ホトニクス、エンプラス、オリンパス、太陽誘電、日本碍子、マブチ、ヒロセ、パイオニア、HOYA、日本電産、東京エレクトロンなど、特定分野へのフォーカスが定まっている企業。
 一方、多くの垂直統合型企業、多角化企業の多くは規模が中途半端で末期症状。

●日本再生条件(残念だが、確率はいまのところゼロに近い)
法人税率の大幅な見直し(確率ゼロ)
チャリティーやNPOへの寄付金無税化(確率ゼロ)
経済特別区無税化(確率ゼロ)
ストックオプションおよび一時金への所得税免除(確率ゼロ)
共通大学テストの内容大幅改革。日本版ETS創設(確率ゼロ)
移民の大幅な受け入れ(確率ゼロ)
戸籍の廃止(確率ゼロ)

●最終的な手段はこれしかないだろう→日本脱出作戦「ノアの箱舟」
 日本人の1/1000程度、10万人アジア経済特別区移住(確率80%)
 条件:故郷を捨てる覚悟があるもの、抜群の中国語力と英語力とコミュニケーション力、抜群の経営力、抜群の技術力、抜群の発想力を持った大企業社内上位1%が本社とともに移転する(計3万人)。ハイテク従事の小企業、ファブレス企業のほとんどは海外へ移住せざるを得ない(計7万人)。
●若手社員、学生へのアドバイス 米国大学および大学院へ留学後、経済特別区へ移住を薦める。10年で20億円をためることも可能。世界へ羽ばたくほうが日本に残るより将来が明るい。とくにPh.Dを取ること。日本では認められないが、アジアでは正当に評価されるだろう。経営希望ならMBAもよいだろう。(大原)

 

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2001/08/27 当面の投資作戦
=都市再生関連銘柄の押し目買いとハイテク株のリバウンド狙い対処で=
炎のファンドマネージャー

 

 下げ相場で取り組むとろくなことはない、と多くの投資家があきらめてしまった感のある株式市場であるが、上記のように40年移動平均線が下支えとなると考えられることや、株式持合い解消売りが政策的な見地から先送りとなる可能性が出てきたことを背景に、あさっての実質月替わりないしは9月相場インから反転相場が期待できるとの見方も台頭。

 ここにきては都市再生などをテーマにした銘柄が底堅い動きを見せているほか、日本製鋼など中低位銘柄の中に再び堅調な動きを見せる銘柄も出てきた。
 ここからは多少、過剰流動性相場を睨んだ展開も想定しながら対処しておく必要があろう。
 安心買いできる上げトレンド銘柄の循環物色が続こう。ハイテク株はリバウンド狙い中心で深追いはできないが、突っ込んだ局面を徐々に拾う作戦が良さそうだ。月足ベースでの底値模索局面であり、中期ならどこを買っても良いと思われる。もしかしたら貴方の買いが上昇のきっかけとなるかも…。

 各社一様ではないが、ハイテク各社の業績は年末からの回復を想定。以下に都市再生テーマ銘柄を掲げておいたので参照のこと。

【都市再生テーマ銘柄】

<不動産・倉庫株>
 倉庫ビジネスはIT化で主体性をもてる空間ビジネスに変身の可能性、不動産ビジネスは証券化で脚光。
 三井不(8801)、三菱地所(8802)、三菱倉庫(9301)、三井倉庫(9302)、住友倉庫(9303)

<穴株>
 安田倉庫(9324)2部の出遅れ銘柄でじっくり狙い
 東急コミュニティ(4711)マンション管理大手、直近急騰。
 積和不(8846)2部の出遅れ銘柄、アパートのメンテ事業強化、積水ハウスと連携。

 <鉄道株>
 JR東日本(9020)、JR西日本(9021)、JR東海(9022)

<電力・ガス株>
 東電(9501)、関電(9503)、東京ガス(9531)、大阪ガス(9532)

<造船株>
 都市再生というテーマに乗るのが不思議だが、石川島などは土地の有効活用がテーマになる。土地の有効活用なら繊維株の一角も対象となる。
 石川島(7013)、三菱重工(7011)、三井造船(7003)

<繊維株>
 インフレターゲット論から土地持ち繊維株はヘッジ買いの対象になりうるか。
 日毛(3201)、片倉(3001)、日清紡(3105)

<鉄鋼株>
 日本製鋼(5631)、新日鉄(5401)、NKK(5404)、川鉄(5403)

<建設株>
 大林組(1802)、大成建(1801)、清水建(1803)、鹿島(1 812)、ライト工業(1926)、前田建(1824)、戸田建(186 0)、西松建(1820)、奥村組(1833)、日本基礎(1914)、電設工(1950)、日本工営(1954)、九電工(1959)、関電工(1942)

<道路株>
 道路公団廃止の可能性や、公共工事削減の流れでなぜ上がるかは理解し難いが…。
 日本鋪道(1881)、東亜道路(1882)、日本道路(1884)、大成ロテック(1895)

 都市再生の中で駅舎、ホームの上を有効活用しようという案が浮上。JR各社と連想買いで生き残れる建設株物色の流れ。ならば出遅れの東鉄工(1835)の200円台はどうだろうか?


【急落のオークネット(9669)&ソフマップ(2690)株の考え方】

 一方で業績下方修正を発表した銘柄については、一気に売り込まれる銘柄が続出。先週お伝えした不肖の銘柄、オークネット(9669)は、本日ついに1553円という想定外の安値をつけたほか、ソフマップ(2690)はよもやの大幅下方修正で今期EPSが38円と伝えられ、株価は908円のS安。

 オークネットは、企業内容そのものは今期先行投資で業績が停滞することを除けば悪くはないが、期待値を裏切ったことへの見切り売りが続いている格好で、しばらくは下値模索を余儀なくされるだろうが、株価水準的には1500円台ならば過去の最安値1400円に接近しており、100株づつ買い下がるところだろう。8月上旬に2000円から2450円まで上がった幅の倍返しの下げ、1550円がほぼ実現したことから、一旦は2000円程度までの戻り相場を期待。提携などの材料が今後続々と発表される可能性があるので、これを見守ることにしたい。
 なお、本日発表された検査会社を含む連結決算は、単独を若干下回った。検査スタッフの人員増強で先行コストがかかることが、単独を下回る(経常利益で通期5000万円)要因であるが、来期はこの連結決算は単独を上回ることになろう。

 ソフマップ(2690)は、23日に下方修正を発表。経常利益48億円の予想が売上の大幅下方修正に連れて10億円へと修正された。この会社は2月に上場(公募価格2600円)して、早くも投資家を裏切った格好となった。ここまで下げると買いではないかと思われる方もあろうが、業績回復の姿が見えるまではしばらくは静観が望ましいだろう。いくらPC不況が想定以上だったとは言え、ここまでの下方修正は許されるものではない。
 ソーテックと名前が間違えられやすいが、このほかでも「ソ」で始まる株には注意したい(すると、あの○ニーや○フト○ンクもそうだったのか…!?)。
 下期回復とは言っているが、同社の業績が例え回復しても、3年間は付き合わない方が良い。同社の業績の見通しがいいかげんであることが明白となったことから、高値で買った方は残念ではあるが戻り売りスタンスで対処したい。売上高と利益の関係が不安定で、ここ3期間の業績は上場のために作られたのではないかと勘ぐられても致し方ない。
 唯一の救いは、ブロードバンド化が意外に早く進展しつつあること。マイクロソフトの新OS搭載PCは、今期の第4四半期から寄与すると見込まれている点もかすかな望みとなっている。
 来期の売上高は10%程度は回復するとはしているが、既にPCビジネスが飽和状態となってきた点から、高成長は期待しにくいだろう。
 方向感がもう少し見えてくるあと2、3ヶ月先までは待つことが賢明だろう。なお、同社では明日、アナリスト向け決算説明会を予定している。

【藤久(9966)株について】

 逆に今期業績の大幅な向上を発表した藤久(9966)は、先日株主優待制度の活用のくだりで紹介しておいたが、本日一気にS高となった。
 前期業績は予想を下回ったが今期は一気に挽回。EPSは125円から176円に跳ね上がる。これが株価が長期低迷していただけに、サプライズとなって反映。本日のS高(1300円)となってしまった。出来高も伴っており、今後の動向が注目される。恐らく、今期業績は期待値の方が大きいだろうと見られる。29日の決算説明会でこのあたりが明確になろう。
(炎)

 

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2001/08/27 炎がお盆のシーズンに読んだお奨めブック
炎のファンドマネージャー

 

 1.ロボット21世紀(瀬名秀明著)文春新書  903円

 産業用ロボットから家庭用ロボットへの新産業勃興期にある今、ロボットの未来を多少でも理解する上で役に立つ1冊。ハードよりもソフトが大切。
関連銘柄:ホンダ、ソニー、川田工、NEC、川重、富士通、日立、安川電など
*この本で橋梁メーカーの川田工業が良いロボットを作ったと書かれていることで認識を新たにした。

2.技術立国日本の原点「技術は文化なり」の時代を創る
  志村幸雄著  株式会社アスペクト 1890円

 過去数々の技術に関しての著書を書いてきた筆者が描く、日本のテクノロジーの歴史的変遷と未来の技術への展望。日本の未来がテクノロジーで開かれる点を改めて確認すると同時に、技術=文化という考え方に対し改めて驚きを覚えた。

*テクノロジー用語に関しての簡単な解説が読者にとってわかりやすいものと なろう。

3.知的財産経営 知財会計時代のマネジメント (中島隆、中島光著)
  日本プラントメンテナンス協会 1800円

 知的財産が生み出す企業価値について極めて判りやすく解説してある点でお奨めの一冊。これからは知的財産が企業評価のポイントになるとの認識を新たにした。(炎)

 

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2001/08/24 超臨界水&チタン
駄洒落商会会長

 

  「史上最悪」とも形容されるハイテク不況により、情報技術(IT)関連など製造業中心に、業績予想下方修正が続出。株式市場も回復の糸口がなかなかつかめない情勢だ。

 しかし、ナノテクノロジー、再生医療はじめ人類の生活環境を根本的に変え得る先端技術実現化の動きは着実に進行。また、一般的に市況低迷が目立つ素材のなかにも、その特殊な用途から中期的に需要拡大が見込まれるものが散見される。現在は、こうした潮流に着目、あくまで中長期的観点から関連銘柄を選別していただく好機と考える。

 今回はこうした長期に注目され得るテーマの中から「超臨界水」と「チタン」を取り上げてみた。

「超臨界水」 

地球の表面積の7割は水。しかし、そのほとんどは海水であり、淡水はごくわずか。なおかつ、その淡水の大部分は北・南極の氷であり、人類が日常生活で使用する淡水は全体の0.001%と無尽蔵に見える水も実は貴重な資源。この水資源をむだなく環境保全に循環活用する技術が着実に進化しつつある。そのひとつが、「超臨界水」である。

 超臨界水とは、セ氏374度以上、22パスカル(水深2200mの深海なみ)以上の高温高圧状態の水。このような状態の水は、液体の時のような大きな分子のまま気体のように活発に動き、次のような特徴を持つ。

1)水に混ざらない油や溶剤でも良く溶かす、
2)どんな有機物も、二酸化炭素、水、無機塩にまで完全に分解できる、
3)プラスチック廃棄物などを元の原料に戻すほか、リサイクルも可能、
4)元来が水であるため環境への負荷がない、
など。

 こうした特徴のなかで、環境保全への活用が注目されているのが、2)の超臨界水酸化技術。難分解性の有機物、特に化学兵器に使われる化学薬品や先の通常国会で15年以内の処分が義務付けられたポリ塩化ビフェニール(PCB)廃棄物の処理への活用が期待されている。PCBの土壌汚染については約32万ヵ所が存在すると推測されており、今後超臨界水を使用した処理が進行するものと予想される。

 また、化学物質を大量に使用する工場では、廃液の処理が難しく、完全な分解は不可能。PRTR(環境汚染物質の排出、移動登録)制度により、工場廃水無害化への要求は一段と強まることが予想されており、化学薬品の100%分解が可能な超臨界水の利用度は高まろう。

 超臨界水の研究で先行しているのはオルガノ(6368)。93年に超臨界水の基本特許を持つ米モダー(現ゼネラル・アトミクス)社と独占契約を結び、プラント化の研究を進めてきた。98年8月には、日鉄セミコンダクター(現日本ファウンドリー)本社工場に、半導体製造工程で発生する有機性廃液処理向けにプラントを納入。オルガノのプラントは、密閉した圧力容器内に廃液を投入、超臨界水を導入して分解、無害化を図るもの。処理時にはNOx(窒素酸化物)、SOx(硫黄酸化物)、煤塵などの環境負荷物質が一切発生せず、処理自体がクリーンな手法になっていることも特徴。

 一方、今5月に基本特許が切れたため、オルガノの独占契約は解消。今後は開発競争により、超臨界水技術導入のネックであったコスト高も解消に向かうことが予想される。ただ、オルガノは超臨界水酸化システムを応用し、トランスやコンデンサーなどPCBが含侵した木枠や紙を破砕することなく、固形物のまま処理する技術の開発を推進。現状では、同社の技術的優位は変わらないものと見られる。

 一方、開発を進める他社の動きでは、住友ベークライト(4203)が超臨界水を活用してフェノール樹脂やエポキシ樹脂など熱硬化性樹脂のリサイクルシステムの実用化を進めている。熱硬化性樹脂は、熱可塑性樹脂に比べリサイクルが難しいとされていた。

 また、NTT(9432)は、老朽化した光ケーブルのリサイクルに超臨界水を活用する技術を開発。神戸製鋼所(5406)と武田薬品工業(4502)は共同で、超臨界水を使い、ウレタン樹脂の原料を回収することに成功。また、中部電力(9502)と昭和電線(5805)は共同で、電線の絶縁樹脂である架橋ポリエチレンを再生利用する技術を開発している。このほか、三菱重工(7011)は廃プラスチック油化施設を開発、石川島播磨重工業(7013)は生ゴミを二酸化炭素と水とに分解するプラントの販売を開始している。

 今後も、「魔法の水」超臨界水の開発動向は、目が離せないものとなろう。


「チタン」

 チタンが発見されたのは約200年前。55年前に金属材料として実用化された。チタンは、ルチル鉱石に塩素、炭素を化合させて四塩化チタンを製造し、マグネシウムで還元することにより中間材料のスポンジチタンを生産。それを真空溶解してインゴット(地金)にしたうえ、圧延・鍛造・鋳造などで展伸材に加工し、各種材料に使用する。セールスポイントは、鉄に比べて比重が40%も軽いにもかかわらず、重量当りの強度は2倍(アルミの6倍)に達し、海水中の耐食性も白金並みであること。また、金属アレルギーを起こしにくいなど生体適合性が高い。

 こうした特性からその用途は多岐にわたる。腐食性の高い化学プラント、発電所向け熱交換機、航空機部品などに多く使用されるほか、二輪車のマフラー、眼鏡フレーム、ゴルフクラブのヘッドなどにも用途が拡大。生体適合性の高さから、人工骨など医療分野での需要が拡大中。

 2001年度の出荷はスポンジチタン、チタン展伸材ともに4年ぶりに前年度比2ケタ増(スポンジチタン25.1%、チタン展伸材10.5%増)が見込まれるなど、需要は本格的回復期を迎えており、日本チタン協会では2009年には、チタン展伸材の需要が現在の2倍以上に拡大すると予想している。

 需要拡大の要因は、大口需要先である航空機向けが堅調であること。これは、わが国の成田空港の発着枠拡大やWTO加盟を控えた中国が空港整備に注力し始めたことに加え、米ブッシュ政権が戦闘機向けなどに防衛費拡大策を打ち出していることなどが影響している。米ボーイング社の今6月末の受注残も1481機と高水準を維持している。

 なお、中間材料のスポンジチタンメーカーは東邦チタニウム(5727)と住友金属工業(5405)の子会社・住友シチックス尼崎など世界に数社しかなく、需要拡大の恩恵は大きい。東邦チタニウムは、前2001.3期減収減益に甘んじたものの、前下期よりスポンジチタン需要回復を受け、現在はフル操業状態。今2002.3期業績は、売上高で291億円、前期比24%増、経常利益で20億円、同3.2倍と急回復する見込み。伸長するチタン需要に対応するため、20億円を投じ、3年計画でスポンジチタン増産体制を固める。

 また、住友シチックス尼崎は旧住友シチックスを母体とし、97年に住友金属工業がシリコンウエハー部門を合併する最に分社化して発足した会社。事業はスポンジチタン、自家消化向け多結晶シリコン、開発商品で構成され、前期売上高は190億円、うちスポンジチタンは120億円を占める。既に住友金属工業は7月、住友シチックス尼崎を1〜2年内をメドに上場させる方針を明らかにしている。スポンジチタン還元炉を3基増設するなど、今年度内に生産能力を20%強拡大、高純度チタンなど開発商品も積極的に育成し、5年後売上高を250億円に引き上げる計画。なお、これら設備増強資金は上場することにより調達する方針。

 一方、チタン展伸材メーカーとしては、神戸製鋼所(5406)をはじめ、新日本製鉄(5401)、住友金属工業(5405)、NKK(5404)、など大手高炉メーカーのほか、大同特殊鋼(5471)、愛知製鋼(5482)日鉱金属(5716)、古河電工(5801)、住友軽金属工業(5738)などがあげられる。

 とりわけ、神戸製鋼所は国内で最も古くからチタンの研究に取り組み、航空機用チタン合金に強いことが特徴。また、新日鉄、住友金属は世界最大のチタン溶接管メーカー・仏バルタイメットグループに相次いで資本参加。大同特殊鋼のチタン合金は日産の新型「シーマ」の排気系バルブに採用されたほか、航空機用エンジンのシャフト向け、ゴルフクラブ向けなどの需要が急増しており、注目される。(駄洒落)

 

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2001/08/24 為替相場動向
生涯遊人

 

 予想通り円高が進行している。 円高の理由として、日本人によるリパトリエーションがあげられる。保有有価証券の時価会計移行にともなって、今年は例年より激しく行われているらしい。

 リパトリエーションというのは、海外に投資されている資金が、本国に戻されることをいう。日本の半期の会計期間にともなって、海外で益のでている資産を売って円資産に変えるオペレーションを行っている。今年は特に日経平均の下落にともない、補填分の益出しも激しくなるという理屈だ。

 世界最大の債権国である日本は、海外に多くの資金を投資しているため、会計期間の前の8月、2月に例年このような動きがでる。
 また米国による度重なる利下げにより、金利差縮小のうえに、米国経済の底打ち感がでてこないところに、$を買えない理由がある。またブッシュ政権が、米国産業界寄りのため、景気減速時に更なる$高を求めることはなく、もしかしたら為替政策が転換された可能性も否定できない。

 この時期、日経平均も下落し、円高が進行すれば、輸出企業も減収にもつながり最悪のタイミングになってしまった。
 しかしマーケットは、人の嫌がる方向に行くことが多い。 リパトリエーションは8月一杯ぐらいで峠を越え、9月中ごろまでは終了するのではといわれているが、円高が118−119円でとまればよいが、118円以下が長期間続くとかなり深刻な状態になってくる。

 そういう意味でも、118円をきれるかどうかは、重要なポイントになる。
 日本政府のスタンスも、円高はいやだが、過度の円安もだめ、というようにはっきりしない。また、海外のファンドもかつてのマクロファンドなどが、大規模に$円を買い上げる動きもなく、また、日本人投資家が、為替リスクを積極的にとって、海外に資金が動く気配もない。

 要するに、みんなが円安が良いと思い、今の日本の現状から更なる円安が進むはずだと感じていても、それを裏付ける理由なり、フローが出てこないため、120円を中心とした膠着したレンジになってしまうのだろう。(生涯)

 

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2001/08/23 自動車株(ホンダ)
両津勘吉

 

 自動車企業の今期業績前提為替レートは115円が多く、4月以降の円安はとても大きなサプライズであり、特に足許の販売状況が好調なホンダが一番の的となった。しかしこれが一転して円高となってくると、このサプライズ(プレミアム)が剥げ落ちてくる。

 もし各企業が前提としている115円レベルまで円高が進むと仮定するなら、投資家はホンダやトヨタのポーションを間違いなく落とすであろう。しかしながらセクター内では、大幅な円安というフォローがなくとも企業再生中でリストラ利益が期待できる日産と、割安でそう簡単に真似の出来ない独特技術を保有する富士重工に注目が集まると読む。

 日本の株式市場ではエレクトロニクスセクター中心に、テクノロジー全般が軟調な展開であるが、ファンダメンタルズが良好なセクターとして自動車業界は消去法でも注目に値する。しかしながら自動車株投資にあたっては1)円高2)下期・来期の米国新車販売状況が今後どうなるかが大きなポイントとなろう。

1.為替

  115円レベルを目指す展開になれば、ブランド力の強いトヨタ、ホンダを外す動きが出よう。しかしながら、為替の手助けを借りずに利益成長可能な日産は注目されると読む。
 120円レベルのレートが今後も維持できる、もしくは再度円安方向にブレるなら、ホンダへの投資は非常に有効であると考える。

2.米国新車販売

 昨年度の米国新車販売は1740万台と非常に好調な結果に終わり、1月の段階の予想では今年度の見通しを1600万台ないし1600万台割れ、最悪ケースで1550万台のバッドケースを想定する見方もあった(私はそう考えていた)。
 しかも私の想定は、減速のスピード(トレンド)は毎月徐々に減速していき、一気にトレンドが崩れるような状況は想定していなかった。だが蓋を開けてみると、予想もしない好調な状況が足許まで継続している。この状況が継続するなら自動車株に対して強気な見通しを維持すべきであろう。

 しかしながら下期のどこかで減速感が鮮明になった場合には注意を要する。
 減速し出した時、まず初めに影響がでるのはビッグ3であり、日系メーカー、特にトヨタ、ホンダはその影響は軽微であろう。だが減速トレンドが急に生じた場合は、いくらブランド力を持っていたとしても影響は出よう。下期の状況には特に注意する必要があると考える。

【ホンダ株投資について】

 ホンダの商品企画、デザイン、価格設定、どれをとっても非常に上手なマーケティングを行っており、また走行性能、残存価値も高い。
 この結果、ホンダのブランド力は米国・日本とも頑強であり、マーケットが多少シュリンクしたとしても影響は軽微である(ホンダの売上高に悪影響が出る場合、他の自動車メーカーはもっと深刻であろう)。

 ファンダメンタルズが非常に良好な上、120円台の円安レベルを織り込んでホンダのポーションを投資家は高めたが、直近の円高方向でそのウエイトを下げている。
 しかしながら、米国新車販売堅調を前提に為替が120円維持できれば、この押した局面での投資は有効であると考える。タイミングとしては現状の価格でも妙味はあろう。但し、投資家が顕著に売り出したのは先週からであり、売りはもう少し継続しよう。

 特に先だってバスケットの大口商い(入れ替え)で、ホンダの大量売りが出たと伝えれている。某大手ファンドの噂がされているが、この押した局面をメジャーアナリストが勧めているのも事実。
 トヨタカムリ、日産アルティマのモデルチェンジで悪影響が出るアコードであるが、その在庫は1ヶ月チョいであり、モデル末期の車でもうまく売る戦略はホンダならではのもの。ホンダの戦略の上手さはトヨタ以上であると考える。(両津)

 

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2001/08/20 電機ハイテク株の買いタイミングと戻り幅を探る
炎のファンドマネージャー

 

 お盆に故郷に帰られた方は多いかと拝察しますが、故郷帰りと言えば何も人だけに限らず株式の世界にも見出せる。電機・ハイテク株の株価がそうだ。

 世界的な事業活動を展開する日本の電機・ハイテク企業は、米国のITバブルの崩壊で業績の先行き不透明感が一気に台頭。これまで比較的堅実であったロームや村田など、強固な体質を誇る電子部品企業までもが業績の先行きに懸念が持たれ、株価急落の憂き目に遭うに至った。
 長期的な上昇トレンドを終えた大半の電機株が上昇開始時の水準に戻りつつあり、業績悪化を織り込みつつある状況が見られるようになった点はむしろ注目すべきだろう。

 業種別株価指数を見ると、電機株の過去10年のボトムは92年の1471ポイント。98年まではこの底値と97年高値3400ポイントまでの往来ながらジワジワと下値を切り上げる展開を続けてきたが、99年から2000年にかけてはボトムから一気に2.8倍へと急騰を演じた。

 ボトムだけを辿っていくと92年1471ポイント、95年1650ポイント、98年2013ポイントと見事に3年おきにボトムをつけており、3年目にあたる今年がボトム形成の年となることは容易に想像できる。

 現状の電機株指数が2500ポイントに達し、故郷帰りしている点からは歴史的な買いチャンスが到来していることが誰の目にも明らかだ。いくら業績の先行きが見えないと言っても、電機株には世界的な技術背景が備わっている。デジタル家電、次世代ディスプレイ、ロボット、光技術、ETCなど、様々なジャンルで日本の電機・ハイテク企業の活躍の場が高まりつつあることも事実である。

 下げの主役を演じてきた電機・ハイテク株への投信の組み入れ比率は、昨年夏の30%台から一貫して低下。7月末時点では22.4%に、1999年11月以来の低水準となってしまった。彼らの投資行動を見ると、電機・ハイテク株の業績が良い間は組み入れを高め、一旦業績が悪いとなると組み入れ比率を下げてしまうといった、プロにあるまじき拙い運用手法を取っていることが判る。

 これは電機・ハイテク企業がどのような状況下でも成長が続くという誤解と、逆にどこまでいっても業績の反転がなく底割れ状態を予見しての、些か冷静さに欠ける対応のためと考えられる。
 まあ、私を含めて大方の個人投資家の投資スタンスも似たりよったりであるから余り偉そうには言えないが、日本におけるコアセクターである電機・ハイテク株の株価変動の特徴をうまく捉えて対応できるかどうかで、プロの運用成果は違ってくる。

 テクニカル上からも電機・ハイテク株の底入れはなおも確認されていないが、個人投資家は突っ込み買いで対処して良いのではないだろうか。
 現在の電機・ハイテク株の位置付けは、高値から概ね66%という下げを演じた水準にある。インデックスと比べてもこの水準は異常に下がり過ぎていると言える。

 詳細な業績面のチェックは別の機会に譲るとして、各社押しなべて確かに業績は悪化しており、今後下方修正が相次ぐ懸念が高まっている。半導体関連企業を中心に、過去に経験したことのないペースで受注がダウンしている点が嫌気されているが、マイクロソフトの新OSの発売開始によるPC販売の回復や、デジタル家電の普及という好材料も控えており、各社のリストラによる経営改善期待もあって、ダイナミックな観点では各銘柄とも歴史的な買いチャンスが到来していると見て良い。

 突然の業績下方修正発表に慌てないためにも、できるだけ時間分散に心掛けながら、ここから3ヶ月タームでの突っ込み買いスタンスで短期リバウンド狙いで成果を上げて頂きたい。底入れが確認されれば、今度は押し目買いスタンスに変更し、来年春以降と見られる業績底入れのアナウンスメントを待って売り買いに努めることにして頂ければ幸いだ。

 ここまで下げて来れば過度の弱気は禁物。世界に冠たる日本の電機・ハイテク株を、これ以上外国人投資家の手に渡すことだけは回避すべきとの思いがあれば、自然に買いが入るところだろう。
 概ね業績悪は織り込まれ、金融緩和で政策対応してきた米国経済の立ち直りに曙光が見えてくる秋口から年末にかけてが、一つのターニングポイントとなろう。目先的な戻り幅はともかく、少なく見てもここ1−2年の中で半値戻り程度を目途にした上昇相場が期待できると、有力な米系年金ファンドマネジャー(大原部長のこと?)も力説する。

 個別に見ても光関連のアンリツ(6754)は、既に1200円台と地相場入り。多少の業績下振れ発表は覚悟の上、1200円割れの押し目を買っていきたいところだ。
 半導体関連の東京エレク(8035)、アドバンテスト(6857)の業績もなお不安定な要素はあるが、株価面には相当織り込まれてきたと言える。
 8月に入って改めて売り込まれたファナック(6954)、ローム(6963)などもむしろ格好の買い場が来たと考えられよう。(炎)

 

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2001/08/20 炎の注目株フォロー:オークネット(9669)
炎のファンドマネージャー

 

 【1985年にEコマースを実現させた会社】

 本日オークネット(9669)が中間決算の発表を行いました。
 中立的立場で言いますと結果に対しては些か残念であったと思われますが、今後の期待を残して下期以降に突入しているというのが現状であります。

 基本的にはEコマースの先駆的企業という点においては変わりがありません。但し、今回の下方修正(中間期売上高73億円予想が67.75億円、経常利益10.2億円予想が9億円、税引利益5.8億円が4.33億円、通期売上高149億円が141億円、経常利益30億円が25億円、税引利益14.1億円が10.5億円、通期配当金30円が20円)は、結構同社としては苦しんでいる状況を感じさせる。

 この背景は、
1)中古車市場において予想を上回る小売の不振が見られた。
2)良質な車が市場に出回らなくなった。
3)CS(顧客満足度)改革によって会員の選択、出品の制限を行った。
ことなど。

 新車ディーラーが相当に市場参入してきたことで、中小の中古車業者が厳しい状況となっていますが、こうした業界環境悪がこれまで堅調に推移してきた同社の業績を停滞させたと言える。
 また、オークション間を渡り歩く車の増加に対して会員からのクレームも見られ、同社ではCS向上の見地から参加制限を行う事態となった点も問題視している。
 こうした状況を踏まえて、同社では新たな事業戦略を取始めており、今後その成果が表れる可能性がある。

【新たな事業戦略】

1)現車ライブ中継AA
 シェア90%を占める現車AAと連携し、現車ライブオークションを拡大、これにより在宅でオークションが可能となり、ますますテクノロジーに優れたTVAAの優位性が増すことになろう。現車会場の存在意義が薄れていくと見られる。
 同社では既にCAA、CAA東京、ベイオークの3社と連携しスタートしたほか、アライ、JU群馬とも来春スタート予定。上期は累計3375台が落札された実績あり。7月も876台が落札され、累計4251台となった。
 出品台数も1月の10306台から7月は34506台に増加。ライブ中継会員数も7月末で1429社となった。ライブ会員からは月間5000円を徴収。6500会員のバイイングパワーを活用して収益拡大を図る。ハナテンやUSS陣営とはライバル関係。現車ライブAAでのシェアはオークネットグループ全体で24%に達する見込みで、USSの23%を上回る規模となる見込み。

2)アライアンス
 トヨタユーゼック(TAA)との相互乗り入れで、年間出品台数は39万台から65万台規模に急拡大の見込み。同社の会員数6500社に対してTAA会員(PCネット会員)数2100社が加わり、8600社が対象に。
 メーカー系との相互乗り入れは初めてのケース。業界へのインパクトは大きい。検査体制への評価がポイント。他のメーカーへも提携拡大を図る。
 検査業務代行も含めたここ数ヶ月内での様々な提携の話が出てくる予定。

3)顧客層の拡大
 メーカー系ディーラーの取り込みで、上位クラスの顧客を拡大すると同時に裾野の広い顧客の増加を見込む。
 WEB会員の取り込みについてここ1,2ヶ月内に発表へ。

4)海外展開
 住友商事からニュージーランドのTVAA会社の経営権を取得。同国より検査基準の高さが喜ばれる。右ハンドル市場での展開に期待。 通期の業績については期初の見込みに対して下回る見通しであるが、第一の創業期が急成長路線であったことに対して、第二の創業期は安定成長期にシフト。今期は中長期の安定成長のための種まきの時期と位置付け。

 アライアンスの効果は下期から来期以降に表面化。戦略的に先行投資を実施。期初計画を下回るのは種まきに時間を要している。CS改革による一時的な影響が出ている。
 花卉のオークションビジネスは3年目で黒字転換が間違いなし。本日の日経新聞夕刊で紹介されたように、2002年7月を目途に大阪市内に物流センターを新設する予定。東日本から全国へ営業拡大を図る意向。
 上期の売上高は364百万円、営業利益500万円で初の黒字に。通期では取り扱い高20億円、売上高650百万円、営業利益20百万円を目指す。

 オートバンクは上期売上高409百万円に対して営業利益428百万円、広告費390百万円が営業赤字の原因で、下期は赤字幅は縮小予定。
 期末累計出店数は期初計画100から80へ下方修正。上期は11店。下期42店舗の出店を予定。

 ストックファイトで紹介しましたオークネット株の動きが、この低迷相場の中で比較的堅調に推移しておりましたが、本日の決算発表では今期業績の下方修正を行った。
 予め多くのアナリストが予想していただけに、株価へ折込済みなのかは明日の株価次第ですが、私としては業績悪に対して一時的には反応すると思っております。2000円まであるとは断言できませんが、一旦はこのレベルも想定しておく必要があるかと思います。まずは2200円レベル。それから2000円前後も覚悟して、中長期スタンスでコツコツと買いを入れるよう心掛けて下さい。

 売上が思ったほど出ない一方で、販売費一般管理費は今期37億円と増加傾向にある。これについては人件費増と広告宣伝費の増加が主な要因。情報端末の新バージョンへの入れ替えが業績面で足を引っ張っていることが明らかで、来期以降は収入増、経費減でこうした状況は良い方向に変化してくると期待される。来期明るくなると楽観的な見通しを述べても、足下が悪いとすべてネガティブに捉えられてしまう。

 下降トレンドで買い難い投資家も上昇トレンドなら買い易いと見て、押し目を買う動きが見られ、ここに来ての株価は堅調でしたが、一旦の下振れは覚悟のこと。但し、下振れ後にじっくり狙う投資家もありそうですから、立ち直りは早いと考えられます。

 皆さんはどのようにお考えでしょうか。2000円前後から8月8日に2450円まで上昇し、その後8月16日に2200円まで下げての出直りでしたが、本日の中間決算の発表を受けての今後の行方に注目したいと思います。

 冒頭に掲げた「1985年にEコマースを実現させた企業」というのは紛れもない事実。同社の目先的な停滞が、将来の発展の入り口と評価できる投資家のみが、同社株への投資に参画する資格を持っていると断言できるがどうであろうか。(炎)

 

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2001/08/10 孝行息子の家出
生涯遊人

 

 木曜日の日経新聞に、製造業の工場海外移転による、空洞化が加速とでていた。なんだか孝行息子が、ダメおやじを見限って家出していくような印象を受けた。

 製造業は、日本の産業のなかでとりわけ国際競争力があり、外貨をかせぎ、雇用を維持してきた優良産業だろう。コストの高さと、進まぬ構造改革(政治の)に、業を煮やして、やむなく家出という感じだろう。競争力がある産業では、さらなる改革が進み、競争力のない産業は停滞して、やがて日本には競争力のない産業と特殊法人しか残らなくなってしまうのだろうか。

 工場の移転先としては、人件費の安い中国が人気があるようだが、銀行業、とりわけ外国為替部門では、シンガポールが日本のライバルになっている。
 シンガポールにアジアの拠点をおいている、日本以外の外国銀行の数は東京より多く、東京は1990年以降、世界3大市場(ロンドン、ニューヨーク、東京)の地位を脅かされつつある。
 1300兆円の個人資産と、多くの優良企業は、外資系金融機関にとっては魅力があり、営業部門や、法人営業は東京に拠点をおくところも多い。

 普通に考えれば、可能性ははるかに東京のほうが高いが、コストの安さと英語力の問題で、シンガポールに人気がある。外国人にとっては、東京は使い勝手の悪いマーケットということだろう。もっと言ってしまえば、これは指導者の哲学の違いだろう。

 読者の皆さんは、なんで米国や欧州がライバルじゃなく、シンガポールなんだと思われるかもしれない。これはアジアの中の金融業に限った話です。

 しかし最近の都市の競争力調査によると、シンガポールは東京に勝っています。この人口僅か300−400万人の国は、自国のサバイバルのために、かなりの努力をしています。
 付加価値の高い金融業を呼び込むために、自国に先物市場のSIMEXをつくり、外国金融機関の誘致に努力してきました。外国金融機関といっても、トップマネージメント以外はシンガポール人なので、これでかなりの雇用が確保されます。
 またSIMEX市場は、日本に先駆けて数々の商品が上場されているため、東京、大阪市場との裁定も可能で、多くの取引がシンガポールに流れています。

 いま日本ではやりの個人の為替先物取引などは、10年も前から始められており、日本以外の先進国は、為替に限らず株式先物、債権先物、貴金属など安い証拠金で取引ができ、日本の個人投資家だけが(莫大な個人金融資産を保持していながら)どうしようもない商品を買わされ続けてきました。
 それもこれも、日本の金融機関と政府の怠慢ではないでしょうか。

 英語教育をはじめ、利便性の良い空港、安い通信費などなど、21世紀型の先進国を目指しているような気がします。この国は、政治家、官僚に一番優秀な人を集めるために、一番高い給料を払うという。

 国が小さい分、政治家、官僚の舵取りが、国の運命を握っているのだろう。政治家・官僚がなにをやっても、企業が優秀で、国民が我慢強く、失政をカバーしている日本とは、質がちがうのだろう。

 世界は、冷戦終了後、大競争時代に突入して、さまざまな国が競争相手になっている。私は、日本を出て行く気はないが、ほんとに使い勝手が悪いことが多すぎると思う。

 早くしないと、日本の競争力は枯渇してしまう。(生涯)

 

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2001/08/09 テクノロジー研究:セラミックハニカム2
両津勘吉

 

 先週の続きです。

 最近、「セラミック触媒のシェアを喰う」と、息の荒い企業が現われた。その名は川崎製鉄。川鉄や他企業が製造するメタルハニカムがセラミックスのシェアを奪うのか?

 以下は日本ガイシの決算説明会で、社長がメタルハニカムについて言及していた事項である。

【メタルハニカムの特徴】

メリット:軽量
    :熱伝導が高くエンジン始動直後から触媒の反応が始まる。
    :排気ガスの出入り口を自由に設定できる。
デメリット:価格が高いメタルハニカムに拘わる企業のコメントを以下に記す。

【某メーカー】

「メタルハニカムは10年前から登場した。当初期待されたが、セラミックハニカムメーカーの価格攻勢に遭い、大きく伸びなかった。しかしこの1−2年の環境対策の流れから、色々な自動車メーカーがメタルハニカムに注目しだした。国内では以前からトヨタが使用していたらしいが、最近になってマツダ、ヤマハ、富士重工、海外メーカーが使用しだした。当社ではメタル箔を製造するともにハニカムに加工し、自動車メーカーに販売している他、メタル箔のままでもハニカムメーカーにも販売しているようだ。」

 メタルハニカムは間違いなく伸びると自信を持っているが、どの程度までメタルがセラミックスのシェアを喰っていくかは公表しない。但し、セラミックスメーカーを驚かすほどの驚異的な伸びは期待できないという。メタルハニカムのマーケットシェアはセラミックスの9割に対し1割程度であり、ハニカムマーケットの伸びを考えただけでも確かに売上は急速に伸びよう。但し、メタルのシェアが3−5割にも達するような劇的な変化ではない。

【某メーカー】

「メタルハニカムは現在ガソリン車で使われている他、欧州のディーゼル車が使いそうである。これはディーゼルエンジンに対する日本と欧州メーカーの考え方の違いから来ている。日本メーカーはNOX(窒素酸化物)を減少させることをメインにしており、そのためエンジン内での燃焼温度を低くしてNOX発生を抑えていた。しかしながらその場合はススが多く発生することとなる。反対に欧州メーカーは、ススの発生を抑制するためにエンジンの燃焼温度を高く設定、代わりにNOXが多く出ていたのが実状である。しかしながら欧州メーカーもNOX抑制に動き出し、メタルないしセラミックス触媒の需要が多く出そうなことが背景にある。」

 メタルハニカムの使用比率は5−6%で、あとはセラミックスが占めている。早急にメタルの比率を10%程度まで引き上げることを目論んでいる。売上高ベースでは3−4年後に倍増させる考えであるが、セラミックスのシェアを大きく奪えるとの考えは持っていない。 部材メーカーからは強気な発言が聞かれる。特に環境対策上、メタルは非常に有利であることをアピールしている。

 では、最後に使う方の自動車メーカーのコメントを載せよう。

【某自動車メーカーに勤務するエンジン開発のトップのコメント】

「メタルハニカムは当社の○○○のみに搭載している。 これは、セラミックハニカムに比べてメタルの方が性能的に優れているから使っているわけではない。エンジンルーム内における、エンジン本体、エキゾーストマニホールド(排気集合管)、排気パイプ、ターボ他のレイアウトを考えた場合、メタルにせざるを得なかった。セラミックハニカムを搭載することも考えたが、レイアウト上、割れる心配を考慮しメタルを採用した。」

 同社では今後もハニカムの主流はセラミックスに変化は無いという。またメタルはコストが高いことを指摘していた。

 ハニカムマーケットが今後大きく拡大することを考えると、セラミックスハニカムにはほとんど影響は極僅かだ。(両津)

 

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2001/08/08 投資のヒント 簡単に上がる株、時間をかけて上がる株
炎のファンドマネージャー

 

 私が皆さんと株式投資を楽しむ際に、時間というのは大事な要素となります。若い方と高年令の方では、投資スタンスが異なっても当然です。

 できれば買った株が短期でぱっと上がる方が良いと考えておられる方が多いのかも知れませんが、先日ストックファイトで取り上げたエスイー(3423)のように、運良く簡単に上がることもあれば、なかなか上げるまでに時間がかかる銘柄もあって、投資対象によって違って参ります。
 ぱっと上がる株に投資すると短期で利食いを出してしまい、それっきりとなるケースが多いと思います。中長期スタンスでじっくりいく方は、売却した後の銘柄を改めて、その上昇トレンドがどこまで続くのかを見極めていく必要があります。得てして、売却した後に値が飛んで悔しい思いをすることが多いのではないでしょうか。

 私は簡単に上がる株ではなく、簡単には上がらなくても中長期的に価値のある企業、世の中のためになりそうな企業を、できるだけ皆様に紹介したいと考えております。

 最近では2月頃取り上げておいたCVSベイエリア(2687)がありますが、取り上げた当時はなかなか反応せず、皆様にもご迷惑をおかけしたかと思いますが、そうであるならお許し願いたいと思います。ここにきてネットランドリー事業という新たな事業に参入し、成否はともかくとして新たな挑戦をしていることに対し、株価は反応し8月期末の2分割実施もあって、株価は4ケタ台に乗せてきました。目先筋の方が売却に動きますので下振れもしますが、2分割を取って頂いて良いかと思います。PERが10倍以下で2分割落ち後の株価が500円以下なら、買い易くもなります。恐らく流動性を増してくるかと思われます。権利落ち後のEPS59円なら、権利落ち後に株価水準は600円前後があっても良いでしょう。

 こう言っても、今初めてこの株を見た方はもう上がっているじゃないか…。とネガティブに見られるに違いありません。

 だが、こうして短期急騰を演じた銘柄も、安い水準で仕込んだ方は冷静に眺めることが可能となります。一旦勢いつくと上げ方向が変化するまでは売らずに我慢することがポイントになります。
 但し、2000株、3000株お持ちの方で大きく利が乗ってきた方には、どこを売っても利益ですので、積極的に高い場面で売って頂き、また大きく下げれば買いトライして頂くことが短期のアドバイスとなります。

 こうしてなかなか上がらなかった株も、時に短期急騰を演じることもあります。その時期を特定できないとイライラはしますが、じっと待つ姿勢も必要ということですね。

 さて、上がらない株にはそれなりの理由があります。億近で以前取り上げた銘柄でも、右肩下がりのトレンドを継続している銘柄もまだまだ多いことから偉そうなことは言えませんが、上がらない理由を考えて見るのも良い勉強になるでしょう。

 冷静になぜ上がらないのかを見つけることが、案外投資で成功する秘訣かも知れません。
 株価のトレンドが右肩上がりにならない銘柄の背景は、時流に乗らない、PERが中途半端、業績不安、知名度の無さ、などなど様々です。現状はIT関連株中心に業績の先行き不安が背景になっている面が強いのかと思いますが、持っておられる株が上がってこない場合は、ご自身でチェックしてみて下さい。

 それから株価の変動には必ず周期があることも事実。
 ほとぼりの覚めた頃に再チャレンジする投資家が多いことも背景でしょう。

 いつまでも上がり続ける株がないのと同様に、株式市場全体ではいつまでも下がり続けることはありません。チャンスを虎視眈々と狙っている投資家もいるのです。

 私は相変わらず、1部銘柄ですが中古車TVオークションのパイオニア的存在であるオークネット(9669)に高い関心を寄せています。6月中間決算が20日に出ますので、その内容を見てからとは思いますが、もうそろそろタイミング的にはいいのではないかと考えております。

 ただ、時間がかかる銘柄だったというのは結果としてわかりました。私以上にプロの方なら、この株のこの株価水準がかなり安くなっていることはお判り頂いてはいるかと思いますが、いかがでしょうか。

 問題は、まとまって売ってくるところがないか買う方は待っている段階なのではないかと考えております。
 まあ、気長に待つとしましょう。じっくりとひきつけておいて後でニッコリの作戦でいきたいものですね。

 全体相場で言うと、11年前のバブル相場がもう二度とないかと言えば、違った形で新たなバブル相場が繰り返される時が、いずれは来ると思われます。それがいつなのかは判らないとしても、世代交代後に訪れる世界がそうでしょう。そうした観点で株式投資にとって時間の持つ意味は大きいのです。

 株式市場に参画する余裕のある(ベテラン)投資家が、せめて子々孫々に伝えていく気構えで長期的投資スタンスをもって対処して頂ければ…とささやかに願っているのは私だけであろうか。
(炎 8/6執筆)

 

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2001/08/07 分布定数回路
大原部長

 

 店主大原が、居酒屋「億近」で常連さんとの会話を通して、勉強したことを紹介します。今日のスペシャルゲストは、大手ディスプレイメーカーの技術者、Sさんにふらりと居酒屋によっていただきました。その模様を報告します。

 居酒屋では、分布定数回路について開店前の時間を利用して勉強会が行われた。(詳しくは、居酒屋「億近」#14を参照のこと)

◎今後のキーワードになりそうな技術の動向について◎

「分布定数回路」

 昨年、村田や特殊陶業の紹介時にこの分布定数に触れた。
 最終的にはセラミクスの誘電率が利いてくるだろうということで、プリント基板やパッケージの有機材料化やフィルターのIC化という逆風に耐えぬく要素技術だと紹介した。

 今後、ますますデジタル化、高周波化が進むエレクトロニクス業界では、分布定数回路理論に基づく機器の設計が欠かせない。その基本を説明したい。
 インピーダンス整合が難しくランバスのRIMM基盤のコストが低くならなくて大問題になった。これからは、こういう問題は日常的になる。

 さて、大手ディスプレイメーカで回路設計を担当しているSさんから、以下のコメントをいただきました。ご参考にしてください。


以下 Sさんからのコメント

1.分布定数について

 分布定数の概念を説明するのは難しいので、結論のみを先に示します。

1)信号の伝わるスピードは有限である
2)伝送スピードは伝送路の特性により決まるもので、信号の振幅(強弱)では変わらない
3)伝送路に反射がある場合は伝送波形が崩れ、単位時間当たりの情報伝送量は更に少なくなる

それぞれのを日常生活の現象で説明すると、

1)日常生活では音の伝わる時間は感じることはありませんが、雷や打ち上げ花火が光ってから音が聞こえるまで時間のズレがあることを感じられると思います。これは、伝送距離が短ければ 伝送時間を0としても良いものが、長ければ時間を考慮しなければならない例です。

2)池に石を投げたときに波紋が拡がりますが、大きな石を投げても波の振幅が変わるだけで伝わるスピードは変わらず、また、水ではなく重油であれば、スピードが遅くなるのは容易に想像がつくと思われます。これは、波(信号)の伝送スピードが波の大小ではなく、液体の粘性(伝送路の特性)に左右される例です。

3)四方をコンクリートで囲まれた部屋やトンネルのように反響のある場所での会話は、そうでない場合(反射が無い)に較べてゆっくりと話さなければなりません。音の伝わるスピードは同じですが、反響により音が重なり(波形崩れ)、ゆっくり話さざるを得ません、これにより会話のスピード(情報量が落ちる)が遅くなります。

 結局のところ、信号の伝送スピードを上げようとしても、色々な障害が出てきて、思うように上げられないということです。具体的には、デジタル回路でクロック周波数が上げようとしても、信号の反射等があり、色々なテクニックを使わなければ伝わりません。反射により波形崩れがありEMI(不要輻射ノイズ)の問題も発生します。これらの、高速デジタル伝送に伴う障害を克服するためには、分布定数の概念を理解しなければ解決できません。

 同じ様な物理現象では、空気抵抗が似ています。空気抵抗は日常生活では意識することはありませんが、車の設計には考慮しなければなりません。それも、軽自動車では空気抵抗を減らすぐらいの対策で済んだことが、レーシングカーでは気流の渦の対策まで設計考慮する必要があります。これを解決するためには、流体力学を理解し粘性抵抗を考慮する必要があります。

 要は、高速で動作させようとすると、今まで無視できた各種抵抗が顕著になり無視できなくなり、より精度の高い設計技法が必要になります。
 分布定数そのものが商品になるわけではありませんが、その概念を理解しなければ、高速デジタル機器は設計できません。
 1GHzを越えるCPUクロック、数百MHz伝送のRambus Memory、GHzオーダーの携帯電話(CDMA)等、最先端の商品は高速デジタル機器です。

 数百MHzの高速デジタル信号は、デジタルではなくアナログ信号の挙動を示します。それを扱うには分布定数理論に基づいて設計しなければなりません。電気製品は、今後ますます高周波化されていきます。

 その意味において、非常に重要になる分野です。この技術に精通されている企業(ノウハウをたくさん持っている)は、伸びていくと考えます。

分布定数の関わる工業分野は、

1)回路基板業界
 CPU基板、Rambus Memory 等の100MHz以上の高速デジタル伝送が必要な基板は、設計通りの伝送インピーダンスに仕上げなければなりません。その為には、パターン設計技術だけでなく、基板厚までも正確にコントロールしなければなりません。この設計、製造ができる業者は限られています。

2)EMI対策部品メーカー
 村田、TDK、太陽誘電等のEMI対策部品を製造しているメーカーは、高速デジタル伝送(分布定数)に関して多くの技術、ノウハウを蓄積しています。今後も有望な業種であり、部品を作るだけでなく、その技術を生かして直接機器設計や設計コンサルタント業務を行えば成功すると思います。

以上 大手ディスプレイメーカ回路設計者のSさんでした


 店主です。ふむふむ。メモメモ。一方、伝送距離を短くしなければならない。多層化、高密度化の流れはとまらない。一方、調整はどんどん難しくなる。ノウハウは欠かせない。
 ということは、当面、マンパワーが重要ということ。しかし、アナログ技術者と同様、分布定数に長けた技術者も足りない。

 LCフィルターの受動部品がIC化されるというが、この話は半導体とのインターフェイスの話であって、ユーザーがヘッドフォーンや液晶などで聞いたり見なければならない以上、最終的にはアナログの出口が待ち受けている。
 ICをつなげても動かないということになる。村田やTDKはそういう意味で、面白い存在になるだろう。なにせ、設計そのものを手がけざるを得ない。

 村田なんかは、素材の力とプロセスの力と設計力を兼ね備えた知的集団としていずれ取り上げられるだろう。(大原)

 

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2001/08/06 炎の通勤風景
炎のファンドマネージャー

 

 大原部長が自己紹介をされていたので私もとは思ったのですが、それより本日は私の通勤時の小さな旅の様子からお話してみたいと思います。

 私の自宅は北柏にありますが、そこからオフイスのある八丁堀まで、約1時間10分かけて通勤することになります。
 最寄の駅はJR北柏駅。そこから車で約10分のところに本社を構える企業の代表はご存じ三協フロンテア(9639)。あのマック関連企業ということで、たった300円から2000円以上まで急騰を演じたことで知る人ぞ知るであります。
 私は数年前にこの株を高値で掴んでえらい目にあったことがある…。ぼやいてみてもしょうがない。きっと敵を取るぞ…。と虎視眈々と復活を狙っていたところの急騰劇であった。何事もあきらめないことですね。

 概ね7時45分から8時の間に乗り込む電車。多少通勤のピークを過ぎてきたが、まだまだ込み合っている。汗をかきかき乗り込んだ私は、いつものように電車内のつり革広告に目をやった。
 相変わらず、週刊誌は経済危機のことや、株主市場の下げを他人事のように面白おかしく見出しをつけて伝えている。こうした見出しがますます国民のムードを暗くしてしまう。彼らは真実を伝えていると胸を張っているのだろうが、そこから先の答えを私たちに示しているものではない。

 学生と思しき人たちの携帯電話に見入る顔は、まるでどの顔も同じように見える。いつもは座れないのに今日は柏で座れた。このまま北千住まで行こうか。でも新松戸で乗り換えることにしよう。

 北柏から千代田線に乗って新松戸まで。そこにはあのマツモトキヨシ(9875)の本社がある。このところの株価はジリ高だ…。電車の窓から眺めるマツモトキヨシの本社ビルは、私に買いリコメンドしろと言っているように思えるが、知り合いの流通トップアナリスト駄洒落商会にも聞いてみてからにしよう…。

 新松戸駅で武蔵野線の快速に乗り換えた私は、駅の一番前まで歩いていくことになる。途中に喫煙コーナーがあるが、もくもくと立ち込める煙が私にとっては不快なことから、急ぎ足になってしまう。つまり私はタバコを吸わない。よってJT株は決してリコメンドしない。

 快速東京行きに先頭車両に乗り込む私は、周りの風景を見ることなく途中の売店で買った日経新聞に目をやる。
 電車は新八柱駅に到着。ここの近くにはあの小型モーターで世界シェア5割を誇る有名なマブチモーター(6592)の本社がある。懐かしい銘柄である。私が以前お世話になった、シオズミインベストメントの塩住さんが80年代後半にほれ込んだ銘柄である。その時はバブル相場で、鉄鋼などの低位株全盛であったことから、同社のような値嵩株はそっぽを向かれてしまい、流石の塩住さんも苦境に立たされたことがある。
 同社は高成長はないが、安定した収益の拡大が期待できる良い会社である。10年を振り返って見て、初めてこの会社の良さが改めて感じられる。このところ株価は下げてはいるが、収益性の高さから押し目買いスタンスで良いのでは…。

 船橋法典駅近くには中山競馬場がある。私はこの駅に降り立ったことがない。つまり競馬はやらないのだ。博打場のような株式市場に身を置くと、競馬などやる気がおきない。でも社会人になった最初の頃、大阪で馬券を買って1−5が当たったことは今でも忘れることができない。

 電車は西船橋に到着。ここでまた大勢の方々が乗ってくる。
 そこから1つ目の駅が市川塩浜。私が以前住んでいた公団住宅のハイタウン塩浜がすぐ近くにある。その駅を過ぎた頃に目に入るのは、市川沖の海。そこから先に東京湾が広がっているが、将来ここが埋めたてられるという話もある問題のエリアである。

 東京湾ということになると、次の駅である新浦安にあるCVSベイエリアの本社が思い出される。東京湾沿岸一帯でサンクスのコンビニチェーンを展開。8月1日からはネットランドリー事業をスタート。
 私がこの企業のことを私の有料コンテンツで紹介したのは2月。その時からじっくり持って頂いた方は大勢お見えかと思うが、先般ようやく1000円台に乗ってきた。苦節半年ではあるが、ようやく私の努力が実ろうとしている。でもまだまだPERは低い。新事業の成功に賭けるならまだまだ上値はあると密かに期待…。

 新浦安の次は舞浜。東京ディズニ−ランドがある駅だ。今日もたくさんの親子連れが今か今かと開園を待っている。
 そう言えば、私は家庭サービスを最近していない。今度ディズニ−シーができるとのこと。オープンしたら行ってみよう。ここを経営しているのがオリエンタルランド(4661)。ユニバーサルスタジオジャパンなどのライバル登場で話題に欠いていたが、ディズニーシーのオープンで再び巻き返しができるのか…。6000円前後まで下げていた株価も、9000円台に戻ってきたが…。

 電車は東京湾を横目に、一路東京駅まで一直線。新木場から八丁堀駅へあっと言う間に辿り着いた。
 新木場から八丁堀までにいく途中の潮見駅近くには、内田洋行(8057)の本社ビルがそびえ立つ。教育関連が好調の一方で、パソコンなど情報関連が低調。株価の下げは業績停滞を織り込んでのもの。でも430円まで下げた株価は、そろそろ買いのチャンスなのか…。たまには広報の高木さんに聞いてみよう。

 八丁堀駅で降りた私は、白銅ビルのあたりから通りに出て、オフィスのある新大橋通りに向かう。
 白銅(7637)という会社は、昨年3月に店頭上場したなかなか面白い企業である。儲かっているせいか自社ビルで不動産事業も手掛けている。但し、上場した途端に今期の業績を減益として、投資家を裏切ってしまった。データベース活用のユニークな事業展開で、ここでの株価下落は改めて狙い目ではないか…。


 このように、私の通勤風景は常に株式市場のことや銘柄研究のことで頭が一杯であります。
 でも電車から見える富士山の姿(電車から夏場でも見えることがあります)にしばし見とれることもあり、毎日の小さな億の近道の旅を楽しんでおります。

 皆さんも生活の中に根ざした楽しみながらの株式投資を実践してみて下さい。(炎)

 

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2001/08/06 炎のニューフェース紹介
炎のファンドマネージャー

 

 このところIPO銘柄が結構熱い動きをしているようです。

 8月9日に登場するセプテーニ(4293)はどうでしょうか?先日、私は同社の説明会に出席させて頂きました。既に、同内容のコメントを私の有料コンテンツ購読者にはお送りしておきましたが、購読者の方々のご了承を得てこのコンテンツを配信させて頂きます。


企業名:株式会社セプテーニ(コード4293)
本社:新宿区西新宿2−6−1 03−3342−7600(代)
代表取締役社長:七村 守(リクルート出身の46歳)
設立:1990.10.29
事業内容:REALとWEBの企業マーケティング総合支援
従業員数:連結84名
URL:www.septeni.com/
IR担当者:三谷 雅紀
上場予定日:8月9日
上場時発行済み株式数 8710株
決算期:9月
1株当たり配当1256円
公募価格:38万円
予想PER17.9倍

 決算内容については、上場前ということからほとんど説明がなかったが情報端末によると、

2000.9期 (連結)売上高 49億円(+14%)
経常利益 2億円(+85%)
税引利益 0.91億円(+117%)
EPS6.4万円

2001.9期予想(連結)売上高  63億円(+29%)
経常利益3.18億円(+59%)
税引利益1.84億円(+102%)
EPS2.12万円


 結構成長性がありそうですが、事業内容は以下の通り。皆さんもじっくり研究してください。

アウトソーシング事業
 CDP事業(ダイレクトメールの発送代行)、テレマーケティング事業、バイク便事業
 今後の成長率イメージ+5% 粗利率19%

インターネット事業
 WEBマーケティング、WEB広告事業、コンテンツ開発
 同+40% 粗利率38%

人材ビジネス事業
 人材斡旋、再就職支援
 同+25% 粗利率85%

 なぜ、いろいろな事業をやっているのか?
 答えはクライアントのマーケティング上のニーズに応える使命と、当社の人材アセットが存在していたから。

 事業としては、リクルート出身で採用のコンサルタントとしてスタート。バブル崩壊で採用だけでは食えないとの考えから、アウトソーシング事業にシフト。最近では紙媒体からインターネット活用の提案事業が急成長。今後の成長もこのインターネット関連事業がポイントとなる。

 安定成長のアウトソーシング事業から高成長のインターネット事業にシフト。
 インターネット事業は四半期毎に30〜40%成長を辿っている。前9月期の売上構成比5%は、中間期で15%に上昇。中期的にはインターネット事業と人材ビジネス事業をあわせて半分を占めることを目指す。

【アウトソーシング事業】

 企業がコアビジネスへ集中させる動きの中で、アウトソーシング化が進展。
 企業1300社、学校300校、約1600社の既存顧客

 ・CDP事業
 発送コスト、時間削減効果。類似企業は株式会社DMS、トッパンフォーム。
 ・テレマーケティング
 発送後の訴求効果を狙う。類似会社が行っている大企業のキャンペーン向けの低単価サービスと違って、中堅企業のサポートがメインで単価は高い。
 ・バイク便事業 発送の緊急対応 200億円市場、7年の実績、業界8位、1位はソクハイ。
 GPS最適自動配車システムによる効率輸送の徹底。

【インターネット事業】

 立ち上がったばかりの事業であるが、広告代理店(電通、博報堂、サイバーエージェントなど)とメディアレップ(まぐクリックやサイバーコミュニケーションズなどを言う)の両機能をもったエージェントの役割を果たす。
 マージンは、広告代理業務は15%、メディアレップは30%。
 電通や博報堂のような主としてテレビメディアを対象としたものではなく、インターネット広告(インタラクティブメディア)に特化した広告会社である。
 無数のメディアを扱うインターネット広告の世界では、既存の総合広告代理店の機能だけでは広告主の要望には十分応えられない。
 同社では今後、上場で得た資金を活用して有望メディアのM&Aを行う方針。
 これによって粗利率の向上を目指す意向。
 同社とライバル他社であるサイバーコミュニケーションズやまぐクリックと比べ、REAL事業を営む点で異なっており、成果の訴求が可能である点で違いがある。但し、自社メディアを持っていない点ではまぐクリックに劣る点である。

 同社の強みはインターネット広告に特化し、強いメディアプランニング力を持つ点。新規顧客獲得のための自社内営業力が高い。費用対効果の追求が可能で、リピート増に繋がる。バナー広告よりメール広告の優位性を主張するなど。また、どのメディアが広告として有効かを提案できる体制。今後はブロードバンド化されて動画配信が広告を変えていく公算。

【人材ビジネス事業】

 類似会社は日本DBM、インテリジェンス 既存顧客約1600社。中長期的に収益貢献

・人材斡旋事業
 IT業界に専門特化した人材バンク、業界最多の110職種分類でマッチング効率高い。

・再就職支援事業
 現状は苦戦。将来はアレンジして撤退を考慮。日本企業の人事担当者は実績主義で苦戦。リストラ者の転職実績100%で、今後は中高年転職斡旋事業 を強化。

 以上が事業の概要であるが、経営コンセプトは「ひねらんかい」頭脳集団&ファブレス(他社と差別化された組織の構築)

 全社戦略として、以下の強い会社5原則を徹底する。

1.スピード
2.ストレッチ
3.サムシングニュー
4.全員参加型経営
5.リーダーシップ

 経営戦略としては、営業面ではリピート率の向上、新規顧客開拓力の向上を目指す。1社の取引額は最大2%までとする。効果訴求のために受注を制限。人事面ではマネジメント力の向上に注力。財務面では与信管理力の向上、採算性重視の経営を心掛けている。

 事業実績としては、1990年の創業後に1期だけ減収となった時期があったが、その後は7期連続して増収を続けている。

 96年の売上高は2125百万円、97年2463百万円、98年3042百万円、99年4296百万円、2000年4911百万円と順調に成長してきた。

 経常利益は96年89百万円、97年103百万円、98年117百万円と順調に伸びたが、99年は108百万円へと小幅ダウン。インターネットやアウトプレースメント事業のスタートがあったことが影響した。2000年は200百万円へと急増。創業来、黒字経営を続けてきた点は高く評価される。

 財務面でも流動比率が160%前後で安定しているほか、固定比率が60%以下へ低下。自己資本比率は43%台へと上昇してきており、内容の改善がみられる。

 インターネット関連ビジネスは踊り場を迎えているという話が出ているようだが、同社ではインターネットへの広告予算の減少はないと見ている。とにかく全てが費用対効果の問題であり、良いメディアさえあれば企業は採用する可能性が高い。つまり踊り場との見方は取っていない。

 DM広告市場に加えて、インターネット広告市場が成長していくことは確かである。
 電通の調査によると平成10年から平成12年までの広告市場において、DMがH10年3155億円、H11年3242億円、H13年3455億円と着実ながら小幅の伸びに留まっているのに対して、インターネット広告市場はそれぞれ114億円、241億円、590億円へと急成長しているとしている。

 急成長しているとは言え、インターネット広告はまだ構成比としては全体の1%に過ぎない。このため、マスコミ4媒体構成比が65%前後で頭打ちとなっているのに比べ、まだまだ構成比としては大きく伸びる余地が大きい。とりわけ最近ではメール広告の成長が著しい。

 企業の意識の変化を促す努力をしていく必要が大きい。同社は広告主の要望をダイレクトに聞いていることから、企画提案力・商品開発力に優れている。

 今回の上場は、インターネット広告のインタラクティブエージェンシーとしてNO.1の地位を確保するため、営業力、収益力向上を図るために小規模ではあるがM&Aを実行するために必要だという。

 ハンドリング能力に優れた若いメディア企業を6ヶ月間の取引を見ながらM&Aしていくことでメディアを確保し、収益向上を図る意向だ。

 現在既に5万ものサイトがあるが、彼らは広告収入の不足で悩んでおり、現状でも1日3,4社が販売依頼に訪れているという。
 このため、毎日8時から10時までの2時間は媒体の説明会を実施しているとのことだ。おびただしい数のメディアから有望なものを探していって、広告を掲載していく作業は結構大変そうだが、面白い事業のような気がする。

 宝の山のようなインターネット事業が、今後どのように同社に成長をもたらすのか注意深く見守っていきたい。

【投資判断】

 公募価格としては50万円前後が妥当かと思われたが、実際には38万円という破格の値段で決まった。
 EPS2.12万円。株価38万円でPER17.9倍。

 市場環境が悪かったことがこの価格に決まった理由と言える。
 目標株価はPER25倍の53万円。
 このところのIPO銘柄の株価が堅調なことから、もしPER20倍以下なら黙って買っておきたい。有配企業である点もやや優位になるだろう。時価総額ではまぐクリック並みで50億円が妥当。そうなれば株価は57万円が妥当ということになるが…。 果たして皆さんはどう評価されますか。

 それにしても下記の銘柄は、このところよく下がってきています。ネット広告市場がネガティブに見られている証拠です。
 実際にはどうなのか、皆さんの方がよくご存じなのかもしれません。

 成長性のないと烙印を押されたDMS(9782)の方がバリューとしては安いですが、果たして皆さんはどう判断されますか?

【類似会社比較】

●サイバーコミュニケーションズ(4788)
 上場時公募価格 35万円  無配 時価21万円
  時価総額 525億円 今期予想経常利益 810百万円
 来期予想(四季報ベース)30億円

●まぐクリック(4784)
 上場時公募価格300万円  無配 時価31.1万円(6月2分割実施)
 時価総額49.8億円 今期予想経常利益 2.95億円 

●DMS(9782)
 14.5円配当 配当利回り 3.3% 時価430円
 今期連結EPS 66円 時価総額 31億円 今期予想経常利益 8.3億円

*株価は8月2日現在

 

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2001/08/03 円安政策という切り札
生涯遊人

 

 経済を回復させる方法は、いくつか考えられる。財政政策と金融政策である。

 財政政策は、公共投資による需要の拡大、金融政策は中央銀行による利下げによって、需要を刺激する方法だ。利下げにより、マネーサプライが増加し、市中にお金が回り、需要が喚起されるという道理だ。

 日本はこの10年、この二つの方法を使って景気を底上げしようとしてきた。公共投資に関しては、度重なる経済対策により100兆円ばかし使ったが、景気の底割れをかろうじて支えているにすぎない。
 金融緩和に関しては、日銀の行動は必ずしも機動的だったとはいえないだろう。バブルつぶしの世論におどって金利を引き上げていたときには、素早く利上げしたが、利下げ局面では、その動きは鈍かった。

 これは、今回の米国の景気後退局面で、FRBが市場の裏をかき矢継ぎ早に金利を引き下げたのに比べ、動きがにぶかった。また1998年の日銀法の改正までは、日銀の行動には、政府、大蔵省の意向が強く働いていたことを考えれば、一概に日銀だけの責任ともいえないであろう。
 また今回のゼロ金利下でも、実質金利は、名目金利−インフレ率であるので現状のようにデフレ下では、物価が下がっている分、金利は高止まりしていることになる。

 まだ政府日銀が、試していない景気刺激策が残っている。通貨の切り下げである。要するに、いまよりも円安にするということです。この通貨の切り下げによって、経済を回復させた例は、この10年あまり先進国でも2例ほど見られる。

 1992年のポンド危機により、それまで英国の経済実態以上に過大評価されていた英国ポンドは、投機筋の攻撃を受け、1ポンド=2.900マルクだったものが2.800マルクに、その後2日で2.65マルクまで切り下げられた(10%ほど)。
 これにより英国はERMからの離脱を余儀なくされ、その後のユーロ統合にも出遅れてしまった。英国ポンドはその後2.2000マルクまで下落し、なんと25%も切り下げられてしまった。このため、ポンド危機を仕掛けたとされるヘッジファンドなどは、政府関係者から名指しで非難されたものだ。

 しかしこのポンドの切り下げは英国になにをもたらしたのだろうか。
 英国はERMにとどまるためポンドを高止まりさせていた。このため金利を高めに維持していたERMの離脱により、金利引下げが可能となり、これ以降、英国経済は劇的に回復に向かう。

 10.5%あった失業率は1994年に7%台に、その後も下降し続けた。また鉱工業生産なども、1994年まで上昇し続け、英国経済は好調を維持した。実際、これらの経済指標は、1991年が底で、またそれ以前の10年間、サッチャーによる構造改革が実をむすんだ結果の好景気だったのだろうが、このポンドの切り下げが起爆剤となり、景気回復をなしとげたといってよいだろう。

 また米国も、1990年初頭からの不景気を$安政策(1$=120円から80円の円高を覚えておられるだろう)と、FRBの実質金利ゼロの金融政策で乗り切った。

 このようにみてみると、構造改革により、好景気を謳歌しているといわれる2大アングロサクソン国も、その最終局面でのブースターがわりに、あるいは、失業率の悪化、経済の失速を回避するために、金融政策と通貨の切り下げを利用した。
 このように考えると、円は最近の105円−147円の中で考えても、そんなに円安とはいえない。まして200円250円から見るとぜんぜん円高だろう。

 この先構造改革が行われるとしても、そのときの切り札に更なる金融政策と、通貨の切り下げが必要になるかもしれないだろう。(生涯)

 

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2001/08/03 頑張れ!日本企業!日本の投資家!
駄洒落商会会長

 

 金曜日担当の駄洒落商会会長です。

 株式相場は、日経平均で7月30日のザラ場安値11539円をボトムに、戻り歩調です。軒並み大幅下方修正となったハイテク各社の4−6月期決算発表が終了したところへ、米メリルのアナリスト氏が半導体製造装置メーカーの投資判断を引き上げるなどの好材料が加わり、相場のムードが変わってきました。本日(3日)は157円の反落とはなりましたが。

 小泉首相は「株価に一喜一憂せず」と明言しておられます。構造改革を推進すれば、中期的に景気も回復し、株も上昇すると言っておられる訳ですが、その意気や壮とすべしでしょう。
 ただ、株価が下がるばかりで、「一喜」どころか「一憂」ばかりとの悲鳴も聞こえるようですが。

 月曜担当の炎氏が指摘しておられ、また、私も以前に書いたことがあるのですが、証券税制の改正は遅々として進みませんね。株価を上げるためではなく、個人投資家がマーケットに参入しやすい環境を整え、市場を育成することは絶対に必要です。
 それこそ、目先の株価に一喜一憂する問題ではなく、10〜20年かけて取り組むべき問題です。

 同時に、「パーソナル・ファイナンス」に関しての教育を早急に導入することです。最近は、大学によってはそうした学科を設置し、外部講師を招聘する動きもあるようですが。

 税金に関して、投資に関して、簿記に関して、基礎的な知識を学生に早めに植え付けることは重要です。これも長期的に取り組むべき問題ですね。

 証券税制を改正し、証券市場を育成することは、新しい産業を育成し、再び日本経済の活力を取り戻すためには不可欠なことなのです。
 銀行各行は「不良債権」処理を加速していますが、銀行を通じて企業に資金を融通する「間接金融」では、成長産業の育成はその「性格上」難しいのです。銀行を非難しているのではありません。「将来性」を担保にしてお金を貸すのは、なかなか出来ないことですから。

 そのために、株式市場を介して企業に資金を投ずる「直接金融」の育成が重要になってくるのです。
 配当の二重課税を廃止する、株式譲渡益課税を軽減するなどの環境整備が必要です。
 企業の側も、投資家をひきつける努力は必要です。魅力を高めなければ、投資家が銀行預金から得る利子以上のリターンを得ようとリスクを取ることはないからです。

 このことに関するアナリストの職責は重いものがありますね。「テクノロジーに特化」する「億の近道」執筆陣のなかで、私の「芸風」はいささか異なるものでしょうが、日本の投資家と企業を応援し続けたいと思っています。(駄洒落)

 

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2001/08/02 テクノロジー研究:セラミックハニカム
両津勘吉

 

 自動車排ガス浄化用ハニカムにはセラミックスが多用されています。
 昭和53年、日本ではそれまでの排気ガス基準が一気に厳しくなり、三元還元触媒が装着。また燃料系では、キャブレターから電子制御キャブレターやインジェクション(電子制御)(トヨタのEFI、日産のEGIやECCS、三菱のECIなど)が使われるようになりました。

 自動車ファンにとっては非常に残念なことであり、ソレックスのツインキャブ復活を求める声や、触媒を抜いて直管にし、オーバーラップの大きいカムシャフトエンジンのアフターバーナーを懐かしく思う人たちが沢山いました。
 自動車免許を保有していない当時の私にとっても、昭和53年規制後の車はパワーがなく規制自体を”ガン”と思っていました。触媒なんて邪魔なだけ…とマジで考えていましたから。

 しかしその後のエンジン開発は急速に進み、出力表示がグロスからネットに代わった当時には相当のパワーを出していました。昭和62年、ぢんぢ部長と私の共通の友人が、初代ソアラの中古に乗っていました。このエンジンは5M−GEUという型式で2.8リッターのツインカム仕様。当時はパワーがあったほうですが、所詮エンジン技術の乏しいトヨタでしたから2バルブ仕様です。
 このエンジンを、チューナーとして有名になりつつある都内のTBOに持ち込んだのです。この5M−GEU改ターボ仕様、速いの何のと、トンでもない加速を示すのだ。しかしその直後、トヨタはスープラに3リッターターボを搭載し、この改造ソアラをいとも簡単に抜いてしまったらしい。
 メーカーの技術革新は凄いの一言に尽きます。

 車も凄いことながら、自動車メーカーには凄い運転をする方々が存在しています。当時あまり知られていませんでしたが、日産追浜工場の一角に数百メートルの直線コースがあったらしいのです。数人のテストドライーバーは幾度となくそのコースを行ったり来たり。これはゼロヨンのテスト部隊だったのです。停止から急発進し、400メートル地点まで何秒で到達できるか。当時の自動車CMやカタログにはゼロヨンタイムが記されていることが多く、こんなタイム出るわけ無いと文句をいうユーザーも多かったのです。
 しかし、日産の場合は違いました。このテストドライバー達は、正にゼロヨンを走るために訓練された、ゼロヨンでは右に出るものがいないプロだったようです。
 この模様を見て驚いてしまった走り屋がいます。ダートトライアルで有名なチームグルービーの元副会長であった中村氏です。あまりにも上手すぎる発進と、全く無駄の無いテクニック。もっと驚くのはクラッチがあっという間に壊れてしまうことだそうです。上には上がいるもんだ。

 話が外れましたが、排気ガスの邪魔をする触媒が付いても、現在のエンジンは異常なハイパワーを実現しているわけです。


 では本日の本題に入ります。

【ハニカム技術の現状】

 通常のハニカムは円筒形をしており、大きさは自動車の種類により違いますが、一般的な乗用車で直径10cm強、長さ15cm程度です。これはエンジンルーム内のレイアウトや床下の空きスペースによって変ります。楕円形型や三角形を少し丸めたものもあり、車種毎のオーダーとなります。

 そして、その円筒型の上面及び下面に小さな穴が無数開いていまして、この間を排気ガスが通り、穴の表面にある触媒(金属)と作用し、還元される仕組みです。

 ハニカムの無数ある穴の壁はどんどん薄くなっており、この薄壁化がハニカム業界にとって技術競争となっているのです。

 現在、世界で最も薄い壁は2ミル。これは約50ミクロンで、これを製造しているのは日本ガイシとA社です。世界最大手のコーニングは手掛けておりません。彼らに2ミルを製造する技術がないのか? それとも彼らのユーザーに薄壁ニーズがないのか? それはわかりません。

 2ミルの用途は、日産ブルーバードシルフィーなどカリフォルニア州のSULEV基準を達成しているエンジンには、この2ミルが必ず搭載されている。またガソリンエンジンの超希薄燃焼を実現しているトヨタD−4など、直噴タイプにも薄壁が使われている。
 直噴エンジンは混合気が薄く、そのため燃焼温度が高くなりNOX(窒素酸化物)の発生量は多くなり、高価なハニカムが必須となる(某メーカーハニカム開発者)。

 ハニカムの流れ(あくまで一般的なものとお考えください)
 6ミル: 400セル/in2
 4ミル: 400セル/in2
 2ミル: 900セル/in2

ミル:壁の厚さセル:インチ平方当たりの穴の数

 6ミル−400セルの表面積は27cm2/cm3に対し、4ミル−400セルでは29cm2と7%拡大、しかし2ミル−900セルだと44cm2と6ミル−400セルと比較し表面積が63%も拡大しているのだ。
 ある一定の領域を考えた場合、表面積が大きいほうがより浄化性能が高くなる。薄壁化が求められる理由はここにある。
 しかしなぜ2ミルではNGKI、デンソーも900セルにしたのか?

  薄壁化の難しいところは押し出しと焼成。特に押し出しが出来たとしても焼成時に壁が崩れやすく、これを防止するには1インチ当たりのセル数を拡大し、小さな穴をたくさん設けたほうが強度が上がるためである。
 また当然のことながら、完成品となった場合にも強度が高い(四角より六画、円となった方が外部応力に対し強い)。
 しかしながら、穴径をむやみに小さくしていくとデメリットが生じる。6ミル−400セルの圧力損失を100とすると、2ミル−900セルの圧力損失は155と55%も上昇するのだ。

【最新のハニカム技術】

 ハニカムの穴形状は四角形が一般的だが、6角形タイプがサンプル出荷されている。6角形の特徴は、4角形に比べ高価な触媒金属の使用量を削減できることだ。某メーカーの試算によれば、SULEV基準を達成するための触媒金属コストは以下のとおり。

 
触媒金属使用量
コスト(円)
4角形LEV
3グラム
7500円
4角形ULEV
5グラム
12000−13000円
4角形SULEV
10数グラム
30000円オーバー

  しかしながら、6角形セルならこの触媒金属使用量を25%程度削減でき、高価な白金系金属使用量を削減できる意味合いは非常に大きい。金属使用量を減少してもエミッションの発生は四角形と変わらない上、圧力損失も有利。更に多角形ほど外部からからの応力に強く、強度は高いものとなるなどメリットは大きい。

 高価な金属使用量減少は触媒(キャタライザー)コストを大きく押し下げることが可能となります。ハニカム屋さんに期待します。


 ここでまた脱線させて頂きます。
 某ディーゼルエンジン燃料技術者の話をご紹介しましょう。

 ディーゼルエンジンの研究が盛んになっている。94年までのディーゼルエンジンはターボチャージャー+インタークーラーでパワーを稼ぐ意味合いの他、排気ガスを綺麗にする効果も狙って設計された。

 その後、ガソリンエンジンでは一般的に利用されているEGRをディーゼルエンジンにも搭載。これは未燃焼ガスを含む排気ガス(エキゾーストガス)の一部を再度吸気側(intake)に戻し、シリンダー内の燃焼温度を低下させ、NOX(窒素酸化物)の低減を狙ったもの。
 また可変バルブを用いて吸気スワール発生を起こさせたり、燃料噴射を電子制御し、酸化触媒を付ける等、排気ガス対策が大きく前進しだしたのが94年以降である。

 その後、2000年にはダブルオーバーヘッドカムシャフト(所謂ツインカム)に1気筒当たり4バルブを搭載した上で、パイロット噴射(Pilot Injection)+燃料噴射の高圧化でパティキュレートの削減や、ターボチャージャーのA/Rを可変させるなど、スムーズなレスポンスを得られるようになっていった。

 しかし世界的に排気ガス対策が求められる中、これまでの技術ではディーゼルエンジンに未来は無い。そこで95年頃に部品メーカーが発表したコモンレールが、ここに来て注目され始めている。それまでのディーゼルエンジンは電子制御していたにも拘わらず、各シリンダー毎に細かな燃料噴射が可能ではなかった。またパティキュレートを減少させるためには、更に燃料を高圧にしなければならず、その条件を満たすことは出来なかった。

 しかしコモンレールは高圧な燃料を各シリンダーに対し一様に噴射することが可能である上、初期に噴射微量し、後でメイン噴射といった噴射自由度の高いインジェクションシステム構築が可能である。

 ディーゼルエンジンはその仕組みから、内燃機関中では最も優れた効率を示すエンジンではあるが、排気ガス対策が非常に難しく、将来は先細りになると見られていた。しかし排気ガスの面で問題がクリアーできれば、CO2(二酸化炭素)ではガソリンより有利であり、マーケットは拡大の可能性もあろう。

 コモンレールが搭載されたことにより、ディーゼルエンジンの未来が明るくなってきた。その中で特筆できそうなことがある。

 米国では大型トラックにディーゼルエンジンが搭載されているが、乗用車やライトトラックなどには専らガソリンエンジン。しかしCO2規制や燃費規制など厳しい条件が設けられることが予想される中、アメリカ人のハートを釘つけにする所謂、アメリカンV8(V型8気筒)エンジンが問題になっている。

 かつてはV型8気筒で5000ccや7000ccというマンモスエンジンを乗用車に搭載していたが、これらは環境上良くないとの考えがあるわけだ(CO2、燃費規制をクリアーできない)。
 ガソリンエンジンならば、現在の技術なら3000−4000CCもあれば充分。その場合、8気筒では部品代が高くなる上、メカニカルロスも大きく、無理に8気筒を作る理由はなくなってしまう。それではアメリカ人が納得できないであろうと、ビッグ3はアメリカンV8のディーゼルエンジンを、敢えてディーゼルエンジンを締め出すかのように更に厳しくなる規制に立ち向かって研究中である。

 現在の燃料圧力は120−130Mpa(ガソリンエンジンは10Mpa)、これを早ければ2003−2004年頃には160Mpaに引き上げる。その1年後にはインジェクターの燃料噴射コントロールバルブを、現在のソレノイドバルブからピエゾ素子に切り替える。その後、燃料圧力を180Mpaに高めていく。

 一方、排気ガスとして2つの大きな問題が残されている。パティキュレートとNOXである。
 パティキュレートでは既に出回っている方法だが、燃料に添加剤を混ぜパティキュレートを燃やす方法。またバーナーやヒーターなどで強制的にパティキュレートを燃やす方法も提案されている。パティキュレートは一般的に550度以上でないと燃えない。しかし酸化させることで、250度程度の比較的低い温度でも燃焼可能となり、フィルターによりパティキュレートを捕獲し、燃焼させる方法もある。

 550度以上の高い温度条件が必要ということは、走行状態にもよるが燃やすチャンスが低くなることを意味するものである。

 NOXに関しては、NOX触媒装着による方法が一般的であろう。
 種々触媒に加え、Disel Particulate Filterが必要となる他、NOX、温度、HCセンサーや将来はノックセンサー(ノッキング対策)も装備するであろう。

・インジェクターに今後用いられる可能性の高いピエゾ素子とは、圧電素子のことである。 この材質にセラミックス製が採用されるかどうかは不明。

・ディーゼルエンジン及びガソリンエンジンの直接噴射には、従来の三元還元触媒を使うことが出来ない。よって1台当たりのハニカム個数や搭載量は増加の方向。

・ディーゼルパティキュレートフィルターを従来エンジンに搭載すると、火災発生の可能性が高い。従来エンジンではパーティキュルの粒子が大きく、量も多く、燃えるときに一気に燃えてしまう。先行きはコモンレールとパティキュレートフィルターがセットになったシステムになろう。

 日本ガイシは、圧電素子、ハニカム触媒、ディーゼルパティキュレートフィルター、センサーの全てを手掛けているのだ。(両津)

 

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