No.
日付
タイトル
執筆者
15
2002/02/26
シリーズ 特別損失の研究 第2回
大原部長
14
2002/02/25
投資視点:狙われる利回り採算銘柄
炎のファンドマネージャー
13
2002/02/25
短期投資家VS長期投資家
炎のファンドマネージャー
12
2002/02/25
株を買わずにビジネスモデルを買え!!
炎のファンドマネージャー
11
2002/02/22
未公開株のリサーチについて
駄洒落商会会長
10
2002/02/22
外貨投資 何がお得か MMF編
生涯遊人
9
2002/02/19
シリーズ 特別損失の研究 第一回
大原部長
8
2002/02/18
読者のつぶやきに答えて
炎のファンドマネージャー
7
2002/02/18
炎の随想録:オクチカ活動に寄せて
『生きている証を求めて』
 
炎のファンドマネージャー
6
2002/02/18
お金の流れにまつわる話 
炎のファンドマネージャー
5
2002/02/15
外貨投資、何がお徳か その2 
生涯遊人
4
2002/02/08
外貨投資、何がお徳か
生涯遊人
3
2002/02/05
アナリストが失敗するとき まとめ 最終回
大原部長
2
2002/02/01
頭の体操
駄洒落商会会長
1
2002/02/01
2つのスキャンダル
生涯遊人

前月のコラムへ

15
2002/02/26 特別損失の研究 第2回
大原部長

 

パート1 〜平等主義は莫大なリストラ費用がかかる〜
パート2 〜事業の売却に費用がかかるのはなぜか〜


パート1 〜平等主義は莫大なリストラ費用がかかる〜

松下のリストラ。
来期V字の回復と社長はいう。
固定費を来期から1200億円も削減したからだ、と。
そのために4000億円以上の「特別な」損失が発生する。
連結従業員20万人以上いるうちの、たった1万人強をリストラするだけで4000億円の費用がかかるなら、追加リストラで1万人削減すればさらに数千億はかかるだろう。
松下は長年PBRで評価されてきた。抜本的なリストラをちょっとしただけで、これだけの費用がかかる。
今後、本格的な再編を行うと、いったい、どれだけの費用がかかるか、見当もつかない。
あと5年すれば、松下のPBRの議論そのものが成りたたなくなるだろう。

特別損失は株主価値を破壊する。
企業が退職者に割増して払う退職金ももちろん株主から支払われる。
事業の縮小によって不要になった人員を解雇するときに、再雇用先が見つかるまでの一定期間を保証しなければならない。

通常の失業保険に加えてこの種の退職金はなぜ必要になっているのだろうか。

日本企業の特色は、平等主義だろう。
一律で行う。退職金を余分にもらうには、「何歳以上」という条件がつく。
50歳以上だからという理由だけで特別ボーナスがもらえるようなものだ。

50歳以上の人たちの間で、できる人もできない人にも同額が支払われる。
こう書くと、割増退職金は、1)年寄りで、2)仕事ができない人たちに有利だと思える。
しかし、再雇用先の反応はどうだろうか。年なんかあまり関係ないだろう。
仕事が出来るか。熱意があるかどうかが問題だろう。
再雇用できるかどうかの可能性を見たとき、実は、仕事ができる人が数多く辞めていくだろう。
再就職に自信のないものだけが企業に残るということになりかねない危険がある。

これは株主にとって最悪の事態だ。
辞めてほしくない人間が辞めるときにお金を払って、辞めてもらいたい者が残り、案の定、仕事ができない。
株主は、来年以降も仕事ができない人に給料を払いつづける。

なにが間違っているのだろうか。

リストラをするなら、仕事ができない者から首にしなければならない。
仕事ができない理由が、長年にわたって努力を怠ってきたからだとしたら言語道断だろう。
仕事ができないとわかったとき、仕事ができるようになるために努力するか、仕事をやめるか、どちらかを選ぶのが筋だ。

どうして仕事ができない順に解雇できないのか。
考えられる理由は、
(1)仕事の責任があいまい仕事の責任の基準があいまいで、事業の失敗にだれも責任をとらない。失敗をとがめないため、仕事ができないグループが生きのびる。
(2)意味のない仕事が多すぎる意味のある仕事が埋没して評価ができなくなる。意味のない仕事と意味のある仕事を区別できない上司がいるため、みんなが意味のないことをやらされている
(3)社外の努力を評価しないステップアップしてスキルを向上させていくような文化がない夜間に大学に通いたくても、残業が多いためできないなど
(4)評価が働いた時間に比例みんなが長時間労働する。そのため、仕事ができない人がいない。みんなすごく働くので、序列がつけられなくなるなど。

退職金に割増分を出すのは、株主重視とはいえない。
経営者が自分たちが仕事の評価ができないといっているのと同じ意味である。

特別損失を避けるためには
(1)企業が社員に責任を与え、その責任を果たしたとき、十分に報いるシステムがあるかどうか。上司が責任を明確にとる
(2)長時間労働の慣習を廃止する 働いた時間だけが評価に結びつくような職場の雰囲気を改善する
(3)プロジェクトごとの評価を明確に行う一人一人の評価は明確になされるべき評価が落ちてくれば、しっかりと相談にのり、評価を上げていくインセンティブや助け合うサポートシステムを確立すること
(4)給料に見合う市場価値を身につける企業は社員に専門性とビジネスセンスを身につけさせる。やる気や向上心のある者には、昼休みや5時以降の時間を大切にさせる
(5)職場の上司は経営のプロを選ぶ。違う意見のものを受け入れるような寛大なもの、そして力量のある人物を経営者が各職場に上司として選ぶこと。上司がだめだと雰囲気が悪くなる。悪い雰囲気の会社はいい人材から辞めて行く。

●株主はよい人材が辞めないように、その人の実力に見合った高い報酬を払うことには反対しない。
●株主は、実力のある人間が会社を辞めるときは、その人からペナルティーをもらう。その分、高い報酬を普段から与えるべき。
●レイオフは、仕事ができない順番で行うべき。普段からその順番を本人に知らせるべき。本人がやる気になるようなプログラムも必要。そして、その順番を改善するためには、どういうステップアップがあるのかを、会社は能力改善プログラムとして周到に用意していなければならない
●必要な人間だけで普段からオペレーションを行うべきである。不要な人間を抱えているだけではなく、本人たちの市場価値を高める努力を長年にわたって怠ってきたから、解雇されたときに、割増の費用が発生する
●よい経営、よい上司、よい職場、向上心のある社員。そういう組織には割増退職金による特別損失は発生しない。

米系企業の場合:辞めてほしくない社員は高い報酬を受け取っている。一人一人の給料の額は経営者が決める。同僚同士でもお互いの給料はわからない。ボーナスは、パフォーマンスに100%連動している。しかし、パフォーマンスによるボーナスのほかに、辞めないように引き止め料金をもらっている。自分からやめると引き止め料金は返さなければならない。ある一定の期間を務めることに成功するとその引き止め料金は返さなくてよい。または、会社が辞めてくれといえば、その引き止め料金はもちろん自分のものになる。解雇は多い。しかし、実力さえあれば、どこにでも就職はできる。そうすれば、株主は、辞めてほしくない人間が辞めるなら、その辞めて行く人間から特別利益をもらえる。


パート2 〜事業の売却に費用がかかるのはなぜか〜
構造改革費用 株主からすべてを毟り取る経営者

最近、構造改革費用という項目の損失を耳にすることが多い。
ある事業が失敗して、まるっきり収益が上がらない。
そこそこ大きい規模になっているので、なかなかやめられなかったものが多い。
ようやく見切りをつけてやめることにした。

ところが、事業を止めるとお金がかかるようだ。
それも多額の損がでるようだ。その多額の損は、みんな株主に払わせよう、そうなる。

人員の再配置や解雇、設備の撤収や除却などがメインの費用だというが、それにしても株主からすれば大損である。
それが何年も続いているような会社も多く見受けられる。

【自分が買いたくなるような事業しか他人には売却できない】

以下は、半導体各社において、最大のキャパシティをもつ工場を列挙したものだ。

表1 半導体前工程工場比較(8インチ換算)
社名
代表的工場
最大のライン
生産拠点
総能力
能力/拠点
三菱電機 西条
20000枚/月
5箇所
139K
28k
富士通 会津若松
30000枚/月
3箇所
85k
28k
東芝 大分
35000枚/月
8箇所
133k
17k
日立 那珂
30000枚/月
8箇所
183k
23k
NEC 熊本
30000枚/月
9箇所
321k
36k
 
三星 FAB6
60000枚/月
3箇所
289k
96k
IBM EssexJB
54000枚/月
5箇所
204k
41k
Intel Fab 9
50000枚/月
7箇所
270k
39k
T I Daiias
24000枚/月
1箇所
26k
26k

日本企業は、拠点数が多く、拠点あたりの生産数が少ない。
付加価値の高い、価格の高いものをやっているインテルやTIが拠点ごとの人員や設備で日本企業を上回っているのは鬼に金棒でしょう。
三星などは、日本企業の3倍の生産をひとつの拠点で集約している。

半導体事業をリストラするときに、どういうことが起こるだろうか?

⇒ひとつにまとまっている拠点は高く売却できる
⇒ばらばらで細かい拠点は買い手がいないだろう

リクルート面、人員を集めるときはどうだろうか?

⇒ひとつにまとまっている拠点には世界の優秀なエンジニアが応募する(グローバル)
⇒ばらばらの細かい拠点には地方の優秀なエンジニアが応募する(ローカル)

コストはどうだろうか

⇒ひとつにまとまっている拠点はコスト優位性がある
⇒ばらばらの拠点はそれぞれすべてがコスト競争力を失う

組織運営はどうだろうか

⇒ひとつにまとまっている拠点の組織はまとめやすい
⇒ばらばらの拠点の組織は全社としてみればばらばらの組織である

いったい、日本の半導体の拠点を誰が買うのだろうか?誰も買わない。
ならば、どうしたらよいのか。
叩き売るしかない。だから構造改革費用がべらぼうにかかる。

世界の優秀なエンジニアをひとつに集めて、機能的な組織として運営して、規模のメリットを享受する。
それがシェアを奪う前提であろう。競争力があるなら、売却損ではなくて、売却益がでるだろう。

⇒売却損は競争力のなさの証明
⇒不況期に安く売却して、好況期に高く設備投資するのは愚の骨頂
⇒従業員にグローバルな視点がないなら、世界一には絶対になれない

(大原)

 

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14
2002/02/25 投資視点:狙われる利回り採算銘柄
炎のファンドマネージャー

 

 私の有料メルマガでは、これまで皆様に喜んで頂けるような多くの価値のあるコンテンツを配信してきたとの自負をしております。
 投資家のニーズを様々に考えながら、旬のネタを取り入れてコンテンツの作成・配信に努めてきたことが、多くの方々に支持を頂いてきた理由にもなっていると思っております。

 皆様に最も喜んで頂いているタイトルとしては産直銘柄(これは直接企業のトップやIR窓口の方と会ったり電話取材したり、説明会に出たりしてまとめたコンテンツです。つまり産地直送の投資情報という意味です)、旬鮮銘柄(IPO銘柄のことです。フレッシュな銘柄という意味でお酒の席で命名しました)、珠玉のカクテルポートフォリオ(私が得意としています5つの小型株で構成したポートフォリオ)、特別レポートなどを提供しております。
 因みにイチオシ銘柄として前回紹介しましたローランドDG(6789)は500円台から一気に688円まで値を飛ばしてしまいましたが、産地直送として紹介しました。

 最近ようやく全体相場が明るくなってきていると感じられるようになってきましたが、その背景には皆様のようなリスクに果敢に挑戦する方々の前向きなリスクテイクの動きがあるかと思っております。銀行株やハイテク株などの主力銘柄のほか、以下のような有料購読者向けの特別レポートで紹介した高配当銘柄への物色気運が高まってきているようにも思われます。

 参考までに以前紹介しました内容を披露しておきますのでご覧下さい。


★マークは先週末の検証結果です。

【特別レポート 2002/01/22】利回り採算で狙える安定高配当銘柄

 景気の低迷で各企業の業績も悪化してきており、大幅な赤字計上から無配に転落したり、減配に追い込まれた企業がある一方で、業績の変動に左右されずに長期に安定して配当を実施する実力ある企業も見出すことができる。

 今回は3月決算企業で株価が500円以下に低迷している企業に焦点を当てて、利回り採算から狙える銘柄をピックアップしておいたので参照願いたい。
 スクリーニングの条件として株価500円以下、配当利回り3%以上、EPS20円以上の黒字企業17銘柄を選定。(但し、電力株や店頭銘柄は除いた)簡単にコメントしておいた。
 また、500円以上の銘柄の中からも狙い目の銘柄が見つかったので紹介しておいた。

●松井建設(1810・東証1部)
 時価273円、今期予想EPS22円 配当金9円 配当利回り3.3%
 社寺建築で優れた技術を有す同社は、安定した業績を背景に年9円配当を長期に実施。
 250円〜340円での推移をここ2年ほど続けており、現状株価の下値不安は乏しい。ここから3月まではじっくりと配当を取るつもりで買っていきたい。
  ★本日高値300円、直近安値266円(2月1日)
  一旦は266円まで下がったがその後またジリ高歩調。

●新日本建設(1879・東証2部)
 時価275円、今期予想EPS37円 配当金10円 配当利回り 3.6%
 千葉県でトップクラスの建設会社。マンション分譲事業の伸びに支えられて今期の業績は最高益更新。前期の8円配当から今期は2円増配予定。2000年の安値191円から昨年は335円まで上昇したが、その後調整。三角保合いの動きに入っている。9月中間で4円配当を実施しているのでこれから買う方は3月末の6円配当取得が目標となる。
  ★三角保合いから上放れ。
   紹介後の安値 258円 2月21日高値360円と4割近い成果

●ライト工業(1926・東証1部)
 時価376円、今期予想EPS40円 配当金12円 配当利回り3.2%
 業績の悪化傾向はあるが、財務内容は良好で株価水準も低いことから期末配当狙いには格好の対象となる。但し、期待された環境機器関連事業で製造元の手形トラブルで提訴に至ったのはマイナス材料。下値目途は2000年10月の358円。
  ★紹介時から下値なし。高値は2月14日の408円。
  下値もみ合いの動きが続くがそろそろ反転も。

●朝日工業社(1975・東証1部)
 時価242円、今期予想EPS22円 配当金10円 配当利回り4.1%
 空調・衛生工事の専業大手で比較的安定した業績を上げてきたが収益性の低さが難点。ハイテク環境制御装置に強みを有しバイオ関連のクリーンルームも手掛ける。今期業績は採算悪化で減益。10円配当継続意向であるが配当性向が高まってきており、多少の不安は残る。仮に8円程度に減配したとしても配当利回りは3%台と高い。3月年1回の配当取り狙い。
   ★ジリ高歩調継続。本日終値265円。

●日新製糖(2116・東証2部)
 時価143円、今期予想EPS21円 配当金6円 配当利回り 4.2%
 独立系上位の精糖メーカー。不動産の有効活用でスポーツ、不動産賃貸事業へ多角化してきたが、収益的には頭打ち傾向。1999年12月の100円安値からジリ高歩調を続けてきたが昨年8月の高値209円から調整中。上げの半値押し水準以下での年1回の配当取り狙いで買いタイミング到来。
  ★下値もないが上値もなく推移。

●フジックス(3600・大証2部)
 時価384円、今期予想EPS34円 配当金12.5円 配当利回り 3.3%
 縫糸のトップメーカーであるが、国内縫製工場の海外移転で業績は伸び悩み。中国子会社の活用で業績の挽回を図る。株価は今期業績の停滞を反映して低落傾向を続けているが、配当利回りからは割安水準になってきた。有利子負債は3900万円と僅かで信用リスクも小さい。
  ★薄商いの中、僅かながら依然として下落基調継続。

●丸尾カルシウム(4102・大証2部)
 時価198円、今期予想EPS21円 配当金6円 配当利回り3.0%
 工業用カルシウムの専門メーカー。好採算の独自製品が好調で今期業績は堅調。リストラ効果も手伝って34%もの大幅な経常増益を見込む。しかしながら株価はジリ安傾向を辿っておりここ10年来なかったような水準まで下げてきた。6円配当は安泰と見られ3月年1回の配当取りを目標に買い下がり作戦で臨みたい。
 ★商い薄でなお動意なし。

●日本PMC(4963・東証2部)
 時価500円、今期予想EPS49円 配当金15円 配当利回り3.0%
 大日本インキ系の製紙用化学品の大手。製紙業界の不況が同社の収益にも影響して業績は停滞。これを反映して株価は低迷してきたが、500円という株価水準は一昨年の488円以来の水準。業績は停滞しているが財務内容良好で15円配当は安泰と見られる。流動性がないのが難点であるが押し目買いに徹するところ。
  ★紹介してから急騰。2月22日に650円の高値をつける。

●三谷セキサン(5273・大証2部)
 時価230円、今期予想EPS26円 配当金7円 配当利回り3.0%
 パイル・ポールの大手。今期業績は主力のコンクリ二次製品が買収した企業の九州工場の供給能力拡大などが奏効して好調。連結では26%の経常増益を見込む。有利子負債は20億円足らずで財務内容良好。200円を下値目途に買いチャンスを伺うところ。
 ★下値目途への下落はなく横ばい傾向。

●日鐵ドラム(5908・東証2部)
 時価262円、今期予想EPS34円 配当金8円 配当利回り 3.1%
 新日鉄系の鋼製ドラム缶専業トップ。業績は安定しているが成長性に欠けており、配当利回り、PBRなどを中心にしたバリュー銘柄。昨年の5月高値から下落歩調を辿っているが、配当狙いの買いタイミング接近。
 ★薄商いだが、この2、3日で280円以上に上昇。

●リケン(6462・東証1部)
 時価238円、今期予想EPS30円 配当金7.5円 配当利回り3.2% ピストンリング国内首位。ホンダ向け中心に数量増ながら単価下落で今期の業績はダウン。但し今期の配当は前期実施した退職給付債務の償却損が消えて5円から7.5円配当に増配。株価は昨年7月の高値454円から一貫して下落。地相場である200円〜250円のゾーンに入ってきた。ここからは配当利回りでも狙えるタイミングとなってきた。
 ★2月6日に237円があったが、その後ジリ高となり約17% の上昇となる。

●ローランドDG(6789・東証2部)
 時価491円、今期予想EPS62円 配当金15円 配当利回り3.1%
 ローランドの子会社。主力のプリンターが採算悪化で今期は減益見通しであるが、ここに来ての円安はメリット。今下期に投入した画期的製品は来期からの本格的な業績寄与を期待。株価はそうした業績回復期待を無視。依然として低迷状態を脱していないが、期末配当取り、来期業績回復期待でインカムゲインプラスキャピタルゲイン狙いが可能な銘柄と言える。
 ★紹介してしばらくは500円台前半で推移したが、ここに来て 一気に630円まで急騰。東証1部上場が伝えられたことが背景。28%の成果となっているが、弊社ではかなり強力にリコメンドしたので皆さんの成果も上がっているのではないだろうか。


以下はバリュー購読者向けに配信したものです。

●マイスターエンジニアリング(4695・大証2部)
 時価503円、今期予想EPS55円 配当金20円 配当利回り4.0%
 メカトロメンテとビル等の施設メンテを手掛ける地味ではあるが着実な成長を辿りつつある企業。昨年9月の安値401円からのジリ高歩調が続く。
  ★紹介してすぐの2月4日に630円まで急騰。

●東計電算(4746・東証2部)
 時価769円、今期予想EPS84円 配当金25円 配当利回り3.3%
 一昨年上場して以来株価は低落傾向。それに対して業績は堅調に推移。独立系情報処理会社としての再評価に期待するなら700円台前半への押し目買いスタンスで良いだろう。但し12月決算で配当金をもらうチャンスは当面ない点に注意。
  ★紹介してからずっと700円台前半で推移したので買った方は大半が720円前後の買いになった筈。本日は一気に760円の高値をつけてきた。

 以上のような内容で1月22日に紹介した経緯がありますが、一部の銘柄はなおも動きがありませんが、押しなべて堅調な推移をしているようです。但し、だからと言ってこれらの銘柄が必ずしも今後も投資成果を高めるという可能性はありませんので悪しからずご配慮下さい。

 こうした様々な発想から、私は皆さんに投資アイデアを提供しようと日夜努めております。以前、読者の方でペトロルブはどうでしょうかというご意見を頂いたりしましたが、まさに現在は配当利回りの高さ(ペトロルブは3%、年2回)で狙い目となる訳です。(炎)

 

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13
2002/02/25 短期投資家VS長期投資家
炎のファンドマネージャー

 

 3月危機が叫ばれる中で、ここに来ての株式相場は比較的堅調な動きを見せている。株式市場に参画している投資家には、短期の視点に立つ方と長期の視点に立つ方が当然の如くお見えになるだろうが、ここ数ヶ月間、とりわけ1−3月期はやや短期投資家の弱気が優位にあったように思われる。短期では確かに3月危機説の懸念、不良債権処理の遅れ、外務省問題による政治の混乱、これによる小泉首相の進める構造改革の具体化の遅れなど、投資家心理を弱気に傾けざるを得ない状況があって、決して長期に株を持つ状況にはないだろう。景気の悪化から企業収益も悪化したまま、好転の兆しが見えないが、ここに来て半導体を中心に米国の景気回復が見えてきたことから、ハイテク企業に業績の回復シナリオが描けるようになってきた。

 長期投資家としてみれば、ここは絶好の買いタイミングと考えているのだろうか。

 企業業績はまだ明確に明るさが見えない。唯一円安による輸出企業に恩恵が生じる程度で、有利子負債を抱えた多くの企業がこの先の存亡を賭けた戦いを続けている。
 それでもこの困難な局面から逸早く抜け出た優良企業が長期投資家の期待に応えようとしているし、ユニークなビジネスモデルの構築に成功した若い企業が市場で高い評価を得て成長軌道に乗りつつある事例も散見される。

 株式相場は摩訶不思議なもの。長期投資家にとって短期投資家に安く売却してもらうのは有り難いことであるが、余りに長い下げトレンドに長期投資家もこれまでやや食傷気味なのかも知れない。

 それでも、時は既に長期投資家にとって本格的な買いチャンスが到来しつつある。短期投資家が弱気を続け、安易に空売りや繋ぎ売りなどに興じていると思わぬ落とし穴が待っていることになりかねない。短期VS長期の熱き戦いが水面下で繰り広げられていることを、皆さんも念頭に入れておいて頂きたい。(炎)

 

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2002/02/25 株を買わずにビジネスモデルを買え!!
炎のファンドマネージャー

 

 楽天の決算説明会が先週木曜日に開かれた。

 ブロードバンド化時代となって、日本で最大の総合ショッピングサイトである楽天の事業展開がますます積極的になろうとしている折り、流通総額1兆円を目指す、あの三木谷社長からはその熱い思いが語られ、会場に集まったアナリストや市場関係者の耳に残ったに違いない。

 楽天はヤフーと並んで日本で成功しているインターネットビジネスの代表格と言っても過言ではない。そのビジネスモデルは既に他の追随を許さず、ディファクトスタンダードとなっていると言えるが、彼らの悩みは上場の前評判の高さにあった。

 前評判が良くて成長性の高さを評価した投資家からの多分な資金が500億円も集まり、その使い道に困っているというのが傍から見た大方のアナリストの評価ではないだろうか。そのために同社では、有力なインターネット関連企業のM&Aを図り、投資家へのエクスキューズに努めている状態と個人的には考えている。
 個人株主の意見を聞いて、同社で前期から配当を実施することになったが、一株80万円も出して1250円の配当を貰うことに果たして株主が喜びを感じるだろうか・・・。 と考えた次第。配当を実施することになったから株価が上昇しているのならそれは意義深いものがあるが、どうやらそうではないような気がする。

 この日は解禁された金庫株制度を活用して上限100億円、10000株の自社株買いも発表したが、こうした新たなM&Aに備えての活動も刺激を与えてはいるだろうが、基本的には楽天というインターネット活用の一大ビジネスモデルをひっさげた代表企業への評価が、ブロードバンド化時代を迎えて高まってきていることの表れであろうかと考えている。

 同社ではこれまでいくら楽天を通じて売上があっても月額5万円という定額の料金を徴収する形を取ってきたが、4月1日から100万円を超えて売上があったところからはその超過分に2−3%の料金を徴収するという新料金体系を導入すると発表した。これによって楽天と出店者両社にメリットが発生するというWINWINの構図が描けるという。

 同社の時価総額は現在800億円を超えており、前記の経常利益水準(連結で14億円)からすればなおも多少のプレミアムがついていると思われるが、抜群の財務内容や収益力に加えて、積極的なM&A戦略、ブロードバンド時代の中でのビジネスチャンスの拡大など評価の余地は大きい。 一部のアナリストからはかなりネガティブに言われてきたが、このことが上場後の株価を押し下げた要因になっていると思える。しかしながら、株価ではなくビジネスモデルを買う発想に立てば、どのような局面においてもポートフォリオの中に入れておきたい銘柄と言えよう。というのもインターネットの世界では一旦確立されたディファクトスタンダードは崩れないからであります。

 本当の投資家ならば単に株価の上げ下げに一喜一憂するだけではなく、素晴らしいビジネスモデルを考え、実践しようとする事業家とともにリスクを分かち合う覚悟が必要です。
 このビジネスモデルは楽天に限らず、すべての企業に存在しています。
 単に原料を仕入れて売る、物を加工して売るという単純なビジネスモデルだけではなく、画期的なモデル、世の中にこれまで無かったようなビジネスモデルには高い評価があってもしかるべきでしょう。
 セクター毎、事業分野毎に異なるビジネスモデルがあるし、特許などに守られたビジネスもあります。

 「株を買わずにビジネスモデルを買え!!」という冒頭のタイトルをことある毎に思い出して下さい。それが資産形成、億の近道になるのかも知れませんよ・・・。(炎)

 

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2002/02/22 未公開株のリサーチについて
駄洒落商会会長

 

 駄洒落商会会長です。

 年初に、当金曜日のコーナーをお手伝いいただける方を募集しましたところ、「ひよこさん」という女性の方から、申し出がありました。感謝にたえません。ひよこさん、本当に有難うございます。ご自身では、「株式投資の経験は1年ほど。それまで買い物と旅行とグルメにしか興味のなかったお気楽パラサイト」と申しておられますが、いずれ、当コーナーにも登場していただこうと思います。ただ、当面は、ひよこさんからいただく質問に対して私がお応えする形式で進めてまいりたいと思います。

 さて、本日ひよこさんよりいただいております質問は、「株式公開してない企業の業績を調べるにはどうすればよいのですか?また、公開するのに企業側、投資家にとってよいタイミング、市場の環境などがあれば教えてください。」というものです。

 難しい質問です。証券会社の調査部で、多くの方から未公開株の調査について問い合わせをいただいた経験がありますが、その都度資料の乏しさに困り果てたものです。
 銀行の融資担当者、中小企業診断士の方々に調査方法を尋ねてみましたら、「帝国データバンクを活用する」との返答でした。金融機関などは企業情報検索「コスモス」などを導入しているケースが多いようです。これは、帝国データバンクのデータをもとにカスタマイズしたものです。
 また、帝国データバンクから調査レポートを購入するケースもあるようですが、これは会員企業に限られますから、個人の方が利用することはできません。インターネットによる検索も、企業のアウトラインはつかめても、財務内容まで調査することはほぼ不可能かと思います。一般投資家にとって、未公開企業の調査は限界があるのが現実です。

 ご自分で調査される際の「材料」としてお手軽なのは、「会社四季報未上場版」(東洋経済新報社)です。年に2回発行され、価格は最新の「2002年上期版」が2400円、掲載企業は約7000社です。株式公開の計画についても記載があります。ここに、掲載がない企業は、「帝国データバンク会社年鑑」、あるいは「日経ベンチャービジネス年鑑」(日本経済新聞社)、「日経経営指標(店頭・未上場会社版)」(日本経済新聞社)などで調べてみます。「日経経営指標」は簡単な損益計算書、貸借対照表のほか、各種経営指標が掲載されています。都内に在住の方でしたら、東京証券会館(茅場町)1Fの(社)証券広報センター証券情報室で自由に閲覧することが可能です。図書館などに置いてあるケースもあるでしょう。

 ひよこさんは、「ドクターシーラボ」という化粧品会社にご興味がおありとのことで、私なりに調べてみたのですが、上記いずれの資料にも掲載がありませんでした。
 臨床現場のクリニックから生まれたメディカルコスメを売り物に、創業3年目で顧客数は約40万人に達している企業ですが、資料に掲載がないのは社歴の浅さゆえでしょうか。

 流通チャネルとしては、住友商事の子会社であるドラッグストア・住商リテイルストアーズ(02年4月、朝日メディックスのドラッグストア部門と統合し、社名を「住商ドラッグストアーズ」とする予定。新会社の店舗は64店舗、年間売上高は約200億円となる見通し)が、「ドクターシーラボ」のような「チャレンジ商品」の取扱いを増加させる意向であることが注目されます。
 住商リテイルストアーズは、調剤薬局併設店舗「トモズ」において「他店にないささやかな豊かさ」をコンセプトに独自の品揃えを強化する計画です。
 「ドクターシラボ」の原価はかなり低いものと推定されますので、順調に売上が伸びれば利益はかなりあがるのでしょう。ただ、競合も厳しいようですから、顧客数を従来のようなペースで拡大できるかどうかが注目点といえそうです。

 現在のところ、財務データについては入手できておりません。今後、何らかの形で情報入手は可能かと思いますが、その手法は一般の方の参考になるものではないと思います。

 「公開するタイミング」を測るのは、さらに難しいでしょうね。個別企業を調べるには、資料の入手が困難ですから、一般論として勉強するしかなさそうですね。

 早稲田大学の松田修一先生が監修された「ベンチャー企業の経営と支援」(日本経済新聞社)という本に、「株式公開前と公開後のマネジメントの比較」が図表をもとになされています。ご興味がある方は勉強してみてください。
 ちなみに、松田先生が指導される早稲田大学大学院の講座は、ベンチャー企業や開業のための専門コースとしては国内ではトップクラスのようです。ベンチャー教育には、第1ステージ(講義・構築レベル)、第2レベル(プランニング・マッチング・プログラムレベル)、第3レベル(インキュベートレベル)の3段階に分かれますが、国内で第3レベルに達しているのは、

・慶応義塾大学(学部生、大学院生、社会人対象)
 科目は「アントレプレナー戦略」、「ベンチャー企業経営論」、「企業家論」

・多摩大学(学部生、社会人対象)
 科目は「ベンチャー企業の育成」、「ベンチャー企業経営理論」

・山口大学(学部生、大学院生、社会人対象)
 科目は「ベンチャー企業概要」「新規事業の概要」、「コーポレートVB論」、「企業成長のM&A」

・早稲田大学(学部生、大学院生、社会人対象)
 科目は「ベンチャー企業の創出特論」、「ベンチャー企業のマネジメント特論」の4大学のようです。(出所:国民金融公庫総合研究所「新規開業白書」)

 機会がありましたら、こうした各種教育機関、あるいは逐次開催されるセミナーなどで勉強されるのもよいかと思います。

 このほか、ベンチャー企業研究のための参考文献としては、「なぜ新規事業は成功しないか」(大江建著 日本経済新聞社)などがあげられます。

 本日はこんなところで。(駄洒落)

 

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2002/02/22 外貨投資 何がお得か MMF編
生涯遊人

 

 億近ゼミの凡太郎さんから次の2つの質問がきました。

1.外貨建てMMFの金利がFRBの利下げ以降低下しているのはなぜか
2.外貨建てMMFは%で運用利回りをだしているが、外国債券の投資信託は基準価格で評価しているのはなぜか。

 この質問は外貨建てMMFの仕組みを理解するのに役立ちます。この質問に答えながら、外貨建てMMFの仕組みを説明したいと思います。

 外貨建てMMFも日本のMMFも基本的な仕組みは同じです。短期金融商品で運用する投資信託です。資金の運用は、コール市場や短期の債券で運用しています。

 債券の投資信託の運用者としては、利回りを上げるためには、タームリスクかクレディトリスクを取りにいきます。
 タームリスクというのは、より期間の長い債券を組み入れることにより利回りを上げる試みです。
 クレディトリスクは、格付けがより低い債権を組み入れることにより利回り向上を狙います。AAAの格付けの債券より、シングルAの債券のほうが、同じ期間なら利回りが高いためです。
 クレディトリスクの恐いところは、エンロン債のデェフォルトのようなリスクがあることです。

 基本的には外貨建てMMFも日本のMMFも元本保証に近い運用を目指し、株式投資の合間の待機資金という位置付けにあるため、運用方針は、積極的に利回りをあげるというより、安全な運用を指向しているため、組み入れ債券のデェフォルトによる基準価格割れという事態は、投資家にも運用サイドにも衝撃的な事態でした。

 債券の市場リスクを評価する上で、利回りを利用する方法としてデュレーションと言う概念があります。
 デュレーションは異なるクーポンと異なる残存期間を持つ2つの債券の金利リスク、市場リスクを比較するための指標です。デュレーションは、年で表せられ、デュレーションの長い債券ほどリスクが高くなります。
 当然MMFのような投資信託はデュレーションを短く設定しており、あるMMFのデュレーションが1年だとすれば、1年物の債券を同じようの利回りの動き(運用成績)になると考えてかまいません。

 そのため質問のように、FRBの利下げにより、債券のクーポンが下がればその下落にあわせてMMFの利回りも下落していきます。

 MMFの基準価格は常に10,000円です。10,000円を超える分は毎日決算して、配当として投資家に分配しています。その配当の結果が年率の利回りで表示されます。
 一方、債券を組み入れた投資信託の場合、決算は年、1回か2回でしょう。そのために運用利益あるいは損失は基準価格に組み込まれ変動します。
 外貨建てMMFも基準価格が一定で毎日分配しているため、年率換算の利回り表示となります。

 MMFの運用を担当するファンドマネージャーに聞きますと、一番気を使うのは、明日あるいは今日の解約がいくらになるか予想することだといいます。MMFは即日解約自由ですから、この解約に備えて、コール市場などすぐに資金手当て出来るところで運用しなければなりません。
 ということは、運用利回りをある程度犠牲にしなければならないということです。
 ということはこのマネージャーは、タームリスクが取れないということになります。

 ファンドマネージャーにとっては、MMFだろうと、株式の投資信託だろうと、足元の資金が逃げ足の速い資金だと運用がやりにくいということでしょう。
 ここらへんが、運用会社やファンドマネージャーが投資家に対して長期運用を訴える理由であり、資金の頻繁な出し入れは、自分で自分の首をしめることになります。

 しかし投資家に長期運用を訴えながら、投資信託の乗り換えを薦める証券会社や、自分の運用する投信を見捨てて他社に移籍するファンドマネージャーもいますが…。(生涯)

 

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2002/02/19 シリーズ 特別損失の研究 第一回
大原部長

 

 ===はじめに なぜ特別損失を調べるのか====

 前回シリーズ、「アナリストが失敗するとき」で言いたかったことは、株式投資は伝統的なPERで論じるべきということだった。
 しかしながら、株主価値を損ねる多額の特別損失が日常化している。アナリストは損失に対しての抵抗力がつき、本来のチェック機能を失っていった。

 本来、損失はもってのほかであろう。日立が3年前の多額のリストラ費用を計上。日本企業に対する「変化」への期待感を市場参加者は持っていた。今期の赤字はしょうがない。
 来期以降の経営スピードや固定費の大幅減少といったプラス面のみを強調し、企業価値の本質を見抜けなかった。
 その後、携帯電話の世界的普及が未曾有の半導体・電子部品の逼迫を招いた。シリコンサイクルのピークであっても、しかし、日本企業の多くは、収益率で海外勢に大きく見劣りしていた。
 2001年初頭にはITバブルが崩壊。大手電機メーカは、ついに、抜本的な変化を成し遂げられないまま、追加のリストラを迫られる。特損はリストラを経るごとに多額になっていく。(表1参照)

表1: 特損合計95年  2兆7880億円96年  2兆9840億円97年  4兆8930億円98年  7兆6260億円99年 12兆2570億円00年 14兆8840億円

 日本企業の特別損失は97年ごろから顕在化はしていたものの、設備や人員の過剰感が一気に噴出したのは99年になってからである。
 終身雇用があたりまえのものとして定着していただけに、それを止めることが多額のコストがかかるということが投資家は当初はわからなかった。
 各企業で、退職金に加えて2年分の年収を余分に払うという大盤振る舞いが日常化していった。
 2000年度に特別損失は15兆円に達しようかというレベルに膨れ上がり、投資家の特別損失に対する態度はようやく否定的になっていく。
 労働組合は、数年分の年収を当たり前のものと受け止めているようだ。
 多くの企業で年金債務は年金運用額を軽く上回っている。
 細かく細分化された地方の工場が、あまりにも規模が小さいのと、国際的な競争力がないために、買い手がなく老朽化していく。
 大企業の経営陣は責任意識がなく、業績悪化をIT不況のせいにした(多くの企業の短信を読むと業績低迷に対して無数の言い訳が載っている)。
 若い社員は上がだめだといい、組織全般にあきらめが蔓延している。

 収益が上がらない以上、バリエーションで負け組企業を買うことは出来ない。すなわち、逃避資金は、限られた勝ち組企業へ集中する。
 かつて銀行や証券で起こったこと、日系から外資系企業への膨大な数のエンジニアの移動が、製造業に今起こっている。

 大手電機のIR担当者は「弊社は人材バンクと呼ばれています」と嘆いている。引き止めようにも、人情でしか優秀な人材は引き止められない。横並びのシステムの中で、突出した高給を出せないからだ。転職できない人間が残って士気が下がっていく。

 特損の実態は、余分に多額の退職金を株主が払うという仕組みである。辞めてほしくない優秀な人材がライバル企業へ転職。負け組から勝ち組企業への人材の大移動が始まっている。つまり、負け組企業の株主は、勝ち組の株主に塩を贈るはめになってしまった。

 多くの企業がやっている改革は、「痛みを伴う」構造改革ではない。株主だけが痛みを伴い、従業員は数年分遊んで暮らせる大金を手にした挙句、数ヶ月はゆっくりと休み、旅行をして、ライバルの外資系企業へ高給を持って迎えられる。

 どうして特別損失が何度も何度も続き、どうして額が毎年毎年膨れ上がっていくのか。
 このシリーズでは、特別損失の研究と題して、特損発生のメカニズムに迫りたい。

 評価損、割増退職、年金債務、事業の清算といったリストラに、ことごとく、これほどまでの多額の損失が出てしまうのか。一方で特別損失と無縁な会社とはどういう会社なのか。
 長期投資の対象として、甘えがはびこる経営者に投資をするのか、それとも、最初から特別な損失を出さないような仕組みを考えている優秀な会社に投資をするのか、投資家はもっと勉強しなければならない。

==第1のポイント  己の力を知れ 謙虚であればそれほど沢山の事業を営めるはずはない==

⇒不況が来ても不況に無縁なビジネスを探そうとする愚かな経営者が多角化に走る
⇒選択と集中ができないわけはビジネスの始め方が悪すぎるから
⇒一番になりたいと熱烈に思う者は世界を意識する
⇒村社会では「世界」という言葉を使わない(村の優秀な若者は入るが、世界の人材が集まらないわけ)

【第1のポイント 不況を友達として受け入れる態度がない】

事業を営んでいれば、誰でも安定的に儲かることを望むだろう。
好況のとき、生産は上がっていく。
不況になれば、生産は落ちていく。
需要と供給の関係は、誰でも知っている常識である。
需要が供給より大きいなら、好況といえるだろうし、需要が供給より小さいなら、不況といえるだろう。

この簡単なひとつの常識から、どうして企業はいろいろな態度を見せるのか。
わたしは興味深く思っている。
多数の事業を営む複合体であることが多い大企業で、生産拠点が分散していくメカニズムは多分、こういうことだろう。

好況。ある事業で生産が追いつかなくなる。
一方で、比較的暇な部門が存在する。
暇な部門は、わたしたちにもその事業をやらせてくれないかと懇願する。
生産拠点は一個所で拡張していくべきだが、分散していってしまう。
暇な部門には仕事がない。
仕事がないということは、やることがないということだ。
なにもやらないわけにはいかない。
遊んでいるわけにはいかないからだ。
リスクを分散する、取引先からの距離が近くなる、製品の質を変えている、などとそれらしい理由がつけられていく。

不況になる。
どちらの生産拠点をどちらから先に落とすべきか。
顧客から見ればくだらない議論が社内の政治になっていく。
不況。
生産が下がっていく。
どうしたらいいのか。
社内をみる。
比較的好調な事業がある。
そして、新規事業が企画に上がっていく。
また、新しい事業が生まれていく。
どこで生産するべきか。
社内の政治が熱く始まる。
不況。
儲からない。
やめたい事業がある。
しかし、顧客がやめないでくれと懇願してくる。
やめられない。
だめな事業をやめないうちに、新しい事業が始まる。
そうなると、事業の数や製品の種類がどんどん多くなっていく。
競争力がない。
いくつもの拠点が小さな沢山のものを生産しているからだ。
しかし、小さなものの中には、儲かっているものもある。
事業をやめると、他の生産拠点にとられてしまう。
だからやめたくない。
暇になることを恐れて、不況を恐れている。
恐れてしまう本当の理由は、ひとつしかない。
競争力がないからだ。
弱いから、恐い。

一方、違うスタンスをとる企業もある。
不況をチャンスとみる。
不況にあって、その事業をてこ入れしていく。
不況だから、設備投資が安くなる。
中古で他社から買うことができる。
人材も優秀なものを採用することができる。
生産ラインは暇である。
だから、勉強できる。
従業員は、機械や生産システムを一から見直すことができる。
試してみたかったやり方を試験的に試すことが可能になる。

生産拠点は徐々に整備されていく。
設備が整備され、従業員が勉強していくため、士気がかえって上がることさえある。
飛躍を誓う。
統合を推し進める。
お金はある。
そういうときのために、好況のとき、バランスシートを改善していた。
他のことを始めない。
いままでやってきたことを大切にしているから。
いくつものことができるほど、そんなに器用じゃない。
ひとつのことを極めること。
ひとつのことにこだわりをもって取り組んできた自分たちを誇りに思っている。
誰にも負けない。

不況だから、手間暇をかけ、よい製品が出来る。
特別なサービスが顧客にできる。
好況のとき、気がつかなかった顧客への思いやりができるようになる。
人間的に成長していく自分に気がつく。
幸せだ。

また、好況がくる。
そのとき、自分たちは強くなっている。
不況が自分たちを大きくしてくれたということに気がつく。

生産拠点はひとつのところでじっくり拡張していっている。
世界中から見学者がくる。
大きくなるだけではない。
内容もともなった組織になっている。
やることがない。そう思ったことは一度もない。

【夏になにもしないラクビー選手】

冬のスポーツ、ラクビー。
冬だけのスポーツだから、他の季節には、ラクビー選手はなにもしなくていいのだろうか。
野球をやったり、サッカーをやったりするのだろうか。そんな馬鹿な、と思うようなくだらない質問だ。

冬の数試合のためだけに、どれほどのラクビーのための練習を夏にやっているかは、想像に難くない。
夏、ボーとしていて、何もしなくていいのであれば、選手になんかなれないだろう。

夏と冬。不況と好況に置き換えてください。

ラクビーを事業に置き換えてください。

マイケルジョーダン。バスケのスーパースターが、大リーグに挑戦した。
バスケを続けたまま、大リーグに挑戦しただろうか。
まだまだ一線でやれるバスケから引退し、けじめをつけた。
それが大リーグに対する敬意であった。
スーパースターでさえ、なにかをやるときには、なにかをあきらめなければならない。

経営者は、そういうことを本当にわかっているのだろうか。

【ローテイション】

適性がある若手にいろいろな経験をさせるローテイション人事。
「物事を極めるな」と会社が従業員に命令をする。
俺よりもわかるなよという上司。
若手は世界に挑むことが出来ない。
ひとつのことを極めようとしても、極めることは難しい。

 極めることを禁止する会社で人間が育つということは難しい。
礼儀ぐらいは身につくだろうが。
いろんな部所があって、いろんなことをやっている会社には、到底、一生かかっても、理解ができない世界がある。

【市場価値は世の中のニーズに基づく】

一流になるために、どうしたらよいのか。
そういう決意と方法論がないと、不況が恐くなる。
でも、絶対的な自信があれば、不況は友達だ。

市場価値がないから、特別損失がでる。
大損なしには、事業の売却ができない。
大損するということは、いままでやってきたことがまるっきりだめだったということだ。

努力するなら、ひとつだけを極めるような努力をするべきだ。
社内の駆け引きなんかに関わっているととんでもないだめな企業になってしまう。

新規事業の奨励は、よくよく考えを直さないと、まるでだめな経営になってしまうだろう。

不採算事業という言葉は誰が考えたのか。
不採算になるということが不採算事業ではないだろう。
見通しがないから不採算になるのだろう。
見通しは、天から勝手に与えられるものではない。
それなら経営者はいらないということにならないか。

経営者はなにがなんでも、よい見通しを形作るような努力を毎日しなければならない。
それが義務というものである。

中学生でも、努力しなければ、勝てないことを知っている。

見通しを形作る。
これが経営であり、見通しを形作ることが出来ないとき、特別損失に頼るまるでだめな経営に陥るのだろう。

不況のとき、「やることがない」という思い込みはどうして生まれるのか。
やるべきことがある。
自分がやらねば誰がやるのだ。
それが人生ではないのか?

●特別損失は一日にして成らず
●一流であること、一流になることを、諦めたか、意識すらしていない、甘い考えが積み重なったものが特別損失である
●一流企業が特別損失を出す。これは、もっとも恥ずべきことであるが、一度出したら、二度と出さないようにすべき
●最初から特別損失を出すことがわかるような事業展開が多すぎる。 規模÷製品数でわかる
●日本企業は垂直統合というが、言い方を改めよ。脆弱複数重複保有と呼べ。
●バランスシートは突出してよい企業は、専業メーカーしかない
 不況の怖さだけでなく、不況からもらうチャンスを生かそうとするからだ(大原)

 

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2002/02/18 読者のつぶやきに答えて
炎のファンドマネージャー

 

 「オクチカは凄い!!けれど…。」億近に対する読者の方の意見を耳にする機会があった。

 すべての読者の満足を満たすことは不可能に近い。最大公約数をカバーできればある程度の満足はいくだろうが、各執筆陣にこだわりがある以上、今のままのスタイルを継承するしかない。

 私たち(少なくとも私)の狙いは、皆さんに考えて貰うこと。
 市場動向に関心を持ってもらい、チャンスを自らの力で掴んでもらうことにあります。
 ズバリの銘柄を期待されているでしょうが、投資判断は常に自らが行わないとなりません。
 その企業の事業の中身を知り(これはネットで自分でも調べられます)、市場の動向をしっかりと把握した上で、株価の位置や業績動向、リスクなどを知って投資に臨むようにして下さい。投資に予期せぬリスクはつきものです。絶対はありません。
 そうしたリスクを分散する方法もあります。しっかりとそうした方法を身につけ、貴方も素晴らしい投資家になって頂きたいと願っております。

オクチカ執筆陣代表:月曜担当の炎のファンドマネジャー

 

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2002/02/18 炎の随想録:オクチカ活動に寄せて
『生きている証を求めて』
炎のファンドマネージャー

 

 億の近道もスタートして以来、はや2年以上の年月が過ぎ、両津氏、大原氏ぢんぢ部長、駄洒落氏、生涯遊人氏などとの交流も佳境に入ってきております。
 この活動も何かの縁によって支えられているように思われます。つまり人と人との出会いや縁によって、ここまで至ったと言っても良いでしょう。 まじめに企業のことや国のこと、社会のことを語っていく前に、こうした人と人との縁があって世の中は動いていくことを改めて認識したいと思います。

 しかしながら、私にして見ればこうした交流はここに来て多少の限界と壁にぶち当たっているかと思われます。活動をしていくうちにそれぞれの思惑や理想が異なっていることに気がつくとどうしても、一時的にしろ力の配分が違ったものになってきます。
 この億の近道は今日ではより崇高な道を歩もうとしておりますが、そのパワーの源泉は一体どこにあるのでしょうか?彼らは恵まれた環境をフルに活用してその才能をここに集う多くの皆様のため、日本経済復活のために投資しようとしています。自らの経験や勉強、研究の成果を集大成して大原部長が著した著書である「インベストメント」では、投資家のあるべき姿をずばり指摘し、皆様の大いなる参考になっていることでしょう。

 それに比べると私の活動は拙いものです。皆様の顔が見えないことからかなり臆病になっていることを、最近随分と感じるようになりました。多少冒険をするぐらい大胆に仮説を立て、思い切った考え(炎論)をぶちまけていきたいと思うのですが、まだまだ勉強不足です。しかも、最近の活動はかなり目先の株式投資とはかけはなれた世界とも関係をもって動いたりもしておりますので、論じることに力が入り難くなっているのも事実です。

 数字を駆使して企業を眺めてみても実際の企業は生き物であって、傍で論じるほど簡単ではないことも事実。深く論じようとすれば時間がその企業にだけ取られることになるし、そうすると多くの企業を見ることができなくなる。 そうしたジレンマが付き纏うことが私のいらいらにも繋がって参ります。

 億の近道では私たちようなの活動を多くの皆様にも関心を持って頂き、実際にアナリストとして活動して頂くまでに発展して参りました。これは私のいらいらを多少はカバーしてくれることになるとは思いますが、もっともっと多くの方々が賛同して頂いて、活動の輪に入って頂きたいと願っております。
 職業としてのアナリストやファンドマネジャーは他人のためにお金を得て活動しているのですが、お金を持っている方なら全ての方がアナリストやファンドマネジャーの資格を持っています。国民一人一人がアナリストの素養を身につけ、ファンドマネジャーとしての卓越した見方を持つようになれば、国民の大事な財産である証券市場が崩壊することなどないでしょうし、また私たちはしっかりとこの大事な世界をしっかり守り、育てていかなければなりません。

 21世紀に入ったばかりの世界の中で同じ時間にこの日本、いや世界で生きている私たちの生きている証として多くを学び、これからの世代にどうバトンタッチしていくのか、そのために今何をなすべきかを皆さんとともにこれからもじっくりと考えていきたいと思います。
 世の中のためになること、世の中の人たちが喜んでくれることをやることが結果としては事業としても発展することになるとの教訓は今、経済至上主義、お金万能主義の昨今において有能な多くの経営者から語られる言葉になっています。

 経済的な困難から家族を多少犠牲にしてきた私は、これからも中心軸を世の中のためになること、世の中の人たちが喜んでくれることに置き、活動を続けていく考えです。私の活動を支えてくれる皆さんにこの場をお借りして感謝申し上げます。

 以下に私の最近(ここ2、3週間以内)の活動内容をまとめておきました。ぜひともご支援賜りましたら幸いです。


1.私が収入の糧としております有料投資情報メールマガジンのコンテンツ作成のための企業訪問活動、説明会への出席活動

 テイクアンドギヴニーズの店舗見学会への出席
 ・マイクロバスで見学会の臨んだが、そこには意外な人物の姿が…。

 IPO企業のトップとのインタビュー
 ・D3パブリッシャー、三光ソフランなど

 IPO企業の上場前説明会
 ・イオンファンタジー、CTSなど

 企業訪問
 ・スルガコーポレーション(1880)
  東証2部上場の有力総合建設会社。負の遺産がない都市再生関連企業として要注目。
 ・デジタルアドベンチャー(4772)
  ブロードバンド化を睨むデジタルコンテンツ配信事業者で有望。
 ・オリジナル設計(4642)、オークネット(9669)、BSL(3113)

 *私は企業訪問した結果を産直銘柄(私が直接企業訪問や電話取材、説明会 出席して良いと思った銘柄)として有料メルマガで多くの読者に配信しています。皆様もぜひご利用下さい。
 http://www.irisjapan.co.jp/

2.日本パテントリサーチアソシエイツ(NPO)の支援活動

  特許・知的財産の事業化支援を行う日本パテントリサーチアソシエイツ (JPRA)の大鐘代表と私は同じ大学のゼミ生同士。お互いに今後の特許・流通・事業化活動が日本経済にとって極めて重要であるという点に賛同し、特許事業化のための企業支援を開始。月に1回の日本初、世界でも初めての特許入札会を開催。その回を重ねることはや8回となって、そこで登場願った企業(近い将来のIPOを狙っている)事業化をサポートし始めた。ここではアナリストとしての本当の物の見方が試される。大企業を分析できればサポートも容易だろうが、相手はベンチャー。上場までにはかなりの困難が待っている。

3.次世代プリペイドカード事業の立ち上げ支援&大豆蛋白質事業立ち上げ支援

 JPRAとの関係でスタートした次世代プリペイドカード事業を立ち上げつつある株式会社BISと、大豆蛋白質事業の立ち上げを図りつつある株式会社豆食の立ち上げ支援
  どちらも社会的に意義のある事業と判断。将来はどちらもIPOを狙うベンチャーとして先行きが楽しみ。(炎)

 

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2002/02/18 お金の流れにまつわる話
炎のファンドマネージャー

 

”証券会社や銀行、運用機関の事情が株式相場の中身を変質させた!!”

 皆様のお金は今どこにあることになっていますか?

 こういう問いかけに怪訝な顔をなさる方も多いでしょうが、多くの方が銀行に預けておられますので銀行の金庫にあるとお考えになるでしょう。
 確かにそれはある程度は当たっていますが、実際には預けた瞬間からお金はどこかに流通しています。決して金庫にじっとしている訳ではないのです。

 では金庫にないとしたら皆さんのお金はどうなってしまうのでしょうか?
 安心下さい。お金は新たな価値を生むために活用されるのです。銀行の賢い人たちがしっかりとお金が必要な人たちに融資をして、金利をつけて私たちに返してくれることになってい「た」のです・・・。

 信用創造によってお金はお金を生み経済の拡大に貢献してきたのです。それがつい10年ほど前までは、企業(個人)は土地を担保にお金を融資してもらい、また新たな土地を買って、それが雪だるま式に増殖を続け、あのダイエーや倒産したマイカルのようなゾンビ企業を生んでしまったのです。

 自らの体を削り取ってようやく生きているような巨大企業が、血液まで抜かれてしまうと身動きできずバタンと倒れる羽目になり、その時は大風が吹いて安穏と営みを続けてきた周りの企業も影響を受けることになります。巨大企業とは名ばかりで、銀行も含めて自分達の自由になる資産などほとんどありません。つまりはリスクが取れなくなるのです。

 前置きはこれぐらいにして、これから始めるお金の流れにまつわる話については、もう既に皆さんは本や新聞などで見聞きしてご存じなのかも知れませんが、証券市場のことを長い間見てきた私の考えも交えて、多少ざっくばらんにお話できればと思っております。

 皆さんのお金は手元にあるわずかのお金はともかく、大半が貯金として民間銀行や国有銀行とも言うべき郵便局に預けられており、これに利子がつくことで皆さんも100%ではないがそれなりに満足なさってきたのです。

 さて、ペイオフ解禁がいよいよ4月1日から開始となります。
 1000万円以上の預金は、もし銀行が倒産するような事態となったら返ってこないこともある時代が到来します。
 だからと言ってすぐにどうなるというものではありませんが、預け先の選択眼をしっかり持つ必要があります。

 証券会社などでは今、株式の売買が細っているものだから、ペイオフ、超金利、元本確保ニーズを背景に、クレジットリンク債などの元本確保型商品の提案に努めています。5億円以上の資金を狙って、必死に商品開発を行っているのが現状です。金融工学を使えば様々な金融商品が作れる時代になってきました。

 このことはまた改めて触れるとして、皆様が銀行に預けておられるお金の一部は、かつては企業に融資すると同時に、株式の持ち合いのために使われてきました。
 今、銀行は不良債権処理や自己資本比率の維持のために、これまでの持合い株式を売却に動いております。この金額が最も多いのが1−3月で、特に2月は多いとされています。私の大学の後輩はA銀行の有価証券部に勤めているのですが、今この持合い解消のための調査に従事しているとのことでした。
 つまり、何を売って何を残すべきかを調べているとのこと。各銀行で粛々とそうした業務が遂行され、着実に持ち合い解消がなされているのが現状なのです。

 こうした銀行の事情で株式相場が影響を受けていますし、証券会社や運用機関の事情で、多くの割安と思われる銘柄が下落の一途を辿ってきています。
 この特殊事情が何かと言うと、売買高という点です。多くの証券会社のアナリストは、ある一定以上の時価総額の企業しかフォローしません。これはなぜかと言うと、流通株が少ないのにレポートなど作成しても価値がないからです。

 同様に、機関投資家も時価総額300億円以下はファンドに組み入れないというような決まりがあるようで、多くのファンドマネジャーはスモールキャップは見向きもしない状態だと思われます。つまり換金性に欠ける銘柄への投資には二の足を踏む状況が見られます。
 つまり、数の上では今や少数となってきた時価総額300億円以上の大型企業に対しては関心があっても、数の上では多数の小型企業への関心は薄くなっているのです。
 つまり、市場に上場するの多くの企業が市場関係者からそっぽを向かれ(もちろんオクチカの皆さんからも)、話題にすらならない状態となってしまっているのです。

 多くの企業は今IRに熱心になっているが、少しでも自社に関心を持ってもらい、1人でも多くの投資家に支持される努力を重ねていますが、まだまだ遅れています。例えば私が先般注目していた東建コーポレーション(1766)ですが、突然に中間決算発表時に業績の下方修正を行いました。なぜ修正をしたかを会社側から説明があってもしかるべきでした。私は私の有料読者のために自ら電話取材を敢行し、その背景が人員の増強による販売管理費の計画以上の増加という説明を受け、皆さんにも報告しておきました。これは中期計画遂行のための先行投資と考えれば納得のいく話なのですが、多くの投資家は納得しないうちに売却に動きました。投資家はなぜそうなったかの理由を逸早く知りたいはずです。何の理由もないまま突然下方修正されることが問題なのです。

 企業はこうした変化を素早く投資家に伝える必要があります。アナリストは時価総額がどうであれ、どのような発行体企業であれ、こうした企業業績の変化を伝えていく責務があるのとだ思います。結果はどうであれ、企業の投資家に対する姿勢はもっと良くなっていってほしいと願っております。このあたりはしっかりとしたIR担当窓口のいる企業の評価が上がることになるでしょう。

 話は多少横道にそれてしまいました。市場をリードするはずの証券会社や機関投資家の台所事情で、見向きもされなくなった銘柄にこそ長期的には大きな投資価値があるものと私は考えています。私のひとりよがりかも知れませんが、うちは大企業だぞと言わんばかりの体質を備える企業は、それが小さな企業であればことさら駄目です。
 小さくてもエクセレントな企業体質を備えるような企業にこそ、変化の余地が大きいのではないでしょうか?

 そうした観点からいけば、今は業績の良し悪しを抜きにしてでも、売り込まれてしまったスモール(時価総額300億円以下)でもエクセレントな企業に投資しておくチャンスが到来していると私は内心、考えているが、皆さんのお考えはどうだろうか。
 また、不要不急のお金の行く先は銀行や郵貯が良いのでしょうか。それとも株式投資が良いのでしょうか。債券が良いのでしょうか。

 多くの皆さんが悩みながらお金の行く先を決めておられますが、リスクテイクされる皆さんにこそ、輝かしい未来が待っていると期待しております。(炎)

 

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2002/02/15 外貨投資、何がお徳か その2
生涯遊人

 

 今回は、外債投資について書いてみたいとおもいます。

 前回の外貨建てMMFが外債投信であったのですが、外債投資は個別の債権に投資するものです。
 債券は利付き債と割引債があり、利付き債は、毎年利払いを受け、償還日に額面で償還されます。割引債は、その利率分、額面より安い金額で売りに出されて、償還日に額面で償還され、その差額分がクーポン(利子)となります。
 これは新発債を購入した場合であり、既発債を購入した場合は、これとは異なります。
 これを詳しく説明します。

 いま償還日が2004年5月15日、クーポン7.25%、債券価格103.35$の米国債があります。(マネージャパン3月号、外貨商品データファイルより)
 この債券を償還日まで持つと最終利回りは3.084%となります。
 既発債の場合、最近のように金利が低い場合、額面100に対して額面以上の価格で市場で取引されています。そうすると109.35で買った債券を償還日に100で売るわけですから、キャピタルゲインはマイナスとなりますが、その分毎年7.25%の金利をうけとるため、最終的には、3.084%の投資利回りとなるということです。
 当然これは、$での投資利回りであり、円換算した場合は、購入時点より売却時点で円安が進めば為替差益が、円高に進めば、為替差損が生じます。

 このように債券投資をするときは、償還日まで持ちきる場合は為替差損益のみ、中途で売却する場合は、債券の価格リスクと為替リスクが伴います。
 米国債の場合、債券の種類も多くそれぞれの債券により価格もクーポンも異なるため一概には言えませんが、基本はこのような感じになります。

 米国財務省は、財政黒字のために、30年債の発行を一時中止し、新発債の長期債は10年物に移行していますが、米国財政支出の増加によってはこの先どうなるかわかりません。
 米国債は、米国の国債ですが、この他に社債と呼ばれる、民間の発行する債券があります。この場合、その会社の格付けによってクーポンが異なります。概して、国債よりも利率は高く、格付けの低い会社ほど利率が高くなっています。

 最上級の格付けがS&P AAA(米国債はこの格付け)、投資適格と見なされるのは、BBB以上の格付けといわれています。
 また経済状況が悪くなると、みんな安全志向となるために、格付けの高い債権と低い債権の金利差は開いていきます。
 エンロンの破綻による、エンロン債のデフォルトのようなリスクが社債にはあるため、格付けは重要なポイントとなります。

 結論からいうと、今の時点での外国債投資はお勧めできません。それは米国の金利が低いからです。当然新発債の金利は低い状況で、長期に固定するのは損です。また既発債も債券価格が高いため、途中売却だとあまり有利にはなりません。
 既発債の場合、金利が天井をうち低下する局面で購入し、金利が低下した局面で売却すれば、かなり売却益がでる場合もあります。しかしこれは、債券価格リスクと為替リスクの両方をとる、ハイリスク、ハイリターンの投資方法です。そういう意味では、債券投資は途中売却の場合、必ずしも元本保証の安全な投資とはいえません。

 もし株式は元本保証でなく、債券は元本保証だと思っている方は、注意してください。

 金利水準が低いうちは、外貨建てMMFなどで回し、米国経済が回復し金利水準が高くなったときが個別の債券投資のチャンスとなります。(生涯)

 

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2002/02/08 外貨投資、何がお徳か
生涯遊人

 

 円安傾向が継続しているため、外貨、外債などへの個人の投資が増えている。火曜日の日経新聞の夕刊でも、個人投資家が、外貨建て債券への投資を増やしているとでていた。
 今回は、外貨への投資の場合のそれぞれの商品のちがいをまとめてみたい。

【外貨預金】

 一番一般的な外貨投資。ドル円、ユーロ円が多いが、さまざまな通貨の預け入れが可能。10万円程度からはじめられる。電話、インターネットなどを使い、預け入れ、解約が比較的簡単。その分お徳度は低い。
 またペイオフの対象外のため、銀行が破綻した場合、元本、利息とも預け入れ額にかかわらず保護されない。 利率は普通預金で0.5%ほど、1年定期で0.4%から1.438%とばらつきがある。これは銀行の信用力に反比例か?(以下利率、手数料はダイヤモンド社、ZAI2月号より引用)

 為替手数料は、往復2円から0.2円まで(利率、手数料とも米ドルの場合)。
 この中では、ソニー銀行の利率1.438%、手数料0.2円がダントツに有利。

【外貨建てMMF】

 海外の債券で運用する投資信託の一種。主に証券会社が扱うが、銀行も参入してきた。日本のMMFの米ドル版と考えてよく、元本保証ではないが、比較的堅実な債券で運用しているため、元本割れはまず起こらないと思われる。
 銀行預金に比べ、利率も高く、手数料も低いため、純粋な外貨投資ではお薦め。
 また外貨預金の場合は定期にしなければ利率をかせげないが、米国でも低金利の最近の金利情勢では、長めの定期預金は、金利上昇のメリットを受けないため、お薦めできない。

 その点、外貨建てMMFは、金利上昇のメリットを受け、定期でもないため、解約が自由なので為替が大きく円安に振れた場合など、すばやく解約でき有利。
 11月21日現在の利率は、1.19%から2.1%、為替手数料は往復0.2円から1円、利率、為替手数料とも外貨預金よりかなり有利。
 ここでも0.2円の手数料はソニー銀行、利率は1.587%と平均値ながら手数料は有利(米ドルの場合)。
 ユーロ建てMMFの場合、利率は2.7%から3.1%と米ドルに比べ高いが、為替手数料も往復1.5円から2円となっており、取り扱う証券会社も米ドルにくらべ少ない。

 

 今回外貨預金と、外貨建てMMFを比べてみましたが、外貨預金の場合、インターネット経由で手数料が安くなったり、キャンペーン期間で金利の上乗せや手数料優遇がありますが、総じて外貨建てMMFのほうが有利に思えます。(生涯)

 

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2002/02/05 アナリストが失敗するとき まとめ 最終回
大原部長

 

 【失敗からしか学べないことがある】

 みなさま、いろいろご感想をありがとうございました。失敗は誰にでもあります。肝心なのは、言い古されたことかもしれませんが、失敗から学び取る姿勢ではないでしょうか。

 わたしは、自分の失敗から以下の教訓を導きました。このコラムがみなさまの大切な資産を守るために、少しでもお役に立てれば幸いです。

〜教訓〜

●高いPER(50倍以上)を避ける
 PERが高い銘柄は、どんなにすばらしい会社であっても、買うのを控えた方が賢明。PERが高い銘柄とは、50倍以上(利回りに換算するならば1/50で2%)

●産業の中で割安というロジックを信用しない
 数年前、ソフトウエア産業の平均PERは50倍以上でした。
 光関連、インターネット関連、一時的なブームやテーマに乗った銘柄やセクターを避ける。

●営業利益を信用しない
 肝心なのは純利益。大きなごまかしが可能な営業利益を信じていては、いつも、特別な損失が起こることになる。
 特別な損失ばかりがどうして何年も継続しているのだろうか。何年も継続しているならば、それは営業利益から割り引くべきである。

●伝統的な尺度である株価収益率は、時価総額÷純利益で計算できるが、特別損失に対して厳しく見ること。特別損失があったとしたら、割高になるような銘柄は、本来は避けるべきである。

●同じことであるが、PSRやEV/EBITDAはあくまで参考程度に止めておく。PERを基本に投資すること。

●日本の会計制度を信用しない。市場はPLを信用していない。言い換えれば、在庫など、BSの分析が今とても重要になっていることを認識すること。

●フリーキャッシュフローを重視すること。在庫や買い掛けの増加など、運転資金の増加に対しても、厳しく見ること。フリーキャッシュフローで買えないような銘柄は、避けた方が賢明である。

●経営者の壮大なビジョンを信じる前に、組織全体の士気や、産業の行く末、技術やシステムの評価など、総合的な評価を行うこと。経営者自身でも達成できるかどうかわかならいような中期経営計画なるものを作成して、発表しなければならないような企業とはどういう企業なのかを真剣に考えること

●国際的なバリエーションから見て割高なのかどうかを議論すること
 アービトラージの世の中。突出した地域格差は狙い撃ちされる。

●常識的に考えること。世の中の消費者の数は限られているのだから。

●自己の分析に対しても、批判的な精神を保つこと

さて、以上をまとめます。

☆☆☆アナリストが失敗しないための3か条☆☆☆

☆その1
純利益とBSとフリーキャッシュフローを重視(安易な特別損失を許さない)
効率的な事業運営の基礎

☆☆その2
高すぎるPERはあきらめる。少なくとも、30倍台まで。株を買える時期と買えない時期を区別する

☆☆☆その3
楽観的予想をしない。安易な中期計画にそったばら色のPLを想定しない。株を無理矢理に買おうとしない純利益をベースにする。ということは、特別損失を厳しく見る必要があります。

次のテーマに移っていきます。

○特別損失を出さないためにはどうしたらよいのか、みなさんもご一考下さい。失敗してしまうのは仕方がない。どのような教訓を学び取るのか、それが重要。

ご感想をお待ちしております。(大原)

 

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2002/02/01 頭の体操
駄洒落商会会長

 

 読者の皆さんと勉強を開始しようと、意気込んでいたのですが、今週はコンビニのローソンの業績下方修正(02年2月期は3期ぶり減益見通し)に続いて、本日(1日)、ファーストリテイリングの1月の月次売上高(既存店増収率は前年同月比35.2%減)が発表されるなどの騒ぎでろくな準備も出来ていません。深くお詫びしたいと思います。

 21日から週に、イトーヨーカ堂、セブン−イレブンが5日連続ストップ安となりました。
 1月以降、両社に限らず、ヤマダ電機などサブセクターを代表する企業の株価の軟調な動きが目立ちます。特に、会社側からネガティブな材料のアナウンスメントがあったわけではないですし、外国人の空売り、ダイエーの再建策がまとまったことへの否定的な評価などが、これらの株式の軟調な動きにつながっているとは思いません。

 正直なところ、今年一年を展望した場合、小売セクターで推奨すべきサブセクターが見当たりません。個別銘柄をいかに発掘していくか、次回以降にご期待ください。

 

【頭の体操コーナー】

 唐突ですが、少し、考えてみてください。

 化粧品専門店をどう運営していくかという問題です。
 首都圏郊外の駅前商店街に立地する店舗(売場面積25坪)を想定します。
 売上げ構成比は、化粧品80%、雑貨20%。化粧品はメーカーの制度品を100%仕入れています。
 近隣には、百貨店、総合スーパー、コンビニに加え、有力ドラッグストアチェーンが新店舗を開設しました。
 店舗のオーナー、あるいはコンサルタントになったつもりで、競争に勝ち、売上げ向上をはかる案を考えてみてください。
 環境面での条件は自由に設定していただいて結構です。(駄洒落)

 

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2002/02/01 2つのスキャンダル
生涯遊人

 

 ふたつのスキャンダルが日米で同時進行している。

 米国の破綻したエネルギー会社「エンロン」をめぐるものと、日本ではNGOの参加をめぐる外務省のスキャンダルだ。

 それぞれの経緯は、米国が昨年5月に発表した、「国家エネルギー政策」でチェイニー副大統領らが、エンロンのレイ会長らと複数回合い、巨額の政治献金の見返りに政府が、エンロンに有利な政策を約束したのではないかとの疑惑がでている。
 また日本のほうは、某代議士の横やりで、NGO団体のアフガン復興会議への参加が妨害され、結局、真相が解明されないまま、きわめて日本的な、喧嘩両成敗ということで、関係する3者が、更迭、辞任ということでほぼ終了と言う雰囲気である。

 確かにに日米ともに、テロとの戦い、経済対策、構造改革という重大な問題に直面しており、それらを最優先に処理しなければならない状況であろう。
 しかし米国は、米議会の調査機関である会計検査院(GAO)がチェイニー副大統領らを連邦地裁に提訴すると表明した。ブッシュ政権のエネルギー政策はエンロンなどのエネルギー業界の意向が反映しているとの疑惑があり、GAOは副大統領と業界幹部との会談内容を提出するように求めている。

 クリントンの不倫疑惑の時もそうだが、「偉い」人の疑惑はなかなか解明されないものである。あの時も結局よく分からなかったが、すくなくとも、責任ある立場の人は、説明責任があり、そのことがまた不正に対する拗止力にもなっている。

 仮に日米政治家の資質がどうしようもないものだとして(性悪説の立場にたてば)、それらの政治家を排除できる組織があるかどうかが重要になってくる。
 米国の場合は、行政府、議会、裁判所の3権分立が緊張関係を保ちつつ機能している。日本の場合とても機能しているように思えない。今回も官庁は族議員のおもちゃになっている。
 また日本の刑事裁判の場合、検察が告訴した事件のほとんどが有罪になるという。検察の判断を確認するだけの裁判所なら必要ないだろう。
 また裁判所は、経済情勢に疎く、変化の激しい経済に対して機能不全に陥っているように思える。

 大原部長推薦の「ビジョナリーカンパニー」のなかに次のような一節がある。

 かつて国家の繁栄は優れた国王の資質にかかっていた。しかし1787年の米国の憲法制定会議の最大の課題は、誰が最も賢明な指導者かということではなく、アメリカの建国者たちが考えたのは、「われわれがこの世を去ったのちも、優れた大統領をずっと生み出すために、どんなプロセスをつくることができるのか。どのような国を築きたいのか。国の原則は何か。その原則をどう運用すべきか。われわれが目指す国を築くには、どんな指針と仕組みをつくるべきか」(日経BPビジョナリーカンパニーより引用)

 時代を超えて生存できる組織作りを目指したわけである。

 トマス・ジェファーソン、ジェームズ・マディソン、ジョン・アダムスらアメリカの建国者たちは、人間というものの本質がわかっていたのだろう。
 この100年間、テクノロジーは進歩したが、人間の本質は大して変ってない。だかろこそ彼らは、下半身に節操のない大統領がでてきても大丈夫な組織作りを目指したのであろう。(生涯)

 

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