大原の投資技法その3
 新聞は読まない、ニュースは見ない
〜体系的に理解を深める早道〜

 ニュースを見たり聞いたりして、それが、株の材料になると考える人がいます。ニュースを編集する際にどれだけの情報が削ぎ落とされていて、たった2分や3分のレポートにどれだけの信憑性や真実があるのでしょうか。記者の知識は業界の動向を正確に伝えられるレベルでしょうか。私は、ニュースや新聞記事で株の売り買いをすることはありません。

 ファンドマネージャーといえば、情報をいかに誰よりも早く得るかの職業のようにとらえる方も多いようです。みなさんのファンドマネージャーのイメージは、もしかすると、慌ただしいトレーディングルームで、極秘情報をいち早く手に入れ、株が暴落する直前に華麗に売り逃げるといったようなものかもしれません。残念ながら、そのようなことは、ありません。そのような「極秘」情報にすばやく反応するために、毎日ニュースを延々と見る必要はありません。

 自分にとってのトップニュースは、他人にとって、トップニュースではありません。万人にとってのトップニュースなどというものが、本来あるわけでないのです。それは万人にとっての幸せの定義が、一義的でないことと同じです。

 みなさんは、ニュースを見ないで為替、金利、景気、海外株式の状況を、どうやって判断できるのかと不思議に思われるかもしれません。私は、情報端末でそれらの指標を毎朝チェックします。でも、チェックする時間は10秒程度です。一般の方が為替をチェックするのなら、新聞の経済欄に10秒程度目を配るだけでよいと思います。株式欄で株価のチェックも必要でしょう。その場合も新聞の記事自体は読む必要はありません。円高だからとか、米国株が高いとか、マクロ指標がどうだとか、そういうことで株を選ぶということはありません。

 残念ですが、企業の経営者の中にもよくマクロ経済や為替の状況を話す人がいます。そういう経営者のいる会社に投資することはめったにありません。経営者が、マクロ環境を話してどういうつもりでしょうか。業績が振るわない言い訳でしょうか。たしかに、米国株の暴落や急激な円高に保有銘柄の株価が影響されることがあります。しかし、急激な円高や米国株の暴落のような状況が、いつきてもよいように平時から対策を立てているのです。

 ポートフォリオというのはそういうもので、特定のリスク要因からお金を守るものです。為替が円高になったから銘柄を入れ替えるという発想はファンドマネジメントにはありません。為替は大幅な円高にもなるし大幅な円安にもなるという前提でスタートします。円高や円安に関わらず競争力のある製品・サービスを提供できる企業を発掘していることが前提になります。

 よく「これからは円高になるので、円高メリット銘柄を教えてください」という人がいますが、そういう方には「私は占い師ではないのでわかりません」と答えることにしています。マクロ経済がこうなるから、こういう銘柄がよいだろう、という方も、株のプロではありません。

 マクロ経済の要因、例えば円高がプラスに働いて、ある銘柄が上昇したとしましょう。これはリスクの裏返しです。永遠に円高になることはないのですから、プラス要因はいつのまにかマイナス要因となり、そうなれば株価は下がってしまいます。

 円高や円安などの外部要因でその製品・サービスが顧客に拒絶されてしまう企業にとって、為替は死活問題です。しかし、少々の円高や円安でへこたれない輸出入業者も、多数あるのです。そのような強い企業を探すことの方が、為替で翻弄される弱い企業を調査するより重要です。ニュースを見たり、新聞を読む時間があるなら、強い企業の強い製品・サービスを調査することです。

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