大原の投資技法その4
 マクロ経済指標は気にしない
〜全体より個別、一般論より具体論、マクロよりミクロ〜

 よく貿易黒字がどうなったからとか、鉱工業生産の数値がどうなったから、株式市場はこうなったという方がいます。私は、そのようなマクロ的な株価の説明はしません。よく、10年後にこれこれの市場は何兆円になるので、この関連業界にいるこの企業は買いであるという論法をする人がいますが、こういう短絡的論理も無視します。

 例えば、日本はこれから老人が増えるから、老人向けのサービスをしている会社がよいだろう、という発想ですぐに投資はしないということです。こんな幼稚な論理で、マクロトレンドと個々の企業との間にある大きなギャップは埋め切れません。同様に、今年の半導体の生産額は前年と比べて、何%増えるから、半導体業界は買いであるという考え方もしません。個別企業の状況があり、マクロの数字の積み上げがあるのであって、逆ではありません。

 統制経済や計画経済ではマクロの数字は重要でしょうが、資本主義経済ではミクロの積み重ねがより重要です。ミクロの数字があやふやなら、その積み上げのマクロ数字は、心もとないものになります。

 企業のうち10%がウソの数字を申告し、残りの90%の企業が正しい数字を申告したとしましょう。その場合マクロ数字は100%誤りです。マクロの数字作成に携わっている方には申し訳ないですが、情報は加工すればするほどウソになるはずです。

 私は、来年パソコンがどれだけ売れるかということには興味がありません。パソコンの販売台数を予測するとき、各企業の販売台数の計画を足しあわせてさじ加減し、体裁を整えるのでしょうが、そんな数字にどんな意味があるのでしょうか。私は、パソコンの販売予想はしませんし、他人が販売予測した数字も信用しません。

 その代わり、どういう新しい機能がパソコンに入ってくるのか、どんなパソコンなら消費者ニーズをつかむのかということには興味があります。来年のパソコンにはどんな新機能がつくのか、どんなスペックでどのくらいの価格のものが出てくるのかを考えます。そして、私のイメージに近い製品を出してくる企業を探そうとします。

 デザイン、無線(Bluetooth)や赤外線通信(IrDA)などの機能に注目していますし、音声認識などの進展にも注意を払っています。新機能を提供する企業を探し、その新機能がどれだけのインパクトがあるかを測定し、その結果、その新機能を搭載するパソコンが売れればそれでよいのです。

 パソコン全体が売れるからパソコンに関係する企業を選ぶのではありません。  また、マクロの数字は、情報の鮮度がなく、2ヵ月程度遅れてしまいます。先先月のことを今月発表するのです。ところが、個別企業の業績の取材では本日のデータのことを話すことができます。株式投資で2ヵ月前の鮮度のないマクロ数字を云々論じることは意味がありません。ミクロの新鮮な数字で十分なのです。

 マクロ経済学を勉強するのであれば、是非ミクロ経済論の後半から勉強してください。ミクロ経済論における効率的な市場という前半部分は勉強する意味がありません。効率的な市場にある企業は儲からないからです。

 効率的ではない市場を探し出し、その非効率性の理由や背景を、よく考えることが株式投資なのです。

億の近道 on the Web
質問・要望事項はこちらまでメールを。


当ページの無断転載・引用を禁じます

戻る