大原の投資技法その7
 過去の実績から、賢い経営者かどうか考えよう
〜信頼できる会社だけに投資対象を絞ろう〜

 難しいことができても、お金儲けが下手な企業は駄目です。私は投資判断のフィルターとして、自己資本比率や流動比率に一定の基準を設けています。また営業利益率にも原則として一定以上の水準を求めます。それは賢さの基準を明確にするためです。

 自己資本比率は過去の経営成績表のようなものです。利益を出し続けないと一定以上の自己資本比率となりません。特に大きな赤字を出すと自己資本比率は悪化します。経営者の判断がいつもありきたりの企業の自己資本比率は低いのではないでしょうか。経営者の悪い判断が続けば自己資本比率は悪化していきます。財務内容が悪いと投資家の信頼は得られません。

 例えば、金融危機という事態が1997年の年末に起こりました。銀行が事業会社になかなかお金を貸してくれないという事態になり、クレジットクランチなどと騒がれました。私が企業経営者なら、クレジットクランチは特別の事態ではなく、いつでも起こるものという捉え方をすると思います。リスクに備えることは経営者の役割の1つです。
  儲からない事業を続けて、財務内容が脆弱なまま放っておいたのでは、クレジットクランチに対応できないのは明らかです。あっという間に倒産してしまいます。財務内容が悪いのに、さっさと手を打たない経営者を誰が信用すると思いますか。私が経営者なら、外資だろうが日系だろうが、ライバルだろうが顧客企業だろうが、頭を下げて資本を注入してもらい、自己資本を回復させます。明日、クレジットクランチがこないと誰が言い切れますか。

 私は先行投資という言葉を信じません。なぜかといえば、事業を選択する場合、儲かると信じるから事業を始めるのが自然です。儲からないのは見込みがすでに違っているからです。みなさんが新しく事業を始める場合、確実に赤字になる事業をわざわざ始めますか。私なら、当初から大きく儲かる見込みの事業しかやりません。

 多くの経営者は赤字事業を語る際に、「そのうちに市場が本格的に立ち上がって黒字化できます」、「やり方を変えれば黒字化できます」または「今やっておかないと市場が立ち上がったときに間に合わない」と言い訳します。儲からないのなら、なにもしない方がよっぽどよいのです。焦る企業によい結果は訪れません。焦るのは実力がない企業です。儲からない事業をたくさん集めれば利益率は低くなります。

  営業利益率の低い会社の経営者を、私は、あまり信用しないようにしています。儲からない事業を続けていることが、信頼できない根拠です。本格的に投資して3年以上も経っているのに、採算が悪いということは、変動費率が高すぎるか、あるいは、数量の極度の不振と判断するしかないでしょう。本格投資後3年で赤字なら撤退すべきです。投資後3年で十分な限界利益があれば、必ず大幅な黒字になっています。数量不振の原因が、一時的な市場の混乱であれば、話は別ですが。

 もちろん、基礎的な研究や、新材料など、新しいコンセプトの製品を事業化する場合、量産化の前段階での赤字は許されます。量産投資をした後で、数年経つのに赤字、というのはダメです。

 不採算な事業を続ける企業が、潔く撤退すれば、もっと効率的な会社が新規参入するはずです。競争力がないのに撤退しないから市場がいつまでたっても魅力的にならないのです。特に営業利益率3%未満、自己資本比率30%未満の会社は経営者が変わらない限り、みなさんも取材する必要はありません。投資対象から外してください。

経営者の評価
営業利益率
10%以上
3〜10%
3%未満
自己
資本
比率
70%以上

高く信用できる

信頼できる
×
投資対象外
30〜70%


信頼できる


平均的

×
投資対象外
30%未満
×
投資対象外
×
投資対象外
×
投資対象外

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