大原の投資技法その10
 常識を活用すること
〜日常の観察と常識を結合する〜

 常識を十分活用することです。例えば、日本の人口が1億2000万人として、18歳の人口はどの程度でしょうか。10秒以内に答えられますか。簡単です。平均年齢を仮に80歳とすれば1億2000万人÷80です。もちろん釣り鐘型の人口分布なら単純に80で割るのは間違っています。しかし、間違っていても大体の線をすばやく算出できることが株式投資では重要です。自分で市場規模や企業のポテンシャルをセッティングしなければ将来の企業の業績が予測できません。人口を聞かれて、図書館で統計を探す人は株式投資に向きません。むしろ、どうして18歳の人口が必要なのかを確認する人や、なにも考えずとっさに総務庁の窓口に電話をかける人は株向きの人です。

 それでは第2問です。日本に信号は何本あるでしょうか。あなたならどう算出しますか。
 私なら、東京都の人口は日本のおよそ十分の一だから、東京を基準に考えます。東京の面積はどうでしょうか。地下鉄東西線と中央線を乗り継いで東西を電車で1時間ぐらいでしょうか。各駅での停車時間を考慮して平均時速は40キロぐらいでしょうか。南北も東西と同様に40キロだとすれば、東京の面積は1600平方キロ程度です。
 交差点は何メートル間隔に設置されているでしょうか。100メーターごとにひとつとします。それなら1キロの道路に交差点10ヶ所。道路と道路の幅は200メートル程度として、1平方キロに交差点は、およそ50ヶ所です。東京1600平方キロとして、50×1600で、東京に8万ヶ所の交差点があるとします。1交差点に信号4本だから、東京には信号がおよそ8万×4本で信号機は32万本。日本は東京の10倍として、およそ3百万本程度と暗算するのです。多分、道路と道路の幅は200メートルではないでしょう。東京の10倍が全国という設定も、いい加減すぎるでしょう。しかし、このような計算は、大まかでよいのです。

 第3問です。冷蔵庫は1年に何台売れるでしょうか。必要なのは買い換え年数、世帯当たり1台として世帯数、普及率です。普及率100%、日本市場4000万世帯として、10年の買い替え年数なら、年間4百万台売れることになります。

 もちろん、これらはいい加減な推量です。しかし、こうした常識を活用することで判断力が養われるのです。例えば、今月は冷蔵庫が50万台売れたとすればちょっとした異変かもしれません。新製品の投入で市場が活性化されたのかもしれません。

 さて将来の予測です。第4問です。現在の信号はランプですが、将来は発光ダイオードになる可能性があります。青色発光ダイオードの信号機向けのポテンシャルを考えてください。但し、1つのランプに300個の発光ダイオードを使うと仮定します。どうでしょうか。

 私は、日常の観察を重視します。先日、踏み切りの信号を見たとき、信号が発行ダイオードになっていると気づきました。タクシーに乗るとき、以前は蛍光灯で空車のマークを知らせていたのに、そのタクシーは、発光ダイオードで「空車」の文字を光らせていました。バスの行き先ボードも同様に、蛍光ランプから発行ダイオードのボードに替わりつつあります。白色の発光ダイオードが製品化された現在、白色電球の何兆円という世界市場を、発光ダイオードが代替していくことも、夢ではありません。

 日常の観察と知識の結合が、投資のヒントになる場合があるのです。ひとつひとつの市場の将来の規模や可能性を、常識で考えていくのです。常識的な判断で、成長製品やサービスのもつ可能性を算出するのです。

 いつも、自分の頭で考える。これが、株式投資の基本です。

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