大原の投資技法その11
 成長率と成長期間の重要性を認識する
〜伸びる会社をなぜ買うのか、成長株投資の意義〜

 セブンイレブンを79年の上場時に公募価格1300円で千株購入し、そのまま持ち続けていれば、株式分割や値上がりなどで現在は6億円以上になります。

 このように、継続的に業績の伸びる会社の株を長期に保有していればそのリターンは定期預金などよりずっと大きいのです。反対に業績が低迷する企業は、株価も低迷することになり、多くの場合、大切な資産を大きく目減りさせてしまいます。ですから、業績がこれから長期的に伸びる企業を選別することが株式投資の基本なのです。

 また、株価は着実に上昇するものではありません。上がったり下がったりの繰り返しです。しかし、上げ下げを繰り返しながらも株価が切り上がっていくのが伸びる会社の株価です。上げ下げを繰り返す過程で伸びる会社の株価も一時的に、大きく下落する場合もあります。株価のピークで買ってしまったら、買い値を回復するのに1〜2年かかる場合もありますが、それでも業績さえ伸びていれば、2年程度の保有期間で買い値を大きく上回るものです。

 企業業績も株価と同様波があります。恵まれた外部環境や新規顧客の獲得などで業績が急に伸びる局面もあれば、その逆に業績が足踏みする局面もあります。業績の足踏み局面では株価の評価も低く、業績の伸びる局面では株価の評価が切り上がります。

 例えば、営業利益の20倍程度の評価を受けている企業を例にしましょう。営業利益というのは会社の本業からの儲けです。売上から製造にかかる経費、人件費、販売にかかる経費や管理部門のコストを差っぴいたものです。現状の営業利益が100億円で、発行済み株数が1億株の場合、1株当たりの営業利益は100円になります。この1株当たりの営業利益100円の20倍は2000円です。この営業利益が増えるのか、減るのに、強い関心をもちましょう。増える程度や、減る程度にも、また、何年増え続けるのか、何年減りつづけるのか、を分析するのです。

 営業利益が増えることを、増益といいます。増える幅を増益率といいます。この企業の次年度の増益率が30%の場合、営業利益は今年度100億円の30%増ですから、来期の営業利益130億円となります。この企業がその次の年も、30%の増益となれば、来々期の営業利益は、169億円となります。発行済み株数は1億株で割った来々期1株営業利益は169円となり、その20倍の株価3380円となります。株価は2年で69%のリターンです。

 しかし、このような大幅の増益企業の評価は、さらに高くなります。2年連続で30%の増益を達成した場合、環境に変化がないのであれば、時価総額は、営業利益の25倍や40倍、またはそれ以上に評価が切り上がるのです。ですから、増益率に加えて、バリエーションの切り上げによるキャピタルゲインが期待できます。

 増益率60%で、バリエーションが2倍に切り上がれば、1.6×2.0=3.2となり、3倍以上のリターンとなるのです。
 高い増益率のことをモメンタムといいます。モメンタムが株価の評価を切り上げ、増益率以上のキャピタルゲインをもたらすのです。

 よいことばかりではありません。いままで40倍の評価が減益傾向になると30倍、20倍とその評価が切り下がってしまうからです。1株利益の40倍で買ったものが、大幅な減益で1株利益が減少すると、株価は、1株利益の30倍や、20倍以下になってしまうこともあります。ですから、伸びる会社を買うことは大きなリターンも得られる反面、予測が外れたときの痛手も大きいのです。

 大切なのは成長が持続するかの見極めです。長期的な利益成長の最初の段階が株を買うのにはよいタイミングです。価格動向、業界構造などを取材し、利益成長への障害があれば、業績の見通しや株価の評価倍率を変えなければなりません。上に上に評価倍率を変える余力がある強いモメンタムをもった銘柄を発掘するのが私たちの目的です。

 以下の表をご覧ください。これは、成長率を横軸に成長期間を縦軸にとったものです。現状の営業利益額を1として、ある成長率と成長期間を選択すると営業利益はどう変化するかがわかります。

 例えば、毎年20%減益を繰り返す企業は20年後に営業利益は現状の100分の1になります(0.8の20乗)。一方で20%増益を20年続ければ、営業利益は現状の38倍になります。ですから、この減益企業の現状のPERが20倍であっても、20年後の予想PERは2000倍以上になってしまいます。

 一方で、この増益企業の現状のPERが100倍で、一見割高に見えても、20年後の予想PERは2倍台まで低下する理屈になります(100倍÷38=2.6倍)。成長率と成長期間が、中長期的な投資にどれだけ重要かは一目瞭然です。成長期間に関してどれだけの確信がもてるか、成長率はどの程度を期待できるか、その2点が投資の際の重点チェックポイントになります。PER100倍が高い、PER20倍が安いというはあくまでも数ヶ月先の業績を基準にしたものです。足元のバリュエーションにとらわれず、事業の可能性を数年単位で考え、その事業の将来性に対する確信の度合いで銘柄を投資することをお勧めします。

【成長率と成長期間と利益額との関係】
成長率(年率)
-20%
-10%
0%
+10%
+20%
+30%

投資期間

1年
0.80倍
0.90倍
1.00倍
1.10倍
1.20倍
1.30倍
5年
0.33倍
0.59倍
1.00倍
1.61倍
2.50倍
3.71倍
10年
0.11倍
0.34倍
1.00倍
2.59倍
6.19倍
13.79倍
20年
0.01倍
0.12倍
1.00倍
6.72倍
38.34倍
190.05倍
30年
0.00倍
0.04倍
1.00倍
17.45倍
237.34倍
2617.00倍


 以上で、私の投資技法シリーズは終了です。30の投資技法のうち、1/3程度は紹介できたと思います。残りは、実践的な取材方法に関するものなので、折々、個別銘柄の紹介がてら触れていきます。(大原部長)

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