No.
日付
タイトル
執筆者
26
2002/03/29
報道のあり方について
生涯遊人
25
2002/03/29
ブルーレーザー
両津勘吉
24
2002/03/26
特別損失の研究 弟7回(最終回)
 それでも投資家は企業を信じる
大原部長
23
2002/03/25
炎のファンドマネジャー7つの投資アドバイス
炎のファンドマネージャー
22
2002/03/25
ラーメン屋の宿命とアナリストの宿命
炎のファンドマネージャー
21
2002/03/25
炎のファンドマネジャーの中期狙い銘柄
炎のファンドマネージャー
20
2002/03/22
光ファイバーに関して
海野六郎
19
2002/03/19
特別損失の研究 弟6回
 差別化できず競争力を失ったツケ
大原部長
18
2002/03/18
レンブラントとプリクラ
炎のファンドマネージャー
17
2002/03/18
特選注目銘柄
炎のファンドマネージャー
16
2002/03/18
関心高まる官民挙げての知的財産戦略
炎のファンドマネージャー
15
2002/03/15
ブルーレーザーについて
両津勘吉
14
2002/03/12
SRI研究
13
2002/03/12
特別損失の研究 弟5回
 評価損
大原部長
12
2002/03/12
特別損失の研究 第4回
 新卒の定期採用を続けたツケ
大原部長
11
2002/03/12
経営研究素材 HOYA(7741)☆☆☆☆
大原部長
10
2002/03/11
資源のリサイクル VS 情報のリサイクル
炎のファンドマネージャー
9
2002/03/11
久しぶりに泣けた説明会
炎のファンドマネージャー
8
2002/03/08
持ち株会社
駄洒落商会会長
7
2002/03/08
為替相場動向
生涯遊人
6
2002/03/04
番外編:本当に穴株でチャレンジしたい方に贈るレア物銘柄
炎のファンドマネージャー
5
2002/03/04
ここでの相場勘と売買戦略
炎のファンドマネージャー
4
2002/03/04
技術はトレンドを作る!!
炎のファンドマネージャー
3
2002/03/01
SRI
2
2002/03/01
外貨投資、何がお徳か その3 
生涯遊人
1
2002/03/01
特別損失の研究 第3回
大原部長

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26
2002/03/29 報道のあり方について
生涯遊人

 

 先週のニュヨークマーケットで、某通信社の「ムーディーズの日本格下げ」という誤報で、131.70ほどにいた$円は、瞬間的に132.28円まで上昇し、10分後の記事の修正ですぐに131.70まで戻した。その後は、$高の地合をうけ132.00台まで上昇した。

 最近、通信社の誤報あるいは、さまざまなニュースにより相場が動いてしまうことがある。
 銀行や証券会社は、さまざまな媒体と契約し、ニュースや情報を購入している。その金額もばかにならず、たびたびコストカットにより、媒体の数を減らしたり、バージョンの低いもの(その分見られる情報が制限される)に換えたり、情報端末を削減したりということをしている。

 しかし、先週のようにニュースにより為替が大きく動くことも多く、短期売買にとって、情報は生命線になるためなかなかコスト削減はすすまない。
 逆に通信社もそのことを逆手にとり、センセーショナルなニュースを流し、相場にインパクトを与えることにより、顧客を繋ぎとめているのではないかと思われることも多い。

 というのも、誤報だけでなく、同じニュースが時間を変えて配信されたり(同じニュースで東京と海外が時間を変えて反応したりする)、なんで今このニュースが出るのかという(識者の為替予測などはインタビューした直後でなく、通信社の事情で配信する時間が変ってくる)変なニュースもある。
 マスコミが、その記事の価値を高めるために、わざわざ市場が動きそうなタイミングを狙って配信してるのではないかと、勘ぐりたくなるケースもある。

 経済記事だけではなく、すべての報道において、マスコミの影響力は大変大きいのだが、どうもセンセーションだけを狙った記事が多すぎるのではないかとおもってしまう。
 とくに日本の場合は、報道の方向性が一方に偏りやすく、弱ったものや、叩きやすいところに集中してしまう傾向がある。銀行、建設、3月危機、自●党政治家、毎年同じ時期に同じように叩かれる対象がでてくる。

 ためしに、経済系の雑誌をみていると、特集も内容も毎年同じようなものだ。日本経済がこの10年、相も変わらず同じことを繰り返しているかもしれないが、マスコミのほうもいいかげん、全社そろっておなじ切り口で騒ぎたてるのは、あなた方が批判している、変化できない日本の官僚機構や、会社などの組織と同じではないでしょうか。

 日本のマスコミというのは、日本語という強力な貿易障壁に守られた、実は一番グローバル化とは程遠い、遅れた業種ではないかと思います。
 あなたがたに、その他の日本の組織を批判する権利はありません。

 と偉そうなことを書きましたが、「億近」も発行数は、微々たるものですが、読者の方々に少なからず影響を与えていることを思えば、一執筆者として肝に銘じなければいけないなと自戒しています。

 情報は、分析してこそ真価を発揮します。読者の方々は、くれぐれも、情報の取捨選択と分析を心がけてください。(生涯)

 

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25
2002/03/29 ブルーレーザー
両津勘吉

 

 DVDのブルーレーザーの本命は松下−日本ガイシになると考えていたが、ブルーレーザー&SHGの元研究者の方から、両社の共同開発製品はDVDには載らないとの指摘を受けた。
 載らない理由も簡単に明記されていたが、松下側にも日本ガイシ側にも理由があるという。

 しかし調べてみるとどうも他の方式の技術革新が進んでいるらしい。別の友人に電話をするとGaN基板OKだとか。チョコラルスキーでは困難極まるGaNをどうやってインゴット作るのか?
 億ゼミの教授が言っていたようにサファイヤ基板にエピ成長させて下からYAGレーザーを当てて分離するのか? しかしスループットが悪そう。

 ブルーレーザー地獄に嵌っておりますが、日進月歩のこの世界は非常に面白い。ブルーレーザーの情報大歓迎します。(両津)

 

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24
2002/03/26 特別損失の研究第7回(最終回)
それでも投資家は企業を信じる
大原部長

 

人間は失敗をする。
失敗をするなら、失敗することを前提に人生を生きなければならない。
失敗が前提なら、小さな失敗を練習する機会がなければならない。
致命的な失敗をしないために小さな失敗をしなければならないのである。
日本企業の場合は、小さな失敗を失敗と思わないで見過ごしてしまう傾向が強い。

甘えが充満しているのだ。
失敗が小さなうちに問題を解決しなければ、問題は後々大きなものになってしまう。
問題が小さい間に解決することをリストラクチャリングとわたしは言っている。
(日本では、リストラは、希望退職を意味するようだ)
失敗をする沢山の人間の集合体である企業が失敗をしないはずはない。

要は、失敗を教訓に、一段づつ上の階段を上っていけばいい。
今中間期に日本企業が出した15兆円にも上る特別損失には、基本を守らなかった恥ずかしい失敗が多すぎる。

そうはいっても、どうしても失敗がつきものの世の中。
運、不運というものを認定しなければ、世界は成り立たない。

それでは、前向きの特別損失、言い換えるなら、許される特別損失というものがあるのか。
あるとすれば、それはどんなものなのか。

投資家の立場で、ある企業の失敗に遭遇したとき、「ああ、この集団なら、失敗しても、必ずやり直せる。だからこいつらなら、大丈夫だ」と思える組織とはどういう組織なのか。

失敗を恐れないで、何度も挑戦できる企業集団はいかに育まれるのか。

行動する中で、誤りは必ず出てくる。
誤りが小さいうちに、軌道修正できるかどうかが問題ではないだろうか(=リストラクチャリング)。

損失は早めに。
失敗は、小さなうちに処理をするべきなのだろう(=リストラクチャリング)。
前向きな失敗は小さな失敗。
すなわち、べらぼうに大きな損失を出さざるを得ないような状態にまで放っておくのではなくて、いまのうちになんとか手を打とう、そういう種類の損失であれば、許されるのではないのだろうか。

そういう小さな目立たない損失や失敗を訂正するためには、小さな金額だけで十分であろう。
小さな金額であれば、株主価値を破壊する程度も軽微なものに収まるであろう。

こういうことを論じていると、なんだ、企業も人間と同じようなものではないのか、そういう感じがしてくる。

病気は早く直す。
健康であるように普段から気をつける。
間違いは認め、失敗から教訓を学ぶ。
状態がいくら悪くても、希望を失わず、絶えず、前向きにがんばる。
頭で考えるだけでやった気分にならない。
しっかりと行動をする。
よいことをする。
最善をつくす。

そういう前提に立って、「間違えながら、行動し、行動しなながら修正していく」という考えに立たなければ、株主に報いるような経営はできないだろう。

間違えないように、間違えないようにと、過度に緊張してしまい、結局、自力が出させない。
それは自分が弱いからだ。
そういう自分を隠そうとする。
そうするから、おかしくなるのではないのだろうか。

間違いを長期に渡って隠そうとしたり、自分の非を頑として認めないで、事態が悪化して、どうしようもなくなってから、どうにかしようとしたりする。
そうするからおかしなことが起こるのではないだろうか。

それでは、間違いを認め、失敗から何かを学び、前向きに生きることが出来る人がいて、一方でそれが出来ない人がいる。
出来るか出来ないかの境目を分けるものは何だろう。
結局は、人間性ではないだろうか。

投資の本質は「信」であるとわたしは考えるようになった。

全力をあげてやりとげたいものがないならば、考えてほしい。
他の誰かの大切なチャンスを自分がつぶしているということを。

他の誰かが全力を出し切り、なんとしてもやり遂げたいものがあるときに、そのチャンスが与えらていない場合がある、そういうことを思ったことぐらいはあるだろう。

自分は、生きている。
そして、全力を出し切ることのできる立場にいるのに、どうして出来ないのか。
身内や幼友達を不幸にして亡くしてしまった者たちは、自分が生かされていることにどう感謝すればよいのだろうか。
世の中にどう感謝すればよいか。勝ち負けではなく、自分が責任をもってやった仕事の質に対して、絶対的な基準を持っているか。
その基準に満たない場合、このままでは自分自身に納得が出来ない、と思えるか。
自分がやる以上は、最善を尽くしたい、最高のものを成し遂げたい、と思えるか。
自分にいつかした約束はどうなった。
このままでは自分を支えてくれたみんなに申し訳がない、と思えるか。

そういう思いは、内面的なものであって、表層にはなかなか出てこない。
そういう思いは、金銭的な欲求に勝るだろう。

カネではない。
当然、株主が人間性に欠ける場合があれば、そういう株主には企業の内面的な葛藤は見えない。
社会的な責務、地域社会への貢献やよい経営とはなにかを一言でいうのは難しい。

それよりも利益率の高い事業、若い組織、アグレッシブな社風、そういう誰にでもわかるような形で伝わるものしか評価されないだろう。

株価は、いつも、業績の「結果」でしか企業は評価されない。
日本の巨大市場を、そういう程度の低い株式市場にしてしまっていいのか。

結果ではなく、その過程における真摯な姿勢に対して、企業を評価できるようになったとき、何かが変わるのだろう。

そういう投資が世の中には必ずある。
結局、特別損失ひとつとっても、ありきたりの箇条書きの評価基準というものはありえない。
ひとつひとつの損失や失敗に対して、投資家も真摯に対応して、はじめて、その企業の真実に触れることができるのではないだろうか。

投資で成功できるパターンを見出そうとするあまり、本当に大切なものを評価できなくなることだってあるだろう。
いつも企業に厳しくあるばかりが投資家ではない。
ときには、失敗を育ててあげられるような、企業の成長を企業とともに喜べるような、そういうやさしさや暖かい気持ちがなければ、育つものも育たないのかもしれない。

今、投資家と企業との対話はどうなっているのか。
投資家と企業を結ぶ信頼関係はどうなっているのか。
特別損失を出すとき、企業の経営者の心の片隅には、ひとりひとりの投資家の顔は浮かんでいるのだろうか。
IRがみんな機関投資家を向いているとき、個人投資家向けのIRの重要性が本当に分かっている経営者はいるのだろうか。

特別損失の土壌というのは、信頼関係の構築を怠った勝手な無責任や無感動な経営の中で大きく増殖するのではないのだろうか。

株主と企業との間で、だました、だまされた、という低次元の争いはどこからくるのか。

投資とはなにか。もう一度、深く考えてみるのもいいかもしれない。

⇒投資家は、自己を見つめなおし、自分のやりたいことに確信をもち、その確信を実行に移すとき、どうしても託したい人間がいるならば、それは、完全な投資になりうる

⇒真剣に取り組んでいる集団が、最善のプランを実行するとき、どうしても必要な資金があるのであれば、それは、理想の投資になりうる

⇒逆に、サラリーマン経営者が数時間の会議で設備投資を決定し、いい加減な立場で人ごとのように損失を拡大させることに投資家は抗議すべき

⇒特別損失はあってはならない。カネをかけてリストラをするなら誰でもできるし、経営者はいらない

⇒特別損失は従業員と経営者の甘えから発生する。行動しないまま、なんとかなるという傲慢さが損失の土壌。

何とかなると思い行動しない企業はシェアが低い。
低いから差別化ができない。
事業を不良化させ、儲からない会社にしてしまう。

いつもやらなければならないことが山ほどあると謙虚に粛々と行動している企業はシェアが高い。
差別化に成功し、利益を確保する。

利益を後世に伝えるものは設備投資であるが、経営者は心を後世に伝えることができる。
ビジョンは利益と違い、税金がかからない。
ビジョンや志は、ほぼ完全な形で後世に伝えることができる。

投資の本質はその完全さにある。

 

【表彰式】

最後に東証1部の会社で、特別損失を中間期に計上しなかった優秀な企業を表彰して終わりたいと思います。

3521 エコナック
6929 日本セラミック
3524 日東製網
6358 酒井重工業
4725 シーエーシー
5721 志村化工
6935 日本デジタル研究所
4704 トレンドマイクロ
2597 ユニカフェ
4728 トーセ
6853 共和電業
8181 東天紅
7532 ドン・キホーテ
7429 セイジョー
7516 コーナン商事
3408 サカイオーベックス
4719 アルファシステムズ
9650 テクモ
9972 アルテック
4680 ラウンドワン
3421 稲葉製作所
7958 天馬
6278 ユニオンツール
7649 スギ薬局
7714 モリテックス
1780 ヤマウラ
2910 ロック・フィールド
9684 エニックス
6393 油研工業
6214 大隈豊和機械
6242 日本スピンドル製造
4919 ミルボン
6905 コーセル
1838 古久根建設
7476 アズワン
6482 ユーシン精機
2109 新三井製糖
6717 富士通電装
7937 ツツミ
8871 ゴールドクレスト
7445 ライトオン
9787 ジャパンメンテナンス
9152 関西汽船
6218 エンシュウ
4666 パーク24
8875 東栄住宅
4775 総合メディカル
7483 ドウシシャ
6470 大豊工業
7588 シートゥーネットワーク

(大原)

 

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23
2002/03/25 炎のファンドマネジャー7つの投資アドバイス
炎のファンドマネージャー

 

 このコーナーを締めくくるにあたり、これから本格的に株式投資を始めようという個人投資家の方々に、いくつかの投資の極意や楽しみ方などをアドバイスしておきたいと思います。

1)リスク分散の極意
 長期で株式投資を楽しみたい方にはこの投資スタイルは必須。時間分散、銘柄分散など楽しみ方いろいろ。

2)生活の中から見つけ出す発想で
 身の回りにある投資ヒントを見つけてから取り組みましょう。

3)とにかく株式投資を楽しもう
 配当金や株主優待制度などなど、業績を調べる以上にチェックする項目はたくさんあります。それぞれが楽しみながら株式投資に取り組んで頂きたいと思います。

4)相場の流れを掴もう
 やみくもに株式投資しては決してうまく行く訳はありません。高値掴みを避けるためにも、全体相場の流れをチェックしてから個別株投資も実行しましょう。

5)成長株を見つけよう
 株式投資の醍醐味は成長する銘柄を見出して投資すること。株式投資によって最初の資金が2倍、3倍となることは日常茶飯事。銀行に預けてばかりいないで成長株投資によって少しはリスクに挑戦する習慣を身につけよう。

6)株価の勢いに惑わされるなかれ
 短期急騰中の銘柄に目を奪われ、高値掴みする方が多いが、目先の情報に惑わされず、しっかりと投資のタイミングをつかむようにしましょう。

7)信頼できるアナリストと仲良くなろう
 証券会社のアナリストは絶えず有望銘柄探しに没頭しております。かく言う私も証券会社所属ではないにしろ、そのアナリストの1人ですが、活動した結果はレポートで配信し、多くの皆様に報告しております。中立的な立場で吟味し逸早く多くの方々に報告できればと思っておりますが、投資家との接点は限定されています。それでも私は有料メルマガ(年間最大2万円)などで活動報告をさせて頂いておりますので、ネットを通じたコミュニケーションは可能です。他の多くのアナリストは証券会社などに所属。彼らの発信するレポートも血と汗と涙の結晶です。多くの皆さんが関心を寄せられることをお待ちしております。

 もちろん、この億の近道にこそ優良なコンテンツが存在していることは皆さん既にお判りのことでしょう・・・。(炎)

 

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22
2002/03/25 ラーメン屋の宿命とアナリストの宿命
炎のファンドマネージャー

 

 行列のできるラーメン店として有名な、池袋の大勝軒の親父の生き様が先日のTVで紹介された。最愛の奥さんを無くしてからの親父さんのラーメン人生が人柄ににじみ出ていて面白かった。
 行列ができるということは美味しいということ。他のラーメン店からも教えを乞いに来るほどの秘伝の味を持っているのが特徴だが、普通なら隠そうとするのにこの親父は全く隠すこともなく教えてあげている。行列ができるほどの人気はどこからくるのかはたで見ていても判らないが、きっと食べると判るのだろう。

 中には親父の顔を見に永年通ってくる常連客もいるというから凄い。長い経験の中で培われた味が、常連客をひきつけるのだろう。それでも毎日毎日厨房に立つ親父の姿は痛々しい。
 来てくれる客においしいラーメンを食べさせることが彼の宿命。30年にもわたり続けてきた彼のラーメン屋としての宿命に対して、証券アナリストたちの宿命はどうだろうか。

 アナリストには店などないので行列などできないが、日々の活動からくる作品(レポート)を見て教えを乞いたいと押し寄せてくるのなら、アナリスト冥利につきるだろう。本日の日経金融ではアナリストランキングが発表され、それなりに機関投資家からの評価の高い、これまでと余り変わりばえしないアナリストが上位にランキングされていた。
 ここまで評価されると大したもんだが、問題は億の近道からは誰も選ばれなかった点だ。大原部長などは誰がどう見てもランキング上位に来るに違いないが、残念ながら彼はバイサイド(運用機関)のアナリスト。今回のようなセルサイド(証券会社)アナリストではないので選ばれなかった。大原部長や両津氏はむしろ彼らを評価できる立場にある。バイサイドは結構偉いのだ。

 さて、ラーメン店に行列ができるためには味が一番だろうが、この味を良くするのと同様に、アナリストの評価を高めるために努力しないとならないのは高度な分析力となる。企業の提供する情報だけでなく、分析を加えて初めて内容は充実したものとなる。この点は多くのアナリストが追い求めている課題と言える。

 アナリストの宿命は、ラーメン屋と同様に味を良くする努力を絶えず行う必要があるのかも知れない。でも、これほどの優秀なアナリストが揃っていても日本経済が良くなるという保証はない。飽くことなき探究心を備え、多くの投資家においしいネタを提供できるアナリストとしての宿命をまっとうできれば、どれほど幸せだろうか?(炎)

 

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21
2002/03/25 炎のファンドマネジャーの中期狙い銘柄
炎のファンドマネージャー

 

●東建コーポレーション(1766)
 時価 1320円
 時価総額83億円
 今期予想連結経常利益33億円
 目標時価総額 250億円(1年以内)

(このコンテンツは3月14日にアイリス・ジャパンの有料メルマガで配信した内容から引用しております。)

 同社は私がこれまで何度か紹介したことのある銘柄です。今期はITへの先行投資や人員への先行投資の結果減益となることから株価は1200円まで下げてしまいましたが、先般2部上場の発表で1650円まで急騰。しかしながらここに来てまた値を下げてきました。果たして今後の株価の動きはどうなるのでしょうか?

●地主に賃貸住宅などの建設を提案し、建築、施工・管理・仲介までを請け負う同社は、平成18年の売上高1000億円、経常利益77億円を目指し、業務のIT化を積極推進。中部から北関東など営業エリアを拡大し、成長を続けている。
 今6月期中間期の業績は、前年同期比10%増収と期初計画を達成したほか、受注高も同13%増の246億円と順調に上伸。しかしながら経常損益は赤字転落と、期初計画を大きく下回った。これは建築部門における先行投資的な人員増強により、人件費が7億円増と予想以上に増加したほか、平成18年度を目処とした中期計画に沿ったIT関連投資を5億円弱行ったことが収益を圧迫したためである。
 売上げ面ではリフォーム・仲介が前年同期比14%増、建築が10%増と順調に伸び、分野別でもマンションが6%減となったものの、アパートが13%増、店舗が63%増と順調。これまでの業績の伸びが止まったとの見方は当てはまらない。中期経営計画ではリース建築事業(アパート・マンション賃貸経営)におけるトータルサポートシステムを核として、これを取巻く周辺ビジネスの強化充実の徹底を図り、独自の分野を確立する意向。
 「東建IT革命」のスローガンのもと、更なる情報武装化を進め高収益企業への脱皮を目指している。IT化により建築業務支援ソフトによる建築部員個人の技能格差是正、着工・完工の季節変動是正し、施工の平準化、不動産情報の一極集中化による一元管理で間接費の大幅削減などを実現する構えで、その効果は必ず業績に反映されてくると考えられる。
 今期の業績は上期の経常赤字から下期は大幅な黒字を見込み、通期の売上高はマンションの減少をリフォーム・仲介等ストック部門の拡大でカバーし、前期比10%増の594億円、IT投資増で経常利益は同22%の減益となる見込みであるが、それでも33億円と過去の水準と比べて高い水準が維持される見込み。
 EPSは212円を見込み、1300円前後の現状株価水準はPER6倍台であり、いかに減益見通しとは言え割安な水準と言える。

●同社は3月20日より東証2部に上場。

●株価は今期減益を発表して以来、冴えない展開を続けてきたが、3月18日に東証2部上場の発表を受けて1650円の高値をつけた。3月14日の出来高は85100株と急増。そこから短期上昇の動きを見せた。これまで不動産関連としての評価から低PERに甘んじてきたが、見直しの余地。
 短期急騰後の調整場面を演じているが1320円はほぼ急騰前の水準。
 連結PERは6倍台。配当利回りは2.3%となっており6月末の配当取り狙いや株主優待制度(コシヒカリ10キロ)でじっくりと研究の上皆さんには取り組んで頂きたい。

時価総額84億円
現預金等 91.8億円
有利子負債 8.5億円
株主資本 75億円
今期予想連結経常利益33億円
来期予想連結経常利益37億円(新四季報)
配当金30円(6月年1回)


●ゼファー(8882) 東証2部
 時価32.3万円
 時価総額95億円
 今期予想経常利益31億円
 配当利回り 3.0%
 PER6.6倍

(このコンテンツは2月28日に紹介したアイリス・ジャパンの有料メルマガより引用しております)

●1994年設立の東京・千葉を中心とした分譲マンションの企画・販売会社。創業者である飯岡社長(元リクルートコスモス)の品質を重視する確固たるコンセプトや、経営戦略が顧客ニーズにマッチして急成長。創業後7年目の前12月期は売上高252億円、経常利益28億円という業績を上げるに至っている。
 単に安くマンションを供給するという次元から、今後確実に向かう環境問題・少子高齢化問題を生活の基本である住宅分野から解決していこうという考え方を前面に押し出している点も興味深い。この結果、ディスポーザー付きマンションや共同開発したセントラル活水浄水器の装備を行うほか、シックハウスハウス対策として「ホタテの貝ガラ」を使った壁紙の導入、スケルトン(駆体)とインフィル(内装)を分離したSI工法を導入するなど特色が出ている。
 昨年4月からは建築工事価格の透明化に寄与するコンストラクションマネジメント(CM)の本格導入に着手し、既に5棟を着工。徹底的な原価低減と商品企画開発によるハイクオリティを目指し、将来の需要低減に対応しようと考えている。
 今期の業績は前期比39%の増収、同12%の経常増益を見込む。これまでよりは多少伸び率が鈍化する見通しである点を嫌気したのか、このところの株価は値下がりのピッチを速めたが、34万円台をつけるなどここに来てようやく下げ止まり傾向。 前期末に実施した5分割後の売り物が出て、やや需給が悪化している点や、マンション中心の事業展開や不動産セクターということで人気が出にくいという点は致し方ないが、今後は札幌などの地方都市などで商業ビル事業も計画。土地の有効活用コンサルティング事業も手掛けるなど、同社の中期的な事業の展望や基本的な成長性の高さからすれば極めて評価不足と言える。
 今期予想EPSは4.86万円。一株当たりの配当金は9727円で現状株価(PER6.6倍)はPER面だけでなく配当利回り(3.0%)においても極めて割安な水準となっており、積極的な投資チャンスが到来していると見られる。(炎)

 

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20
2002/03/22 光ファイバーに関して 海野六郎

 

 駄洒落商会会長です。前回ご紹介しました、大手ハイテクメーカーで光関連事業に従事しておられる海野六郎さんより、光ファイバーに関するコラムをいただきました。今後、数回にわたる連載となる予定です。
 海野さん、お忙しいなか、本当に有難うございます。 読者の皆様、海野さんにご質問、励ましのメールをお願いいたします。


【第1回 通信用の光ファイバーにも2種類あります】

 億近読者の中にも、光ファイバー回線をお使いの方もいるかとおもいます。通信速度は速いでしょうか? 「光ファイバー」という単語は誰もが知っていても、その実体はというとあまり知られていないのが現実です。 以下、一般的な通信用光ファイバーについて簡単に解説致します。
 「光ファイバーを見たことがある。」といっても、そのほとんどは、幾色にも変色するキラキラ光っているヤツ…というのがほとんどかと思います。あれはイルミネーション用のプラスチック製の光ファイバーです。

 通信用の光ファイバーは、石英ガラスできています。その中心部分の屈折率をやや高くなるように作られており、その屈折率が高い部分に光が閉じこめられ、光の伝送をする訳です(ううん、難しい説明ですね。)。

 光ファイバー通信に使われるのは、波長が、0.85μm,1.31μm,1.55μmといった光で、これらはいずれも赤外線です。したがって、人間の目には見えません。
 光の通り道の太さにより、マルチモード(多モード)とシングルモード(単一モード)の2種類に分けられます。現在はシングルモードが主体です。 以下、MMF(Muiti mode fiber),SMF(Single mode fiber)と略します。

 
MMF
SMF
光の通り道(モード)
多数
1つ
光の通り道の径
50,62.5
8〜9
ファイバー径
125
125
樹脂被覆径
250
250
[単位:μm]

 ざっとこんなところでしょうか。
2種類の光ファイバーを見ただけでは違いはわかりません。

 1000倍の断面模型を描いてみてください。SMFでは、光の通り道がいかに細いか、おわかりいただけるでしょう。出始めの頃の光ファイバーはMMFが主体でした。いろいろ理由はありますが、接続しやすいことが、最大の利点でした。1本の光ファイバーだけでは、どうにもこうにも使えません。接続点が必ず出てきますし、通信線路の両端は交換機等の機器に接続されます。光ファイバーとその接続は、絶対に逃れられない問題です。光の通り道が細いと、わずかのずれを生じた接続でもアウトです。接続という当面の大問題では、MMFが有利でした。

 MMFの不利な点は、伝送能力(容量や距離)がSMFに比べて劣ることです。また量産にも限界があり、80年代の後半には、今後迎える光ファイバーの需要増をまかなうには、SMFの大量製造が求められました。

注1)ファイバー(fiber)という名称ですが、光ファイバーには繊維の性質は全くありません。細いから、ファイバーの名が付けられたのでしょう。グラスファイバー(glass fiber)とは、名前は似ているが全く違う物です。

注2)μmは、マイクロメートル(micrometer)と読みましょう。SI単位系では、μは10の6乗分の1を表します。ミクロンは、今では使われません。

【予告】 次回は、光ファイバーのガラスの作り方です。(海野)

 

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19
2002/03/19 特別損失の研究 第6回
 差別化できず競争力を失ったツケ
大原部長

 

 〜前回までの結論〜

★企業評価のポイント:
☆人員の評価がきっちりと出来ているかどうか(給料に差をつけることと個別の評価をしっかりするということは別問題)
☆10人以内、できれば3−5人のチームに細分化できているか
☆細分化された小集団ごとにBSとPLを割り当てることができているか
☆細分化された小集団に業績の達成度を全社員に開示しているか(なにをやってもいいが、会社には利益を出す責任がある)
☆専業に近い事業運営ができているか
☆人員規模や資産規模は理想的な水準になっているか
☆財務内容がよく、不況期にこそ、M/Aができる体質か

★リストラに信じられないコストがかかるわけは?:
☆早期発見、早期治療が基本なのに、どうしようもなく行き詰まってからのリストラを実行しているため
☆世界を目指す気概がないから、村の優秀な若者は採用できるかもしれないが、世界の優秀な人材を採用できていない
☆集約していない組織や工場は売れないため、売却することが難しく、事業を清算しか道がない(清算はカネと労力がかかる)
☆不況期にリストラをし、好況期に拡大するタイミングの経営判断のまずさ(不況期に投資をし、好況期に事業を売却するのが経営の基本)
☆人事政策がない。ライバルに転職してく人材に数年分のボーナスを贈呈する無神経さ

★差別化、競争力、マーケットシェア(要旨)
差別化ができなければ、価格競争となる。価格競争は事業を不採算にしてしまう。事業の不良化を招く価格競争。企業は差別化を武器に最終的に過半のシェアをとりにいかなければならない。一旦、高いシェアをとってしまえば、高いシェアそのものが十分な差別化要因になるからだ。競争力があれば、人員も資産も不良化することはない。

⇒経営の第一目標は人材と設備などの資源が不良化することを未然に防ぐこと
⇒経営資源の不良化の最大の原因は、価格競争

★企業がシェアトップを目指さなければならない理由

★シェアトップが好ましい理由
●平均的に優秀な人材を集められる
●顧客からの情報が多い 顧客ニーズを正確に捉えることができる
●顧客からの信頼を得やすい (「さすがトップ企業だけのことはある」といわれることが多い)
●ブランド構築に有利
●R/Dの規模で有利
●特許の質量で有利
●経済性で有利 規模の経済が働く 量産効果を期待できる(材料費の購入条件の面など)
●不況期に強い 顧客は不況期に2番手、3番手を切る
●寡占市場であれば過度な競争を抑えられる

★シェアトップの悪い点
●好況期に2番手、3番手にシェアをとられる
●社員の平均給料が高くなる
●放っておくと社風が緩みやすい(油断)


【モデルケース】

市場には2社しかいない。トップ企業と2番手企業だけである。トップ企業が70%のシェア、2番手が残りの30%シェアとする。市場規模は1000億円とする。
市場は好況時に1200億円、不況下では800億円になるとしよう。
事業の性格は、固定費が売上の20%、変動費が売上の60%、したがって、営業利益は売上の20%である。
通常は、トップ企業のシェアは70%だが、不況時にシェアは向上し75%へ好況期は反対にシェアは低下し、65%になるとする。
同様に平常、2番手のシェアは30%だが、不況期にシェアを低下させ(25%)、好況期にはシェアが上昇する(35%)とする。
しかし、固定費(設備投資と人員など)の性格上、生産能力によって固定費は決まってくる。
好況時の生産能力に見合った固定費が必要になる。

⇒ここでは、固定費を売上の20%としたが、トップ企業も2番手企業も、好況期の売上の20%が固定費とし、営業利益を計算してみる。(表1参照)

表1 モデルケース トップと2番手の比較(百万円)
不況
通常
好況
市場
80000
100000
120000
トップ企業売上
60000
70000
78000
2番手売上
20000
30000
42000
トップのシェア
75%
70%
65%
2番手のシェア
25%
30%
35%
 
限界利益(40%)
トップ
24000
28000
31200
2番手
8000
12000
16800
 
固定費(20%)
トップ
15600
15600
15600
2番手
8400
8400
8400
 
営業利益
トップ
8400
12400
15600
2番手
−400
3600
8400
 
営業利益率
トップ
14%
18%
20%
2番手
−2%
12%
20%

⇒雌雄を決するのは、固定費の額であるが、この問題を突き詰めると、「好況期にどれだけ経営資源を備えるべきか」、「好況はいつまで続くのか」などの不透明な部分を読むという最重要の経営課題となる。

2番手企業は、好況期の売上規模420億円にあわせた設備を持たなければならない。
トップ企業もフル稼働前提に780億円の好況期の売上の20%が固定費となる。

好況期に意識的にシェアを落とすことが可能であり、不況期にシェアを上げることができるところが、競争に勝てる。
そうすることによって、トップ企業は、景気の変動のかなりの部分を2番手に負わせることが可能になる。

トップ企業は最低でも14%の利益率を確保できるが、2番手企業は不況期に急速に収益性が落ちる。
不況期の両者の差が、景気後退局面ではっきりとしてしまう。

たとえば複写機におけるキャノンとミノルタ、ウエハーにおける信越化学と小松電子を見てみる。

表2 株価の下落率
2000年高値
2001年安値
下落率
キャノン
5620円
3195円
43%
ミノルタ
685円
92円
87%
信越化学
6630円
3260円
51%
小松電子
1430円
286円
80%

しかし、好況へ向かうとき、投資家はどう振舞うか。
2番手を見る。
シェアが上がっている。
増益率がトップ企業より高く、モメンタムがある。
このまま好況が続き、売上が拡大すると経営陣も思い込んでいる。
それが2000年に起こったことだった。

しかし、一度、景気後退局面となると、設備投資をやって固定費が上がっている2番手以下が苦しくなる。
景気がよくなり、ピークをうち、悪くなり、ボトムをうち、また通常にもどるというサイクルを経験するごとに、両者の差は開いていくだろう。

強いものがより強く、弱いものがより弱くなるような方向に物事は動きやすいとはいえないだろうか。
だから、経営者がシェアトップを目指すということは正しい。
シェアがトップである企業は、より高いシェアを目指すべきだろう。
シェアが低い企業は、シェアを上げる努力をすべきだろう。

シェアを上げていくためには、利益を犠牲にしてまで、価格競争をしていてはだめで、需要に見合ったぎりぎりの固定費でぎりぎりまでやっていくんだという思想が重要である。
利益は値下げ減資にするのではなく、次世代製品の開発に使いたい。

景気のサイクルに勝つ経営とは
●設備投資を不況下に断行して投資額を安く仕上げること
●設備投資は即断即決で設備は垂直立ち上げができること(他社よりも圧倒的にすばやい立ち上げのスピードが必要)

そのためには
●製品ノウハウや設備ノウハウが自社に備わっていること、設備が内部で作れる、ノウハウに長けた人員がそろっていること
●経営資源を地域的に集中させていること 人員を一箇所に集中させる
●設備も一箇所集中が好ましい(この考えは、災害など、リスク分散の観点からは、好ましくないとされている。しかし、競争に負けては元も子もない)

【シェアの変動と株価へのインプリケーション】

不況期に突入すると、2番手以下の企業の株価は大きく下落すると思われる。

⇒トップ企業の株価は安定し、2番手以下の企業の株価は急落する
⇒固定費は好況時の生産高に見合って高くなってしまう
⇒下位グループ企業は、業績のよいときこそ、空売りの対象になる
⇒業績がぼろぼろで何の見込みのないとき、下位グループの株を買うべき
⇒景気がよいときにトップ企業を買っておくこと 下がったときに損が少ない
⇒または、絶えずトップ企業を保有しておくこと より強くなる可能性がある


さらにいうと、

⇒やるべきことを決めたら、他のことやる余裕なんかない。
⇒他人と同じことをしていて、「できませんでした」では経営者はすまされない
⇒社員が成長できるように、精神面と技術面で社員をサポートしないなら、経営は不要
⇒値引きを受け入れて、「減益になりました」ですんだら、経営者はいらない
⇒損をしたら経営者は責任をとらなければならない
⇒同様に結果を残したら報われるべきだ
⇒経営者の給料は数倍上がってもいい
⇒社員の平均年齢はしっかりと若く保つべき
⇒ライバルは共に業界を育てる同志である そうでなければ社会的な意義を見失う
⇒努力して努力して結果が残る。その結果としてライバルに勝つ

東芝の常務は「半導体で台湾勢に負けたとは思わない。ハンディキャップなしで勝負すれば勝てる」といった。それはそうだ。
ただ、残念なことに、最初から1つの工場で生産し、事業を分散しないで、地方の労働力を頼らないで、世界の頭脳に頼っていたら、そのうえ、社員教育のシステムをそろえ、余剰人員は抱えず、出来の悪いやつはすぐに首に出来るとしたら、東芝は次は勝つ「可能性」がある。

⇒ハンディキャップを相手に感じさせるのが経営者の仕事

なぜ、「勝てる」ではなく、「勝てる可能性しかない」のか。
それは、ライバルはみんな、そのように「すでに」しているからであって、東芝が選択をしたら、それは、始まりにすぎない。
高いシェアを持つライバルにこれから低いシェアの東芝が逆境に負けないで、不利な条件を乗り越えて、半導体で勝つためには、相当のがんばりがなければならない。
サラリーマンではできない。
経営者もプロ、従業員も全員プロでなければ、勝てないだろう。

それがシェアを取るということであって、簡単にシェアを口にするべきではない。 
社員全員がひとりの例外もなく、「勝ちたい」と思うこと。
それが日本の復活の条件であるのだから、外人は「日本はだめだ」「誰も勝ちたいと死ぬ気で思っていない。日本は負ける」と諦めている。

⇒社員一丸となって絶対に勝ちたいと思わせるのが経営者の仕事!!!!

 

【池に魚がいなくなった村】

あるところに村があった。
村には、大きな池があった。

池には沢山の魚がいた。

村人は池のまわりに住み着いていた。
魚をとって暮らしていた。

ある年、魚が異常繁殖した。
とっても、とっても、さらに、うようよと。
まるで湧き出てくるように魚がとれる年があった。

よそ者が村に住み着くようになり、村は瞬く間に漁師でいっぱいになった。

ところが、次の年、魚はそれほどは捕れなくなった。
あきらかに村の人口が多すぎると誰の目にも明らかにだった。

村の長たちは、村人の生活を守るために、ある決まりをつくった。

「よその村から、新規にこの村に住み着くことは許されない」

それから数年間、村の人口はわずかに減っただけだった。

村人たちは、暮らしに困るようになっていたが、これまでの蓄えがあったので、なんとかやっていけた。

だが、とうとう蓄えがなくなった。

村の長たちは、村人の命を守るために、ある決まりをつくった。

「この村から出て行くことを決意したものには、優先的に池からの収穫を分け与える」

長たちは、長年、村に貢献してくれている土着の人々と、大漁にひきつけられてきた新参者を区別するために、このようにした。

「生まれたときからこの村に住んでいたものには、3年間暮らせるだけの魚を市場で売却してもよい。その後、1年以内に村を出て行くこと」

「そうでない新参者は、半年分の暮らしができるだけの収穫を得たら、ただちに村を出て行くこと」

村を出て行く者たちがいっせいに池に走った。

去っていくものが、池にいる魚という魚を捕り尽くしてしまった。

池には一匹の魚もいなくなってしまった。

村人は、池の魚が、また、いつかのように戻ってくれることを、今も祈っているという。

−−−大原

 

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2002/03/18 レンブラントとプリクラ
炎のファンドマネージャー

 

 絵心のある人ならお判りのことかと思いますが、ベラスケス、ルーベンスと並ぶ17世紀の3大画家であるレンブラントは、若い時代から老年に至るまで自画像を描いてきたことで有名であります。

 人は生きている証としてセルフポートレートを描こうとすることが指摘されておりますが、現在のプリクラもその代表と言えます。17世紀の著名な画家であるレンブレントが自画像の中にセルフポートレートの欲求をぶつけたのと同様に、現在の中高校生はプリクラにそうしたセルフポートレートの欲求のはけ口を知らないうちに求めていると言っても良いでしょう。

 先日NHKの市民大学講座でこの話が紹介されたのですが、その途端にプリクラの本家でありますアトラス(7866・時価850円)株は一気に値が飛んできました。
 先週末に急騰したのは創業オーナーである原野会長が15億円の私財を提供して自分の責任を明確にして現在進行中の事業計画を遂行させることが明らかになったことを契機としています。

 先日同社の岩田社長とお目にかかりましたが、プリクラの新製品「くっきぃー」は早くも完売。次のバージョン開発にも余念がないようだった。
 新生アトラス経営改革プランの実行に邁進する岩田社長の経営手腕には期待して良い。

 来期はプリクラ新製品に加え、ゲームソフト分野でも「真・女神転生」を発売し、新たな成長を期待して良さそうだ。
 プリクラに文化の薫りがするかどうかはともかく、プリクラ人気で再び脚光を浴びようとしている同社の今後の行方に注目したい。(炎)

 

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2002/03/18 特選注目銘柄
炎のファンドマネージャー

 

 ●バンプレスト(7854)
 時価 1070円
 時価総額 113億円
 予想一株配当金30円
 配当利回り2.8%
 今期予想連結EPS71円
 同PER 15.1倍

 先日バンプレストの中期事業計画説明会が開催され、上場来低迷してきた業績に明るい見通しが示された。上場してから良いところがなく下げてきた同社株も、このところ多少は底打ち傾向が見られるようになった。
 配当利回りがソコソコ高くて今後の事業展開も期待できるという点で、注目する向きも出てきたのだろう。

 バンダイ系の同社は、夢・感動を創造する企業として「愛ディアYOUモア」を提案し、心豊かな社会つくりに貢献することを経営ビジョンに置いて事業展開。先日2002年4月1日から始まる中期3ヵ年計画を発表した。
 その狙いは経営資源である「人・物・金・情報」を最大限に活用し、ブランドの育成と確立を図り、消費者からより一層の認知を得ることにある。 同社の強みであるキャラクターマーチャンダイジングを活かした効率重視の事業基盤を確立することにより、アミューズメント事業においてはキッズアミューズメント機を中心としたファミリー向けの直営アミューズメント施設である「きゃらんど」構想の具現化による市場の活性化によって「プライズNO.1」をより強固とする考え。
 この分野では小中高の週休2日制が4月より実施されることもビジネスチャンスと見られる。 家庭用ゲームソフト事業においては、新たなプラットフォームの増加に合わせ、スーパーロボット大戦に次ぐ柱となるような「ゲームソフトの充実」を図る考え。

 更にその他事業においては、インターネット・物販などの新規事業での展開を積極的に図る意向で、アミューズメント施設の景品を自宅で獲得できる「プライズパーク」サービスを開始するなど、ブロードバンド化への対応も進めている。
 この中期事業計画は2005年3月期を目標とするが、数値目標としては2004年3月期に売上高350億円、経常利益26億円、ROE9.2%、ROA11.5%を掲げ、年度毎にローリングしながら事業展開を図る予定。

 このうちアミューズメント事業では売上高240億円、営業利益16億円、家庭用ゲームソフト事業では売上高80億円、営業利益8億円、その他事業で売上高60億円、営業利益2億円を目指している。
 一昨年10月の上場以来、市場環境の悪化から株価は低迷を続け、本年2月には今期の業績低迷を受けて950円まで下落したが、ここに来て反転上昇の兆しを示している。2004年3月期の予想EPSは約140円。現状の時価総額は110億円余りであり、今後の水準訂正が期待される。
(炎)

 

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15
2002/03/18 関心高まる官民挙げての知的財産戦略
炎のファンドマネージャー

 

 【特許・知的財産をめぐる最近の注目記事】

 政府は知的財産戦略会議の初会合を3月20日に開催する。これまでの米国の知的財産戦略と比べ、大きく立ち遅れてきたわが国の特許・知的財産戦略がようやく本格的に推進されることは、今後の株式市場を見る上でも重要なポイントと言えよう。
 但し、これまで日本の企業には明確な特許戦略はなく、キャノン、ソニー、鷹山、といった企業に評価すべき特許戦略の一端が垣間見られる程度。富士通などの著名大手企業といえども海外企業、特に台湾企業や米国のベンチャー企業などとの競争に優位に立てず、苦戦を強いられていると言える。
 小さなベンチャー企業に特許を握られ大企業が上請け(小企業が大企業を使って生産などをさせること)をする事態となっている点は見過ごすことはできない。

 そうしたこれまでの経緯を踏まえて、やっと現内閣は動きを取ることになった。遅いが始めないよりはましだ。
 日本の知的財産は諸外国に比べても豊富(米国に匹敵する特許申請が毎年出されている)にあると言えるが、それを事業化することは遅れてきた。米国ではエンジェルにお金を出してもらって、特許や技術を事業化する土壌ができているので、ベンチャーの中から成長してくる企業が次々に出てきて経済を活性化する。
 日本もこうした点を見習うべきだ。政府もこうした流れを作るために政策的な後押しをしていく必要があるだろう。

 以下にはその知的財産戦略に関しての新聞記事をまとめておいたほか、最近の上場企業と関係した特許や著作権に関しての記事をまとめてみた。株価コメントも添えておいたので参考にして頂きたい。


「福田康夫官房長官は26日の記者会見で、3月20日に「知的財産戦略会議」の初会合を開くと発表。同会議は小泉首相が主宰し、竹中経済財政担当相、尾身科学技術担当相、平沼経産相ら閣僚10人と、民間有識者11名で構成。座長は阿部博之東北大総長が就任。
 他のメンバーは以下の通り。青木初夫藤沢薬品工業社長、荒井寿光日本貿易保険理事長、安西祐一郎慶大塾長、大山永昭東工大教授、桑原洋総合科学技術会議議員、小池晃日本弁理士会会長、富塚勇日本レコード協会会長、中山信弘東大教授、松尾和子弁護士、御手洗冨士夫キャノン社長」


1.青紫レーザー開発 三洋電機(6764)、来春から量産 平成14年3月14日(木)  【日経新聞】
 三洋電機は大容量光ディスクの録画再生機用の青紫色半導体レーザーを開発した。従来のものとは基盤が異なる新しい構造で、日亜化学の特許に抵触しないという。日亜化学が青紫レーザーの関連特許を多数持っているが、三洋電機は独自に開発を進めていた。

株価コメント:
2月4日の安値467円から3月11日の680円高値まで、45.6%上昇し調整局面に。指数に連動。この新聞記事に対する株価の反応は鈍かったが、再度の上昇局面では材料となる可能性もあるだろう。半値押し574円が下値目途。


2.エイベックス(7860)、BoA新曲でヤラレタ! 平成14年3月12日(火)  【夕刊フジ】

 エイベックスが邦楽で国内初のコピー防止機能付き音楽CDを発売する13日を前に、BoA新曲「Every Heart―ミンナノキモチ」がコピーされ、ネット上で違法に登録されファイル交換されていることが12日までにわかった。CDのコピー防止機能が破られたか、プロモーション用ビデオや同時発売のアルバムCDから複製されたかは不明だが、早くもコピー防止機能の実効性が問われた形となった。

株価コメント:
長期低落傾向。コピー防止機能付き音楽CDの発売は良かったが、早くもこの機能が破られたとの報道は同社の事業展開にとっては難題となる。今期業績の下方修正もあって、今しばらくは下値模索を余儀なくされる公算。ビッグアーティストの引退の噂などに次ぐマイナス材料で、来期業績の好転を明確にできないとなお苦しい。音楽からアニメなど画像情報の配信にも注力する点が今期への期待材料。配当と株主優待制度のみが現状の株価を下支え。


3.スチールハウス 中国企業に工法 新日鉄(5401)、ライセンス供与 平成14年3月12日(火)  【日経新聞】

 新日本製鉄は中国最大の建材メーカーの北新建材集団(北京市)にスチールハウス工法のライセンスを供与すると発表。北新建材は同工法で年間3万戸以上の供給を計画。同工法は鋼材を使ったツーバイフォー住宅の建設手法で、耐久性や断熱性の高さに優れる。新日鉄は日本で技術特許やビジネスモデル特許を取得済み。

株価コメント:
昨年9月26日の安値145円以来の上昇局面を続け、3月4日に218円の高値まであったが、その後は反落。日本を代表するオールドエコノミー企業であるが、そのオールド企業の国際的な特許戦略の一端が見える記事である。その技術的な中身はよくわからないが、同社の長年培ってきた技術力は凄い筈だから、もっとこうした戦略を次から次に打ち出せば株価ももっとしっかりするだろう。頑張れザ「鉄」。


4.複製防止音楽CDデビュー エイベックス(7860)が第一弾 一部機器で再生できず 市場定着は不透明  平成14年3月13日(水)  【日経】

 エイベックスは13日発売のシングルCDを手始めに、順次コピー防止機能を施し、将来はすべてのCDで採用する計画。イスラエルのミッドバー・テックの技術を使用し、ハードディスクやCD―Rでのデジタル信号の複製を防ぐが、一部のカーステレオやパソコンでは再生も出来ないものがあるのが欠点。

★上記の通りに早くもこの技術が破られた・・・。


5.協和発酵(4151)、幹細胞で基本特許 再生医療競争に参戦 未来戦略 平成14年3月8日(金)  【日経】

 再生医療には幹細胞は欠かせない材料で、胚性幹細胞(ES細胞)と体性幹細胞があるが、ES細胞は受精卵を壊して作成するので倫理面での問題が多い。体性幹細胞は成長する臓器は限られるが障壁は少ないと見られる。協和発酵の発見した体性幹細胞は、既に発見されているものと比べても再生能力が高いと見られ、同社は再生医療サービスの中核技術と位置付けている。患者体内にあるこの幹細胞を刺激して幹部の修復を促す薬の開発を計画している。また、この細胞に関する一連の基本特許を成立させ、ビジネスを有利に進めることも狙っている。

株価コメント:
2月5日の587円安値から3月6日の773円高値まで31.7%の上昇。この記事が出た後、高値圏でなおも推移。一旦は680円程度までの押し目を待ちたいところだが、押し目待ちに押し目なしの状態。バイオ関連企業の中では特許戦略に優れており、今後も折に触れ人気化しよう。


6.薄型テレビ 有機ELテレビを発売へ 三洋電機(6764)が03年度  にも 平成14年3月3日(日)  【毎日】

 三洋電機は世界で初めて03年度中にも有機EL(電界発光=エレクトロ・ルミネッセンス)テレビを発売する方針を明らかにした。有機ELは厚さ1ミリ程度の超薄型ディスプレーで、自ら発光するためバックライトを使う液晶より消費電力が少なく画質は液晶をしのぐが、コストが液晶の数倍する。三洋は昨年12月に有機ELの基本特許を持つ米イーストマンコダック社と提携している。


7.青色LED訴訟 日亜の請求棄却 平成14年3月1日(金)  【日経】

 豊田合成が青色LEDの構造に関する特許2件の特許権を侵害したとして、日亜化学が計3億5000万円の損害賠償を求めた2件の訴訟の判決が東京地裁であった。「豊田合成のチップは活性層の構造や材質が日亜の特許とは異なる」として請求を退けた。


8.知的財産 ネット外販 大日本印刷(7912) 特許持つ微細加工技術  など研究費回収スピードアップ 平成14年2月24日(日)  【日経】

 大日本印刷は3月より金属の微細加工や薄膜塗布など電子部品関連の生産技術の特許約100件を、知財の電子取引市場「イェット・ツー・コム」に登録、異業種企業に外販する。最近は多額の研究開発費を投じてハイテク部品を開発しても短期間でライバル企業が追随するため、研究開発費の回収が難しくなっており、知財を積極的に外販する米国流の姿勢に改める。

株価コメント:
1月25日の1154円から株価は上昇。3月8日に1429円まで23.8%の上昇を見せた。この記事が出た翌日の株価は1243円寄り付きの高値1270円、引け1250円で穏健な動きであったが、その後は全体相場の動きに合わせて一気に上昇してきた。

9.ナノチューブに紛争の影 米特許のカベに日本挑む ナノカーボン革命6 平成14年2月25日(月)  【日経産業】

 米ハイペリオン・キャタリシス・インターナショナルは84年12月、ナノチューブの物質特許を出願、87年に米国で成立した。三菱商事などはこれを警戒しナノチューブ事業には参入していない。昭和電工と信州大、遠藤教授は82年に製法特許を出願したが、物質特許を取得して権利を主張するという考えはなかった。日機装は83年9月に製法特許、84年9月に直径50ナノ―2マイクロ(マイクロは百万分の1)、同9月に直径10―50ナノメートルで物質特許を出願し成立している。先発明主義の米国へ同社の製品が輸出される場合は、どちらが先にナノチューブを見つけたかが問題になる。NECもハイペリオンと日機装とは違う構造の物質特許を持っている。ハイペリオンと日機装の特許は2004年に切れるが、ハイペリオンは応用特許を多数出願しており、2005年以降、他社が参入が相次ぐと特許紛争が頻発する恐れがある。


10.三井物産(8031)、医薬品製造受託に進出 平成14年2月21日(木)  【NIKKEI NET】

 三井物産は富士製薬工業(4554)と共同で、他社が開発した医薬品の製造受託事業に乗り出す。特許期間の切れた医薬品の商標権、製造・販売権を買取り、富士製薬の製品として販売する事業も立ち上げる。医薬法制の見直し論議が進んでおり、将来製薬各社は外部に生産委託した医薬品の販売が出来る見通しで、製造のアウトソーシングが増加すると判断した。

株価コメント:
三井物産は昨年12月20日の564円安値からの上昇局面継続。この記事そのものは大きなインパクトにはならなかったが、株価は全体相場に歩調を合わせて上昇基調を継続。JASDAQの富士製薬は多少は反応したが、それほど大きく変動はしていない。但し3月4日に出来高が3万株とやや増加してきた点には注目。(炎)

 

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2002/03/15 ブルーレーザーについて
両津勘吉

 

 最近、ブルーレーザーに関する記事が多くなってきている。特に先般発表されたDVD規格統一について、どこのブルーレーザーが使われるのかに関してのレポートを目にしない。新ネタ好きのエレクトロニクスアナリスト達はなぜ書かないのかな〜。

 先般、某証券2社にどこが使われるの?と質問したところ、返ってきた答えは日亜化学や豊田合成などなど。どうもエレクトロニクスアナリスト達はサファイア基板ベースのものになると思っているようだが、果たしてサファイアベースで光記録に使えるブルーレーザーが製造できるものなのか?

 対してGaN基板はまだまだ時間がかかりそう。化合物半導体のエピタキシャル成長に使われるMOCVDはメジャーなところで世界に3社しかない。エムコアと日本酸素ともう1社(名前が出てこない)。しかしGaNでは日本酸素しかMOCVDを手掛けておらず、彼らからもGaN基板ベースの量産装置はまだない。現在出荷されているのはサファイアベース。

 しかしこの道の研究をされている専門家で、億近産業調査部の某氏によればGaN基板は非常に難しく、新聞記事が一人歩きしている観があるとのこと。しかし現実にはDVDにブルーレーザーは2003年度から搭載される可能性は大きく、一体誰が供給するのか?

 今週、三洋がGaN基板ベースでブルーレーザーを来年から量産とあり、あの記事には驚きました。有機ELもそうですが、三洋は歩留まりが悪くても根性で立ち上げるような気がしてならないからです。しかしながら三洋のブルーレーザーは出力が5ミリワットと低く、読み取り専用です。もっと高い出力が得られ、更に歩留まり良く量産できる企業を考えますと、松下のGaAsにSHGの組み合わせが最右翼ではないでしょうか?

 松下の化合物半導体技術が優れているとの話はあまり聞きませんが、大原さん曰く、赤崎先生に近いとの事です。しかし私は別の角度から松下を見ておりまして、彼らは化合物半導体技術を有するどこかの企業と親密な関係にあると勝手に想像しております。ですから松下の赤色レーザーは特に問題は無い。

 しかしながら出力効率を上げるのが難しいと言われているSHGですが、これは日本ガイシが担当。現在30ミリワットまで出力は出ておりますが、100ミリワットも視野に入っている模様。このSHGは古い技術ですが今までなかなか出力を上げることが出来なかったのを日本ガイシが成功に漕ぎ着けました。細かい加工をするのでこの工程の歩留まりが気になりますが、これは光導波路(AWG)の加工技術を応用したものでして、日本ガイシに言わせれば既存の加工技術。つまり難しいことは特に無いとのこと。

 現在、R&Dラインのみで来期からの松下のサンプル出荷に合わせて製造していきますが、量産ラインは直ぐには作らない。というより量産ラインと呼べるほどの装置が必要ないのです。装置2−3台もあれば充分で、設備投資は少なくて済みます。

 しかしこのSHGをよく日本ガイシが成功したなと感心しますが、特許庁のHPから第二高調波(SHG)の検索を実施すると意外な事に気付く筈です。日本ガイシ名で昨年年末段階で公開されているSHG特許は3件ですが、その3件とも単独申請ではありません。

 しかももっと突っ込んでいきます。SHGの材質はニオブ酸リチウム。この材料を日本ガイシはどこかから購入してくるのでしょう。どこから購入するか私は裏が取れません。しかしながらこの材料を扱う企業の中に化合物半導体技術を有する企業ありまして、そこは松下と取引関係にあるようです。この企業がどこかはアナリストなら簡単にわかることでしょう。

 ちなみにこの企業、GaN基板は一切扱っておりませんが、将来はやってみたいと研究のボスが小さな声でポロリ。

 MOCVDでも化合物用でないタイプを製造している東芝機械が、いつ参入するかも楽しみですね。元東芝の半導体技術者であった成瀬氏が(常務OR専務)EB量産&外販で東芝機械に来られて早7年。モロ技術者ですが東芝機械の範疇を越えて非常に親切丁寧に色々なことを教えてくれます。半導体の勉強をしたいなら成瀬氏の元に行くべきです。がんばれ成瀬さん。

 DVDで日本ガイシが絡むとは思いませんでした。しかしもう一つ大きなビジネスチャンスが到来しようとしております。それは昔から言われているNA−Sバッテリー。

 仲の良い東京電力がいよいよこの4月からNA−Sバッテリーの事業化を開始するようです。しかも東電だけではない。ほとんどの電力会社に私の友人が技術者として勤務しておりますが、昨年、北海道電力の発電技術者に電話した時のことです。

北電技術者「NA−Sバッテリーは有望だぞ。」
両津「前から言っているが全然市場が立ち上がらない。」
北電「うちはやるぞ!」

 電力会社には勢力図といった方が良いのか、それとも派閥といった方が良いのかわかりませんが、まあ あるようです。最大の対立は東電と関西電力でして、両社とも子分を引き連れて火花を散らす間柄?東電は東北と北海道と緊密。四国は一匹狼。九州は東かな?
 東電のNA−Sに対し関西はレドックスフローバッテリー。しかしながらゴールドマンサックス曰く、共同開発している住友電工自らのみの実証試験でして客は誰も使っていないようです。対してNA−Sはアサヒビール(確かそうだった)や東京都下水局、パシフィコ横浜は先行きは半導体工場など、東京電力はNA−Sのマーケティング部隊10名が汗水垂らしながら営業活動を行っております。そして緊密電力数社と提携してNA−Sバッテリーで新聞発表が行われるかもしれません(もしかしたら発表しないかもしれません)。

 日本ガイシが我々に言う売上(期待)と東京電力の数字には乖離がありますね。日本ガイシは多分1年後にNA−Sバッテリーの量産ラインが完成すると予想しますが、金額は初期投資50億円で償却は建物除いて12年。R&Dラインでは効率悪く1KW当り単価20万円だと若干の赤字がでましょうが、それも量産ラインの立ち上がるこの1年の間。

 複数の電力会社が営業を開始しますので量産ラインが完成する1年後からはビジネスとして大きく育っていきましょう。

ではまた。(両津)

 

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2002/03/12 SRI研究

 

 さて、前回、帆さんにSRIの紹介をしていただきました。今回もコラムを寄稿していただきました。


【SRI Watch - i Today  (新たな風) by 帆】

 去る2月15日、朝日新聞文化財団より毎年恒例の『企業の社会貢献賞』が発表された。今回大賞に輝いたNECをはじめ、部門賞に5社が選ばれた。
 受賞各社はこの賞をどのように受け止めたのだろうか。筆者は仕事柄多くの企業社会貢献担当部門の方々とお会いする機会がある。この場を借りて日頃抱いている敬意を改めて表したいと思う。今回の6社だけではない。すべての企業の現場担当者に対してだ。

 実は筆者は企業の社会貢献担当の方々とご面談できるチャンスを非常に大切にしている。
 実際にお会いするとわかることだが、例外なく気持ちの良い方々ばかりだ。また勉強させていただくことも非常に多い。IR担当者と意味のない押し問答するより、はるかに企業を理解できるのだ。会社だけでなくこの社会を少しでも良くしていこうという志を持たれている方たちだ。そもそも企業人としてのレベルが違う、だから筆者も人間として勉強することができる。

 ますますのご活躍をお祈りしたいのと同時に、この方々がもっと多くのひとびとに評価されて良いと思う。その意味で社会の関心を集める機会である『企業の社会貢献賞』の存在を筆者は一定の評価をしている。

 さて、これまで日本のSRIシーンを見つめてきた筆者は、先週一週間これらの企業の株価を密かに見守っていた。2月15日(金)から22日(金)までの受賞企業の株価の変化率を以下に示そう。なお富士ゼロックスはあえて米国ゼロックス社の株価を引用している。

NEC(大賞)
+0.0%
ジョンソン・エンド・ジョンソン
(男女平等賞)
+3.8%
イオン(社会との共生賞)
+3.6%
安田火災(環境保護賞)
▲3.3%
富士ゼロックス(企業倫理賞)
▲9.0%
キリンビール(情報開示賞)
+1.3%
 
東証株価指数
+0.8%
S&P 500
+1.3%

 

■潮流
 これを見ただけでメインストリートの機関投資家は全く材料視していないと、決め付けるのはいかにも早計というものだ。しかし日本の機関投資家の投資行動に対し常日頃苦言を呈してきた筆者の眼には、『いかにも悠長なものだ』と映る。本コラムの読者ならば、この週米国CALPERS(カリフォルニア州職員退職年金基金)がタイ、インドネシア、マレーシア、フィリピンの企業の株式を売却すると発表したことを既にご存知だろう。「新興国での投資基準見直し、市場要因を50%、各国の労働法など社会要因を50%考慮した」と同基金のホームページで説明されている。予想していたことがもう既に始まってしまったのだ。
筆者が先週参加したフォーラムで、イトーヨーカ堂常務取締役の稲岡稔氏は、『Sustainabilityとは何か?それはステークホルダーに支持されつづける企業であることだ』『社会性と経済性が両立する時代になったのだ』と述べた上で、『CSR(Corporate Social Responsibility)でメシが食えるか?答えはYesだ』と言い切った。社会の価値観は変わった。

■社会の風
 ファンド運用を筆者はヨットレースに例える。SRIファンドの舵を握るファンドマネージャーたちはこの潮流をどう読むのだろうか。まさにこの風が吹く時のために設計された艇で。セールを一気に上げて颯爽と走り出すか、他の群集に埋もれるのか。市民意識が変化したのならば、投資家は群集を抜け出すリスクを引き受けてくれるはずだ。フレッシュウインドを最初につかむのはどの艇だろうか。(帆)

 

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2002/03/12 特別損失の研究 弟5回
 評価損
大原部長

 

 持ち株や不動産の時価評価でどうしてあんなに損が出てしまうのか。
デフレで土地や銀行株が下がってしまったため。(そして今後も持ち直すかわからない)

株主から調達した資金で銀行株を買って値下がり。
株主は銀行株を買ってくれといってその事業会社の株を買ったわけではない。

資産は事業を行うためにある。
どうして持ち合いをしなければならないのか。

●銀行は経営のモニタリングをしてくれる
●銀行も同様に株を保有してくれる

いま、銀行がやっているのは、事業会社の株の叩き売り。
事業会社も銀行株を損を出しながら売っている。
こういう馬鹿らしいこと無縁の会社がよい。

要するに、

●株価は操作できると思い込んでいる経営者がまだ多数いる(創造的会計をやっている)
●操作できるなら操作してやろうといって持ち合いを行う(需給をコントロール、買収にも備えている)
●株価が下がったらこれは他人のせい 売ったお前が悪いとなる

⇒他力本願の経営だから多額の評価損がでる
⇒実力のある会社は銀行株はもともと持っていない
⇒もしものとき銀行が助けてくれるのなら、経営者の仕事の重みはどうなるのか
⇒モニタリングが必要なら社外取締役制度などもある
⇒なによりも市場参加者の意見を参考(あくまでも参考)にすればよい

表1 :評価損計上額が大きい20銘柄対象:金融を除く東証1部銘柄(2001/9中間)

コード 銘柄
有価証券売却・評価損
 (百万円)
1861 熊谷組
101,561
8058 三菱商事
93,134
9984 ソフトバンク
81,755
5403 川崎製鐵
52,654
8263 ダイエー
49,136
8063 日商岩井
48,133
8004 ニチメン
44,373
1808 長谷工コーポ
36,530
8801 三井不動産
28,330
9738 インテック
20,390
3861 王子製紙
18,614
5233 太平洋セメント
17,969
8003 トーメン
17,658
7011 三菱重工業
16,807
8232 東急百貨店
16,606
8053 住友商事
16,528
7202 いすゞ自動車
14,457
7974 任天堂
13,562
8178 マルエツ
12,414
6504 富士電機
11,683
6702 富士通
10,574

時価総額が200億円以下の熊谷が、どうして有価証券だけで1000億円も損がでるのかね?
何をやっとんじゃ!

【評価損を出さなかった50社のリスト】
表2: 対象:金融を除く東証1部銘柄

コード 銘柄名
3521 エコナック
4047 関東電化工業
4666 パーク24
4921 ファンケル
6482 ユーシン精機
7105 日本輸送機
7552 ハピネット
8219 青山商事
9609 ベンチャー・リンク
2107 東洋精糖
3868 高崎三興
4109 ステラ ケミファ
6793 山水電気
7897 ホクシン
8803 平和不動産
3513 市川毛織
6242 日本スピンドル製造
6817 スミダコーポレーション
6963 ローム
8013 ナイガイ
9232 パスコ
3408 サカイオーベックス
5363 東京窯業
6212 帝人製機
6332 月島機械
6717 富士通電装
8116 ダーバン
6621 高岳製作所
6937 古河電池
7007 佐世保重工業
1922 大成ユーレック
5344 丸和
5476 日本高周波鋼業
7240 エヌオーケー
7250 太平洋工業
7702 JMS
7960 パラマウントベッド
9306 東陽倉庫
3596 ワールド
4008 住友精化
4218 ニチバン
7251 ケーヒン
8018 三共生興
8239 横浜松坂屋
9766 コナミ
9934 因幡電機産業
3105 日清紡績
6917 デンセイ・ラムダ
5992 中央発條
6905 コーセル

みなさん、共通項は見つかりましたか?
えらい。とにかく投資有価証券で損を出さないことに拍手!!(大原)

 

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2002/03/12 特別損失の研究 第4回
 新卒の定期採用を続けたツケ
大原部長

 

 シチズン時計に訪問。
経理部8階に向かうためエレベーターに乗るときと降りるとき、そして経理部から受付へ来客用バッチを返すため、エレベーターに乗るときと降りるとき、従業員が先に乗り込み、先に降りていった。
来客のバッチは何のためにあるのやら。。。
こういう些細なことでも、よい会社かどうかわかる。

それはさておき、希望退職者に30ヶ月の割増給料を払うと決めたシチズンに、どうして割増なんか払わなければならないのか聞いてみました。

Qいったいいくら希望者を募るんですか?
A希望した人は全員です。
Qそれでは株主の負担額はわかりませんね。どうなることやら。
A大丈夫です。社員が半分になるようなことにはなりませんから。
Qどうせ優秀な方がやめてどうしようもない人が残るんでしょうね。
Aええ。でも、優秀な若手が取れますから。いまは学生も就職難ですからね。
Qはあ。優秀な若手といっても、一から育てるのは大変でしょう。

あいまいな採用制度、
あいまいな評価制度、
あいまいな退職制度、

もう少しきっちりと運営してもらいたい。

●まず会社はビジネスユニットごとに最適なリーダーを選ぶこと
●リーダーは必要最低限の人員だけを申請すること

外資系の場合、必要最低限の人員しか雇わないのは当たり前。
そして、誰かがやめたとき、誰かで兼任できるときは、そうするし、どうしても重要なポストすぎて、兼任が難しいときは、採用に入る。
そうなると、人選に入り、数ヶ月を要して採用を決定します。
面接は数回にのぼり、チームプレーができる人か、チームに貢献できる人か、関係者(つまり、チームの構成員)の感想なども参考にします。
いろいろな条件をクリアすれば、ようやく採用となるわけです。

日本企業は、定期採用。
ビジネスをあきらめている。
たとえば、あなたが何か事業を始めるとき、まず毎年人を一定数雇ってから、どのような事業をやるか考えるだろうか。
そうではなく、事業の性格や特徴を把握して、最低限の人数で運営しなければ、最初から勝てない。

⇒定期採用は理に合わない

外資系は、大学を卒業しただけでは、ジュニアとして給料は数年間は変わらない。
ステップアップするためには、ジュニアとして数年のキャリアにMBAやPh.Dという専門性が必要。
キャリアアップの基準がはっきりしている。
運用業界でも、ジュニアアナリストがシニアアナリストになるためには、シニアをサポートするだけではなく、自分の専門性を磨き、CFAなどの資格をとるか、MBAや大学院に通うことがシニアになるための条件になっている。
日本企業のように、課長まで10年待たされることはない。

●努力した量と能力に合わせて仕事は与えるべき
●ポスト=仕事にするべき 仕事(ポスト)は勝ち取るものである

採用がルーズだと

⇒不要な人員が紛れ込む
⇒チームプレーが乱される(せっかくよいチームをつくっても、へんなやつが突然チームに入ってきてしまうので、リーダーがよいチームをつくれない)
⇒業績拡大期に「事業機会を失う」といって、大人数を雇いすぎる。
(人は一番じっくりと選ぶべき、必要な人間であれば、何年も何年もアタックすべき)
⇒採用がいい加減な企業は特別損失が発生する

●事業を急拡大できると思い込んでいる経営者には、会社は経営できない
(特別損失。設備の破棄をしなければならない。最初から変な設備構成にしているから。辞めていく人々に何十ヶ月のボーナス(株主の負担)。人員をいい加減に雇い、教育もしないで、放り出す。日本企業の構造改革費用は、どうしてこれほどの多額の費用になってしまうのか。株主が何も文句をいわないから。株主も経営者も甘い。甘えの構造がある。甘えの構造が多額の損失の温床になっているように思えた。株主資本を食いつぶすリストラ費用。もっとましなやり方はないのか。リストラをするよりも給与体系や採用などのシステムを変えるべき。年金は企業負担をできるだけ小さくするような仕組みを選ぶべき。採用は慎重に行うべき。リーダーはどうしても勝ちたいやつだけを選ぶべき。ひとつひとつが緩いと試合が成り立たない。毎回毎回コールド負けの日本企業。しっかりとしてほしい。甘えの構造はどうしてできてしまうのか。

ご感想をお待ちしています。(大原)

 

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2002/03/12 経営研究素材 HOYA(7741)
☆☆☆☆
大原部長

 

●HOYAの1994年の改革を見習おう!
●よい企業には高い評価が与えられる
●経営に求められるリーダーシップとはなにか考えてみよう

1995年10月の日経ビジネスの記事を引用させていただく。


「特集―第1部その5―さらば「日本的経営」―HOYA,現状を破壊し競争力再構築
掲載日:1995/10/02 媒体:日経ビジネス

 現状に安住せず,常に時代に合わせて自らを作り替える。この「立ち止まることへの恐怖感」が企業の活力を醸成するのだとすれば,この1年余りの間にその姿を最も変えた日本企業,HOYAに触れざるを得ないだろう。
 出向を主体に従業員数は1994年度1年間で32%の減少。日本経済新聞の従業員減少率ランキングによると,これは全上場企業の中でトップである。
 それだけではない。「ビジョンケア事業部」,「メディカル事業部」など5つあった事業部は3つになり,22の子会社,本社事業部門は7社に再編成,役職者の階層を3段階に圧縮した。200人を超えていた部課長数は90人以下に減り,91年度は17人いた取締役も,8人に減っている。しかも,そのうち1人は社外取締役だ。
 新卒の定期採用は廃止。転職支援制度と選択定年制を同時に導入したうえ,課長以上の管理職は全員,年俸制に切り替え,一般社員の給与も能力本意の体系を取り入れる方向で,組合との交渉に入っている。従来の人事システムの完全否定である。
 「日本的経営を否定した会社」。そう言っても良いだろう。これほどの大転換に踏み切るということは,業績は赤字か−−そう考えるのは早計だ。路線転換を打ち出した93年度(94年3月期)の経常利益は前年度を下回っていたとはいえ,105億円。売上高経常利益率では10%を上回っていた。
 「短期的な業績とは一切,関係ない。これからHOYAが海外の一流企業に対抗して生き残っていくだけの力を持っているのか。組織や人事システムが現在の事業構造に適したものなのか。そう考えたとき,一刻も早く変わらねばならないのは明らかだった」

 山中衛社長は断言する。今回の大改革を盛り込んだ中期経営計画(94〜96年度)が発表されたのは94年1月31日。そのわずか2カ月後から始まった日本的システムの“破壊と再構築”は従業員の驚きもよそに,スケジュール通り,実行に移されている。
 なぜ今,これほどの大改革を断行するのか。この問い掛けに対し,経営企画,経理担当として社長を支えてきた江間賢二取締役の答えは明快だ。

 「眼鏡レンズなど当社の柱を成している事業は成熟産業であり,今でこそ利益は出ているものの,放っておくと赤字になりかねない。一方でエレクトロニクス関連は急成長している。50年以上の間に培われてきた現在のHOYAの企業体質では,この変化の速さについていけない。抜本的なリストラクチャリング(事業の再構築)抜きには,将来の成長はあり得ないと判断した」

 「成長」に集中,「成熟」はスリム化 41年11月,東洋光学硝子製造所として創業したHOYAは,45年10月に食器製造,62年5月に眼鏡レンズに参入して以来,この3つの事業を中核に据えて業容を広げてきた。しかし,91年3月に発売したガラス磁気メモリーディスクなどエレクトロニクス関連商品の爆発的なヒットで,事業構造は急速に変化している。

 ソロモン・ブラザーズ・アジア証券の予測によると,92年度には全体の0.7%にすぎなかったガラス磁気メモリーディスクの売り上げは,99年度には37%まで上昇する。連結ベースで見たエレクトロニクス関連事業の営業利益は,今年度中にも眼鏡,食器などかつての柱だった伝統事業を追い抜き,150億円に迫る勢いだ。

 山中社長は言う。「経営資源を成長分野に集中し,組織,人事をエレクトロニクス事業にふさわしい内容に作り替える一方で,眼鏡ガラスなどの成熟事業では,コストを数十%から50%削減する。眼鏡ガラスなど成熟事業も,目を海外に転じれば成長の余地は十分にある」。

 事業部や子会社の統合。管理職を一気に半減するなど小さな本社化の推進。七百数十人が一度に出向。こういった大ナタのすべてが,成長市場への資源の集中,成熟分野のスリム化,というリストラの2本柱から来ていることは,改めて指摘するまでもない。
 さらに国内の改革だけで賄いきれない部分は,海外拠点の活用で補う。眼鏡レンズの中でも付加価値の低い製品に関しては80%までタイなどに移転を進め,コストを半減することで現在7%の世界シェアを最低でも10%まで高める計画だ。

 「これだけのことをやるんだから,もちろん,リスクはある。それでも,何もしないリスクと比べれば,明らかにプラスの方が大きい。あとは根回しなどせずに,トップダウンで一気に断行することだ」 トップダウンでなければ構造改革など不可能,という点で,山中社長,鈴木哲夫会長の考えは,完全に一致する。 リストラ案の骨子は,少数のスタッフ以外には一切,内容を明らかにせず,会長と社長の2人だけで3カ月かけて作り上げた。他の取締役は中期計画を社内に公表する2カ月前の93年11月,合宿を行って人事,資源配分の詳細など詰めの議論に参加しているが,リストラ案の存在そのものは,直前まで知らされていなかったという。

 鈴木会長は「エレクトロニクス事業の成長,眼鏡など以前の主力事業の成熟化がリストラを決めた直接のきっかけ」と認めたうえで,「それだけではない」と強調する。

 「以前から,終身雇用と年功序列を柱とする日本的経営システムは,それこそ日本でしか通用しない,と感じ続けてきた。企業の価値は資本と労働をいかに効率よく利用するかで決まる。HOYAを含めた日本企業は,このままでは外国企業に太刀打ちできない」 資本の効率を計る指標としてHOYAが重視してきたのがROE(株主資本利益率)だ。年次報告書の1ページ目に連結業績概要としてROEの推移を示すグラフを掲載しているのはもちろん,一般社員に配布する社内報でも96年度に8%という目標を明示し,ROE重視の姿勢を徹底している。

 90年度,8.4%に達していた連結のROEは,92年度には4.8%まで低下した。「赤字になっている他の企業と比べれば,うちは随分まし」という社内の空気と裏腹に,鈴木会長をはじめとする経営陣が危機感を募らせていったのは,想像に難くない。

 さらに経営陣を揺さぶったのが,日本の労働生産性の低さだった。VAW(Value Added over Wage)。単純に言えば各企業,各国の労働者が給与の何倍の付加価値を生み出しているかを表す指標である。現在,ドルベースで換算した日本の賃金は世界でも突出した高水準にあるが,VAWの場合,生み出す付加価値が高ければ,給与の絶対額そのものは問題にならない。

 HOYAが日本国内と自社の米国,アジア,欧州拠点を比較したところ,米国は日本の2倍,欧州は2.5倍,アジアは10倍という極端な結果となった。赤字に転落したわけでもないHOYAが,従業員の動揺を覚悟のうえで人事制度にまで手をつけた背景には,ROEとVAWに裏打ちされた日本的経営システムに対する強烈なアンチテーゼが存在する。

 「終身雇用に全く意味がない,と言う気はない。社員の70%は終身雇用でもいい。しかし,少なくとも年功序列は不必要だ」と鈴木会長。「何十年か前に食器の技術者として入社した人が,今は仕事がなくなっているのに会社に残っている。本人のためにも会社のためにも果たしていいことなのだろうか」と問い掛ける。

 94年1月,中期経営計画の骨子を知らせる社内報の号外版には,次のような一文がある。

 「仕事に必要のなくなった社員は,会社に拘束せず,本人の能力を最も生かせる場(HOYAグループ内外)へ容易に移動できるように,選択の便宜・斡旋・経済的な支援を行う」 昨年の発表以来,会社都合の退職一時金に加えて年収1年分,選択定年加算金を受け取れる転職支援制度を利用してHOYAを離れた従業員は,中高年者を中心に200人を上回った。
 同社の労働組合であるHOYAユニオンの宮沢公宏執行委員長によると「退職者を何人出して人員を削減する,という目標数は会社側も持っていない。肩たたきの実態があればすぐに介入する,と会社には通告してあるが,実際に介入したケースはない」。
 それでも二百数十人が退職に応じた理由について,ある社員は次のように語る。「結局,HOYAには自分の仕事がない,居場所がない,疲れてしまった,といったさまざまな理由で,皆,自分から辞めていった」。

 江間取締役は人の流動化をむしろ良い会社の条件として挙げる。「企業が1つの製品,事業だけで50年,100年と存続できることなどまずあり得ない。だとしたら,常に新しい事業,独自の製品を生み出せる力を持っている企業こそ,良い会社であり続けることができる。社内競争なくして,そのような活力など絶対に生まれない」。

 リストラ初年度となった94年度(95年3月期),HOYAは電子部品の好調で単独の経常利益,連結の純利益ともに4年ぶりに最高益を更新,配当は1円増やして年18円とした。95年度も最高益の更新を見込み,配当をさらに増やして年19〜20円とする可能性が高い。

 立ち止まることのリスクは大きい HOYAはオーナー型企業の強みを生かし,日本的経営というタブーを打ち破ることで業績を上昇軌道へ戻した。「問題を先送りするだけでは,かえって傷を広げてしまう」と山中社長。
 それでも,HOYAを追おうと考える日本企業はまだ例外中の例外だろう。大規模なリストラの中で,従業員のモラールは保たれるのか。日本的経営の効力は本当に失われたのか。社員の忠誠心が成長を支えてきた,という日本企業の神話は,ただの幻だったのか。その迷いは捨て切れない。

 HOYAの壮大な破壊と再構築が成功したのかどうか,結論を出すのはまだ早いだろう。ただ,ひとつ確かなのは,この変化の時代に市場で生き残り,成長を手にする企業は,従来の日本的経営ではあり得ないとHOYAが動き出したこと。そして立ち止まっていることのリスクの方が大きいと判断したことだ」。


以下に1999年5月の日経産業新聞から引用をする。

「鈴木哲夫HOYA会長に聞く――株主・経営者・社員、利益共有で企業価値創造。
掲載日:1999/05/13 媒体:日経産業新聞

 前期の連結決算で、売り上げ、経常・純利益とも過去最高を記録したHOYA。発行株式の時価総額もここ六年で四倍近くに膨らんだ。「企業価値創造には株主と、経営者や社員との利益共有策が必要だ」という鈴木哲夫会長に同社経営改革の軌跡と今後の方向を聞いた。(聞き手は三宅伸吾)

 ――業績好調です。
 「九四年に十六人の取締役を八人にした。この時、取締役にこう言ったんだ。『金がなければ僕が、銀行借り入れの個人保証をしてあげるから、最低、給料一年分の自社株を買いなさい』と。いろいろ文句を言った人もいたが、結局、あれから五年たって、株価は三倍。みんな喜んでいる。取締役が株主の代理人であるなら、株主と利害を同じにしなければ」

 ――二年前の社内分社制度などの導入効果は。
 「カンパニー制度を導入、企業価値の拡大と成長を目指している。親会社に残っている二つのカンパニーを切り離せば持ち株会社化できる体制だ。二〇〇一年には新形態に移行する」 「本社機構も改革した。世界のグループ従業員は約一万人だが、五十人体制のグローバル本社はカンパニーと事業子会社を評価する戦略創造型組織と位置づけている。本社部門は企業価値を高めるための意思決定機関として、事業のポートフォリオ(組み合わせ)を決め、キャッシュフロー(現金収支)を生む事業からキャッシュを吸い上げて伸びる分野に資金を振り向けたり、新規事業開発に向け企業買収を計画するのが仕事。下から上がってくる仕事を『総合』したり、組織を管理するのではなく、明日に向かって戦略を練る本社機能が産業再編の時代には必要だ」

 ――何を経営指標にしていますか。
 「九一―九三年にバブル期の半分まで利益が落ち込んだ。そこで経営のモノサシを、経常利益からROE(株主資本利益率)に変えた。経営立て直し策の結果、九七年度にはROEは一一・二%まで回復した」
 「ROEは投資家からみると利回りみたいなものだが、経営者からみれば株主資本比率が小さければROEは高くなるわけで事情は異なる。当社は自己資本比率が高く、なかなかROEはあがりにくい構造がある」
 「そこで九九年度からEVA(経済付加価値)を導入した。EVAは『資本の増殖』を意味する指標で、いわば資本主義の原点と一致する。社内ではSVA(株主付加価値)と呼んでおり、資本コストを上回るリターンをあげないと企業価値は高まらない。導入効果は出始めている。株価が上がってきており、投資家も満足のようだ」

 ――日本ではこれまで株主は片隅に置かれていました。
 「株式会社が株主のものというのは世界の常識。日本もむかしは普通の資本主義国家だった。それが戦時中の国家総動員令で修正された。会社は国の命令に従うべきだとして株主権は停止、金利以上の配当を払うな、会社は国力増強に必要なモノを作れということになった」
 「戦争が終わって株主主権型の商法ができた。しかし、鉄鋼など基礎産業を育成する傾斜生産方式で国の再興を目指した。当時、直接金融は弱く、企業は銀行に頼ったり、役所に出向いて重要産業に指定してもらい資金などを回してもらう必要があった。労働組合も強く、組合との対立を避けるため労使協調路線がとられ、株主がまたどこかへ行ってしまった。しかし資本市場がグローバル化し、(調達コストが企業競争力を左右するため)株主重視経営が必要になっている」

 ――従業員はどう位置づけていますか。
 「マルクスではないが、資本と労働しかない。社会主義は資本家を悪だと言って失敗した。双方を向いた経営が欠かせない。従業員も、経営者と同様、株主とリスクとリターンを同一にする必要がある。EVA経営をやるといっても、掛け声だけでは社員はそっぽを向く」
 「これまで日本では社員と会社は利益共同体というよりも、手厚い福利厚生施設、終身雇用でレイオフしないという運命共同体だった。しかしこれからは利益共同体として経営参加意識を高めるべきだ」
 「例えば従業員持ち株会だ。当社では従業員持ち株会には六割が参加しており、会社が一五%を補助している。ストックオプション(自社株購入権)も利害共有の方策の一つだろう。米シリコンバレーの取引先企業の玄関に行くと、自社の株価グラフが張ってある。当社でも所得税の問題もあり、この六月総会には間に合わないが、幅広い従業員を対象に導入したい」

 ――産業界で取締役改革が一挙に始まりました。
 「法律では、取締役が互選で代表取締役を選んで、取締役は代表取締役の業務執行を監督するのが建前。しかし取締役になることが出世の梯子(はしご)段になっており、本来、監督すべき人が監督されるべき人の部下になってしまった。だから不祥事などを相次いだ。HOYAには社外取締役はまだ一人しかいないが、二〇〇一年に持ち株会社化する時には社内取締役を六人に、社外を三人にしたい」 」。


【研究課題】

●一連の改革がHOYAに出来て、他のほとんどの日系企業にできなかった理由を考えましょう
●HOYAの経営のよい点、悪い点、それぞれ考えてみましょう

読後感すっきりのHOYAの記事でも読んで、気分を晴らしてください。HOYAは特別損失を出さない企業の典型といえるだろう。

さて、「特別損失の研究」をシリーズにしていますが、いい会社に投資するための反面教師ですから、あと数回は続けます。我慢してください。そして、その後、「差別化とはなにか」(数回シリーズ)、理想企業像についてのシリーズ(5月ごろ)、「理想企業へ近づいている銘柄の紹介」(夏ごろ)を予定しています。(大原)

 

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2002/03/11 資源のリサイクル VS 情報のリサイクル
炎のファンドマネージャー

 

 またまた日曜の「発掘あるある大事典」でリサイクルがテーマとなっていたので取り上げてみました。

 資源をリサイクルして使う動きは、地球環境が重要視されるようになって一段と活発になってきましたが、これと同じように情報がリサイクルして活用される動きは、株式市場においても活発になってきている感が致します。

 この相場展開はいつかもあったなあー。とベテランの投資家なら感じて貰える筈。株式相場は過去の経験則を備えた投資家が、動物的感覚や経験を呼び覚ますことで行動に移していくことによって、少なからぬ変動を生じてきます。

 在庫調整などの循環要因はまさに情報のリサイクルと言っても良いでしょう。在庫の循環がある一定の状況を示した場合において、株価が上昇に転じるとの予測に基づいてそれを投資家にアピールするなら、株価の上昇が起きる可能性は高いのです。

 今回は空売り規制という政府の株価対策が奏効したとは言われていますが、大和証券商品企画部資料など、情報のリサイクルとも言うべき株価の底打ちを示すデータでも今回の上昇相場が示唆されておりましたので、これらの好材料が複雑に絡み合っていたと言うべきでしょう。

 多くの読者の皆さんがある情報に基づいて株式を買ったり、売ったりされているのですが、証券市場に流れる情報などは、大半がかつて流れた情報のリサイクルに過ぎないとも考えられます。
 このことが情報の価値を下げてしまっている要因になっているのではないでしょうか?

 オクチカのメンバーでは、この情報コンテンツをまったく新たにメークすることで、より付加価値の高いコンテンツとして提供する活動を続けております。特に技術者レベルではこれまで世にない技術を判りやすく語るなど、画期的な試みが続いております。
 多くのアナリストは、私も含めて単なる情報のリサイクル行っているという状況なのかも知れませんが、資源のリサイクルが重要になっているのと同様に、情報のリサイクルもこれまで以上に重要になっていると考えております。ただ、もっと大事なことは新たな本質的なコンテンツ作りをどうするかが大切だと思われます。情報には株価が上がる下がるだけではなく、過去の事業展開を踏まえて、今後の事業展開がどうなるのかといったファンダメンタルズの新たな予測コンテンツがあって、その予測に基づいて、それを信頼して投資家が行動を起こすことになるのです。

 株式市場の関心を持って最近参画された方々にとって見るものすべてが新鮮に映るかも知れません。新聞の一語一句、億の近道の一語一句が目新しい世界なのかも知れません。
 私たちはそうした新しい世代に対して、全く新しい感動をもたらすべく情報コンテンツを制作していることを、ベテランの方々も大いにご理解賜りたいと思っております。

 既に新聞や雑誌で語られた事柄なども多々あろうかとは思いますが、今後もできるだけ新しいコンテンツの提供に努めて参りたいと願っております。
 付加価値の高い情報コンテンツ作りを目指して、オクチカプロジェクチームメンバーでは日夜頑張っております。これからも暖かい支援をお願い致します。(炎)

 

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2002/03/11 久しぶりに泣けた説明会
炎のファンドマネージャー

 

 ●介護ビジネスの日本ロングライフ

 本日実施された日本ロングライフの上場前説明会では、久しぶりに泣けてしまった。大阪に本社を置く日本ロングライフは名前の通り、高齢化社会をサポートする老人介護ビジネスを行う民間企業として、ここに来て急速に成長。4月10日にナスダックジャパンに上場を予定しており、本日はその上場前説明会があったのだ。

 この説明会で壇上に立った同社の遠藤社長は、創業時の苦労を集まったアナリストの前で語ったが、本当にじーんと来るお話であった。久しぶりに感動した説明会で、私と一緒に出席したアナリストも思わず涙ぐむ始末。

 老人介護事業はいずれは自分にも関わる大事な事業。このビジネスの内容が充実していることが、将来の私たちの生活の安定に繋がるものと確信した次第。世の中には相変わらず目先の利益にとらわれた事業を展開する企業が多いが、この企業は全く違う。入居者本位の立場で社長自らが率先して行動を起こし、その経験を従業員に徹底しているのだ。

 いつまでも官に任せておいたのでは老人介護事業のサービス向上ができない。クロネコヤマトが官から民にサービスを移行した結果として、より便利なものになったのと同様に、介護事業もこうした民間事業者がサービス向上を競って初めて私たちが便利で快適な生活が送れるようになるのだと感じた次第。

 株主にとって利益背反となるのではとの意見も出たが、民間で苦労を重ねてきた同社の今後の活動に大いにエールを送りたい。(炎)

 

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2002/03/08 持ち株会社
駄洒落商会会長

 

  駄洒落商会会長です。

 前回から、お手伝いいただいております「ひよこ」さんから、以下のような質問をいただきました。
「最近、持ち株会社を作る企業再編が多く見られますが、持ち株会社を作るメリットを教えてください。例えば普通に合併して社内カンパニー制をとるのとどう違うんでしょう?」

 ひよこさん、毎回有難うございます。今後とも、「億近」金曜日をどうか宜しくお願いします。

 また、今後、「海野六郎」さんにもお手伝いいただけることになりました。海野六郎さんは、大手ハイテクメーカーで、光関連事業に従事されています。自己紹介文をいただいております。
「駄洒落商会会長氏とは、同じ中学校の隣のクラスにおりました。○○年近くのつき合いですねえ。株式投資は勤める会社の持株会からはじめました。本格的な活動はここ5年です。ネットバブルでは糠喜びの日もありましたが、高値を見事に掴んでしまいました。そういう初心者の疑問を億近スタッフにぶつけていきます。よろしくお願い致します。」 海野さん、有難うございます。
 ひよこさん、海野さんには、いずれコラムニストとしてのご登場を願おうと思います。ご期待ください。当面は、おふたりからの質問に答える形式で進めてまいります。それでは、ひよこさんのご質問にお答えしましょう。

 「持ち株会社」は、企業グループ全体としての経営を統括し、資金調達やグループ会社への経営資源の最適配分を担う会社のことを指します。傘下企業の株式を所有するが、自らは生産活動など事業を行なわない「純粋持ち株会社」と、自らも事業活動する「事業持ち株会社」に分かれます。

 戦前、持ち株会社形態をとる財閥企業が産業を支配し、そのことが日本経済の民主的発展を妨げたとの認識に基づき、戦後は独占禁止法で「持ち株会社」の設立が禁じられていましたが、97年に国内企業の国際競争力を維持する観点から、一定の条件のもとに解禁されました。

 さらに、商法の改正により、99年には「株式交換」制度、01年には「会社分割」制度が導入されたことで持ち株会社の設立が容易になったために、持ち株会社への移行が相次いでいます。

 こうした法整備の進行に加えて、「合併に伴う様々な軋轢を避け、かつ単なる業務提携以上の統合効果を狙う」という極めて日本的な理由も、持ち株会社設立を後押ししているようです。

 大企業が小企業を吸収する吸収合併の場合は、経営統合が比較的スムーズに進むようですが、最近は、金融機関など同規模の会社の経営統合が増加しています。「合併」による経営統合ですと、ポスト、給与体系の調整が難しく、従業員のモラールダウンなどデメリットの方が表面化してしまう恐れがあります。「持ち株会社」は、経営統合に参加する企業のブランド、組織、給与体系などを残しながら、情報システムの統合などを進めることが出来るメリットがあります。

 ただ、「非効率な部分」が温存されるようでは、やはり経営統合の意味がありません。投資家としては、事業の「選択と集中」が、「株式交換」や「会社分割」などの手法を用いて迅速に行なわれるかどうかをチェックしなければならないでしょう。

 「持ち株会社」のコーポレート・ガバナンス(企業統治)の問題も今後の重要な課題です。現行法上、持ち株会社(親会社)の株主は、子会社に対して一定の情報収集権は認められていますが、子会社取締役に対する違法行為差止請求権、株主代表訴訟提起権などが認められていません。「株主代表訴訟」を免れるために、持ち株会社を設立してその傘下に入るケースも有り得るわけです。早急な法整備が必要でしょう。

 今回はこんなところで。読者の皆さんの「億近」金曜日へのご参加をお待ちしております。(駄洒落)

 

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2002/03/08 為替相場動向
生涯遊人

 

 円高の流れに一気に傾いてしまった。

 マーケットでは、132−135円のレンジ相場で、円安の流れは変らないとたかをくくっていたため、131.50を抜けたところでは一気に損切りの$売りがでた。
 円高に振れた原因としては、3月期末に向けた日本企業のリパトリエーションが考えられる。
 これは日本企業が決算対策のために、海外資産を売った外貨を円に戻すことをいう。大きな案件としては、法定準備金まで取り崩してまでキャシュが欲しい銀行である。
 三井住友銀行はゴールドマンサックス株の売却益を、UFJ銀行はカリフォルニアの銀行を売った資金を円に戻すなどと市場では噂されていた。

 大きなものはだいたい終わってしまったのではないかといわれているが、この手の外貨売り円買いが、2−3月はコンスタントに毎日出てきているため、これが$円の頭を押さえていたとも考えられます。

 しかし、ほとんどのマーケット参加者が132−135円、$が下落しても130円がいいところだろうと思い、$買いにポジションを傾けていたのが、131.50、130.50を抜けてきたところで、一気に損切ってきたことが大きな売り圧力になりました。

 また、日本株の予想外の上昇も円買いの理由となりました。
 というのも、日本経済への不信感、日本株、JGB売りの日本売りで円安になっていた部分が大きく、実際この1週間は、株、債券、通貨とも買われ、トリプル高の様相を呈していました。
 また$は対円だけではなく、ユーロ、オーストラリアドルなどに対しても売られ、行きすぎた$高に対する調整が入ったという見方も考えられます。
 テロ以降のアメリカ経済の予想外の早期の回復により、アメリカに資金が回帰してましたが、ここにきて、日本や欧州に対してアンダーウェイトにしていた分の買い戻しによる円買いや、ユーロ買いが入ってきました。

 しかしまだマーケットでは、日本株、ひいては日本円に対する不信感も根強く、ファンダメンタルの変化がない中での、ショートカバーがどこまで継続するかは半信半疑のところににいます。
 $円に関していえば、前回126.50を抜けて135円までの円安がはじまった発射台のところまで$は下落しました。
 当面は126−131円のレンジに下方修正され、もみあった後に、いずれは130−135円のレンジに戻るという考えかたが主流です。
 4月の年金運用の資金の新規流入分のうち外貨運用の分を、このレベルから買い始めるのではないかとの観測もあります。

 125円より円高に行かない限り、しばらくは126−131円のレンジで$の底値固めの展開となるでしょう。(生涯)

 

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2002/02/18 番外編:本当に穴株でチャレンジしたい方に贈るレア物銘柄
炎のファンドマネージャー

 

(この手の銘柄は超レア物として市場に存在しておりますので積極的にチャレンジすることはできるだけ避けて頂きたいと思います。本当に納得した方のみが取り組む銘柄です。)

 BSL(3113・東証2部) 時価:42円 時価総額 49億円

 本日夕刻、同社の首脳から電話を頂いた。

「炎さん、(もちろん実際は本名で呼んで頂いております)本日下方修正を発表しました。」というものであった。

「それで、赤字になったんですか?」と私が聞くと、

「いや、実は黒字にはなったんですが、先般発表した黒字の予想が縮小してしまいました。」とのこと。

「それで株価はどうなったんですか?」と私が尋ねると

「動きがありませんでした…。」と相変わらずの株価低迷を嘆くような口ぶり。

 私にしてみれば、もともと同社の業績など信頼に足らない内容であったから、今回の黒字化(実際にそうなるとは今でも思えないが…)はそれなりに意味のあることと受け止め、もう少し株価の反応があっても不思議ではないと思った次第。

 ところで、先日同社を訪れた際にはオフィスの玄関にはスイスサラジン銀行の名前が書いてあって、BSL(旧ヒラボウ)がサラジンのお金で運営されている証を感じ取った。私の有料コンテンツの購読者の皆様には以下のコメントを出しておいたが、その後の株価は一向に動く気配がない。
同社の戦略は株価が高くないとM&Aもできないので今のままであれば企業再生事業などできない。本当に困った状態に違いない。M&Aして会社が大きくなっていく姿を本当に黒字化で表現していく必要があるが、今回の黒字幅はなお小さい。来期の黒字幅の動向が株価が大化けするかどうかのポイントとなる。
因みに本日の出来高は103万株と久しぶりに出来ております。同社株は銀行の融資のための担保価値がないとのネガティブな情報が飛び交っていました(同社首脳はもちろん否定)ので、売り圧力は相当なもののようです。このためなかなか上にはいかない状態です。
 旧ヒラボウでイメージの悪さが株価の低迷につながっているが、企業再生のための影武者的な存在として今後の成果が期待されるので、皆様にも紹介しておきたい。

 あのフジタでさえ週末は高値48円(引けは32円)まであったのですから、低位株も捨てたものではないでしょう。現預金はしっかり社内にありますので、投資先の再建や上場に至るような成功事例が出てくれば評価は変わる筈です。

 目先は以前から所有していた銀行がやみくもに売却している状況で、まだ多少の売り物が出てくるだろうから慌てて上値を追って買う必要はない。
 スイス系のサラジン銀行の支援によって昨年7月から投資事業を本格化。ベーカリーチェーンのモンタボーへの投資など「食」をテーマにした投資活動を推進。その一環として先般、バイオ、健康食品への積極的な拡大を図るマルキン忠勇(2538)への第三者割り当て増資の引き受けによる約1億5000万円の資本参加が明らかになった。このほか同社では幾つかの投資案件を推進中。

 こうした活動の最中であるが株価は低迷。12月19日には37円という水準となり、現在も40円台での推移を余儀なくされている。会社側が予測している今期の業績黒字化が達成できないとの見方が株価にも反映されていると考えられるが、現状の株価水準は一株純資産(39円)にほぼ見合った水準であり、これ以上の下落余地は小さいと考えられる。昨年高値290円からの下落傾向はもうそろそろ最終局面に入ったと見たい。

 本日発表された今3月期業績見通しは期初予想に対して以下の通りとなった。

 期初→今回の修正見通し
 売上高53億3000万円→30億円
 経常利益6.7億円→2.6億円
 税引利益5.7億円→1.5億円
 EPS4.3円→1.1円と下方修正。

 問題は来期以降どうなるのかという点。内容がまだ明らかではないが、黒字化が可能となってきた点を評価すれば多少の株価上昇が期待される。つぶれることがないならオプション感覚で取り組めるだろう。当面は1カイ2ヤリだろうが、住金的な動き(38円から55円までついた)もいずれはあっても良いと見るがどうだろう。

本日の格言:「穴株もみんなで買えば恐くない。」「穴株は忘れた頃にやって来る。」(炎)

 

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2002/03/04 ここでの相場勘と売買戦略
炎のファンドマネージャー

 

 まさに踏み上げの感が強まった本日の株式相場。空売りなどしていた方々にとっては今回の上昇相場をどう見たら良いのか戸惑うしかなく、一旦は買戻しの動きを取って様子見するしかない。

 NY株高を反映して値嵩ハイテク株やUFJなどの銀行株が一斉に高くなるなど、空売りが入っていたと思われる銘柄に買い戻しの動きが入って狙い撃ちされてきたのが指数の上げに繋がっていると考えられる。

 こうした動きが一巡する局面はもう間もなく訪れると見られるが、高値を形成する場面では短期的につられてしまいがちとなるので注意したい。但し、中期的な上昇トレンドが実現するのなら、多少の目先の重い動きがあってもまたすぐに上昇相場に救われることになって、下手な買い方も気にしないで済むことになるが…。今回はあくまで病み上がりの中の上昇相場。慎重姿勢を依然貫くことが大切と考えられる。

 ここでは8月高値期日銘柄から9月高値期日銘柄を狙い撃ちする方針や、低位材料銘柄の中からつぶれないとの安心感が出た銘柄などが引続き物色対象として考えられるだろう。

 8月期日銘柄については、既に三井造船(7003)などが動意づいているが、本日は一連の倉庫株も動いてきた。唯一ミサワ(1923)など再建への具体的中身が見え難い銘柄についてはなおも下値模索の動きが続いているが、12月19日の安値190円に対する2番底形成の動きと見れば冷静に取り組めるだろう。

 9月高値銘柄については、私が先日お世話になりました何と一回の取引で710円という格安なネット証券も併営していますブティック型証券のゲット證券のホームページ(http://www.get-sec.co.jp/)をご覧頂いてもお判りの通りですが、 8756 日産火、1948 弘電社、8755 安田火、4651 サニックス、6113 アマダ、9506 東北電、1792 日東大都、8752 三井住友海上、7007 佐世保、6208 石川製、8236 丸善、8083 サンテレホン、8318 三井住友、6362 石井鉄、4526 理ビタミン、2112 塩水糖など9月高値銘柄の期日が到来します。
 既に塩水港など急騰を開始した仕手性の強い銘柄もあって、どれからいくのかは判りにくいところですが、押しなべて堅調な動きになってきました。

 まず、第一関門は高値から安値までの半値戻りが目標になるかと思いますので、一つの目安にされて取り組まれたらいかがでしょうか。
 そうなると、既に残りがある程度限られている銘柄が多いことに気が付かれるかと思います。

 今回の上昇相場では銘柄にもよりますが、それぞれに全く異なった動きを見せておりますので、ある程度は今後の想定される動きを自分なりに考えて取り組まれる必要があります。
 全てに行き過ぎはつきもの。行き過ぎ場面は冷静に対処して余り熱くならずに次の押し目を待つといった戦略を推進して頂きたいと思います。

 まずは王道銘柄。それからは二番手、三番手に移行していくのが常ですから皆様もよく考えて取り組まれることを期待しています。まあ、結局は日頃からコツコツと取り組んでこられた方が多少の利を得ることになるのでしょうが、今度はどこで利益を確定させれば良いのかが判らないことになります。買うのは良いが利食いをどこで入れるかは結構難しいものです。まあ、久しぶりに贅沢な悩みと言っても良いでしょう。

 短期ではなくここでは長期で取り組むことも、意外な成果を生む可能性があります。長期で保有すれば税金が掛からないとの優遇税制があるからです。長期と短期に分けた戦略が奏効する可能性があります。(炎)

 

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2002/03/04 技術はトレンドを作る!!
炎のファンドマネージャー

 

 今は世界企業であるホンダやソニー、松下もかつては町の発明家や技術者が細々と行っていたビジネスであることは衆目の一致するところ。株式市場はそうした世界企業にならんとする町の発明家や、技術者にチャンスを与える場でもあると私は常々考えている。

 私たちの生活は、そうした生活に役立つ技術によって豊かになってきた。但し、豊かさというのは人によって感じ方が異なっていて、素晴らしい技術は多くの人々に支持される商品となって始めて生きてくる。
 今期の業績がどうだの来期がどうだの、また3年後がどうだとか言う世界とは全く異なった世界がそこには存在している。

 技術の開発者にとっては業績など後からついてくるもので、技術とは無縁の人たちとは考え方が些か違っている。これはある意味致し方が無いが、株式市場では目先の収益を求めがちになって、今期、来期、下手をすれば月次情報などで振り回されてしまう。

 前回、私が述べたようにビジネスモデルやビジネスの基盤となっている技術は何かという点を良く理解して、市場の動向を見据えて長期的な成長が果たせるのかどうかを見抜く目が必要である。
 長期投資家VS短期投資家の戦いが市場の中で繰り広げられていることも前回触れた点だが、英語で言うロング(長期)こそ、その企業を買いたいという意味であり、ショート(短期)こそが売りたいという意味となる。

 結果としてどうなるのかは判らないが、結果はあくまで自己責任。本当にロングができるのかを見極めるのが本来のアナリストの役割である。細かいトレンドはともかく、企業の成長性を長期で判断し、長期スタンスで株式投資してもらうための分析や情報提供ができないといけないが、現実は厳しい。

 そうした長期の世界を見極めることなど至難の業、とあきらめてしまいがちであるが、若い皆さんにはたっぷりと時間が残っていますから、この億の近道などでしっかりと技を磨いて頂きたいと思います。

 さて、冒頭のタイトルはこれまで世の中に無かったような技術が登場して、新たなトレンドを形成していくことを意味しています。例えば、携帯電話など10年前には余り考えられなかった世界ですが、またたく間に広がって、今や多くの企業にとってビジネスチャンスと考えられるようになりました。
 また、最近はADSLの普及でブロードバンド化が進むとの予測から、これに関連した企業が株式市場でももてはやされています。これによって訪れる生活の変化は想像すらできません。

 このように、知らない間に私たちの生活は大きく変化し、株式市場においても新たな潮流が形成されようとしているのです。

 先日説明会がありましたデジタルアドベンチャー(4772・NJ)でも、ブロードバンド化への対応を具体的にどのように行うのかについて話がありました。説明にあたった蛭田副社長の話にも熱が入っていた。つまり彼らの戦略は、タレント待ち受け画面などのB2Cのデジタルコンテンツ事業に続くB2B事業の積極的な展開に向け、ブロードバンド化に対応してオンラインゲームを日本のみならずブロードバンド先進国である韓国の企業とタイアップして行うというもの。

 説明会では具体的にカジノなど、デモゲームを臨場感あふれる内容で紹介されたが、今後は見知らぬ人同士がオンライン上のカジノで遊ぶこともできる時代となる。つまり、これまで考えられなかった交流の場が広がってくることになるのだ。

 こうした生活の変化をもたらそうとしているのが、様々な技術。技術が生活や社会のトレンドを作ると言っても過言ではないだろう。
 私はこのことを「技術の有効連鎖」と称しております。これは、あらゆる産業がお互いに連携して経済社会を構築している中で、どこを出発点にするかは判りませんが、様々な画期的な世界的な技術によってサービス産業までを含めて豊かな発展を辿っていくことを表しています。

皆さんもそうした観点で技術を眺め、それが株式市場や企業の成長にどのように繋がっていくのかを考えて頂きたいと思います。(炎)

 

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2002/03/01 SRI

 

 大原です。
 本日は、帆さんに初登場していただきます。

 帆さんは、大手生保でSRIのファンドマネージャをしていらっしゃいます。
 帆さんとは、さわかみ投信さんのさわかみ社長の勉強会で先日ご一緒させていただきました。まず、SRIとはなにか、説明していただくことにします。


 SRI(Socially Responsible Investment)とは、企業の財務的側面だけでなく、社会性や倫理性も考慮して投資対象を選ぶ投資スタイルを指します。“社会性”や“倫理性”といったものは、絶対的な基準がただひとつ決まっているといったものではなく、それぞれの投資家の“価値観”に基づきます。従来の株式投資を“効率性”を追求するものとすれば、SRIは“共感”に基づく投資と言うこともできます。SRIは個人の価値観を反映したものですが、それが多数の支持を得られれば社会的な意味を持つことになります。

 SRIの歴史は20世紀初頭の米国において、キリスト教のいくつかの宗派で教会の資産運用に、アルコール、タバコ、などにかかわっている企業を投資先から除外したことからスタートしたと言われています。
 その後時代を経過し、1960年代にベトナム反戦運動の盛り上がりに呼応して、武器製造企業を投資対象から除く動きが活発化しました。
 70年代になるとGMの欠陥車問題が社会的なテーマとなり、活動家がGMの株主となり株主総会でいくつかの株主提案を行うようになります。
 80年代には南アフリカの反アパルトヘイト運動が世界的な盛り上がりを見せ、SRIの最重要テーマとなりました。投資家は多くの企業に対して南アからの事業撤退を株主提案し、企業は撤退を決断しました。そして93年にとうとう南アのアパルトヘイト制度を廃止に追い込みました。
 また1989年にアラスカ沖で起きたエクソン社のタンカーによる原油流出事故が契機となり、それ以降環境問題がSRIで大きな関心を集めるようになりました。

 その後、SRIのテーマは、顧客対応、雇用問題、フェアトレード、コミュニティなど幅広い分野へと広がっています。
 社会が企業に求めているものは時代によって様々に変化していきます。これから個人の価値観がますます多様化していく中で、その要求に企業はどのように対応していくか。企業の収益性や成長性だけでなく、社会的側面にも注目することは、実は長期投資において最も大切なことなのかもしれません。この点を疎かにしているならば、投資していた歴史ある企業の株券が一瞬にして屑になる最近起きたあの事件も決して他人事とは言えないでしょう。(帆)


 ありがとうございました。(大原)

 

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2002/03/01 外貨投資、何がお徳か その3
生涯遊人

 

 外貨投資を考える場合、究極の投資方法は、やはり証拠金による為替取引だろう。ヘッジファンドも基本的には、銀行などに証拠金を積んで、その範囲内で大掛かりな為替取引をする場合が多い。
 株式とか債券に絡む為替の取引もあるが、為替だけのスペキュレーションの場合も多い。

 証拠金による為替の取引というのは、株式の信用取引と考え方は同じです。株式の場合はだいたい、証拠金の3倍まで株式を購入できるが、為替の場合はもう少しレパレジット率(元本の何倍まで取引をふくらませることができるかという比率、もちろんこれが高いほど大きな金額の取引が可能で、その分投機的な取引きといえる)が高い。

 国内の業者では、20倍程度、海外の業者で30倍程度です。20倍のレパレジット率というのは66.5万円の証拠金を積んで、$1,000万の取引ができます(1$=133円のとき)。30倍のレパレジット率なら44.3万円の証拠金で$1000万の取引ができます。

 当然レパレジット率が高いほど、低い証拠金で大きな取引ができます。ちなみに1000万$の取引だと相場が1円動くと、10万円の損益がでます。

 証拠金取引の利点としては、次のようなものがあります。ドル円の取引を例にします。

1、相場が上がろうと、下がろうと利益が出せる。外貨預金にせよ外貨建てMMFにせよ、円安方向にいかないと損失が出ます。

2、少ない資金で取引がはじめられる

3、手数料が安い。国内業者で10銭前後、海外業者で2−5銭ほど

4、金利が有利。これは$を買って持っている場合、日米の金利差分のスワップ金利を受け取れます。10万$で1日500−600円ほど、逆に$を売り持ちにしている場合はその金利分を払わなければなりません。

5、どの業者も大体24時間対応なので、いつでも相場に入ることができる。

 だいたいこんなところが他の外貨投資商品にない利点です。株式のディトレードにも似ていますが、買った$をずっと持ち続けることも、短期の売買に徹することも両方可能です。

 国内の業者と海外の業者の比較ですが、海外の業者のほうが、手数料も安く、様々な商品(為替だけでなく、株式先物、国債先物、貴金属先物など)を扱っていますが、取引の場合は英語ですので言葉の問題があります。
 国内の業者はやはり、海外業者にくらべ割高ですが、言葉の問題もなく、またインターネットによる取引も進んでいるようです。
 国内の業者の場合、商品先物の会社や中小証券会社が兼業しているケースが多いようです。
 また商品先物とか、先物取引というと、イメージがよくありませんが、自信のある人は短期取引もでき、$を買って長く持っていたい人にも、外貨預金、外貨建てMMFよりも有利な金利がつくので、使いようによっては、ここが一番有利だとおもいます。
 ただ業者は中小が多いので、会社の財務内容、営業方針をきちんとチェックした上で取引することをお勧めします。

 またペイオフ解禁以降は大手銀行といえども全額保護ではありませんが。(生涯)

 

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1
2002/03/01 特別損失の研究 第3回
大原部長

 

 従業員のための老後負担を株主が負う日本 vs. 企業が面倒を見る必要のない中国】

過去勤務債務関連の特別損失が相次いだ2年前。
多くの企業で年金資産の期待利回り前提が5.5%。
しかし、現状は国債の利回りが1%台。
仮に株低迷が長引いたとしたら、実際の運用利回りは0%になるかもしれない。

モデルケースを考えた。
従業員平均年齢は40歳。定年は60歳。
従業員数は1万人。退職金は2000万円。
単純化のために、擬似的に20年後に、退職金を一括して支払うことにする。
20年後に1万人に総額で2000億円の費用が発生するとする。

年平均5%で運用できるなら、いま運用資産が750億円あればよい。
この資産に見合う分を債務として「退職給付引当金」に計上すれば、今後は特別な費用は発生しない。
年5%で運用できる限りは。

 しかし、年率0%でしか運用できないのであれば、2000億円分を年金資産として保有していなければならない。
退職給付引当金は2000億円が必要になる。

仮に、企業が、運用前提を5%から0%に見直したとしよう。
退職給付引当金は750億円から2000億円に急増することになる。
それを一定の期間で償却しなければならない。

企業の運用前提、従業員の平均年齢、退職金額、すべてが株主価値に重要に関わってくる。

表1
従業員数
退職金/人

利回り
前提

退職給付
引当金
予想
特別損失額
年間費用
10,000
20
1.05
75,378
124,622
6,231
10,000
20
1.04
91,277
108,723
5,436
10,000
20
1.03
110,735
89,265
4,463
10,000
20
1.02
134,594
65,406
3,270
10,000
20
1.01
163,909
36,091
1,805
10,000
20
1.00
200,000
0
0

さて、この企業の年間売上が1000億円だとしよう。
事業から得られる事業利益が売上の5%だとしよう。
つまり、50億円が通常なら営業利益となる。

しかし、年金運用の前提を5%から0%に抜本的に引き下げたなら、2000億円から750億円を差し引いた1250億円が特別な費用として発生する。

この費用は誰が払うのか。
事業利益から払えない分は、株主資本から払うことになる。

償却年数を10年とすると、毎年125億円の費用が発生するため、この企業は毎年赤字となる。
20年間で償却できれば毎年62億円の費用になる。
これでも今後20年間は赤字になる。

一括で償却すれば特別損失は1250億円にのぼる。自己資本がそれ以下なら債務超過企業となってしまう。

⇒企業によって年金運用の期待運用利回りに差がある。いまだ4%以上の利回りを期待しているところもある。

⇒日本の雇用慣行にのっとり、社員をたくさん抱えている企業は想定利回りが高すぎる企業は危険である。

⇒401kなど、年金改革をしっかりとしている企業は安心である

⇒従業員の長期雇用を見直し年棒制などを採用している企業は安心である

⇒多くの現金、含み益をかかえている財務基盤のしっかりとした企業は安心である

 

 【マブチモーターのケース】

連結従業員数52000人。退職給与引当金3億円。
連結従業員19000人のシチズン時計の退職給与引当金は190億円である。

たとえばシチズンが年金運用前提を0%に落とさなければならない状況に追い込まれたなら、おそらく200億円以上の特別費用がまたも発生するだろう。
しかし、マブチに発生する費用は多分3−4億円で済む。

マブチの生産拠点は中国。
中国の雇用は3ヶ月契約。
退職金は微々たるものだ。
従業員の雇用契約の体系を終身雇用から短期契約へと変えることの出来る地域が日本以外の国に沢山ある。

数百億円、数千億円という特別費用をどうして株主は支払わなければならないのか。
年棒制があたりまえの国で活動をしていれば、こういう問題は発生しない。

 

???株主として、どちらがよいだろうか???

中国⇒アルバイトがすこしでも長く務めたいと願って、ステップアップのための努力を賢明にしてくれ、契約更新は3ヶ月ごとで絶えず緊張感の中で働いてもらえる

日本⇒年功序列で自分の年収分の働きさえしない中年社員に彼らの老後の年金負担さえさせられる

 いつも、人員関連の損失が出るのは偶然ではないだろう。(大原)

 

 

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